余震による揺れは福岡・佐賀北部地域ではほとんどわからないくらいになりましたが
現地では引き続き余震が続いており、心細い思いをしていらっしゃることでしょう。
被災により避難生活をしている伴侶動物たちも数が増えているようで
ボランティアや支援団体の皆様の活動に感謝いたします。
自分でも何かできることはないかと、知人や連絡がとれる近い地域の方へ
もしものときにはお声かけいただけるようにとお伝えしました。
まだこれから時間のかかる取り組みになりそうなので、あせらず
ひとつでもできることがあればそれを見つけて行動していきたいと思います。
過去の震災の教訓もあり、伴侶動物は飼い主さんといっしょに同行避難してください
というのが通例になっています。
避難の後一時的にボランティア団体などに預けられることがあるかもしれません。
福岡で西方沖地震があった際、避難した犬の問題行動についての相談を受けました。
こういうとき、これができていればストレスは軽減されるのになと思うことがあります。
それが、クレートトレーニングです。
クレートという名前を聞いたことがない飼い主さんも多いと思います。
クレートというのはキャリーケースの代わりとして運搬用に使われる
犬用のプラスチックケースですが、使用の目的は運搬だけではありません。
むしろ、運搬に使うのは「運搬時にも役に立ちますよ。」という意味です。
クレートは本来、室内で飼育される全ての犬に必要な場所です。
外飼いの犬の「犬小屋」にあたるスペースです。
犬用の場所というと、犬用のベッドがあります、とかサークルがあります、と
いわれることがありますが、どちらもクレートとしての用途を足しません。
クレートは犬にとって「巣穴」=「犬だけの部屋」になります。
犬という動物を理解するにあたり、いくつか大切な概念があります。
そのひとつが「テリトリー」=「なわばり」です。
犬はテリトリーがはっきりとしていないと不安になります。
避難場所のような場所や、避難のために知人の家に連れてこられた場合にも
新しい場所に自分の「テリトリー」がないと、最初は行動できずに大人しくなります。
ですが時間がたつと、犬が曖昧な「テリトリー」をはっきりとさせるために
排尿をあちこちにするマーキングや、吠えの行動がでるようになります。
避難した動物たちも時間がたつことにこうした行動が見られるのは、
このような理由からです。
クレートは犬にとって「自分だけのテリトリー」です。
そしてそれを移動させても使うことができます。
グッドボーイハート七山校でも来校される生徒さんが室内で休憩されるときには
犬たちにはクレートが準備されています。
生徒さんが自宅からいつも使っている自分の犬用のクレートを持参します。
犬たちに安心して休憩をしてもらうという目的と
移動先で安定した行動を引き出すためのクレートトレーニングを
スクールで練習する機会としているのです。
室内飼いの犬の場合にはクレートトレーニングは比較的容易に取り組めますが
外飼いの場合には多少時間がかかります。
クレートは犬が自分では出ることができないように、入り口を閉めてしまいます。
そのためクレートを「人が管理している場所の中」に置く必要があります。
クレートを屋外において閉めることはできないのです。
犬を不安にさせてしまうだけです。
そのため外飼いの場合には慎重に進めていきます。
それでもクレートトレーニングは可能です。
これからクレートトレーニングをしようと思われている方へお願いです。
クレートトレーニングは最初が肝心なのです。
クレートをいやな場所だと印象づけると、再トレーニングは大変難しくなります。
クレートの概念や導入の方法、犬にあったクレートのサイズや質の選び方
練習のステップアップなど、ぜひ犬の専門家の指導を受けてから導入してください。
災害は起こらない方がいい、でも自然の力を抑えることができません。
だったら、災害時できるだけ安全に移動してほしい、
そして犬の同行避難のストレスが軽減され、一時預かりへの適応が早まるように。
クレートトレーニング、しっかりがんばりましょう。