生徒さんの犬語自己解説を聞いていると、「ん?」となる瞬間があります。
先日もこんな「ん?」がありました。
生徒さん「よく会う家族の犬が来ると鼻をペロッてなめるんです。だからちゃんと服従しているんですよ。」といわれるのです。
私「なぜ、服従しているって思うんですか?」
生徒さん「えっ?だって、なめるのって服従ですよね?えっ?違う?」
私「服従する行動の中に確かに“なめる”という行動はあるけど、だからといって“なめる”行動がすべて服従する行動というわけではないですよ。それだったら尾をふっているのが全部喜んでいるのだと思ってしまうのと同じ誤解になってしまうでしょう。」
生徒さん「そうですよね。意地悪するときだって“なめる”ようなことしますよね。」
私「そうそう。そいういうことです。」
なめる行動=服従行動ではないことをなんとか納得してもらいました。
そうすると「ではなぜ、なめているのか?」という疑問がひとつ増えてしまいます。
生徒さん「じゃあ…なぜなめているんですか?」となります。
私「なぜだと思いますか?その2頭はどんな関係だと思いますか?」
生徒さん「ストレス?実は仲が悪い?えー、わかんないです。」
こうなった場合には、2頭の犬と犬の間で起きていることですから、この2頭の間に起きている様々なシチュエーションの行動を再検証して、その関係性を考えなおしてみるといいのです。付き合いの長い犬なら、過去のデータからいくつもの行動チェックができます。これをピンチを思うと辛いけど、チャンスと思えば希望の光が見えてきます。
犬のコミュニケーション、つまり犬語はある程度体系化しています。コミュニケーションですから、ある犬が出すシグナルに、相手の犬が応じるシグナルという風に、刺激があれば反応し、そしてその反応に次の刺激が出る、という風にシンプルなものなのです。
だから本当はわかりやすいものなんですよ、といいたいところですが、最近では犬も犬語が下手になってきています。犬語をきちんと話すことができなくなってきているようです。「うちの犬は犬といっしょに育ったから大丈夫。」ですか?子犬だけが複数で育つと、コミュニケーションが荒くなってしまうこともあります。興奮した行動を止める大人がいないからです。先住犬が子犬を受け入れられないケースもあります。意地悪なのではなくて、「自分にはお世話は無理だよ。」という姿勢を示しているだけなのですが、子犬にとってはきついものですね。
コミュニケーションは「発達」して身に付くという過程を経ていきます。種同士のコミュニケーションは身に付けるべき年齢があり、その後に発達していくのです。コミュニケーションの発達は反復練習ではなく、犬の成長と共に変わっていくコトバの変化のことをさします。私たちの言語の身に付け方と同じように、少しずつ洗練されていくもの、それがコミュニケーションです。
その発達と成長のためのベストの環境が、犬にはなかなか準備できません。そのため、最近の犬たちの言葉は「読み取りにくい」ことがあります。つまり、話題になった「なめる行動」も複雑になっていることがあります。いくつかの「こういうときになめる行動をする。」中に当てはまらないこともあります。
だから、ひとつずつ丁寧に犬の行動を見て、感じて、知ってあげましょう。読み取りにくいというだけで、わけのわからないことを言っているわけではありません。細かく読んでいくと、どの犬もきちんと何かを伝えたがっていることを感じます。
そして、ここが恐ろしくまたすばらしいところなのですが、犬の言葉を感じて知って共感していることをどうやらわかっているらしいのです。この部分については、身近な犬の反応しか例に出すことができず、「それって先生の思い込みやろ。」といわれるかもしれません。それでも、私はこの思い込みを少しだけ維持しようと思っています。「それ私も知りたい!」という方、大歓迎です。