土井善晴先生の「一汁一菜」を読んで感じたこと
天井が回って見えたという私の状態に対してお気遣いのお言葉ありがとうございます。とても元気に過ごしていて、山とシティを行ったり来たりする活動が続いています。
それでよく尋ねられるのですが「何を食べてるんですか?」という質問。
答えは「玄米ご飯とお味噌汁、あとは梅干しとかノリがあれば…」とだんだんと声が小さくなる私だったのですが、その自信のなさを克服させてくれた本に出会いました。
読んでいるのはあの料理研究家の土井善晴先生の著書「一汁一菜でよいという提案(新潮社出版)」です。
食事は基本だからこそ、毎日飽きない自然に変化するものをいただくこと。
食事のことで考えこまない、あるもの、残り物を生かして食べること。
最後まで読み進んでいくと、季節や自然と対話しながら今日の食事を作る、それが味噌汁とごはんという形になるというのですから不思議です。
犬との関係作りも毎日の飽きない活動の積み重ねにある
これって犬との関係作りにもつながってくるのではないかと考えながらこの本を読み進みました。犬と共に毎日飽きずに続けられる、そして自然の中で対話しながら、季節によって変化するものって何。
そうです。やっぱり「犬との散歩」これにつきますね。
毎日、毎日。単純な犬との散歩。
でも、いっしょに歩きながら風を感じて、今日は暑いね、今日は寒いね。
今日はアジサイが咲いたね。緑がきれいだね。
シロツメクサが増えたね。タンポポが枯れたね。
鳥がよく鳴くね。空が青いね。雨が降りそうだね。
声に出して犬に話しかけなくても、心に感じている季節の移ろいを犬は違った感覚でとらえています。
昨日と同じ道、だけど何か少し違うね。
そんな毎日が、ずっとずっと繰り返されていくのです。
犬と関係を作っていくことがどのようなことなのかわからない飼い主が増えているように思えます。
難しいことや犬を楽しませることばかりを考えすぎてしまうと、基本の基本を忘れてしまいます。
今日はイタリア料理、明日はフランス料理、明後日は中華料理と、日本の主婦は食事に頭を悩ませすぎて大切なものから離れているというようなことを土井先生も書かれていました。
これは犬の飼い主にも同じようなことがいえます。
犬に特別なことをさせたい飼い主が増えているからです。
犬をドッグランに連れていきたい、幼稚園に通わせたい、フリスビーをやってみたい、トリックを教えたい…など。
ところがほとんどの飼い主は、地面をにおいながら歩く犬の後ろをただリードを長く伸ばしてついて歩いているだけです。
犬はマーキングをするために散歩に出ているのではないかと思えるような光景です。
自然を感じて生活の基本を作る犬との散歩はこんな光景ではありません。
人馬一体、散歩とはそのような息の合った活動で、しかも自然とのつながりを深める犬との暮らしの基本です。
犬との山歩き、犬とのトレッキングも、実は散歩の延長線上にあります。
犬との山歩きはイベントではありません。
普段、トレッキングクラスに使っている登山道は、私と犬のオポの散歩コースでした。
散歩とは本来楽しいものなのだということを思い出していただき、自然の中を自然を感じながら歩くことが本当の犬と人の散歩なのだということを、体感していただくためのクラスです。
ですから自然を感じることのできない街中では、犬との散歩は実現できません。
関係作りも難しくなってしまいます。
せめて都市空間に子供たちが豊かに育つ自然空間を取り戻したいものです。
土井先生は「味噌汁とごはんは手抜きではない。」といって下さいました。
今では堂々と「玄米ご飯と味噌汁食」を宣言します。
毎日の楽しみは「犬との散歩」そう言えるようになりますね。