先日、可愛らしいメスの犬ちゃんを2頭お預かりしました。
それぞれ別の家庭で暮らしている犬ちゃんたち。
犬種は同じだけど、年齢は多少違います。
どちらもあまり他の犬とのコミュニケーションや関係作りが上手ということでもありません。
その日は福岡でのお預かりになり、あまり慣れていない2頭は今回は対面させずにお返ししようと思いました。
むしろ、対面させない状態でお互いの庭やクレートでの過ごし方がどのくらい変わるのかを観察したいと思いました。
どちらの犬ちゃんも普段は大人しいものの飼い主さんへの自己アピールはある程度強い感じです。
家庭で抱っこされながら育った犬ちゃんは、私が一番!私が女王様!と思っています。
トレーニングでクレートで休むこともちゃんとできるのですが、ちょっとしたときにクレートの中から気配を醸し出し「あのねー。用事があるんですけど!!!!」と主張することがあります。
実際に2頭の犬ちゃんたち、単独でのお預かりでは状況によってクレートの中で小さなアピール音を出すことがありました。
しかし今回、ふたつのクレートが同じ部屋の端と端においてある状態で、お互いに全く気配を消していました。
その気配の消し方はもはや忍法としか思えないほどのすばらしさです。
泥棒が入ってきたとしても、絶対にそのクレートの中に犬がいるということに気づかないでしょう。
見事な気配を消す2頭の犬ちゃんに関心すると同時に、庭での攻防が気になりました。
お庭を交互に使って遊ばせてみました。
庭に出たときには、それぞれがまず周囲を探索して、自分がここと思う場所で排尿や排便をします。
ここと思う場所で休んだり、遊んだりすることもあります。
この可愛らしい2頭の女子犬ちゃんたちはどちらもが「わたしが女王様」だと思っているのに、庭に別の犬が排尿をしていることを知ります。
そこでお互いに排尿と排便によるマーキング合戦が始まりました。
普段よりも排泄回数が増えて、排尿の場所ややり方、排便の回数まで変わってしまいます。
犬と犬の対決といってもオス犬とメス犬では多少関わり合いが違います。
動物には相違がありますが、この性別による違いは人と似ているところもあります。
オス同士の戦いは分かりやすく正面衝突、つまり「やれんのか(猪木節)!」的にメンチをきる喧嘩だったり、もしくは目をそらして戦いを避けたりすることもあります。
ところがメス犬とメス犬の戦いの場合には、あくまでけん制攻撃的なモードで張り合います。
まずはマーキング合戦です。
排尿と排便を使ったマーキング合戦ですが、当然のことですがオス犬もすることがあります。
ただオス犬の場合にはそのことが直接対決を引き出すきっかけになることもあり、目の前に相手がいるときには慎重な犬もいて経験数も行動に影響しているようです。
さて、女子犬ちゃんのマーキング対決に戻りますが、その犬ちゃんたちの排尿や排便の様子を見ながら、見かけは可愛らしいけれどやっぱり犬だな~と当たり前のことを思いました。
排泄物で臭いをつけて自己主張をするという行為があまりにも犬でほほえましくさえ思えました。
今回は同じ場所に2頭を出すことがなかったため、けん制的な行動で終わりました。
しかし排泄物をお互いに嗅ぎあったことで、お互いの性別、年齢、経験、そして性質に関わる情報までも相手に提供したことにもなりました。
もし今度2頭が対面したときには「あのときのあんたね。」となるわけです。
飼い主さんがいれば吠えるか逃げるかして対決を避けるでしょうが、飼い主さん不在の対面ではどうなるでしょうか。
犬と犬はいつでも仲良し、うちの犬は誰でも大好き、誰とでも仲良くなれるなんてそんなうそっぽいことを思いこむことはもうやめましょう。
自分が一番だと思っている犬はたくさんいるし、実際におうちでは本当に一番の女子犬ちゃんなのです。
そんな犬ちゃんたちの対決ですら、犬と人の難しい関係性よりはずっとシンプルなものです。
次回の直接対決が今から楽しみです。