犬に「会わせた方がいいのか、会わせない方がいいのか」という質問を受けます。
この質問は、一般的ではないので考えたこともなかったという方もいるでしょう。
犬のコミュニティのようなものがSNSなどで知られるようになって、犬に会わせたいという方が増えてきているのかもしれません。
犬が犬と過ごすことは、飼い主さんのライフスタイルや犬を飼う目的によって全く異なります。犬が犬と「出会う」状況にはこのようなものがあります。
散歩中に互いにリードをつけて犬とすれ違うくらい
親戚の犬にたまに接触させる
他の犬と近づくことはない
散歩中にリードをつけて鼻をつきあわせるくらい
友達の犬といっしょに出かける
ドッグランで他の犬と過ごす
散歩中に犬同志が鼻を付き合わせる程度のことをするか、もしくは犬に近づけられないという方も結構と多いと思います。
犬が犬と出会う風景の例をあげます。犬にリードをつけていない時代に、犬が各自のなわばりをうろついています。普段からなわばりが明確なので、どの犬がどのように通行したのかという情報を犬は知っています。避けたい犬は避け、避ける必要のない犬は避けない。出会えば対立もある。メス犬を探していればその臭いを追跡してたどり着く。そういった単純な出会い方です。
ところが、最近では犬にお友達を作らせようという飼い主の愛情から、犬と犬を複数でいっしょに過ごさせる場所や機会が増えています。でも飼い主の準備した「会わせる」という行為が犬の負担になることもあります。
リード付きの犬は、公園などで犬と出会ってしまうと避けることができずに、犬と犬は互いに近づいていくことがよくあります。飼い主さんは犬と犬が仲良しだと思い込んでしまいます。これらの行動は、リードという道具によりなわばりが不安定になり、犬に不自然な行動を強いられていることで起きているものですが、このような不自然行動がたくさん見られます。
ドッグランや他のコミュニティでも同じです。多数の犬が同じ場所に入れられて柵があって逃げられない状況下の場合、犬たちの行動を十分に監督する必要があります。自分のテリトリーでない場所でしかも逃げる場所もない、そのような場での犬の行動が不安定であることに気づいているでしょうか。
どのような状態でも、犬の行動をよく観察してください。犬の行動はとてもシンプルで読み取りやすいのですが思い込みによる間違いは多いものです。走り回っている、飛び跳ねているのを犬が喜んでいると思って放置すると、いずれこの犬は、他の犬に対してストレス行動を示すようになるかもしれません。
犬は犬とコミュニケーションをとるときに、はじめて自分が犬である機能性を発揮するため、犬との関係作りというのは、犬の成長において大切なことです。ですがそれは「あわせる」という単純な行為でもなく、興奮させるということでもありません。
犬と犬のコミュニケーションには、犬の性格や犬同志の相性だけでなく、日常生活のストレスや飼い主との関係性が強く反映されています。動物のコミュニケーションとして自分たちに置き換えて考えると、生活のストレスや家族間の関係性や日常の行動が、他者とのそれに影響していることを理解していただけると思います。
このことに関しては、単純に説明できないないのですが、注意してすすめていただくためのポイントだけを紹介します。
まず、犬と犬は会わせるのではなく、関係を作るのだということ、そして、その関係作りには、年齢や性格や経験によって、それぞれの関係性ができますが、全てが「仲良し」にはならないのだということ。関係作りには十分な時間と環境が必要です。さらに、それぞれの犬の飼い主と飼い主の関係も反映しています。
こうした条件で、犬と犬の関係作りを支援しようと思ったら、お友達や家族間の犬と犬が最も可能性が高いということです。お友達といってもグループ行動は危険です。一対一で信頼関係を結べるようなそんな関係作りをすすめてください。
最後に飼い主さんの目的をはっきりさせてください。犬に「会わせたい」と思うのは、自分の犬に犬のお友達が欲しい、という理由からでしょうか。もしそうなら、自分の犬の社会性をまず知ってください。他の犬と並んで写真を撮りたいのであれば、犬はそれを望んでいるのかを考えてください。
少し厳しい意見ですみません。子犬のパーティや犬と会わせる会に参加した経験が、犬の社会性を後退させることもあります。飼い主自身が学び、現実をきちんと見れるようになれば、やるべきこともはっきりしてきます。犬語セミナーなどのビデオ勉強を通して、客観的に細かくシグナルを観察しながら犬と犬のことを学ぶ機会をつくっていきます。「理解すること」これが一番の気持ちです。