グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬猫の殺処分ゼロを真剣に考える

福岡市で開催される「動物福祉の視点から、犬猫の殺処分ゼロを考える」セミナーまで、残すところ一週間となりました。日本動物福祉協会の山口千津子先生を講師として迎え、この問題をみんなで真剣に考える機会を得たいという思いから企画したセミナーです。
セミナーは現在満席でキャンセル待ちとして受け付けている状態です。行政、業者、ボランティア、そして一般の方と、多くの方がこの問題を考えたいと思ってくださっているということを知り、心強くなりました。

ここ数日見た犬猫の殺処分問題に関する二つのニュースの一部をここでご紹介します。犬猫に関するマスメディアの報道の内容については疑問を感じることも多く、すべてをうのみにすることはできません。その中で、ひとつでも何かを知ったり調べたいと思うきっかけになるのであれば、そうした情報は有効に活用していくべきだとも思います。この二つのニュースは今までの殺処分の取扱いとは少し異なる内容を発信しているものでした。

ひとつは1月18日にTBSニュースで映像配信された神奈川県の猫の保護活動に関する報道です。題名は<犬・猫「殺処分ゼロ」裏側で…ボランティア団体「対応は限界」>とあります。

ニュースの要旨は以下のとおりです。
神奈川県の動物保護センターで猫の譲渡会が行われている。猫を引き取る方へのインタビューもあり、ここまでは今までの動物を保護することの情報提供のように思われます。ニュースの主題はここからです。

同施設にある殺処分機はしばらく使われていない。なぜなら、神奈川県は犬は3年、猫は2年、殺処分を行っていない。神奈川県知事は、このまま殺処分ゼロを継続するといういわゆる「殺処分ゼロ宣言」を行っている。

その実態について譲渡会を主催するうちのひとつの猫のボランティア団体代表がコメント、「預かりは200匹にのぼりもう限界かな?」という。
預かりには多くの資金がかかり、特に病気の猫の場合には多額の医療費も必要。代表のコメントでは「殺処分がいつ始まるかと…」という不安の言葉が乗せられています。
実際のニュースはこちらです。
TBSニュース「犬・猫の殺処分ゼロの裏側で…」

このニュースの受け取り方は様々です。
事実として言えるのは、殺処分ゼロを宣言する県行政が多数あり、実際に犬猫の殺処分ゼロを実現している中で、犬猫の保護ボランティアに出される頭数が異常な数になっていることです。行政は数字の結果だけを残し、それ以外に必要なことを怠っているのではないかと思われる事態です。そしてその「殺処分ゼロ」という数字の達成だけを歓迎しているのは誰なのでしょうか。

犬と猫を比較すると、動物の習性の違いにより猫の方が多頭飼育にいたりやすいため、殺処分ゼロをかかげる行政がボランティアに譲渡する猫の数を調整しない限り、ボランティア団体の猫の飼育数は増えるばかりです。またその先に、一般の方の猫の多頭飼育が増えているという現実もあります。猫の多頭飼育が問題かどうかは、「動物の福祉」についてひとりひとりが考え、表面に流されない意見を持っていただきたいのです。

ふたつ目は1月19日にヤフーニュースで配信されたサイト発信の記事の中にありました。この記事の一文を抜粋します。

ココから

●「殺処分ゼロ」追い求めるだけでは問題は解決しない

ペットを取り巻く問題として、たびたびクローズアップされてきた殺処分の問題だが、以前と比べその数は大きく減少している。環境省の調査結果では、1974年に約120万匹だった犬猫の殺処分の数は、2015年には、約8万3000匹まで減少している。

これに加えて、2013年に改正動物愛護法が施行され、自治体は、ペットショップなどの「犬猫等販売業者」からの引き取りを拒むことができるようになった。安易に自治体に持ち込むことを防ぎ、殺処分の数を減らす狙いがあった。その結果、「殺処分ゼロ」を達成する自治体も出てきた。

ところが、行政がペット業者からの引き取りを拒むようになった結果、売れ残ったペットを有料で引き取り劣悪な環境で飼育する「引き取り屋」と呼ばれるビジネスが活発化し、問題視されるようになった。

ココまで

「引き取り屋」などという名前がつけられているのが事実かどうかはわかりませんが、終生飼育が原則の犬・猫の飼育の背景で、さまざまな事情で犬猫を飼育することができなくなった飼い主から動物を有料で引き取り、終生飼いますというビジネスが存在していることは事実です。老犬の世話ができなくなり老犬ホームに犬を預けてしまうことも、見方や考え方によっては、「飼えなくなったから業者が引き取って終生飼育する」という、上記と似たような形態になる可能性もあります。

すべての引き取り業者がずさんな飼い方をしているわけではなく、中にはほんの数頭を愛情をこめて最後まで飼ってくださるような家庭的な預かりを実現されているところも存在するのかもしれません。実際には、具体的にそのような理想的な形をビジネスという形では見たことがないので、あくまでそうあってほしいという気持ちでいるところです。家に飼われるということと、施設に収容されるということは、まったく別のものとしてとらえる必要があります。外側は一軒家のようにしていても、室内にはケイジやクレートがならび、その中に収容されるのであれば、それは家庭での飼育とはいえません。

犬と猫では、動物としての習性もことなり、人が飼うようになった歴史も、人が管理するようになった過程もすべてに違いがあります。そのため、この問題をまとめて扱うことは不可能ですが、唯一、動物の福祉という立場にたって考えることは、犬についても猫についてもできることです。犬という動物の立場にたって考える、猫という動物の立場にたってかんがえる。動物福祉という考え方も、それぞれの環境は立場に応じて考えていかなければいきつく道はありません。

飼い主として犬を飼っている方は、犬の立場にたって考えることが必要です。
甘やかしや人側に立ちすぎた可愛がりや愛情の注ぎ方が、犬という動物を犬ではなくものにしてしまうこともあります。犬という動物として成長する機会を奪われることが、動物が生きていく上でどのくらい苦しいことなのかを考えることもできます。
こうしたことも動物福祉という考え方です。動物福祉は数ではありません。雑種の日本の野良犬らしい犬を飼育できる方が少なくなってきました。環境が整わない、接し方がむずかしい、愛玩犬にむかないと理由はさまざまでしょうが、日本の土壌が育てた日本雑種の犬たちはそのうち絶滅危惧種になるでしょう。そして、珍種として動物園に展示されるようになるのではないかと思っています。オオカミの最後の数頭が生き残っていれば、同じ運命をたどったことでしょう。

殺処分ゼロの問題は、数の問題ではありません。殺されるのがかわいそうなら、魂を抜かれたまま生きることはもっとかわいそうなことです。

わたしたちのまわりには、犬猫の問題ばかりでなく、考えなければいけない問題は山のようにあります。それぞれに関心をもって自ら考えることに参加したいと思います。そして、特に自分が得意として、真実をみることができる世界については、そのことについて話す機会も持ち続けたいと思います。

