週末に犬語セミナーを開催しました。
犬語セミナーは犬の動画をみながら犬のコミュニケーションについて学ぶクラスです。
犬語セミナーと聞くと「犬と話ができるようになるのか」といわれることがあります。
これは全く勘違いということでもありません。
コミュニケーションとは確かに対話です。
人側に伝えたいことがありそれを伝えようとする。
オスワリといったら犬が座るのもひとつのコミュニケーションです。
ですがコミュニケーションの本質というのは、まず相手の言う事を聞くにあると思うのです。
こちらの話を聞かないのに言いたいことばかりを伝えようとする。
犬と人も同じようになっているように思えます。
人は犬にこちらの都合を伝えようとする。
犬に食べ物の存在を知らせれば、犬は脇をすかされたように人の要求する行動をします。
ところが、本当に犬が伝えたいことは人に伝わりません。
人が犬のコミュニケーションを読み取る能力が不足していることと、その重要さを忘れてしまうことがあるからです。
犬が人に対するコミュニケーションをとるときと、犬が犬に対してコミュニケーションをしているときの違いをみると、その受け取り力の違いと犬と人の関係性の複雑さを感じます。
犬は人に対して過剰な表現をしたり、全く表現をしなくなったりしはじめています。
たとえば、人にはキュンキュンを鼻をならして後ろをつきまとい、すぐにとびついてきて、口や手をなめようとする行動をする犬が、他の犬に対しては逆毛を立てて吠え、うなり声をあげているとします。
多くの人はこの犬について「人が好きで犬のことが嫌い。自分のことを人だと思っているから。」と安易に評価してしまいます。評価というのは自分が用いている行動学分析での表現のことばのひとつです。評価は現在のその犬の内面の状態、その犬の本来の性質や行動のパターン、必要性について考える作業として行っています。
例にあげた犬の評価が「人が好きで犬が嫌い」という評価だとして、犬の理解と必要性につながったのか疑問を感じます。
上記の行動をビデオでみれば、もっとたくさんの行動を観察して拾い上げることができます。鼻をならす、人の後ろをついて回る、とびつきという行動だけでも十分な情報ですが、この行動の意味を「人が好き」と分析することは本来はできません。
なぜなら「好き嫌い」は感情レベルのことであり、その部分は人が立ち入ることができない遠いところにあるからです。そしてこの二つの感情レベルの話は、犬を理解する過程において見る目を曇らせてしまうものです。
犬の行動をコミュニケーションとして読み解くためには、まずこの「好き嫌い」という言葉を取り除いてみることをお勧めします。
さらにもうひとつ「かわいい」というのも取り除いてみてください。
これは人の感情ですが、この感情も犬の行動を見る作業では邪魔になってしまいます。
コミュニケーションのはじまりは、まずは相手のコミュニケーションを受け取ること。
犬の表現するコミュニケーションを受け取るとは、犬が要求することを受け取ることだけではなく、犬の表現するコミュニケーションのすべてを受け取るということです。
犬が要求行動ばかりをくり返しているときには、もっと大切なコミュニケーションをたくさん見逃したということです。ストレスがかかると要求が強くなるのは、動物として人にもおきますのでこの仕組みについては理解していただけるのではないでしょうか。
犬と暮らす方はみなさんそれぞれの形で犬を愛していると思います。
その中でもっとも深い愛は「相手(犬)を理解する」ことだと信じています。
また来月も犬語セミナーを通してみなさんと学ぶ機会を大切にします。
4月の福岡のクラスは16日日曜日 10時~12時です。
詳しくは電話もしくはお問い合わせフォームからご連絡ください。
今回の犬語セミナーに、このブログを読んで犬の行動を学ぶことに関心を示し一歩を踏み出してくださった受講生がいました。
文章も構成もつたないブログを読んでくださる方に会うと素直にやりがいにつながります。
限られた時間で書いていますが、表面的なことだけにととまらず、これからもできるだけ深く伝えていきたいと思っています。気力によって文面には差が出てしまいますこともあわせてお伝えしておきます。