このブログではトレーニングの手法ややり方についての説明はできるだけ避けるようにしています。家庭訪問レッスンを行っている理由は、言葉では伝えられない部分を身振り手振りでお伝えすることが目的だからです。
ですが短いレッスンの間に確認できなかった補足の資料としても当ブログを活用していただくというのも目的のひとつでもあります。
犬のしつけ方やトレーニングは、犬の行動学や習性にのっとっていなければ成功することがありません。
ドッグトレーニングをうまく進めていくためには、犬の習性を良く学ぶ必要があり、言い換えれば犬という動物について知れば知るほど“犬のしつけ”の仕組みは理解できるということです。
犬の居場所を指定するトレーニング
二つの居場所「ハウス」「ベッド」
グッドボーイハートでは、犬の居場所を指定するトレーニングを大変重要視しています。
トレーニングの柱といっても過言ではないというほど、次々に居場所の指定トレーニングが連なっています。
その「居場所を指定するトレーニング」の中で、初期に始まる合図は「ハウス」そして「ベッド」です。
上記の写真はクレートの中で休憩する犬ちゃんです。
ハウスとは、犬の室内用の巣穴になる居場所です。
屋外飼育の犬の仕様する犬小屋に相当する場所です。
ハウスの利用は、寝場所、留守番場所、避難場所…といろいろとありますが、室内飼育の場合にはどんな犬にもハウストレーニングが必要です。
ベッドの方は犬のソファにあたる場所です。
室内にはみなさんにもいろいろな休憩場所があると思います。
ソファ、椅子、座椅子などと同じように、犬にも自分の椅子やソファの代わりになる居場所が必要です。
「ベッド」や「プレイス」というような合図で指定される場所は犬にとってのソファだと思って下さい。
もちろん「犬専用のベッド」は人が利用することはできません。
ここは犬の専用席なので、犬が犬のベッドにいるときは人は自分の椅子やソファを使って下さい。
居場所を指定するために号令(合図)使う
号令や合図と呼ばれるものは、オスワリ、フセ、マテなどと同じことです。
号令やコマンドという言い方だと常に強い口調で言わなければいけないのかという誤解を生みかねないので、わたしは「合図」という言い方にしています。
犬のコミュニケーションはシグナルで成り立っており、においや音や形などで区別されています。
においのシグナルを発することのできない人間にとって、犬とのツールは音か形です。
そのため合図もほとんどが音とハンドシグナルの二つを併用します。
例えば、クレートを指定する合図は人によっては、ハウス、クレート、おうちなど様々ですが、いつも同じ合図であれば何でも構いません。
音の合図はできるだけ短く犬が聞き取りやすいものであれば構いません。
居場所を指定するハンドシグナルは、その居場所の方を指差しする行動になります。
ハウスならクレートを指さしする。
ベッドなら犬用ベッドを指さしする。
指さし行動については過去のブログ記事でもご紹介しましたが、人の指さしを理解できるようになるのは動物としては高度なコミュニケーション力なのですが、犬はある程度それを理解することができるようになるというのがすごい能力なのです。
<犬のしつけ方>人の指差しを理解する犬に観る理解力
もちろん、子犬のころから指さしを理解しているわけではありません。
人との生活の中で人が指すものを理解できるようになるのですから、犬にわかりやすいように手順を踏んで伝えていく必要があります。
そのためには、手指しを始めるまえに「指定する居場所に触る」という行動から伝えていきます。
居場所を指定するトレーニングは「誘導」と「誘発」で構成される。
「誘導」とか「誘発」というのは行動を起こさせるトレーニングの道具のようなものです。
ハウストレーニングを例にあげましょう。
ハウストレーニングでいう「誘導」とは、犬をハウス(クレート)に連れていくということです。といっても抱き上げて連れていくのではありません。
犬が地面を歩きハウスに入っていく行動を「誘導」するわけです。
犬の脇を抱えるようにゆっくりとハウスまで歩かせること。
犬の首輪にリードをつけてハウスまで歩かせること。
犬の首輪をもってハウスまで歩かせること。
この3つはハウスへの誘導です。
この誘導トレーニングだけでも、ある程度の犬たちはハウスというとハウスに入るようになります。
特に状況別で覚えていきますのでいつもごはんをハウスで与えてれば「ごはんのときにはハウス!で入ります。」となります。
となれば、ハウスの合図は覚えているはずなのに、自分の都合の良いときだけ行動するがその他のハウスの合図は無視されてしまうという場合もあります。
(一定数の犬は誘導だけでハウスの合図を理解し入るようになります。)
ハウスの合図をもっと強化するためには、ハウスの行動を誘発する=事を起こさせるためのきっかけづくりが必要です。
ハウスの行動を誘発するきっかけづくりは、ハウスをとんとんとたたく行動がおすすめです。
本来なら犬のテリトリーに触るという行為が犬の注目を引きやすいのですが、犬がより気づきやすくするようにするために、ハウスをトントンと音を出してたたきます。
指定した場所をたたく誘発行動は、ベッドの場合にも同じです。
小さな子供を自分のところに呼び込むために、座ってパンパンと手をたたきながら「おいで~」と叫んだことはないでしょうか。
これもひとつの誘発行動で音と動く手の刺激によって子供が何だろうと不思議がって近づいてくる行動を引き出す道具になっています。
犬にもこのような姿でオイデをしている飼い主さんを見ることがあります。
オイデの場合の居場所の指定は飼い主の足元なので、オイデの場合には自分の足をたたく行動がおすすめです。(オイデの練習はハウスはベッドができてからです。)
クレートに近づきハウスといってハウスをポンポンとたたき、すぐにハウスに入るようになればハウスの合図はほとんど完成したようなものです。
ここから上級になり、少しずつハウスから離れてハウスを指す合図に変化させていき、手指しの合図と声の合図の「ハウス」→「犬がハウスに入る」が完成します。
ここまで読まれて、いやいやそんなに簡単にハウスに入るようにならないよという方。
もしくは、子犬のころには応じていた合図に、成犬になったら従わなくなったという場合もあります。
ここには飼い主と犬の対立関係が生じています。
対立関係はできるだけ早く収束させる必要がありますが、子犬は飼い主と主従関係を結ぶようになるのに青年期になるまでい時間のかかるものです。
個体差はありますが、生後6ケ月~1歳半までが犬の青年期。
子犬からおとなの犬となり、飼い主と良い関係を築き上げていく一番楽しくかつ大変な時期です。
犬の成長は簡単には終わりません。
だからこそ長い長い伸びしろがあって、どんどん成長する犬が楽しくて仕方ないはずです。
自分たちだってそんなにすくすくと成長したとは思いません。
犬は人を理解するまでにかなり時間を必要としています。
気長く根気強く、愛情より愛をもって犬育てを楽しんで下さい。