犬猫の殺処分ゼロの問題。犬の動物福祉の問題をいっしょに学び、いっしょに考えましょう。

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Posted in 犬のこと, ボランティア

犬のクレートトレーニング:ハウスの合図でクレートに入る動画

室内飼育の犬や移動が多い犬には、クレートを犬の居場所とするクレートトレーニングをお勧めしています。

クレートを犬の休憩場所として活用されている飼い主さんとお話ししているときに、こんな話を聞きました。
「知人の犬が部屋の中で狭いところに入りこんでいるのを見たのでクレートを使うことをすすめたのですが、犬を閉じ込めるなんてかわいそうだといって使ってくれないんです。」

クレートの戸口を空けたままで犬が寝ているときには、犬がかわいそうと思われないのでしょうが、戸口を閉めてしまうことをかわいそうと思われるのでしょうね。

まず、クレートの戸口を閉めることが犬を閉じ込める行為だと感じられるなら、それはあくまで個人の見方や捉え方の問題もありますので、否定することはしません。
そう感じる方もいるし、そう感じない方もいる。
もしくはそう感じていたが今はそう感じないという方もいるでしょう。
ですが、クレートが犬にとって「落ち着ける自分のテリトリー」となることや、クレートという道具を使って犬を上手に管理することが犬を落ち着かせる方法なのだということを知る機会もぜひもっていただきたいと思います。

犬をできるだけ自由にして飼いたいと思うお気持ちは尊重します。しかし、日本での犬の飼育現状を考えると、その自由は、人の価値観で区切られた中途半端なものではないでしょうか。
犬を部屋に閉じ込めて留守番させる、犬をバッグにいれて外出に連れていく、犬を車の中に待たせる、犬をホテルに預ける、屋外であっても庭から外への戸口はしまっておりやはり犬だけで自由になることはできません。
犬は常に誰かに管理されているか、もしくな何かの仕切りによって管理されているのです。これが国内の犬の飼育の現状であり、法律として定められた状況です。

実はクレートなど使っていない室内飼育の場合の犬のほうが、一面をみれば自由にしているように見えます。犬は居場所がなく、つねに飼い主の膝の上に乗っていたり、飼い主に体の一部を接触させて過ごしています。飼い主が立ち上がるとついて周り、夜も飼い主の臭いのする場所でないと眠ることができません。このような状態で居場所を確保できない犬は、飼い主から離れられなくなる分離不安に陥ってしまうという事実も、犬の行動をみながら正しく理解してあげる必要があります。

犬にとってクレートがなぜ必要なのか。
クレートが犬にとってどのような場所になるのか。
クレートをどのような時に活用させると犬は落ち着くのか。
クレートという犬のハウスを持っていないと、犬が不安行動を示すようになることを理解しているか。もしくはその犬の不安の気持ちを読み取れているか。

これらの内容は犬の習性と人が犬に関わるということ、そしてクレートの意味について知ることで解決できます。

犬がクレートを自分の居場所=もっとも小さなテリトリーと認識を始めると、クレート中で休んだりくつろいだりするようになります。

それから「ハウスといったらクレートに入ってね。」というハウスの合図トレーニングをします。時間と余裕があればトレーニングとして気合をいれなくても日常の中で覚えてしまうくらいです。

この「犬の居場所を指定するトレーニング」は、ハウスといったらその居場所に移動、そして次の言葉を待つというものです。クレートに入ってすぐに出てきてしまうことではありません。

ハウスの合図でクレートに入るクレートトレーニングのひとつを練習中のみなさんに、イメージしていただけるように動画を掲載しました。動画はグッドボーイハートのクラスを利用された生徒さんにお願いして、学校の室内で撮影しました。


ハウスの合図でクレートに入る動画↓

 

[youtube]https://youtu.be/V9K9T-cBEeI[/youtube]

ハウスの合図でクレートであるハウスに入ってくれました。

椅子に座っているのは飼い主さん、ビデオを撮影して「ハウス」の合図を出したのは私です。

ハウスに入る行動以外に、いろんなシグナルが見られますね。

犬の動画は全て「犬語セミナー」の手法で、観察、分類、評価、共感性を働かせてみると犬がどのような状態なのかを知ることができます。このビデオの中にもいろんな行動を見ることができます。

いくつの行動を拾い上げることができ、そしてその行動の意味や行動から予測する犬の心理についてどのような情報を得られたでしょうか。

犬の行動と心理について関心のあるみなさんは、じっくりと見てそして考えてください。みなさんのどの答えも今の段階で「絶対に正しい、間違っている」ということはありません。わたしはこう思う、なぜそう思うのかを問い続けることです。

ハウスといわれたらクレートに入る動画は動画サイトにたくさん掲載されていました。これらのたくさんの動画を見て、犬がハウスに入る動画で伝えられることは何かという疑問を覚えました。掲載動画は犬が「できている」「かわいい」「おりこうさん」という評価をするものではありません。犬がハウスに入ることがどういうことなのかを伝えるほんのひとつの道具として、考える機会としてご覧いただきたいのです。

ハウスの合図でハウスに入ることができるようになるのは大切なことです。管理されることで犬は落ち着けるという状況も起こり得るからです。それはごほうびをあげたりほめたり、犬に行動させて飼い主が喜んだりすることが目的ではありません。
ハウスの合図で犬がハウス(クレート)に入るという行動をする、クレートの入り口の管理を飼い主に任せてくれる。その中で犬と人がつくりあげていく関係が人側に有利になりすぎないようにバランスをとるのは大変なことです。犬はクレートに入ったり出たりする行動を見るだけで、クレートをハウスとして活用できている犬たちの一頭一頭が、それぞれに犬がクレートをどのように活用し、犬と人がどのように暮らしているのかを見ることもできます。犬の行動は本当に奥が深いなと感じます。

今後も犬の動画をご紹介したときには、犬ができたとかできないという結果だけで見るのではなく、そのとき犬がどのような行動やシグナルを出しているのか、そしてその意味は何なのか、犬はどういう気持ちなのかを学び、問い続ける機会にしていきます。

今回はじめて動画を掲載しようと試みたことで、また伝えたいことがはっきりとした気がします。動画撮影に協力してくれた犬と飼い主さん、動画撮影について意見をくださった生徒さん、いつもブログを読んで感想を寄せてくださっているみなさまに改めて感謝いたします。

これからも、いつも新しい視点にたって真剣に犬のことを学ぶ、犬と飼い主と犬のことが少し気になるみなさんの学校としてGoodBoyHeartは前進します。

クレートトレーニングの必要性については過去のブログでも紹介しましたのであわせてご覧ください。
お正月に活用する犬のクレートトレーニング

クレートトレーニング

ペット可集合住宅セミナー

犬を室内でつなぐこと

犬の車酔い

犬の不安を解消する

 

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犬の雪遊びをお勧めしたい理由:犬と大自然のかかわりのひとつ

