グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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オヤツのごほうびがなくても犬は学習する:チンパンジーアイとアユムの動画ご紹介

犬のトレーニングからはなかなか「ごほうびと罰」を切り離すことはできません。
動物の学習には、その多くの場面で「ごほうびと罰」が存在してしまいます。

ただ、多少切り離して考える必要のある側面があります。

たとえば、認めるという行為や気持ちは、行動を強化させるトレーニングでのごほうびとは切り離す必要があります。
さらに、叱るという行為や気持ちは、行動を抑える罰としての使用とは異なると考える必要があります。

認めるとか、叱るという行為や気持ちの実現には、体罰は必要ありません。
叱る行為には相手を脅かす必要はありません。
犬に大きな声を出さなければ受け取れないような状況にあるなら、
その犬はかなり興奮していて、不安定な状態にあるといえるのです。


さて、今日は食べ物のごほうびについて考えを集中してお話しします。

犬に食べ物のごほうびを使わずに生活のルールを教えることはできるか?
答えはできます。

ただ、これにはそれを実現する環境が必要です。
整えるべき環境には次のようなものがあります。

遺伝的に健康であること
犬の発育・発達を促せる環境であること
人が犬に対して、犬という動物として接触できること

これらの環境と発達する環境を整えること、世話をする人という動物との関係性が犬の行動に重要な影響を与えることは、いうまでもありません。

実は、以前盲導犬育成施設に勤務していたさいに、パピーウォーカーの指導の業務を担当してことがあります。
パピーウォーカーとは、盲導犬候補生である子犬を生後2ヶ月から1才までご家庭で飼育してくださるボランティアさんのことをいいます。

このパピーウォーカー制度がないと、盲導犬育成事業はなりたたない上に、パピーウォーカーは毎日犬のお世話をするという大変な仕事です。

パピーウォーカーはただ子犬に食べ物を与えて散歩に連れ出すだけではありません。
犬は生後1才までの飼育環境が、その犬の性質や心身、脳の発達にも重要な時期です。

パピーウォーカーには様々なルールをお願いします。
その中に、子犬に対して生活のルールを教えていくということも入っています。
日常生活で必要なルールを、パピーウォーカーさんには食べ物を使わずに教えていただいていました。

覚えることよりも、食べ物を報酬に使わずに伝える方法や過程が、のちにその犬が盲導犬として働くための訓練を受ける上で重要な基盤になっていきます。

食べ物を報酬に使わずに、犬にルールを伝えていく、犬に協力を要請するからには、それなりの関係を築く必要があるのです。


 さて先日、本の紹介をかねて、京都大学霊長類研究所の松沢哲郎先生の「想像するちから」をご紹介しました。
ブログ記事はこちらから→ヒト科ヒト属ヒトとして:松沢哲郎氏著書「想像するちから」

 松沢哲郎先生は本著の中で、このように述べられていました。
チンパンジーの実験には、チンパンジーができたら食べ物が出てくるという方法をとらえている。しかし、チンパンジーが実験者との信頼関係を築くと、食べ物がなくても実験に協力してくれるというものでした。

チンパンジーのアイとその子どものアユムの研究について、講演で使用したビデオで実験の様子を見ることができます。さらに松沢先生自身が行っているそのチンパンジーのテストを重ねる実験で、チンパンジーたちが食べ物の報酬がないのに、行動をする様子が映し出されています。

その動画はこちらでご覧ください。

米国科学会の講演ビデオ「アイとアユム」を公開しました。

 それにしても、動画に出てくるチンパンジーの記憶能力はすごいものですね。自分が同じことができるようになるために、どのくらいの時間がかかるのか、もしくはできないのではないかとも思います。


