学生時代にテニス部に入部してからというもの華やかなサービスエースやスマッシュや見事なロブにあこがれていたのに、部活のほとんどの時間はランニングと素振りでした。
素振りはテニスの基礎の基礎。
素振りだけで終わり玉を一度も打つことがなかった日もありました。
華やかなプレーをやってみたいけれどその前には基礎作りというのがあり、犬のしつけ方にもその基礎があります。
ところが習い事と同じように何か目立つようなことから取り組んでしまう失敗が犬のしつけ方の中でもありがちです。
「犬に何か教えていることがありますか?」といいう飼い主に対する質問に対して案外多い答えが次の答えです。
「オスワリ、あとオテを教えました。」
と誇らしげに飼い主が言います。
なぜかゴハンを与えるときにオスワリというのはものすごくメジャーな犬に対するかけことばのようでほとんどの犬がオスワリをしてゴハンをもらっています。
次の「オテ」ですが、これは実際には犬のしつけ方という分野とは無関係です。
「オテ」は犬のしつけというよりも“犬の芸”の方です。
芸とは犬が普通に人に対してあまりしないことを、合図を使ってさせるというものです。
それが「オテ」です。
他者に手をかけるこの「オテ」行動は、犬と犬のコミュニケーションなら友愛とは別の意味を示す、つまり強い主張行動になります。
大人しい犬なら人にしそうにない行動ですが、オヤツひとつですぐにできるようになります。
でもどんなに「オテ」ができる犬でも一番難しい合図はすぐにはできません。
一番難しい合図、犬のしつけの大技といえば「オイデ」です。
室内でオヤツひとつあれば教えられる「オイデ」も、もし屋外でリードが外れてしまったら、犬が走り出したらあなたの犬は「オイデ」に反応して戻ってくるでしょうか。
これもありがちなしつけの失敗ですが、まだ十分にコミュニケーションがとれていな犬のリードを屋外で外してオイデの練習をさせてはいないでしょうか。
あなた犬が生後数ヶ月ならきっと飼い主のオイデに単純に反応します。
しかしその犬は生後8ケ月になるとオイデといっても戻って来ない犬になります。
幼くて飼い主から離れられなかった子犬は、成長と共に飼い主から離れていくようになる。
オイデが出来ていたのではなく、離れることができなかっただけなのです。
犬に「オイデ」というしつけの大技を教える前に、もっと大切な基本を教えておく必要があります。
犬のしつけの基礎の基礎。それは「マテ」です。
いついかなるときでも、ある程度の時間のマテができるようになること。
これが犬のしつけ方の基本の基本です。
ゴハンやオヤツのお預けのマテができる犬も飼い主が離れて戻るまでのマテはなかなかできません。
このマテ(待機)こそ犬が犬として一番やらなければいけない行動です。
ひとりでもできる役割で忍耐も必要です。
マテは犬がじっとしている行動なので動きがなく動画映えもインスタ映えもしません。
それでもマテができる犬は本当に強いのです。
マテがどのくらい(距離や時間だけではなく状況別に)できるでしょうか?
インターホンが鳴っても「ベッドでマテ」ができるでしょうか?
オヤツがなくてもできるでしょうか?
犬のしつけの基礎の基礎からもう一度見直してみましょう。