犬の飼い主さんのほとんどは、犬のことを我が子のようにかわいがって育てています。
犬を抱きしめたり、なでたり、おやつを与えたり、いっしょに寝たり、ほめたりすることが飼い主の思っている
「犬を可愛がる」という行為なのです。
犬を可愛いと思う気持ち、大切だと思う気持ち、我が子のように愛する気持ちは全部歓迎されるべきことです。
でも、犬を可愛がる前に飼い主がやらなければいけないことを放棄してしまうと、とたんに犬たちはストレス行動を連発するようになります。
ストレス行動の多いパターンとしては、吠える、噛みつく、興奮するの三つです。
このうち三つ目の犬が興奮する行動は、犬が喜んでいる行動だと受け取る飼い主が多いため、ますます問題を悪化させていきます。
ストレス性行動が多発しているのに、吠える、噛みつくという人に嫌悪感を起こさせる行動が犬側に出ない場合、犬は興奮することだけを上昇させていきます。
結果として、自律神経が失調したような長い興奮行動や発作、破壊行動や遠吠えなどが犬に見られるようになるころには、根本的に環境を立て直ししなければ犬の行動を改善することができません。
犬は長いストレスから解放されることが難しくなっているのです。
では犬を可愛がることはいけないことなのかというと、決してそうではありません。
ルールは三つ。
1、犬を自律する動物として尊重すること。
(犬はぬいぐるみではない)
2、犬が人を理解するまで、まずは管理ができること。
(動物との暮らしの基本)
3、犬を犬として理解し育てること。
(犬の親はあなたしかいない。先住犬に任せないこと。)
この三つのルールの意味がまず分からないという人は、すぐにドッグスクールなり動物行動学を学べる場所に行って学ばれることをおすすめします。
動物に対する理解は、日本は欧米に比較してもかなり水準が低いのです。
動物がいつも身近な存在であり、動物を飼うという行為を積極的にしてこなかった日本ならではの文化の中にはたくさんのすばらしいものがあります。
でも犬という動物を自分たちの領域(家や庭)の中に招いて管理して飼うという行為には、一定の知識が必要だということをどうしても理解していただく必要があります。
可愛がるだけでは犬は不幸になるのです。
犬は不安を抱えやすく、おびえやすく、おどおどした動物になってしまいます。
犬は本来明るく、しかし穏やかでゆっくりした動物であると私は思います。
犬が犬であることを尊重される権利があるということも、そしてそれが動物を本当に愛することだということを共感していただける方が増えています。
社会は変化しつつあるのでしょうが、右と左に大きく分かれていくように感じています。
あなたはどちらに行くのでしょうか。
わたしはやっぱり犬になって考える方向へ進みます。