 動物の能力やコミュニケーションの欲求を、表面的なものだけで見てしまうことは、もったいないことです。

犬という動物の能力や可能性を考えるとき、できる限り食べ物の報酬を用いずに、関係を築きながら共有する生活空間のルールを教えていただきたいと思います。

何からはじめなければいけないのかと、混乱されるかもしれません。

まずは、よく犬を観察して犬のコミュニケーションを理解しましょう。
このことなくしては、その先はありません。
千里の道も一歩からということです。

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Posted in 音声・動画, 犬のこと

整体士の先生による講座を開催しました:講座からも学べる、犬をワサワサと触らないでほしい理由

 本日は午後からグッドボーイハート七山校で、整体士の先生による出張講座「ホームセラピスト講座 頭蓋骨と姿勢」が行われました。

勉強熱心な生徒さんたちが集まり耳を傾けていました。

実技のときには食い入るように観察して、「へー」を連発しながら、家族にできる手当てのいくつかを学びました。

今回は私も生徒としてみなさんといっしょに受講しましたので、楽しく勉強させていただきました。

 いろんな楽しい学びがあるのですが、ソフトに触った方が力強く触るよりも相手を楽にする手当てにつながるというのは犬にも共通しています。
多くの飼い主さんに知っていただきたいことのひとつです。



 犬は飼い主さんの状態にとても敏感に反応してしまいます。

飼い主さんが緊張すると犬も緊張するし、飼い主さんが力を抜くと犬も力を抜きます。

そうそう、その通りと頭ではわかっているようで、実際には力みの多い光景をよくみかけます。

それが、今回のブログの題名の「犬をワサワサとさわる」という行為です。


 本日の人用の手当ての講座でも、強く触れると相手は力が入ってしまい、逆にバランスを崩してしまう。

やさしく触れると相手は力を抜くことができて、バランスよく支えられるというような実体験もみせていただけました。


 犬を見るとテンションの上がってしまう人が多いというのが事実です。

たとえば、犬を見ると「あーかわいい!」と声を上げたり、駆け寄ったり、思ったりすることも
テンションの上がっている、つまり興奮していることのシグナルです。

その興奮したテンションのまま犬に近付いていって、犬の体をワサワサと触っていないでしょうか。



このようなワサワサと手を動かしながら激しく犬に触ると、当然ですが犬もテンションがあがります。
つまり、犬は興奮してしまいます。

興奮してしまった犬の中には、触った人にとびついたり、体をおしつけたり、
その辺をウロウロと動き回って落ち着きをなくしてしまいます。

こうした犬の行動を見た人は、「犬が喜んでいる。私のことが好きなのね。」と
なぜか自信を持って説明してくれるようです。


 まず、犬が興奮することを「好き」という表現で片付けてしまうのは止めましょう。
好きというのは一時的な感情のことで、実は好きなものは一瞬で嫌いになってしまうものなのです。
自分にあてはめても思い当ることはないでしょうか。

あんなに好きだと思っていたのに、いまや見たくもないと思うものになってしまうことはよくあることです。

 次に、犬が興奮することを「喜んでいる」という前向きに受け取ってしまうことも気をつける必要があります。

確かに、テンションが上がるというのは、下がるよりも良い印象を受けます。

多少の興奮は犬を心地よくさせることがあるのも事実です。

でも、飛びあがったり、多動になったり、声をあげたり、落ち着きなくウロウロするという行動をするようになるというのは、興奮にも度が過ぎるというものです。

これらの、激しく触られた犬たちは明らかにストレス状態に陥っています。


 まず、ある程度落ち着いて接触できる犬なら、触り方を変えてみましょう。

ワサワサと硬い手を忙しく動かしながら「カワイイー」と叫ぶのを止めます。

そして、静かに相手が近づいてくるのをまって、犬がリラックスしていると感じたら(ここ大切!)
やさしく手を添えるように犬のそばにおきます。

犬はとてもエネルギーのある動物で、手を近くに置いているだけで何かに触れたように感じられるほどです。

いや感じられないという方は、やさしく手を当てる程度にして、短く切り上げてください。


 くり返していくと、犬は少しずつ落ち着いていきます。

こんなことをグッドボーイハートクラスのドッグタッチクラスで行っていましたが、
今回、このクラスをリニューアル&バージョンアップさせましたので、またブログでご案内します。