今年は暖かな日が続いていましたが、ついに寒波がやってまいりました。
福岡の都心にお住いのみなさんであれば、山手の方を見てください。
山がうっすらと白くかすんで見えたなら、きっと雪が降っています。

犬に雪遊びをさせたいと思われる飼い主さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
子供に「雪遊びしたい?」といったら、元気な子供達は「したい!したい!」と大興糞することでしょうが、犬には尋ねても返事は帰ってきません。本当に犬は雪遊びしたいのだろうかと疑問を感じる方もいらっしゃるとは思います。

実際のところ、雪遊びではしゃぐ犬と、雪あんまり好きじゃない犬とに分かれます。
寒いのが苦手な超小型犬は冷たいことが苦手ですから、雪だからといってはしゃいだりしません。
雪はただ寒いもので嫌なものに過ぎないでしょう。

年をとった老犬も同じく寒さは苦手になりますから、雪だからといって元気になったりはしません。

中年期になる犬で、特に雪に慣れてしまっているような犬、たとえばわたしの同伴犬だったオポも、若いころは雪で少し興奮していましたが、七山に移り住んでからは雪が日常となり、今日もまた雪…となってくると、はしゃぐということはなくなりました。年齢もあるのでしょうが、特別感がなくなったのは飼い主である私もいっしょです。

それでも、雪が降り積もった初日はいつもと違います。
人が見るとまず景色が違います。とにかく真っ白ですね。そして音が違うのです。人の私でもわかるくらいですから犬だったらもっと違いがわかるでしょう。余分な音が一切なくなった、そんな感じなのです。

犬が見る景色とは「臭いの景色」です。人と犬は脳内の情報処理分野が少し違います。人は視覚的に情報処理を行うのが得意だけど鼻はあまり効かない動物、犬は逆に視覚的な情報処理は得意ではないけど、鼻はすごくきく、臭いの世界に生きる動物です。
犬の見る世界とは「臭いの世界」なのです。犬はこの真っ白に広がる雪をどのような臭いとして受け取っているのは、いつも不思議に思っています。同じ世界を体験することはできないのですが、犬の行動を通してそれを感じたいと思うのです。

若い犬たちは「新しい世界の出現」に興奮しています。飛んだり跳ねたり、走ったりですが、雪の中では思うように走ることもできません。雪に鼻を突っ込んで冷たさにビックリしたりと、子供のようですね。

中年期の落ち着いた犬たちは「雪の世界」をじっくりと調べています。いつもより行動がゆっくりとなり、慎重に調べます。いつもより遠くに行きたがらなくなり、とくふぶいてくると前進せずに後退しようとします。映画の八甲田山のようなのかもしれませんが、ふぶくと帰り道の臭いがわかりにくくなります。新しく雪が降り積もることで情報が消えてしまうのは、人も犬も同じなのですね。

いつも動いている山なので、50センチくらいの積雪では居場所がわからなくなることはないのですが、雪は冷たく犬も人も体力を使います。酸素は少なくなり心臓にも負担がかかりますね。

そんな大変な雪に犬を触れさせたいと思うのは何故かというと、ただそうした自然の大きな力を感じて欲しいからです。本当はそんな自然の大きな力に触れながら生きて欲しいといいたいところですが、そうもいきません。ですから、まずははしゃいでもいい、そのうち雪を穏やかに受け入れて困難だけどつきあう犬になる機会を得てほしいとただ思います。

雪を感じるなら積雪の朝です。降り積もった雪も福岡佐賀の人が近づけるくらいの山では数日で溶けてしまいます。2日目にはその柔らかさも失ってしまうのです。明日積もるかもしれないという日の前の日に山に入っておくことをお勧めします。今日は最大のチャンスですね。しかも土曜日ですよ。
土曜日の夜に犬といっしょに山小屋で過ごし、明け方に犬といっしょにビックリしてほしいのです。日曜日の朝に降り積もっているなんてこんなに素敵なことはありません。

日曜日にはグッドボーイハートでも尾歩山歩きの会があります。
どんな山になっているか楽しみです。

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純血種のかわいい飾り毛、実は犬にとって結構やっかいな毛であること

純血種の犬たちが人気があるのは、純血種ならではの独特の毛が魅力的であるのは大きな理由のひとつです。

たとえば毛足の長い長毛種は人気があります。長い毛の犬が人気があるのはそれだけ人の好みにあっているということでしょうが、長い毛が好きな方に尋ねると、毛を触ったときの感じが短い毛の犬のようにあっさりとしたものではなく、毛の分量がある分満足度が高いということをいわれたこともあります。あくまで個人的な意見でしょうが、触ったときの感覚が短毛の犬とは明らかに違うというは確かなことです。

大型の長毛種を好まれる方の中には「格好いいから」という意見もありました。
大型、中型犬の長毛種で人気があるのは、ゴールデンリトリバー、フラットコーティッドリトリバー、ボーダーコリーのラフタイプという毛質の犬、バーニーズマウンテンドッグ、グレートピレニーズ、ボルゾイ、アフガンハウンドなどが身近で見ることができる代表的な犬種です。

もう少し小さなサイズになると、スピッツ、シェルティ、スプリンガースパニエル、コッカースパニエルなどのスパニエル系もみな毛が長いですね。

小型犬の長毛種で人気が高いのは、キャバリアキングチャールズスパニエル、巻き毛になりますがトイプードルも伸び続けるという意味では長毛種になります。他にも、ポメラニアン、パピヨンなどもそうです。チワワとミニチュアダックスなどは、もともとは短い毛の純血種しかいなかったものが、人為的な繁殖によって長毛種をつくったため、ロングコートチワワとロングコートミニチュアダックスがつくられるようになりました。

純血種の繁殖はどの時代も人の要求に応じて犬の姿形を変えてきました。その中で長毛種がこれだけ増えてきたというのは、それだけ毛の長い犬を人が求めた結果であるともいえます。
ところが、この長い毛は犬の歴史の中で人が手をいれていない本来の犬の毛とは大きく違います。

本来の犬の毛とは、犬の体を守る人の洋服にかわる部分です。「犬は毛皮着てるから暑いね」などという言い方をされることもありますが、実際そのとおりなのです。犬は毛という洋服を着ているからこそ、イヌとして人と離れて暮らしていたころにも、野外での活動の中で怪我から身を守ることができ、アンダーコートの発達で寒さから身を守ることができます。夏にはアンダーコートを落として、薄い夏用の毛に変えて皮膚を守っています。

話しが少しずれますが、夏のサマーカットをお勧めしていません。なぜなら、犬の毛を必要以上に短くしてしまうと犬は皮膚を守ることができなくなってしまうからです。犬の皮膚は人の皮膚とは違い、とても繊細なものでもあるのです。

さて、このかわいらしい長い毛ですが、言葉を変えていえばこの長い毛は「飾り毛」なのです。
「飾り」です。犬の体を守ったり犬が生きているために助けになるような毛ではありません。
犬にとって長い飾り毛になることの有意義なことは、人が好んで犬長い毛の犬を飼うようになることです。
多くの犬は人に食べ物をもらい飼われることによって暮らしを立てていますので、長い飾り毛を上手く活用しているのは犬にとってのメリットであることは事実でしょう。

