グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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“警察犬が山で逃走した事件”についての個人的な考え・犬の衝動性について

少し前のニュースになりますが「警察犬が逃走したので地域に注意を呼び掛けている」というニュースが耳に入りました。

私がラジオのニュースで聞き覚えた内容はこのようなものでした。

・警察犬が山で逃走した

・逃走した警察犬は2歳でよく訓練されている優秀な犬だ

・警察犬は行方不明者の捜索のために警察官などと共に山に入っていた

・警察犬といっても大型犬なので地域に注意を呼び掛けている

そして翌日だったと思いますが「警察犬が保護された」というニュースをまたラジオでききました。

・行方不明だった警察犬が無事に保護されました

・警察犬はリードが木に絡まった状態で捜索中の警察官に発見された

・見つかったのはいなくなった場所から100メートルくらいだった

・発見されたときに興奮していた

・警察官から魚肉ソーセージなどをもらって食べた

こんなニュースでした。

 

ニュースの内容も事実と相違があることがありますので本当にこうした経過だったかどうかは分かりませんが、そうだとしての私の意見です。

そもそも捜索活動中の警察犬が行方不明になってその警察犬を捜索するというのですから、不思議なことになったのだなと言葉もありません。

山で犬が逃走したの理由はおそらく「衝動的に走り出した」ということだけです。

他の動物の気配などで走り出した可能性は十分にありますが、野生動物は犬の衝動的な行動を引き出すもっとも強い動機です。

よく捕獲本能が芽生えて動物を追いかけるといいますが、捕獲本能というのはそれほど単純なものではありません。

むしろ、わかりやすい言葉でいえば「ビビッて走り出した」ということです。

怖いものがあったら逆の方向に逃げそうだと人は思うでしょうが、監禁されている動物になると怖いものがあるとそれに向かって走り出すという行動になります。

街中で身動きがとれなくなったイノシシが人にむかっていきなり突進してくるような感じです。

 

見つかった場所がいなくなった場所から100メートルくらい。

ということは犬の移動距離能力を考えると本当にすごく近いですので、人や犬がワイワイといる中に戻れないわけはありません。

衝動的に走り出したが一定の距離を走って自分を取り戻した、しかしそのときにはリードが木に絡まっていて身動きが取れなかった、ということでしょう。

身動きが取れなくなっって周囲に動物の気配があれば、自分も気配を消すのが一番の身を守る方法です。

ここではちゃんと気配を消していたので、見つけてもらったときには大興奮となったと思います。

吠えて人を呼べばよかったのにと思うかもしれませんが、そうしなかったのは冷静な行動でした。

 

しかし、リードを付けたまま捜索しなければいけなかったこの警察犬は、行動の安定性からするとまだ信頼性は十分ではなかったのか、それともそのリードはほんの短いものだったのかが定かではありません。

いずれにしても「衝動的に走り出した」行動をした時点で、フィールドに出る使役犬としては「まだまだ」であったと言わざるを得ません。

犬の衝動性は「ごほうびと罰」でコントロールすることができません。

犬をほめたり叱ったりする方法で訓練をしただけでは、犬の衝動性を管理することはできないのです。

そもそもその犬の衝動性を制御できるのは「犬自身」出会って他者にはそれができないのです。

ではなぜ逃走しない人と共に活動できる犬を育てることができるのか。答えはとても簡単です。

犬が「個体」よりももっと大切だと思うものを自分の中にもっている時です。

「個体」よりも大切な「群れ」という存在の一部であることを犬が知ったときにはじめて犬は自分の衝動性を抑えることができるようになります。

この抑制は「それがいい」とか「それが悪い」といった価値観をもってされるのではなく衝動的になることがないという行動の変化で訪れてくるのです。

犬と人。違いもあれば似たところもあります。

犬が山で逃走したと聞くと「動物の本能で…」などと失礼な解説をする人も出てくるのもしれませんが、人だって何か別の生物に拘束されてしまえば、何かをきっかけに衝動的に走り出すはずです。

逃走した犬は、まだ群れに所属してはおらず、人にとらわれているという感覚があったのでしょう。

それにしても見つかったことがニュースになったり、美味しそうに魚肉ソーセージを食べたことがニュースになったりする当たり、この国は良い意味では平和、少し悪口をいうなら平和ボケしているのかもしれません。

私がもし山で逃走して見つかった犬を保護したら、その犬の生涯のために絶対に魚肉ソーセージをすぐに与えたりはしません。

本当にその動物を成長させてその犬の持っている力を引き出してあげたいなら、自分の気持ちも律して犬に接すること、これが今のところの私の犬に対する姿勢です。