いつも通りの山の散歩道。あれ?こんなところに道があったっけ?
何度も歩いた道のわきに、いつもはないきれいな一本道。
みなれた光景のはずなのにいつもないものがそこにある。
まるで「どうぞいらっしゃいまし」とのれんが開いているかのように。
今まで気づかなかっただけなのか、それとも…。
ちょっと調子が悪いなと思うときは簡単に判断しない。
大丈夫、パートナーはそばにいる。
山の友の反応はどうだろう。
やっぱり、すぐに動こうとはしていない。
動く必要のあるときはオポは率先して前進する。
迷わず前進のときには「先に」何かを確認する行動であることは、他のシグナルからも十分に伝わってくる。
今はそのときではないということか。
といってこのままこの課題を無視して去るのはもったいない。
ここはひとつチャレンジしてみようかな。
好奇心だけで行動すると危険ということは理解している。
抑制をかけながらどう行動しどう感覚を得るのか自分を試してみたい。
自分の脳のはずなのに、ときどき自分を試す脳もいるはず。ちょっと時間があるからできることなのかもね。
さてと。今いる場所に必ず戻ってくるために慎重に一歩ずつ新しい道へと足を踏み出す。
一歩踏み出すたびに後ろを振り返って、元いた場所があることを視覚で確認していく。
あわてて足を踏み出すと振り返ったときにはもうその場はないからね。
オポは私が進んだところよりあまり前に進もうとはしない。
行きたくないでもないし、行こうでもない。
どうやらこの友は私に付き合ってくれている様子。
ならば遠慮なく挑戦あるのみ。もう一歩。もう一歩。
道の先には「わかりやすい目印」のように木が見えている。
あの木まで行けるかな。
もう一歩。そしてまた振り返る。
そろそろ限界かな。到達することを目標にすると今やっていることを忘れてしまう。
よしここまででOK。今来た道を戻って元いた場所に帰る。
ここで起こること。
山で迷子になったことがあるなら知っているだろう
本当に不思議なことが起こる。
今いた場所に確かに戻った。確かにこの地点から歩きだしたはずだけど。
ところが戻ったその地点は最初にいた場ではなくなっている。
右から来たのか前から来たのか、いや左から来たのか。
山の中ではこういう視覚的トリックにたまに陥ることがある。
山の友は迷っている感じではない。
「オポ…どっちだっけ」の問いかけには無反応。
そうだね、君は私のガイドではないしこれは私の課題だった。
再び協力に感謝。
グランディングして右を見て左を見て、そうそうこっちが家に帰る方向だね。
歩きだしてからもしばらくはいつもの道に戻らない。
正しくはいつもこの道を歩いている感覚に戻らない。
まやかしは山からやってきたのか。
まやかしは自分の中にいたものなのか。
山に入るときに「今日の調子」を知るようになったのもちょっとした成長なのかもしれないな。
だといいけどね。
あれ、今度はオポが異変をキャッチしたみたい。
あー。ごめんごめん。
キャッチした異変は写真を撮っている私のことか。
ほんに失礼しました。
私が山の友になれるのはいつの日かな。
成長に年齢は関係なし!
飼い主の成長を見守ってね、オポ。