ふれることは手当てであること、そしてとても深いコミュニケーションであることを、
ひとりでも多くの方に体感していただきたいと思います。


今日のセミナーでは、生徒さん同志が触れ合って、ワイワイと楽しく健康に近付いていきました。
多くのことばはいらないよ、最後は黙って触れあうということですね。

今回の講座は、整体士の先生のブログで案内されています。
関心のある方はぜひ以下のページからご覧ください。
ともナチュラル整体院ブログ

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Posted in 犬のこと

犬にテレビを見せていますか?:犬の認知力の発達は犬の幸せにつながる

 最近、テレビにまつわる説明や話をトレーニングクラスですることがあり、そろそろブログで紹介しなければいけないと思いつつ遅くなりました。
紹介が遅くなった理由は、科学的な情報が集められず推測の範囲内をでていない状態からです。

 その情報とは、犬の認知力の発達とテレビの関連性についてです。
犬の認知力の発達について情報を得たいと思っても、テレビの存在以外にも認知の発達に影響を与えるものもたくさんあるからです。
たとえば、人為的繁殖、子犬期の飼育環境、現在の飼育環境、経験、飼い主の接し方などどです。
 
 これらの条件がすべて同じで、テレビの存在だけが違うという条件にはなかなかなりません。
そのため、現在では十分に情報として提供できるものはありません。
しかし、クラスを受講される生徒さん方にはとても重要な情報としてお伝えしています。

 今日は、みんなで考える機会としていただきたいので、テレビと認知力の発達の関連性について本当に簡単にお伝えします。


 まず、テレビと犬の関連性について考えます。
みなさんも自分の環境と照らし合わせながら考えてみてください。

あなたのご家庭の犬はテレビを見ますか?犬はテレビを見ませんか?

あなたの犬はテレビを見ていることがありますか?
もしくはあなたの犬はテレビには関心を示しませんか?

あなたの犬はテレビの中の犬や動物、人に反応しますか?

あなたの犬はテレビのインターホンに反応しますか?


もし犬が後者の質問のテレビの中の映像やインターホンに吠えたり、注目したりするような行動があるのなら、その犬は認知力が不十分です。

犬がテレビを見たり関心を示すことを、人と同じように知能が発達したからだと考えるのは違います。

人はテレビを擬似的なものとしてみています。

テレビに写っている人の姿や風景を認識したり、音を聞いて情報を得ることはできますが、その情報は今自分の目の前で起きていることではないということを同時に認識することができます。
これが人の認知力による情報判断です。


ところが犬の場合には、テレビの音を現実的なインターホンの音と間違えます。
テレビの中に写っている犬を実際に目の前に犬がいるのだと勘違いします。
それが吠える行動につながるのです。

認知とは現実の環境のあるものを、そのものとして捉える力のことをいいます。
テレビに映っているものは現実に目の前にあるものではありません。
認知力の発達している犬は、テレビの音や映像を無視します。
臭いのないものはそこには存在しないという風に判断するため、その情報を得ようとしません。

正確には臭いだけではありません。もっと高い感知能力を使っていると思われます。
犬の臭いを感知する能力は人には計り知れないものですが、
さすがに犬といえども、数キロも離れたところを歩く人の臭いをひろうことはできません。
ここにはまた別の情報判断、状況判断が犬の脳内で行われています。


はなしをテレビに戻します。

そのテレビの映像や音が実際のものだとして反応を示す犬には、他にも行動の特徴があります。

新しいもの、今までに見たことのないものに対して興奮したり認識できないという反応を示す。
上記のものを大変警戒してなかなか順応できないという順応性の低さも示します。
社会的にも、適切な環境把握に時間がかかるため、吠えたりとびついたり興奮したりすることが多いという特徴も持ちます。

もちろん行動には個体差が大きく出ます。
少し出るということもあれば、非常にはっきりとしている場合もあるでしょう。

これらの犬の飼い主さんに尋ねると、家でもテレビをじっとみていることがあるというのです。

犬が何かをじっとみるのは警戒をしているシグナルであることがあります。
特に、動くものや社会的な対象に対しては、警戒するとじーとみて目を離すことができません。
釘付けという感じになりますね。

