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Monthly Archives: 2月 2022

飼い主になついているのに飼い主に噛みつく犬は「境界線」を教えられていない。<後編>

このテーマの前編では、飼い主にかみつくようになった犬がどのような状態であるのかを人の社会生活と比較して説明しました。

飼い主にかみつくようになり社会行動に不安定さがではじめた犬の行動のパターンは以下のような行動です。

・飼い主にまとわりつく

・飼い主に鼻慣らしをする

・飼い主が離れると不安を表現する声や飛び上がりをする

・飼い主の手をなめる

・飼い主にとびつく

・他人にとびつく

・来客に吠える、とびつく、失禁する

・他の犬におびえる

・他の犬に吠える

・散歩のときにリードをひっぱる

・散歩のときにマーキングをする、もしくは排泄を道でする、排泄できない

・室内でマーキングをする(トイレの回数が多い)

・ごはんの時に唸る

・ごはんのときにかみつく

このような行動が数点でも見られたら、犬はストレス状態が上昇していると判断しましょう。

こうした犬は飼い主との関係が築くことができていません。

関係を築けていないというのは、言い換えるなら犬は飼い主との境界線が築けていないということです。

飼い主と犬の境界線とは何か?

「境界線」と聞いて思いつくのは何でしょうか?

人と人の関係でも「一線を引く」という関係があります。

一線を引くとは、自分の領域を明らかにし他者を自分の領域の中に立ち入らせない行為のことです。

境界線を引くとは、自分の領域を明らかにする行為のことです。

家と家の間に境界線があるように、人と人の間にも境界線は必要です。

家族でも、親と子供の間にも夫と妻の間にも兄弟の間にも境界線は必要なのです。

飼い主と飼い犬の間にも境界線は必要です。

そして、この境界線を作ることができない犬は「飼い主にかみつく犬」になります。

もしくは「他人や他の犬におびえる犬」になることもあります。

犬は飼い主との境界線をどうやって知るのか?

子犬のころは噛みつきがなかった犬、なぜ飼い主にかみつくようになったのでしょうか?

飼い主との境界線を知らずに育った犬、子犬は自ら自分の領域を作り上げることができません。

実は子犬に境界線を教えるのは飼い主の役目です。

ほとんどの噛みつくようになった飼い主に甘える犬は、飼い主にかわいがってもらい大切に育てられています。

ところが、その飼い主の愛情だけでは犬に境界線を教えることはできません。

子犬は自分の領域をもつ「おとなの動物」から境界線を学ぶことで自分の領域を作るようになります。

子犬が飼い主に対してとびつきや甘噛みなどの甘え行動を見せる最初の数ケ月から親犬は子犬に対して「境界線」を教える行動をとります。

子犬のとびつきを抑制する、子犬の甘嚙みを適切に防御し時には威嚇行動をとることもあります。

子犬の甘え鳴きや鼻を鳴らす声には無反応になり、子犬の衝動的な行動には襟元を掴んで運ぶ行動で落ち着かせていきます。

親犬が子犬に対して自らの領域と役割をはっきりと提示(示して見せる)することで、子犬はその群れの中で自分の領域をつく上げていくようになります。

子犬同志もお互いに体を寄せあったり、ジャンプで横跳びしたり、牙を見せ合ったりして、自分の領域を守る遊びをします。

そもそもこうした子犬同志のワンプロと呼ばれる遊びも、一番接触のある飼い主との境界線がはっきりとしない状態で子犬同志を放置すると、お互いの領域を奪う行動を繰り返すようになり、境界線を持てない犬になってしまうのです。

成犬になっても境界線を持てず飼い主にかみつく犬に対してできることとは

ひどい噛みつきが出てしまい飼い主との信頼関係が築けず、自らの領域設定もできていないかみつくようになってしまった犬に対してできることを考えます。

まずは、生活上で境界線を越える行動について「受け取らない」ことから始まります。

犬の行動学を十分に理解できていなければ、受け取る必要のない行動についてまず学んでから実践に取り組んで下さい。

飼い主が犬に対して「境界線」を教えることは難しいことではありませんが、境界線を持たぬまま成長した犬にとっては、時間のかかる作業でもあります。

また安定したどこかのグループに入ることもおすすめします。

規律の高い集団行動は、社会的な動物を落ち着かせます。

今の日本のように食べるものがあり住む場所がある生活の中では集団を必要としません。

しかし精神的に追い込まれたり、生きることに不安を抱えるようになるといろいろな集団が力を持つようになります。

人に飼われている犬たちは家畜化はしたものの生きるために集団を必要とする本能的な部分は強く残っています。

家族と犬という集団、知人たちと行動する集団、一定のルールを持った集団内での活動は犬を落ち着かせる効果があります。

飼い主側が境界線を引いたら犬が境界を持てるようになるまで辛抱強く待つことも大切です。

境界線を伝える環境として囲われた室内空間には限界があることも理解してあげましょう。

人間のパーソナルスペースの構築も屋外環境で作られるという論文を以前ブログでもご紹介しました。

限られた空間で作られる境界線は非常に物理的なものであり、動物が精神的にもつ境界線とは少し違いがあります。

もちろん、クレートやベッドなどの物理的な境界線を維持できるのも大切なことです。

最後に犬にいろいろとやってみる前に、まずは「人と犬の境界線って何?」をもう一度考えてみてください。

分からなければ、人と人の境界線って何?親と子供の境界線って何?と考えてみてください。


 

 

 

Posted in 犬のこと