オポと体験した実際にあった話です。
ある日、いつものようにグッドボーイハート七山の家の裏側にある山への道を歩いていました。
歩きはじめて、やっと一段目を登ったくらいのところで、オポが立ち止まります。
オポが立ち止まるときには、なにか用件があるときなので、何故立ち止まったのか様子を伺います。
見ると、オポが地面の方に少しだけ鼻先をおとして、周囲の臭いを嗅いでいます。
脚は止まったまま体は動かそうとしません。
少し嗅ぐと、地面の1点に鼻先を向けてじっと立ち尽くしています。
犬の真後ろから見ている私には、オポが何に顔を向けているのかが見えないのです。
こういう姿勢のときは「あるものを見つけた」というシグナルです。
その鼻先からまっすぐに線を引いた地面に落ちているものを見たとき、ビックリしました。
顔を近づけてよく見ましたがやはり、そう。
「オポくん、これは卵だよね。」というしかありません。
どうして、こんなところに卵が落ちているのだろうと考えることは、今は必要ありません。
この卵をどうしようかということを考える必要があります。
「オポくん、いいよ。」と私が声をかけます。
その声に応じるように、オポがその卵を調べ始めました。
遠巻きに臭いをとっていたものを、もっと鼻先を卵に近づけて臭いをとっています。
卵を殻のまま与えたことはないけど、卵を割っている風景は見たことがあるでしょう。
その卵からどのような臭いがしたのかは想像するしかありません。
オポがこの卵が「食べられるもの」と判断するという予測は固いものでした。
ただ、どの段階で「食べる」という行動に移るのかの検討がつきませんでした。
卵を殻のまま食べてしまうだろうか、口にくわえて割ってしまうのか。
この後のいろんな状況が、頭の中で繰り広げられます。
するとオポは片方の前脚の先の部分、つまり爪先の部分を卵の表面にあて始めました。
後ろ脚は立ったまま、片方の前脚は地面につき、人でいうと「片手で卵の表面をカチカチ」という感じです。
それはとてもソフトな当て方だったので、卵がつぶれてしまうことはなかったのです。
カチカチとさせていると、卵の表面の一部がほんの少し割れました。
表面の一部に少しだけ穴が開いたのです。
その穴の中を少し嗅いで、それから迷わず舌でペロペロと卵の中身をなめ始めたのです。
オポが舌でなめ始めると、卵はさらに割れて中身が見え、
オポはそれを一気に舌ですくい上げて食べてしまいました。
そして、卵の殻は食べなかったのです。
食べ終わると何事もなかったのように、普段の歩速でゆっくりと歩き始めました。
そんな山の中に卵が落ちていることだけでもビックリしたのに、
このオポの卵を調べて食べる一連の動作にも本当にビックリしました。
予想とは違っていたからです。
卵は今まででも与えたことがあったので、臭いを嗅いだらすぐにかぶりつくと思ってしまいました。
犬が偶然が見つけたものと人から与えられたものでは、食べることについてこうも違うものかいう驚きもありました。
人から与えてもらうということの重さを感じることもできました。
なぜ卵が落ちていたのか。それは今でも謎です。
人の入らないようなところだし、鶏が移動するような場所でもありません。
カラスがくわえて落としたのかと思ったのですが、卵は無傷でした。
そして卵の中身がひよこではないかとドキドキしたのですが、中身は生卵でした。
鶏以外の鳥の卵ではないかとも考えてみたけど、どうみてもあれは鶏の卵でした。
山では不思議なことがいっぱいおきたので、これも不思議なことのひとつとしてそれ以上、検証するのは止めにしました。
オポの卵を見つけたときの「反応=シグナル」について補足しておきます。
地面に落ちているもの全てに同じ反応をするわけではないのです。
たとえば、むかご、ブルーベリー、柿の実、うさぎの糞が落ちているときは、
このポーズをとらず、私に知らせることなくこれらを食していました。
この「落ちている方向に体を向けて、脚を大地にしっかりとつけ顔をそちらに向けて」
集中して私の反応を待つとき、そこに落ちているものは何かというと、
大抵は人の所有ではないかとオポが学習を通して学んだものであったようです。
落ちているもの内容によっては、危険かと思い私が拾ってしまったものもありました。
たとえば、公園の隅に捨てられている食べ残しの骨とかです。
見つけたときに、取られてはいけないと慌てて口に入れてしまうようなことはしなかったのです。
街中では危険性が高いものが多く、そのままオポに調べさせるわけにはいきませんでした。
犬が見つけたとしても、「それはダメなんだよ。」と通り過ぎることばかりでした。
山に移ってからは、大丈夫かな思うものは、こうしてオポが調べることを許可しました。
許可は調べるだけでなく、その後のこともオポに任せるという意味です。
あの山に落ちていた卵は、オポにとっては大好物のギフトだったでしょう。
私にとっては、犬の不思議を見せてくれるまた格別のギフトでした。
同じものが都心に落ちていてもオポに調べさせることはできませんでした。
山だからこそできるようになったことのひとつでもあるのです。
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