来た来た。ついに来た。
待ちに待っていた人たちがやって来た。
それは、あるクラスの最中だった。
ウィーン、ウィーン・・・
ここでは聞きなれた機械の音がどこかから聞こえてくる。
「もしかしてあの音は。ついにわんこ山に来たのかもしれない。」と立ちあがる私に
「こっちから聞こえますよ。」と反対の山を指す生徒さん。
いや、3年もこの家にいるのだから音源はあきらかだ。
家の北側に回って窓で耳を澄ますと、やっぱり聞こえる。
その音はわんこ山のお手入れをする草刈機の音だった。
雑木林に変身を遂げるために3年前に植えた雑木たち。
大きくなって草や蔓を伸ばさないようにするまでは定期的な山のお手入れが必要になる。
自分では到底できっこないので山の専門家の手を借りることになる。
この日「オポ、明日は山にいこうね。」と約束をした。
そして次の日。ドキドキしながら山へと足を踏み入れた。
テラスに踏みとどまっていたオポも私を追って走ってきた。
大藪で何度も行く手を阻まれていた道へオポは少し躊躇しながら進んでいった。
ほらね、すごく風が通るでしょ。
柿の木までくると早速落ちている実を探し始めるオポ。
そして、思わぬことが起こっていることに気づいた。
柿の実がほとんど落ちてしまっていた。
落ちている実はもう熟してしまい
すでに土に還ってしまったものもあった。
木をみると残っているのは1個だけだ。
風で落ちたにしてはきれいに落ちすぎている。
この数週間の間に柿の実は熟してしまったのか。
数個の黒くなった実を口にしたオポは何を知っているのだろう。
でも、8本の柿の木はそれぞれの成長を経てどれも健在だった。
小さいのも大きいのもあるけどちゃんと根を伸ばしている。
実はまだ生りそうにないけどきっといつかその姿を現してくれる。
隣をみると秋の王者がしっかりとその実をつけていた。
数十年を経てこの立派な姿だからね。
いろんなお知らせを受け取りながら山の入口へ進むオポ。
やっぱり山にいる犬はいいな。
家の中にみるのとは全然ちがう。
何が違うって全てが違う。
細胞のひとつひとつが喜びにあふれ
そして彼の中の全てが調和していく。
道に座って全てを感じているオポ。
木を育てているこの山は少しずつ
オポにとって過ごしやすく変化していく。
この日は癒しの場には到着できなかったけど
そう遠くない日にあの土の上にオポと座る日が来る気がした。
たいしたことないことかもしれないけど大切なこと。
犬といるとそんなことも思い出していく。