ちいさな子供がすれ違うときにじーっとみてくるあの感じです。
犬も地面に何かわからない虫がいて関心を示すとそれをじーと見ながら臭いを嗅いだり観察をします。
しかし観察といっても見ているだけではないのです。
ちょっと手をかけてみたり、周りをうろうろとしてみたり、
近付いて再び臭いをとり、そしてまた遠巻きに視るなどを繰り返します。

やがてそれが自分に害を及ぼさないとわかったり、興味をなくすとみることもなくなります。

子犬は蟻1匹でさえ多くの時間を使えるものですが、数日たつともう蟻にも関心がなくなります。

こうして犬の認知力は形成されていくのです。


テレビをじーっとみているのは警戒して観察行動に移っているのですが、
行動を伴わない観察というのはありません。
見ているだけで、行動をしないのであれば、それは脳が機能停止に陥っているためです。

認知力形成には行動が伴うのです。
特に脚で形成される犬という動物の場合には必ず行動が伴います。

このままテレビを見ることを継続させると、犬の認知力はますます低下してしまいます。


まず、お伝えしたいのは犬にテレビを見せるのを止めましょう。
少なくとも、犬にテレビを見せるのが社会的な発達につながると思っているなら
もう一度よく仕組みについて考えてみてください。

つぎに、テレビをみながら犬を抱っこするのも止めましょう。
これは子犬期に多くの方がやっていて、このことで犬の認知力が発達しにくい状況になっています。

そして最後に、テレビは必要なときだけみるようにしましょう。
これは室内環境が犬にとっても大切な場所であり、お互いの共有のスペースであることから、
犬にも少し気使いを与えてほしいという気持ちからです。

ちなみに、グッドボーイハートでのお付き合いが長い方はご存知ですが、私はテレビを持っていません。
もともとは持っていたのですが、犬と暮らし始めてからテレビを見ているときは自分だけの時間になってしまうことに気づき、またテレビをなかなか消せないのは疲れているときであることもわかったので処分しました。15年くらい前のことになります。

そのときには、テレビと犬の認知形成の影響について考えるとろこまではいたりませんでした。

しかし今ならかなり高い信頼度で、テレビを犬が見ることは犬の脳形成に悪影響しかないことを主張できます。


 偶然ですが、本日ネット配信のニュースで環境科学者の先生がテレビが人の脳に与える影響について説明されているのを視ました。
人間もテレビによって脳の情報が異常になってきているのではないかという懸念を話されていました
以前は人間は直接見たものによって必要な情報を処理していたのに、今はテレビを通して得た視覚的情報に偏って、脳が形成されているからだというのです。
 先日台風の日にレッスンで移動しているときに、台風といってもほとんど風も雨も穏やかな状態でした。ところが状況を確認しようとしてくださった生徒さんがテレビをつけると、テレビの映像は大雨に風が吹いて大変ひ
どい風景が放送されていました。
台風の日でも、大雨のところもあれば風は雨もなく安心して外出できるところもあるという正確な放送をしないで、台風で人が不安を抱えているところにその不安をあおるような映像だけを出して人の心理に働きかけるような放送をされてしまうと、人はテレビを正しい情報提供の場としては受け取れません。
 テレビは文明の利器。しかしそこで情報を出しているのは人であり、人はよく間違えます。
テレビの内容を受け取る人の方に、情報を選択する力を必要とされています。必要でないものは見ないという選択も大切ではないでしょうか。

 ということで、犬にとっても人にとってもテレビのつけっぱなしはお薦めしません。
環境整備のひとつと思い、テレビと上手にお付き合いください。

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Posted in 犬のこと

犬の衝動的な行動は危険であること:庭先に出現したウリボウを想う

今朝、七山校で窓を開けているときに、動物がまた栗を拾って食べている風景を見ました。

最近、落ちている栗やら柿などの食べ物を、いろんな野生動物たちが食べにきています。

最初は「ああ、また何か動物が来ているのね」と単純に思ったのですが、いつもと違う感じに一瞬注目してしまいました。
アナグマかと思ったその小さな動物の背中に、縞々の模様が入っていたからです。

