野生動物は繁殖期に入ると食べ物を探す行動が活発になります。
グッドボーイハート七山でもオポのお墓周辺から駐車場の近くまで、イノシシが土を掘り返した跡がたくさんあります。
トレッキングに来られる生徒さんはびっくりされることもありますが、例年のことなので特に驚くこともありません。
オポが作っていた見えない境界線はオポがいなくなるととたんになくなってしまいました。
イノシシたちは平気で人と犬の生活空間に入ってきてしまいます。
お互いのテリトリーだと思い込んでいるところで突然接触をすると危険なことも考えられます。
となると、イノシシたちに対して警告を与えていく必要があります。
いろいろと方法はありますが、一番適切な方法は境界線上に罠をはり入ってくるイノシシを捕まえるということです。
もちろん捕まえたイノシシは食べます。
捕まえたら学習するからリリース(解放)すればいいではないかという考え方もあると思います。
それは価値観の違いではありますが、捕食の体系を維持するためには捕食者として数の増え過ぎたものは狩って食べる。
これが人間としてできることのひとつでもあります。
むしろ里山に住む人としてやらなければいけないことのひとつではないかと思っています。
最近はジビエ流行りでもあって、イノシシやシカを食べることを野蛮だとは思われなくなりました。
イノシシやシカは適切に捕って食べなければ、その数が増え過ぎて最も害を被るのはその動物たちの方なのです
。
手始めにダンナくんが敷地内にセンサーカメラを設置してイノシシの活動を監視しています。
いくつかの場所でイノシシ、アナグマが通り過ぎる姿を確認しました。
自分は夜でも昼でも実際にイノシシが歩いているのを見たり、アナグマが納屋に子供を産んで育てていたのを体験したのでビデオを見てもそれほど興奮はしません。
ですが平地で育ったダンナくんの方は、すぐそこの場を大型の野生動物が通過する姿を撮影した画面で確認してかなりテンションが上がっていました。
男女という性別の違いもあるのかもしれません。
男性には捕食者としてのDNAが強く残っているのでしょうね。
犬もオスとメスではオスの方が主に狩りの役割を担います。
もちろんメスも狩りはしますが、メスたちには子育てという大切な任務がありますから、そのためにはオスがしっかりと稼いでくるということです。
狩りを仕事にあてがえば男性がちゃんと働いてくれると女性は安定してくるという理論は動物らしいルールです。
この動物のいた気配をカメラがなくても知ってしまうのがいまみなさんのそばに寝ている「犬」という動物です。
山を歩いていると地面をクンクンと鼻を全開にして臭いを嗅ぎ分けている犬の姿を見ると、一体どんな動物がいつそこにいたのだろうと想像を膨らませます。
複数の犬がいても臭いを嗅ぎまわる場は大体同じ場所です。
犬と犬は臭い嗅ぎをとおして「なあ」「うん」とお互いに情報を共有しているのに、私だけがそれを知ることができないのが残念です。
でも私には犬の行動を分析する力があります。
犬の嗅ぎ分け方や嗅いだあとの反応や犬の体の動きを見ていると、そのにおいの主が大きな動物なのか小物なのかはある程度想像がつきます。
大きな動物の方が興奮度が高く緊張感も高まる感じが伝わってくるからです。
こうして犬から情報を得ることはトレッキング中の楽しみのひとつです。
自分たちの鼻という武器を最大限に利用して人に協力してくれる犬という動物、狩りには欠かせない友であることは言うまでもありません。
イノシシを七山で狩る自分の中でももうひとつの目的は「そうしないと動物が馬鹿になるから」なのです。
戦う相手も誰もおらずただ柵で仕切られただけで安穏と生きていく動物は、バカになってしまいます。
罠をつくれば罠にかかるのは警戒心が低く衝動性の高いバカな動物です。
罠という存在を知って考えて行動し頭脳を発達させていくことはイノシシたちの将来にとっては利益になるものです。
要するに必要以上に捕らない、バランスを考えて捕るというルールが絶対であるとは思います。
人間は捕食者の頂点なのです。
自分を知って行動を抑制できるのは自分だけしかないと思います。