ただ長い飾り毛は犬の暮らしを不快なものにすることにもなっています。
飾り毛のある犬たちの多くは脚や脚の裏部分にも飾り毛が生えています。
犬の足裏の飾り毛はトリミングのときにカットされているようですが、その飾り毛は指の間にまで入り込んでいますので、全てを刈り取ってしまうことはできません。バリカンで刈られてしまうと逆に皮膚がむき出しになって弱くなってしまいます。弱い皮膚は常に地面で湿度にさらされるため赤く変色してしまいます。皮膚炎などになりやすい理由のひとつにもなっています。

足裏の手入れが上手くいかないとそこには土がはりつきます。短毛の犬の場合にはマットで数回足踏みすればとれうような土がこびりついてとれません。長毛の犬になると外にでる度にお風呂場で脚を洗っている飼い主さんもいますが、お気持ちは察します。実際その犬がタオルで拭いた程度で室内にあがれば、室内のじゅうたんや畳で足裏の掃除をすることになり、じゅうたん側には泥汚れがぎっしりということになるでしょう。日本のような家屋では痛手が大きいですね。これは洋風の土足で家に上がる家であれば気にならないことなのでしょう。そのため、洋犬種では飾り毛の犬が増えたともいえます。この問題に西洋人がぶつかっていたら、この毛足の長い中型、大型の純血種たちは繁殖されつづけなかったと思います。

日本は都市環境が広がっているため、道路はアスファルトで公園も土ではない場所が多くなっています。散歩で歩いて帰っても長毛種の犬の足が泥だらけといった事件は起きません。さらに、小型犬が圧倒的に増えていますので、小型犬の場合には脚を洗うとか使い捨てシートでふき取るといった入念な作業によってきれいにされています。脚が小さいですから大型犬のような事件には発展しそうにありません。

山歩きをすると、この飾り毛がますます歩きづらくしています。山に落ちている葉や種、枝などがたくさんついてくるからです。特に杉の枯れた葉などは飾り毛に絡まってなかなかとれなくなります。その他の小さな種子も野生動物や本来の犬たちにくっついて移動するための方法として、ギザギザ構造になっています。少し大きな種子は大豆サイズから、小さなものになるとゴマサイズまでといろいろです。ゴマサイズのものになると脚の指の間の足裏の毛についてしまい、そのまま取れずに皮膚に刺さったりする不快な状態になります。飼い主が取り去ってあげなければいけないような毛であれば、その犬の毛は飾り毛であるということです。
山に暮らす本来の犬の毛はこれらの種子を一定時間は運びますが、歩く摩擦でとれたり、身震いで簡単にとれますので不快感を感じることはありません。

長い飾り毛についてしまうのは種子や枯れ葉ばかりではありません。実は大変なのは雪です。
大雪の日に飾り毛の犬が雪遊びをすると、その犬そのものが雪だるまになってしまうほど、雪の上に雪がついていきます。これは本当に不思議な現象ですが、毛質に油分がたりないため雪をはねることができないようです。

かわいくゴージャスな飾り毛に生まれたことで人に飼われるようになった反面、自然の中で克服しなければいけない現象については適応力が下がってしまったのです。毛に限らずこうした例は他にもたくさんあります。
犬を人為的に繁殖しているわたしたち人間は、人にとってメリットになることだけを見るのではなく、犬にとってデメリットになっている部分についても知る必要があると思います。犬たちの不快を知った上で、その不快な感覚を軽減させるために人ができる手入れについて考え、これから純血種の繁殖をどうしていったらいいのかを考える素材とすることができるからです。これは人ができることであり、人にしかできないこともあります。

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吠える、かみつく、言う事を聞かない、問題行動は犬からのメッセージ

なぜこの犬種を飼ったのかという理由に、「知人の犬を預かったらとても大人しかったから」という方もいます。正確には預かった犬が大人しいからという理由が、犬を飼うことは大変だと思っていたけど、こんなに手がかからず楽なのなら私にも犬が飼えそうだと思ってしまった、からかもしれません。

ところが犬を飼うのはそれほど大変なことではありません。特に犬は小型化の傾向があって、小さくなればなるほど問題も小さく思えてしまうからです。

たとえば、犬の吠える行動は他人に迷惑をかけてしまうので、犬を飼うときには心配になるものです。ですが小型化した犬はまずそれほど大きな声がでません。小型犬で大きな声が出るのはミニチュアダックスくらいでしょうか。ミニチュアダックスの場合には中型犬と同じくらいの声量で吠えるため、吠えることが問題になることもあります。

ところが、小型犬は室内に飼われていることが多いです。室内で留守番というケースも多いので、声量の大きなミニチュアダックスであっても、現在の音をシャットアウトできる壁や窓で頑丈に作られている戸建てでは、室内での吠えはあまり問題とされない上に、留守中に吠えているという事実を飼い主さんが知らないことも多いのです。

犬がとびつく行動についても同じことです。大型犬や中型犬のとびつき行動は、自分や他人もケガをする危険性が高まるので問題を解決したいと思う行動のひとつです。ところが小型犬のとびつき行動になると、同じ行動なのになぜか「喜んでいる」と勘違いされてしまいます。大型犬がとびついたときは不機嫌になったり、こわがる人間も、小型犬のとびつきに対しては「喜んでいる」と感じてしまうのは何故だろうといつも不思議に思いますが、それが一般的な心理というものなのでしょう。小さいものがピョンピョン飛び跳ねることはかわいいと思ってしまうのですね。これは思い込みという見方で本質を見失ってしまいます。本来の価値観を捨てて、もっと素直に行動を見ていくとその本質が見えるようになります。つまり、犬がなぜ飛びついているかという犬の心理(気持ち)が読み取れるようになってくるのです。

犬を預かったときに「おとなしい」と感じたのには訳があります。動物には、特に犬という動物には警戒心があって安心できる環境だと判断できるまでは、自分の本質や欲求を隠し静に行動して相手を観察するという能力があります。これは犬が生きていく上でとても大切にしている本能のようなものです。特に雑種犬や警戒心の高い日本犬はこの警戒モードを発揮しやすいので、一時的に預かった場所では大変おとなしい犬になってしまいます。保護犬を一時預かりしたときに大変大人しかったからそのまま飼うことを決めたら、しばらくしてなれるととても乱暴になって手が付けられなかったという例もあります。

人から見ると「猫をかぶっている」という行動にみられるでしょう。表面的には大人しくみえるのに本性を隠しているということです。相手のことを信用できないのですから、犬が本性を隠してもずるいとはいえません。犬にとっては生きるための術ですから、それを見抜けなかった人の方に問題があるということです。

