グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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里山犬との出会い

チャリティ犬語セミナー後半で、里山犬(さとやまけん)と一方的に名づけた
里に住まう犬の話をさせていただきました。

以前、ラジオ番組「月下虫音」でもお話したことがあります。
ブログでも里山犬として紹介したり、別の名称でも登場したことがあるかもしれません。

里山とは、人の住む里と、野生動物のすむ山を分ける境界線の場所に位置します。
里山は、里に住む人が山に出入りして生活に必要なものを活用したり、
食べられる野草や薬の代わりになるような野草もここから採っていたのでしょう。

日本の国土は狭く山が多いため、かなり高地にまで里が広がっています。
グッドボーイハート七山校のある唐津市七山は、その地域がすべて山の一部のように
ひろがっている山村です。
唐津市に合併するまでは七山村といわれていた地域です。

その七山をずっと奥に進んでいったところにグッドボーイハート七山校があります。
元祖里山を位置する場所にあり、庭は山の一部としか思えない風景です。
この里山に犬と共に引越してきたときに出会ったのが、すぐ下の家の犬でした。

はじめて出会ったときはこちらの敷地の中にふらふらとしていたので、
てっきり迷子犬だと思いました。
手の平に食べ物を乗せて差し出しながらその犬に近づいていきました。
そうすると、こちらが近づいた分、後ずさりしていくのです。

私が「どうぞどうぞ」といってゆっくり進む感じ、
その犬が「いやいや」といって後ずさっていく、そんな風景です。
一定の距離を後ずさってしまうと、くるりと向きを変えて歩き去りました。
そのうち迷子犬だと思った犬が、すぐ下の家の犬であることを知ったのです。

小さめの中型のミックス犬で、とてもゆっくりと歩いていたのをみて、
老犬かと思って観察を続けたのですが、どうやら中年の犬であることも次第にわかりました。

いろんなことがなぞに包まれていて、それまでに出会ったどの犬とも違ったため
犬の観察にも身が入り、その行動のパターンが明らかになってきたのです。

毎日、犬だけでパトロールしていること
うちの門になるシャッターを難なくくぐって出入りしていること
周回のコースが数パターンあること
豪雨のときは、犬小屋に身を潜めていること
車が近くまできても全く動じないこと
猫の威嚇にも反応しないこと
お頭付きの魚を食べているときは形相が変わっていたこと
下道の道路で出会ったときは、少しゆっくりと歩いてすれ違うが
顔をあわせたりしないこと
声を出して近づくと近づいた分だけ離れていくこと

そして何より驚いたのは、
夜中に畑で吠えていること、でした。

山の方に向かってウォーウォーと吠えています。
藪にカサカサを音を立てるイノシシがざわざわしています。
畑にイノシシを近づけさせていません。
その行動の理由はわかりません。
はっきりとしているのは、犬のテリトリーでありまもる必要のあるスペースだということです。

人に命令もされないのに、飼い主が寝ている時間なのに、
夜中に響く声の力強さは、昼間のゆったりした動きとはかけ離れていました。

里山は野生動物と人の暮らしをわける境界線です。
その境界線をわかりやすく野生動物に伝えていたのがこうした犬の行動ではないか。
人の必要性と犬の必要性が重なったことで得られたこと。
人にとってはこんなに有難いことはないでしょうが、このことの利点は、
野生動物たちにとってこんなに分かりやすい境界線はないよね、と思うからです。

今は山に近い畑にはどこにでも見られるイノシシよけの網は、
イノシシが物理的に入れないようにした境界線です。
ですが野生動物にとってはわかりにくい境界線でもあります。
押したりくぐったりして通行できれば境界線は崩れる。
境界線の反対側に人がいても、お互いに驚くことがなくなってしまいます。
人間の作った柵は人に安心感を与えるため、動物を追いたてたりしないからです。
動物は追い立てられる体験をしないと、逃走はしなくなります。
人の里へ近づこうとして追い立てられる体験をくり返すことが野生動物の学習なのです。

接近しようとすると追い立てられるという恐怖を感じる行動をすることで、
人や犬の気配に敏感になります。
それでもなんどもやってきますので、それは面倒な作業であると思います。
本当に根比べですね。

里山の暮らしは「根比べ」の連続です。
暮らしのために根をはった方が勝ちである。
とても単純なルールなんですね。

里山犬との出会いは、犬への価値観を変えるひとつのきっかけになりました。
そして、人と犬の暮らしへの希望の光にもなったように思えます。

そんな里山犬は根比べできる忍耐強い人の暮らしを必要としています。
人の暮らしのそばに、犬の暮らしが寄り添うからです。

人の暮らし方が変わって、犬の生活も変わってきた。

なにがどんな風に変わったのか、少し考えてみる時間も学びのひとつです。



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