一昨日のブログ→昨日のブログ
からの続き文です。
昨日のブログで犬の攻撃性行動はどのように使われるのかを考えることから始めました。
わかりやすくするため二つにわけで考えていきます。
1 どのような時(状況)に使うのか
2 どのような方法(表現)を用いるのか
(1)のどのような時に使うのかについては、昨日のブログで説明しました。
今日は(2)のどのような方法を用いるのかについて説明します。
犬は人のように様々な道具を用いて攻撃することはありません。犬はもっと単純に攻撃行動をまさに行動として表現するだけです。
(2)を言い換えれば、犬は攻撃性行動をどのように表現するのかということです。
攻撃性行動にはいろいろな表現があります。
咬みつくことだけが犬の攻撃ではありません。
たとえば、こんな行動も攻撃性を表現する行動です。
唸る → 声を伴う
吠える → 声を伴う
飛びつき
甘噛み(軽くくわえる)
牙を見せる
牙を当てる
咬みつく
これらが代表的な攻撃性行動です。
飛びつきや体当たりについては、興奮したときに出る攻撃性行動としてあげることもできます。ここでは咬みつきが起こりやすい攻撃性行動に焦点をあてていますが、飛びつき、体当たり、甘噛み(軽くくわえる)はその予備軍です。
甘噛み(軽くくわえる)、飛びつき、体当たりなどは攻撃性行動としては見落とされやすい行動です。攻撃性行動が出現しにくい未熟な年齢で起きます。未熟というのは実際の年齢ではなく、成長していない依存性の高い行動が見られる状態を指します。興奮すると、飛びつく、体当たり、甘噛みといわれる口で軽くくわえるという行動が出始めます。この行動は遊び行動として見過ごさずに、この時期に犬の状態に気づき対応する必要があります。それが咬みつきに変化するのは成長段階の、ほんの一瞬なのです。吠えない大人しい犬だと思われていた犬が、突然咬みついたように思われていることもあります。
これらの攻撃性行動のうちの上の二つ“唸る”と“吠える”は声を伴う行動です。
攻撃性行動はできるだけ戦わないために必要な行動ですから、わかりやすい声(音)という表現により戦いを避けるために“唸る”と“吠える”が使われます。攻撃性行動の中で表現されるときにはどちらも低い音です。人の言葉に置き換えるなら、こっちへ来るなとか、それ以上近づくな、下がれ、手を出すなという感じで、いずれも領域を守るために使われます。いわゆる「警告音」です。
唸る、吠えるという警告が通用しないと、飛びついて牙を当てるとか、咬みつくという行動に転じます。自分の領域から逃げ出したり離れることができない状況であるとき、もしくはなんらかの理由で領域をどうしても死守する必要があり、相手が下がらないのであればいたし方ありません。
それでも、牙を当てるという行動は致命傷を負わせるのが目的ではありません。少し刃を相手に向けて、相手が退散することを目的とした行動です。牙をあてて相手がひるんだすきに逃げ出す犬もいます。
そして、最後に本当に咬みつくという行動にいたります。最後の最後に選択すべき行動です。こちらが相手を傷つけてしまえば、結果相手の攻撃性を引き出すことになってしまい、自分が攻撃によってやられてしまうかもしれないからです。それでも、戦うしかないという状況下では、咬みつかれる前に咬みつけというのもひとつの選択でしょう。
それは、どうしても守るべきもの、つまり逃げることのできない子を抱えているときや、動きがとれずに逃げられないとき、そしてつながれたり拘束されていて逃げることができないという状況が、この戦うという選択を引き出してしまいます。
犬と接するときに、唸ったり吠えたりしてくれるときは分かりやすいので助かるなと感じます。唸る、吠えるといった声を発する攻撃性行動を人は受け取ります。
動物に唸られると人は後ずさります。それは人の動物としての本能的な反応のようです。犬の行動学を勉強していない人でさえ、むしろ、していない人の方が素直にこの警告音に反応するでしょう。
逆に、非常に攻撃態勢に入っていると推測されるのに、その表現のない犬たちがいます。全く声を発することもなく、体を攻撃態勢にすることもなく、立ったままで表情も変わりません。犬の表情が変わるのは、唸るときにシワをよせたり、牙を見せるときに唇を上げるような表情でもわかるのですが、その表情もありません。
そうです。犬の中には唸ったり吠えたりする警告なしに、いきなり咬みつく行動にでるタイプの犬がいます。そして、これらの行動パターンをもつ犬は、相手に警告を与えることなく咬みつきの事故が起きてしまいます。
このような警告せずに咬みつきにいたる犬について、事前に何か知っておくことができるのかについて考えていきましょう。
次回に続きます。