裏を返せば、犬がおとなしくないとか、問題になる行動があるときには、犬が正直に環境に対して反応を示しているということなので、犬は素のままの自分でいるということです。それだけ自分を出すことができる環境であるともいえます。だから、おとなしい犬である必要はないのですが、犬が出している目立った行動はすべて犬の行動を通したメッセージなので、言葉としてちゃんと受け取ってあげましょう。そして犬が必要としていること、犬が安定するために飼い主ができることを提供してあげることです。それが犬のしつけとトレーニングです。

犬が小さくなって小型犬となってしまい、とびついたり吠えたり興奮したりする行動が「かわいい」で終わってしまっては、犬の大切なメッセージは伝わらなかったことになります。犬の不安定で興奮する行動は、「もっと落ち着きたい、もっと安心したい」という逆のメッセージです。

犬を飼うことは大変なことです。その大変さに真剣に取り組むほどに、犬との関係は変化してきて、犬ってこんなにすばらしい動物だったんだと気づくことができます。だから犬の問題行動は本当にチャンスだと思えます。犬のしつけやトレーニングが面倒だなと感じられる方もいるかもしれません。関係をつくっていくというのは小さなやりとりの積み重ねなので、時間がかかるのは当然といえば当然です。時間をかけずにつくった関係はとても浅くあっという間に離れてしまいます。

せっかく犬を飼うことになったのだから、飼い主として責任というような枠にはめずに、犬と暮らすことを思いっきり楽しもうと思ってください。それは犬で楽しむこととは違います。この違いがわかるようになったら、犬との関係は変わっていきます。とても楽しいですよ。

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子供嫌いの犬:犬の社会性は社会経験が基本

犬が子供が苦手になってしまうことがあります。

ここでいう子供とは、外で遊ぶようになる幼稚園児くらいの年齢から小学生くらいまでの年齢の子供をさしています。犬が最も苦手とする年齢です。

母親から離れて遊べるようになる活発な幼稚園児は、新しいものに関心を示します。犬や猫は小さな幼児が関心を示す対象となるのは自然なことです。

小学生になると犬は珍しい動物ではありませんが、かかわりを持とうとしてちょっかいを出す対象になったり、別の意味で動物を利用しようとする目的を持つこともあります。

中学生に入ると自分のことで忙しくなり、犬や猫に関心を示し続けるかどうかは個体差が出てくるでしょう。

動物に関心の高い中高生もいるし、さほど関心を示さない中高生もいます。

中高生が犬に関心を示したとしても、中学生になると犬に対する愛護の気持ちも育ってきています。

他者を思いやる感情も十分に芽生えていますので、犬にとって脅威になるような存在にはなりにくいのです。

3才から小学生くらいまでの年齢の子供に対して、犬が苦手意識を持つようになるのはなぜでしょうか。

その話に進む前に、子供が苦手な犬というのはどのような犬なのかを探っていきましょう。
「子供」という社会的な対象に、不安や緊張のシグナルを示したり、興奮や攻撃、逃走といった社会的行動を示すようになります。
具体的には犬が子供が苦手だと知らせる行動は次のような行動です。

子供の声を聞くと興奮したり吠えたりする
室内で子供の声を聞くと吠える
外で子供に対して吠える
子供を見ると唸り声を出す
子供を見て震えたり散歩の途中でも逃げ帰ろうとする
子供が抱き上げると震える
子供が近づくと逃げる、後ずさる
子供が手を出すと牙を当てる

これらの行動は、全ての子供に対して出るということもあるし、特定された個別の子供に対して出ることもあります。また、どういう違いなのかはわからないけど、こうした行動が出ることもあるし出ないこともあるといったこともあるでしょう。

いずれにしても、犬が子供に対してこれまでになんらかの経験を通して学習したことが、犬が子供が苦手であるというシグナルとして表現されるようになった要因です。特に生後4ヶ月齢までの社会化期に犬が経験したことは、のちの行動に強く影響していきます。

子供に対して犬が学んだ社会的経験というのは、さまざまな環境の中で行われるのであくまでも例としてしか紹介できませんが、具体例を挙げるとこのようなものがあります。

子供が子犬を抱き上げて歩いたり遊んでいたことがあった。
子供が子犬をおいかけて遊んでいた。
子供が子犬を膝の上に乗せてずっと抱いていたことがある。
子供が子犬とおもちゃ遊びをしていたことがある。
散歩中に子供が近づいてきて子犬を撫でていた。
来客としてきた子供が子犬を撫で回していた。
散歩中に子供が子犬に走って近づいてきた。
散歩中に子供が子犬にものをなげた。

これらの行動は、子犬が逃げたり隠れたりするチャンスを与えられずに、子供は子犬を玩具として遊ぼうすることから、子犬は子供が恐怖の対象となってしまうケースです。
子供が子犬とおもちゃ遊びをするというのは、対等な遊びであればとても良いのですが、遊び方が子犬の持っているおもちゃを取り上げてしまったり、子犬のくわえているおもちゃを激しく振り回しすぎたり子犬を吊り上げたりするような行動をしてしまうと、子犬は子供に対して乱暴になってしまうことがあります。

ご家庭に子供さんがいて、子犬のときに子供達と子犬を遊ばせていたこと経験があるというご家庭も多いのですが、実際に飼い主が子供たちと犬がどのように関わりをもって遊んでいたのかという監督をしていない場合には、子犬は子供たちに持ち上げられたり、追いかけられたり、からかわれるイジメに近い行為を受けていることもあります。

子供の方には悪意がないため、子供達は楽しかったまた遊びたいと思っているのです。
このとき、子供たちは「子犬がどのような気持ちや感情をもっていたのか、子犬は怖がったり嫌がったりしていなかった。」といったことを受け取る力が育っていません。小学生にもなると「人に対しては」共感力を発揮できる年齢です。友達の気持ちを配慮できる子供達であっても、犬に同じように接することができるとは限らないのです。ご家庭の中で飼い主である大人が、どんなに小さな年齢の子犬に対しても、どんなに小さなサイズの犬に対しても敬意をもって対等に接する姿勢が見られない限り、子供達はこのことを学ぶ機会を持ちません。
※ここまでの子犬の部分は犬と当てはめていただいても同じ内容のものです。

大人は犬をかわいがって育てているつもりなのかもしれませんが、その接し方が大人にとっての玩具のようなただ撫でたりダッコしたりするかわいがるだけの存在であれば、子供は自分たちも同じように接していいのだということを大人をみながら学んでいくのです。
大人が犬に対して、犬にも成長の機会を与える必要があり、環境をうまく管理して成長と発達ができるようにサポートとしてあげたいという姿勢で犬育てに取り組むようになると、同居の子供達は協力してそのことにいっしょに参加してくれるようになり、そしてルールも守ってくれるでしょう。そのことが、犬と子供がいっしょに成長するということです。