窓の向こうにいた動物は、よく見るとウリボウでした。
ウリボウはイノシシの子供です。
瓜のような縞模様の柄をしているのでウリボウという愛称で呼ばれています。

ウリボウを見かけたらすぐに次のものを探します。
お母さんイノシシです。

ウリボウの柄がある年齢のときには、母親のイノシシといつもいっしょに行動しています。
ひとりで行動できるようになると、親離れをして単独行動をするイノシシ。
そのころにはこのウリ柄がなくなっています。

母親イノシシは5,6頭のウリボウたちを引き連れて行動しています。
移動の際には母イノシシを先頭しにして、一列に並ぶように歩いているのを見たこともあります。


この窓の向こうにいるウリボウは、母イノシシからはぐれたのでしょう。
この年齢で母イノシシの群れから離れてしまうと、ひとりで生きていくのは困難なことです。
それなのに、まだ母イノシシから離れたことを気づいていないのか、のんきに栗を食べています。


ウリボウがひとりで生きていけない理由は、自律に必要な学習を終えていないこと。
自分の身を守る防衛行動が不足しているために、他の動物に襲われやすいことです。
ウリボウを食べる動物は、タヌキ、イタチ、キツネ、トンビ、カラスと山の中にたくさんいます。

ウリボウが母イノシシから離れてしまった理由は、ただひとつです。

母イノシシが移動するときにそれに気づかなかったのです。
何かに夢中になっていたか、栗を食べるのに夢中になっていたのかもしれません。
もしくは、栗拾いをするうちに母イノシシから自分が離れた可能性もあります。

母イノシシは移動の際に多少はウリボウの集合を待ちますが、
すべてのウリボウを集合させることはできません。
なにしろ、1頭の母イノシシが数頭のウリボウを管理しているのです。

1頭の自分勝手な行動をするウリボウを捜していたら、他のウリボウまで危険にさらしてしまいます。

母イノシシの動きをよくみていなかった衝動的に行動してしまったウリボウは
そのまま置いていくことになるのです。

こうした衝動的なウリボウは、他の動物に食べられたり、餓死してしまいます。

そのためこうしたウリボウが子供を残すことはなく、この遺伝子は受け継がれません。


これが動物の遺伝の仕組みです。

動物はより安全に行動できる動物の遺伝子を、次の世代につないでいきます。
そうすることが種の継続につながるからです。
衝動的な動物は途中で死に絶えてしまうため、自然界では遺伝子を残せません。

厳しいと感じられるかもしれませんが、これが自然界の動物のしくみです。


そこで犬のことを考えます。

犬はとても衝動的に傾いています。

なぜなら、犬の繁殖には人の「好み」が反映されて人為的な繁殖がくり返されているからです。
純血種の犬は、まさにこの好みのために繁殖された犬たちです。

これらの犬は囲われた敷地や室内で飼うことを前提にしています。
衝動的であっても野生の世界のように、淘汰されてしまうことはありません。

人の好む犬の外見は、小さいもの、鼻の短いもの、脚の短いもの、毛質の異常なもの、大きすぎるものが
多くなっています。
これらの形質は犬という動物からはかなりかけ離れているため、遺伝的には非常に危険な濃い血液で作られています。
そのため精神的にも身体的にも、不健康な犬ができてしまいます。

本来の自然な動物であれば危険な衝動性も、淘汰されることなく犬たちの中に残されてしまいます。

犬は急に走り出したり、走り回ったり、とびついたり、ギャンギャンと吠えることが多くなりました。

めったなことで声を出したり急に走り出したりすることのない野生動物のような慎重さはなくなっています。

それだけに犬は自分では安全を確保することが難しくなっています。


犬を飼う人はこう考えるかもしれません。

犬は人に飼うために生まれてきた動物なのだから、囲いの中で安全であればそれでいいのだと。
犬は走り回ったり、とびついたり、ギャンギャンと吠えている方が可愛らしいのだと思うかもしれません。

犬の身になって考えるとどうでしょうか。
環境の変化に驚いたり敏感になったり、ストレスを抱えやすくなっている犬の立場に立ってみます。
衝動的な行動がくり返されて学習行動となり、いつも脳がハイになっている犬の立場に立ってみます。

