ゴールデンウィークに突入しました。普段はなかなか時間の融通がきかないところに、たくさんの自由な時間ができたら、テンションが少し高くなってしまうものです。ゴールデンウィークに犬を連れてあちこちへ出かけようと計画をしている方も多いのではないでしょうか。
●犬とお出かけ先を選ぶときに注意してほしいこと
まず、心がけておきたいことは「犬は人とは違う動物である」ということを忘れないようにすることです。室内で犬と暮らし犬といっしょにお出かけを計画しようとする飼い主にとっては犬は家族の一員です。犬を大切にする気持ちが行き過ぎると、犬を人と同じように考える擬人化が行き過ぎてしまうことがあります。人目線でゴールデンウィークを楽しめむような計画を立ててしまうと、せっかくのお出かけなのに犬に負担をかけてしまうこともあるのです。
犬の習性として抑えておきたいことはこんなことです。
・移動には一定の負担がかかる
・人や犬がごみごみしているところ(小さな面積にたくさんの人と犬)は落ち着かない
・臭いの臭いところは苦手
・ある場所で落ち着くためにはできるだけ長い時間同じ場所に過ごすこと(半日以上)
具体的にはどういうところを避ければいいのかというと、ゴールデンウィークに開催されるイベントのような人がたくさん集まるところです。人ごみや犬まみれでは、犬はかなり神経を使います。出かける先にはできるだけ人が少ない穴場の場所を探してあげてください。
臭いが臭いところというのは、同じように人や犬が混雑しているところです。ストレスが過剰になった犬は臭いのする排泄物を出すので、敷地はすぐに臭くなってしまいます。
いくつもの観光名所を渡り歩くようにドライブするのが好きな人もいますが、犬は観光名所を楽しみませんし、車に乗ったり下りたりすることは犬にとってはただ移動し続けているだけになります。
移動するだけのドライブ式過ごし方を止めて、一定の場所まで行ってそこで長い時間をゆっくりと過ごすプランを考えてください。その場所が空気がきれいで人も犬も少なく、のんびりゆっくりとできる場所であれば心地よい時間が過ごせるでしょう。
●犬と出かけた先で気をつけてあげたいこと
人を含むすべての動物は移動にストレスを感じます。「わたしは移動するの好き!」という方もいるでしょう。それは移動が一定のストレスになる反面、ストレスを感じることが快感となることがあるからです。動物は自分が移動できる速度以上のものに乗せられると、体が移動の速度に対して対応しようとがんばります。それでも、高速道路などのあまりにも早い速度になるとストレスがかかって寝てしまいます。起きて騒いでいるよりは寝てくれた方がいいですね。
移動中は周囲の刺激を受けにくいように配慮をしてあげましょう。クレートを車に乗せていき、一定時間はクレートの中にいれてあげたりすると、クレートの中で寝てしまうこともあります。
この季節になると車の温度は急激に上がります。犬を車に乗せたままにして車から離れることは危険です。どうしても離れる必要がときは必ず屋根のある日陰を見つけてほんの短時間にすることです。
車のエンジンをかけたままにされている方もいますが、犬を乗せたままの車の盗難事故は実際に起きています。どうしても自分がトイレなどに行きたいと思ったときはモールなどの立体駐車場に止めてください。それができるのもほんの短時間だけです。
一定の場所で過ごす性質をもつ犬のために、ゆっくり過ごせる場所を探してください。それは公的な施設でなくてもいいのです。田舎のおばあちゃんちや、郊外に住む友人宅の方が犬はゆっくりと過ごせます。
人が楽しめるものと、犬が楽しめるものは、少しずれていることがあります。人はいろんなものを見ることで楽しみますが犬は違います。人はいろんなものを食べることで楽しみますが、犬はいつも同じものを食べています。人は温泉旅行が好きであっても、温泉好きな犬はほんのわずかです。
種の異なる人と犬、一番違うのは時間の流れる速度かもしれません。
●犬はゆっくりと心地よく過ごしたメッセージを体で表現してくれる
帰宅すると犬は疲れてすぐにベッドに横になったりクレートに入って寝てしまうかもしれません。犬が本当に満足して心地よい時間を過ごせたときには、犬の毛がとても柔らかくなりキラキラと輝いたようになっているのですぐにわかります。
逆に、犬の毛が少し硬くなったりバリバリしていたり波打っているように見えるときには、少し忙しかった時間を過ごしたのかもしれません。だとしても犬に謝る必要はありません。もしそうした変化に気づいたら、つぎは少し行き先や過ごし方を変えてみようと思えばいいのです。
犬はどんなときにも飼い主に付き合ってくれる忠実な動物です。犬が落ち着かないとか興奮してしまう場合でも、飼い主のそばにい続けて、犬だけ先にどこかに行ったり帰ったりすることはあまりありません。たまに、そうした犬がいると「わかりやすくていいな。」と思ってしまいます。付き合いのいい犬については、飼い主中心に考えてしまって「犬はわたしのことが好きなの」と思いこみやすいものです。でも動物として客観的に見れば、人に依存して生きていることが飼い主を追う行動を強めさせているとも言えます。
かといって、犬に「どこに行きたいの」と尋ねても犬の方からは簡単に教えることもできません。だからこそ犬をどこに連れて行き、どうやっていっしょに過ごすのかということを、犬の立場に立って考える必要があります。それこそが犬に寄り添って共に生きていきたいという気持ちを犬に伝える方法でもあるのです。
犬は飼い主と共にいることを楽しんでくれるでしょう。
でも、無理をし過ぎると犬はすぐにそのことを行動や体の変化を通して教えてくれます。
犬は人よりもずっと早く年をとってしまう年齢であることを忘れないでいることと同時に、たくさんの思い出作りに走り回り過ぎると犬の時間のペースは乱れてしまうことも忘れないでいてください。
あなたと犬が、なかなか時間が過ぎていかないような安らかなひとときをこのゴールデンウィークで体験されることを願っています。