子供さんでも犬に興味のある自宅に遊びにくるような子供であれば、犬との接し方についていっしょに学ぶ機会を持たれるといいでしょう。子供の世話を犬にまかせるようなことをしておくと、犬が子供が苦手になるという経験をすることになりますので、それはしないでください。
公園で接する子供たちの教育については、すべてを引き受けることもできません。ご家庭にはご家庭の教育というのがありますので、子供達が犬に近づいてくるのをやさしくでもはっきりと断ってください。

公園で犬をみたら「さわってもいいですか。」と尋ねてくることに対しての意見は過去ブログで紹介しました。
触ってもいいですか?をご覧になってください。

厳しい意見だと思われるとは思いますが、こうして子供に犬を触らせることで、子供が犬ともてるかもしれない絆をもつ機会を失いたくないからです。なかなか触ることができない、でもいつか犬の方からゆっくりと友好のシグナルを出してくれるまで辛抱強く待とう、という気持ちを育てていきたいのです。

子供が苦手な犬が増えていると感じています。
子供と犬との関わり方が難しくなっていると思います。
子供の教育の方向性はいつの時代にも変わり続けているのですから、これからもっと本質的な犬という動物と子供達が本当のふれあいを実現するようになれることに対して、希望を持ち続けたいと思います。

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落ち着きをとりもどす自信のある犬とは

昨日のブログで犬の興奮度の高さを、活発な活動性と間違えてしまうことがあるということをご紹介しました。
犬と人は動物としては哺乳類という点で一致していますが、種としては別のものなので同じような精神的な状態を持っているのかどうかはわかりません。

犬は人とは違う動物だというのは事実です。犬が犬という種として備えているものを見る必要があります。
犬は同種が集まってひとつの群れを形成し、その群れを維持ししてくために高い社会性を身につけている種であることは、犬の行動観察をする中でわかってきています。犬という動物は人が飼育するものだと思われていますが、それは世界中ではごく一部です。この話についてはまた後日ここで紹介していきます。

とにかく、犬は高い社会性によって群れを維持していくことができ、その高い社会性を保っているのが犬の社会的なコミュニケーョン術なのです。犬が群れを維持するためには、自分の状態を「群れ」にすぐに伝達する必要があります。
興奮しているのか、緊張しているのか、危険が迫っているのか、、いろいろです。そして群れを長く維持させていくために、お互いの過度な興奮や緊張は、互いに抑制しあって爆発しないように、良い影響を与えられるようになっています。それは、成犬が子犬の過剰な興奮を抑えるという形で行われることもあるし、1頭の犬が逃走しようとする状態に入ると、その犬の危険を察知して攻撃して押さえ込もうとする行動が生じるなど、様々な社会的コミュニケーションとして発達していきます。

これらの興奮、不安、緊張といったバランスの崩れは、群れの仲間によってなだめられ、抑制されるばかりではありません。犬の成長にとって最も大切なのは、自ら抑制、つまり自制をする力が育っているかどうかということです。未熟な動物は自制の力が育っていません。自制力の発達には時間がかかります。一日にして出来上がるわけではなく、抑えるという経験を重ねながら、自制というのを自ら育てていくのです。

ここで書いている犬の自制は、人との距離をとってイヌという動物だけの群れで生きていく場合には、絶対に必要なことです。たとえば、関心のあるものを見つけたとします。そのときに、急に走り出したり興奮したりすれば、事故にあって怪我をしたり命を落とすことにもなりかねません。自然界ではそうした動物は生き残れません。そのため自然淘汰という形で、自制の育ちやすいイヌたちが生き残ってくるということになります。このしくみは、わかりやすいですね。

ところが、人が繁殖したり飼育している犬は違います。自制ができなくても限られたスペースの中やリードで拘束された状態で自ら興奮を抑えるのではなく、物理的な道具によって管理されることで危険から守られているのです。道路の向こう側に他の犬を見てリードを引っ張りながら2本脚で立ち上がって吠えている犬がいるとします。飼い主さんは「リードがなくなったらどうするのだろう」と思われるかもしれません。この犬には自制というブレーキはついていませんので、リードが切れてしまったら車通りの道路をそのまま走る可能性がとても高いです。実際にはこうした交通事故も多いのです。

人の飼育管理下で犬に自制を育てていくのは大変なことです。決してできないとはいいません。ただとても時間を必要とすると共に、飼い主の犬への理解と対等な態度が要求されるのです。
特に人為的繁殖によって幼稚性を高められた犬や、人の接し方によって未熟性を備えたまま2才、3才になってしまった犬には、とても時間のかかることです。
それでも、犬にとってどちらが毎日を過ごしやすく豊かに生きていけるかというと、自制のできる動物ではないでしょうか。常に誰かに自分の行動や気持ちをコントロールしてもらわらなければいけない状態で日々を生きていくということを考えたとき、自分であったらどんなに不安できつい毎日になるだろうかと思ってしまいます。不安や緊張といったネガティブな感情だけではありません。自制のできない動物にとっては、喜びや楽しみといったものも他に依存してしまうことになります。犬たちにもっと自由な世界で生きてほしいと思うのです。

今までそんなことを考えたことはなかったけど、なんとなくわかるような気がするという飼い主さんの犬は、きっと飼い主さんを喜ばせることができる、とてもよくいうことを聞く利口な犬なのかもしれません。飼い主さんを喜ばせているのは、もしかしたら犬の自制が発達する環境が整わずに、飼い主の喜びが自分の喜びになっているからかもしれません。

犬の自制についてのはなしは、すぐにはわかりにくいものです。すぐに自制のできる犬に変えることができないため、自制できる犬と接するという機会を得られにくいからです。こうしてブログで紹介しても、なかなか伝わりにくいということは覚悟しています。また、変わった考え方だなと思われるかたもいらっしゃるでしょう。きっと、変わった考え方なのです。ですが、そんな考え方や犬とのつきあい方もあってもいいと思います。飼い主さんには選択権があります。今の日本の法律の中では、犬には残念ながら選択権は与えられていません。犬だったらどう思うだろう、自分が犬だったらどう生きたいだろう。いつもいつも考えています。これからもまだ悩み続けたいと思います。

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犬のとびつき、走り回る行動の理由とは

来客に対してピョンピョンと飛び跳ねて、部屋の中を円を描くように走り回り、そしてまた飛びついてくるような犬がいます。よく見ていると来客だけでなく飼い主さんに対しても飛びついたりまた走り回っては飛びつくという行動をくり返しています。こうした犬の行動に対する飼い主さんの見方の多くは「いつも、とても元気なんです。」というものです。

室内でこのような行動をしても制止せずに笑顔で見ていられるのは、犬のサイズが小さいからなのでしょう。大型犬も同じような行動をする犬がいますが、中型、大型犬の場合には人へのとびつきは来客に怪我をさせる危険行動ですし、人を怖がらせる行動にもなります。飼い主はこうの行動を制御しようとするものです。部屋の中で走り回ったりしたら机の上のものが落ちたりじゅうたんが痛んだり床に傷がつくといった理由で、これらの行動を犬の困った行動としてしつけにとりかかられるかもしれません。

