外は小雪が舞い始めた。
寒波到来のニュースにドキドキしながら気温が下がるのを肌身で感じる。
こんな冬のある日の出来事。
路面が真っ白の日に、どうしても下に降りなければいけない要件があった。
チェーンとスコップを車に乗せて滑る路面を確認しながら山を下る道で道路脇の大雪の中に前輪を乗り上げた軽自動車と遭遇した。
道の脇のガードレールはちょうどその切れ目にあたっていて車がバランスを崩せば危険な状態である。
土地の人でもスリップすることあるんだな、と車を降りた瞬間に足をすべらせた。
結構凍ってるんだ。
「大丈夫ですか?スコップありますけど使われますか?」と声をかけてみる。
「おお!いつもつんどうとやけど…」とスコップを受け取られた。
私の脳は「チェーン装着」と判断。
「チェーンつけてますので使っていて下さい。」の言葉に
「あ?チェーンやらいらんよ。この先は雪はなか。おいは遊びおったと。」
・・・遊んでた?この凍結した路面の上で?
その方はこの会話の間に数回スコップで雪をかくとアクセルを思いっきりふかして180度スピンして車の方向を反対に向けそして行ってしまった。
それはまるで、山道で遊ぶたぬきを見つけて車の中から見ていたら、こちらの姿に気づいてあわてて逃げて行ったのを見たときと同じ感覚だった。
なんという余裕。
何時にどこまでいかなければいけないということもなく、今ここにあるもので十分に楽しむことができる。私なら「失敗」ととらえそうなことも「遊び」に変わる。
余裕というのはあるところにしかない。
そのスペースを空けるのは自分しかない。
このあと、何時にある場所へ行かなければならなかった私は車を走らせた。
少しだけ余裕のある自分を取り戻して。