猫田さんとオポのやり取りの最中、山ではテントが無事に張り終えたらしい。
テントを張ると犬は「今日はココがテリトリーになるんだね。」ということが分かるみたい。
ドキドキする犬もいるだろうし、ワクワクする犬もいるだろう。
家の近くではテラスにクレートなどを置きいつでも犬がそこへ戻ることを選択できるようにしている。
とくに家の周辺はオポがしっかりとガードマーキングをしているので、オポとの関係がうまくつくれないと多少の緊張も伴うもの。
ちょっとの時間だけど関係を作る練習。
関係をつくることの苦手な犬が多い。
原因を探してもきりがない。
原因を探す時は「できない理由」にならないように注意したい。
ケンカをしない、一緒にいても平気、走り回って遊ぶことを、つながりができていると勘違いしないようにしたい。
犬と犬が関係をつくる中で、人と犬が関係をつくる中で
その間を流れているものは目に見ることはできないが実はみることができる。
みえる動物にはそれがみえる。
犬たちはみんなみえている。
でもどうやって創っていくのかを知らないことが多い。
それは自分がだれかとそうした関係になることを重ねて実際に体験しながら知ることだからだ。
だから、いつでもそれを創っていくことができる。
それを知ると動物は強い。
ケンカが強いとか動じないとかそんな強さじゃなくてつながりを知った強い動物になる。
関係ができていないうちはテントの中でもお互いに少しぎこちない。
物音がするたびに吠えたりビクビクしてしまう犬もいる。
自分には関係ないと丸くなって寝てしまう犬もいる。
でも、変化の可能性はある。
人の方がそれを取り戻していけばいい。そうすれば犬ははやい。
私にはみえる。動物と人の間にながれているもの。
そんなテントの翌朝、テントに泊まった飼い主さんが青いビニールを手に苦笑しながら山から下りてきた。
見るとそれは小型犬用のレインコートでテントへ向かう道の途中に落ちていたということだった。
この日の午前中にとなりの家の屋根を猫田さん親子が歩いているのをみんなでみた。
2番手のお嬢さんの方が青いフード付きのコートをきてなんだか不器用に歩いているのがみえた。
「都会のおみやげでもらったんだろうね。」
「なんか歩きにくそうだね。熱くないのかな?」
などとわたしたちも疑問だらけだったけど
当の猫田さんはもっと疑問だらけだったことだろう。
落ちていた青いレインコートは間違いなくその朝猫田さんが身につけていたものだった。
みんなでいろんなことを想像した。
どうやってこのレインコートを脱いだんだろう?
テントの会に参加しようとしたのだろうか?
家から離れすぎているのに保護者の同伴なしにひとりでいったのかな?
こうしてテントの会は終了した。
青いレインコートは持ち主の明らかなシンデレラの靴となった。
落し物なのか、忘れ物なのか。
忘れ物をする人はそこに思いを残すという。
思いがあるとものをおいていく。
ここでは「マーキング」と呼んでいる。
これは猫田さんのマーキングかもしれない。
いらないものを置いていくのは落し物という。
それは必要のないものでどこかでお別れする必要あるもの。
偶然ではなく必然的に落としてしまう。
コートを着て歩く姿を思い出すと、このコートは落し物のようにも思える。
何も起こらないように思える日々の生活の中で、実に愉快で楽しいことがいっぱい起きている。
そんなことを来校された生徒さんに話した。
「都会では自分がアクションを起こさないと何もおきない」らしい。
確かにそうかもしれない。
動物が尋ねてきたり、蜂が顔の周りをブンブン飛んでいたりすることはなかなかないことかもしれない。
さて、この日猫田さんのお相手は私が担当するということをオポと確認した。