犬が日常的に動いているその速さや多さを犬の性格を示す言葉では「活動性」といわれています。犬の活動性とは犬が外で活発に動けるかという動作の機敏さをいうのではなく、いつもチョコチョコと動き回っていたり、歩いていたりする日常の活動の多さによって活動性が高いとなり、室内でゆったりとしておりまた散歩中もゆっくりとした速度で歩くのであれば活動性が低いとなります。

小型犬、中型犬、大型犬を比較すると、小型犬の方が動きが早く活動性が比較的高いのに比べて、大型犬の方はゆっくりと立ち上がるなど活動性が低くなります。大型犬は心臓から手足に血液を送り込むのに時間がかかりますので少しゆったりとした動作に見えるのです。昔のアニメになりますがハイジのヨーゼフの動きを思い出していただければいいでしょう。ゆっくりとたちあがってゆっくりと動くという動作でしたね。大きな犬になるとそんな行動になります。同じ理由で心臓があまり強くない犬はゆっくりと行動をすることで調整をしています。心臓病といった状態でなくても普段から活動性の低い犬に激しいスポーツをしたり、多くの犬や人に接触させる刺激を与えすぎることは犬への負担になりますので配慮してあげたいものです。

小型犬は比較的活動性が高いので、冒頭で紹介したとびつきや走り回りを室内で日常的におこなっていても「元気な犬」と誤解されてしまうことがありますが、実際には犬の状態はただ元気ではないということが多々ありますので紹介させていただきます。

まず、活動性とは別の言葉になりますが「テンション」という言葉を聞かれたことがあるでしょうか。テンションが高いとか低いとか、人の状態を表現する言葉としてもよく利用されます。犬の行動を見るときに同じように「この犬の今の状態はテンションが高い」といった説明をすることがあります。テンションとは「張り」ですね。突っ張るというイメージがありますね。緊張の糸が張っている状態をテンションが張っている、つまりテンションが高いという表現に言い換えられます。テンションが高いというのは英語ではなくカタカナの和製英語です。張りといっても興奮の張りのほうで、テンションが高いというときは「興奮が高まっている」という表現になります。テンションという言葉を使うことで、精神的に気持ちのつっぱっている状態がわかりやすいのでつい多用してしまいます。

ここで説明したとおり、テンションは活動性とは違います。
犬が緊張することでテンションが高いと、行動にも突っ張ったような興奮行動が出てしまいます。その行動がとびつきや走り回りといった興奮行動となるのです。動物は緊張すると「動かなくなる=硬直する」ことがあります。確かに緊張すると尾を下げたり後ずさりしたり硬直したりすることがあります。しかし、気持ちの張りは硬直する方向ではなく、興奮する方向にも傾くのです。そしてこの傾きはシーソーのようになります。つまり、興奮しやすい犬は硬直したりおびえ行動も大変多いということです。

すべてを一度に説明することは難しいので来客や飼い主へのとびつきや部屋の中を走り回る行動は「ストレス行動」として一旦理解していただきます。部屋の中でなくとも、ドッグランで人に飛びついたり、2本足立ちをしたり、ドッグランの広場を走り回ったりする行動も同じ行動なので行動チェックとして活用してください。

実際に、室内で興奮行動の多い犬は、物音や他の犬の吠える声、苦手な人などなにかビックリするようなことがあると、尾を下げて逃げたり狭いところへ駆け込んだり、パニックになってキャンキャンと吠えたりする行動をするようになります。こうした犬の行動を読み違え、誤解して受け取ってしまうと「いつもは元気で明るい犬なのに、何かあるととても怖がる。」といった見方になってしまいます。

先日訪問レッスンのときに、やっと本来の活動性を取り戻しつつある状態にいたった犬に対して飼い主さんが「なんかいつもと違うんです。動きがすごくゆっくりになりました。でも前みたいに尾を下げて逃げたり歩いたりしなくなったんです。苦手な人にも少しずつ近づいていけるようになったんです。」
そうなんです。はじめに飛びつきや走り回りをしていた行動に対して「この興奮行動がなくなくなってきたらおびえもなくなってきますからね。」とご説明したのですが、それが現実となって犬本来の活動性を取り戻すことができました。

犬の行動をちゃんと見て犬を理解してあげることは、犬に必要な環境を整えていくために何よりも大切なことです。そして犬が本来の姿を取り戻すための環境を整えられるのは飼い主さんしかいません。

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犬と共に癒しを体験するとき

少し遅めの初詣をかねて今年「尾歩山(おぽさん)」歩きが始めての犬と飼い主さんといっしょに山歩きをしました。年のはじめということもあって、山歩きの一歩一歩も感慨深いものになります。
今年は何才になるねといった話題も出たりして、ずい分を年齢を重ねてきたけど、こうして犬と一緒に山を歩く時間が持てているという率直にうれしいという気持ちが伝わってきます。

犬の方は一年のはじめということもなくいつもと変わらない日々。ただそれぞれに毎日少しずつ経験を重ねたり年月を重ねるうちに、前よりもずい分と落ち着いた歩きになったり、月日の積み重ねが脚の運び方にあわられたりするけど、そのことを悔やんだり悲しんだりすることはありません。
飼い主さんと一緒に冷たい風を受けながら、一歩一歩と歩く共同作業は犬の気持ちを飼い主さんに近づけてくれる時間になっています。
自然の良い気の流れる過ごしなれた場所での飼い主さんと犬のひとときは、飼い主さんにも犬にも「気持ちの良いとき」を与えてくれます。それこそが癒しの時間です。

犬を飼う目的が「犬に癒されたい」と口にされる方もいますが、癒しているのは犬ではなく犬がつながっているもっと大きな世界です。犬とともにいて「癒される」と感じるなら、その犬がつないでくれる自然の世界に、飼い主さんを案内したいと窓口になっていてくれるからでしょう。いつまでも間に立つ大変な役割を犬に負わせないで、飼い主さんと犬がいっしょにその癒しを受け取れるようになれば、犬との関係はそれまでとは違ったものになるでしょう。

犬と体験してほしい山歩きは、流行りのアウトドアイベントではありません。山で走り回ったり興奮したりはしゃいだりすると、自分のやりたいことが優先してしまってせっかくの受け取れるものを受け取る機会も失ってしまいます。「山に入るときには謙虚に静かに」これがグッドボーイハートのルールです。

山を知らない犬は最初はとても興奮してしまいます。テリトリーの問題、どのように行動していいのかわからない、人が管理できない空間の怖さ、他の動物達の気配におびえること、そして山を知らない人間の不安定さと自然の中でのバランスの弱さを動物として察知してしまうからです。

では何から始めればいいのか。筋トレなどは効果はありません。
わたしは「呼吸」を大切にしています。
自然の中で過ごすには、自然のリズムに共鳴できるようにすることです。
別のものとして自然が排除したいという存在ではなく、自然と共にいることを許される存在として自然に受け入れてもらおうと思うと、呼吸は自然にゆっくりと深いものに変わっていきます。
そうすると、きついと思う山登りなはずなのに辛さが全くなくなります。息もあがらなくなるから不思議です。結構急坂な尾歩山ですが、いつも落ち着いて歩くことをオポに求められれて歩き続けた結果、まったく辛さを感じずに呼吸を自然と整えながら歩けるようになりました。これもオポという犬から学んだ大切なことです。

癒しをちゃんと受け取れる方法は他にもあります。これも自然とできるようになるのですが、山を歩きながら「ありがないな」「気持ちがいいな」「豊かだな」と思えることです。飼い主さんたちも自然とそんなコトバを口にしています。自然の癒しの力は本当に偉大なものだと痛感します。
年をとって山に登れなくなった犬たちにも、まだ山に到達しない犬たちにも、尾歩山からすべての犬と飼い主に豊かさが届けられますようにと祈ります。

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屋外飼育から室内飼育へ:環境の変化が犬に与える影響

引越しは人にとっても大きな人生の変化です。生活環境が変わるというのは、どんな動物にとっても大変なことです。今まで理解してきた生活に必要なものを得るための地図をつくりかえる必要があるからです。今まで培ってきた地域とのつながりをつくりかえる必要がある。新しい職場で新しい仲間とひとつずつ関係をつくっていく必要がある。どれも大変なことですが、これは犬とっても同じことです。

犬から見るの引越しは、生活圏が移動するだけでなく別の変化を必要とされることがあります。たとえば、庭付きの戸建てからマンションへの引越しにより排泄が庭でできなくなり散歩時に排泄する生活に変わること。また、戸建ての庭で飼われていた屋外飼育をされていた犬が、マンションの室内飼いに変わる必要を迫られること、などもあります。タロウくんの場合には後者の方でした。

人も年齢を重ねてくると郊外や少し田舎の静かな環境の庭付きの戸建てでゆっくりと暮らす生活スタイルも増えますが、若い時期は両親との同居から独立して都心でアクティブに働きたいという時期でもあるので、犬の生活も都市型になっていきます。タロウくんの場合には、1歳を過ぎてから田舎の戸建てから都心のマンションへの引越すということでご相談を受けました。

戸建ての屋外飼育のときには、来客の気配や来客が室内にいる間中吠え続けてしまうような状態だったので「このままではマンションには連れて行けない」と感じられたようです。マンションは隣が壁ひとつですし、廊下を通る人の話し声、他の家を訪れる来客や宅配の車、近くの公園で遊ぶ子供の声、など周囲に家のない戸建て環境と比較すると刺激がすごく増えてしまうことになります。

タロウくんは確かに、来客があるとずっと吠えているようでした。最初に訪問したときにはタロウくんの吠え声で、飼い主さんとの会話が聞き取れないほどの声で吠え続けていました。このタロウくんの問題がタロウくんの性格にあるのではないことをお伝えしました。また、飼育環境としては屋外飼育が問題だったのではなく、落ち着ける環境を整えられていなかったことと、タロウくんの性格にあった接し方ができていなかったことがタロウくんの行動を落ち着きなくさせていたのです。

引越しすることがあらかじめわかっていたなら「犬を飼う」という選択はなかったのかもしれません。引越しを機会に「犬を他の方に飼っていただく」という選択も悪いものではありません。犬は終生飼育が義務付けられていますが、人の人生にはいろいろな予期せぬことが起きますので、犬の立場からみて犬が落ち着いて暮らせる環境が整えられる方を新しい飼い主さんを見つけることは、逆に飼い主としての責任であるともいえます。

しかし、タロウくんの飼い主さんは、タロウくんと一緒に暮らすことを望まれました。「犬に負担がかかることはわかっている。だけどいっしょに暮らしていきたい。そのためにできることをしたい。」という気持ちでトレーニングに取り組まれました。

静かな田舎環境から都心のマンションの室内飼育に変わるとなれば、犬という動物にはかなり負担のかかることです。この引越しという人生のハードルを「犬を理解する」機会に変えることが、飼い主としてタロウくんにとってできる最善のことです。飼い主さんはタロウくんの安定と安心のために真剣に取り組まれていました。

犬のトレーニングはまず犬を理解することです。引越し前の環境でカウンセリングを行いましたので、カウンセリングではこの環境がどのようにタロウくんに影響しているのかをお伝えしました。そして、タロウくんの行動観察や行動に関する情報を聞いて、現在のタロウくんの状態とタロウくんのためにどのような環境を整えることが安定した状態を導き出すことなのかもいっしょに考えていきました。

クレートを活用したトレーニングを導入しながら、長い留守番のストレスを解放させるためにしなければいけないこともたくさんあります。周囲の散歩コースは引越し前までは犬とも人とも会わないような田舎道だったのですが、その田舎道でも興奮して歩いていた社会性の育っていないタロウくんを落ち着かせるためには練習も時間もたくさん必要です。

散歩など外環境での犬の行動を安定させるためには、室内環境を整えるのが先です。家の中ではうちの犬は問題ないんです、散歩のときに引っ張るのだからと散歩の練習ばかりをしていると本当の問題を見失ってしまいます。本当の問題とは
「人と犬との関係づくり」です。それをわかりやすくしているのが、人と犬のテリトリーということです。

屋外飼育では犬の生活する場と、人の生活する場は分かれています。室内飼育では、閉ざされた空間である人の部屋の中に犬が生活することになります。ここで人と犬の関係が対立した状態であれば、互いの境界線が強すぎで犬はクレートから出ても落ち着かないという行動を示すようになります。飼い主さんとコミュニケーションをとりながら、お互いに「個」としてのスペースをしっかりと確保しながら、人と犬という家族という枠の中に入ること。それでも「人」と「犬」という生活の中に決められた互いのルールというのがありますので、人と犬はお互いの時間とスペースを尊重しながら過ごす必要あることなど、少しずつ飼い主さんは理解を進めていきました。飼い主さんの理解が進むと、犬に伝えたいことがこちらも少しずつ進んできます。

人がいると安定するようになったように思えても、室内飼育の別の問題も浮上してきます。室内で犬を飼育する場合には、人に依存させてしまいやすい傾向があります。過度になると分離不安といった状態で現れます。日本のアパートやマンションの部屋はそれほど広くありません。プライバシーを守るために窓も閉めたままになりがちで閉ざされた空間になりやすいのです。依存しやすい傾向はスペースの狭さからも生じてしまいます。

難しい環境の中でバランスをとっていくいうのは大変なことです。都市環境の犬と飼い主さんには、都市環境から抜け出す練習を取り入れながらいつかまた犬が元気なうちに新しい生活の場が見つかるといいなと思うのが正直なところです。
ですが、それまでは犬も飼い主さんのそばで毎日声をかけられるのを待っていることでしょう。タロウくんはまだまだ若いです。これから一歩ずつ飼い主さんと歩いていって豊かな毎日重ねていくのでしょうね。

※このコラムはグッドボーイハート生の成長を元に書いています。名前は仮名です。

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