やはりこれは、とても大変な生き方になってしまうと思うのです。

すでに繁殖されてしまい生まれてしまった犬たちには、
少しでも環境整備を通して、落ち着きを取り戻すための方法を身につけていってください。
それが犬のストレスを軽減させる方法であり、犬が安心を獲得する方法です。

これから犬を飼う方には、興奮しやすく衝動的な犬ではなく、落ち着いて自律する力のある犬を求めて欲しいと思います。

繁殖をする側は、犬を飼う人が求める犬を繁殖させているだけです。

興奮しやすく衝動的な犬は、走り出したり突然攻撃したりします。
よく吠えたり奇声を発したりします。

こうした犬を迎えて悩んでいたとしても、それを繁殖した方のせいにしても何も変わりません。


人為的な繁殖による犬の内的な質の変化について、犬を求める飼い主の方々もいっしょに考えていただければと思います。


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間違った犬用オムツの使い方:犬という動物を犬として尊重するためにために

犬用オムツというペット用品があるのをご存知でしょうか。

犬用オムツは犬が室内飼育などで長生きをするようになることでできた商品です。
老犬の犬用オムツの使用については、犬に負担のないようにすることを前提に
犬を衛生に保ちストレスを軽減させるために役立てることができます。

犬用オムツでなくとも赤ちゃん用のオムツを犬用に改良して使うこともできます。

病気などで介護が必要になった犬たちのケアのためにも必需品です。


ところが、この犬用オムツの使い方についてあえて苦言を呈したいことがありました。


実は先日、犬用オムツ商品のコマーシャルをネットで見て愕然としました。
そのCMではペット用品で犬用であることを提示しながらも、オムツという言葉は一切つかっていませんでした。
用途はオムツなのですが、名前はマナーなんとかというように変えられていたのです。

CMの映像では、そのマナーなんとかいうオムツを着せられた犬が飼い主といっしょにリードでお出かけをするというものでした。

なんと、そのマナー用のオムツを着けていれば、どこで排泄しても大丈夫、どこでもいっしょに行けるねというイメージの商品だったのです。


同じような風景を、これまでも街中で見かけたことはあります。

犬を連れて入れるペットやショップの中で、マナーベルトといわれるオス犬用の腹巻のようなベルトです。
ベルトの中には婦人用の整理パッドを入れて使うようになっています。
オス犬が脚をあげマーキングをしても室内を汚さないという理由でつけているのです。

このマナーベルトの装着はもちろんビックリすることですが、
一部の犬という動物への知識が不十分な場合の対処法なのかと思っていました。

ところが今回、衛生用品の大手会社が堂々とコマーシャルしていたの内容を見て愕然としました。


老犬は介護犬で排泄行動が機能不全に陥っている犬の助けのために犬用オムツを使うことは、動物の立場からみても健全なサポートです。

しかし、排泄行動が適切に行われる犬に対して犬用オムツを着けるのは、動物の尊厳に反します。

犬用オムツというと体裁が悪いからなのか、マナーベルトとかマナーパットと称して、
いかにもマナーを守っている良い姿勢としてアピールするのは全くの検討違いです。


オムツをはめないと不適切な場所で犬が排泄をするのは次のような理由があります。

・犬の不適切な場所での排泄は犬のストレス行動である

・犬は生活環境(生活テリトリー)を汚さない動物であり、排泄は生活環境では行わない
※室内でしか排泄できない犬や、室内でしか排泄の機会が与えられていない場合には
排泄場所の再検討と再教育をすすめます。

・犬は移動中、飼い主の管理の元では不適切に排泄をしない。
※犬にとってマーキングは自分のテリトリーを主張する行為。犬が生活環境を離れて移動の際には、飼い主がリードで管理した上で、適切な場所を確保して誘導することで排泄行動が成立する。

・犬は車などで生活テリトリーを離れて移動する際には、適切な排泄場所を確保できるかどうか事前に確認しておく必要がある。犬に排泄を必要以上にがまんさせることと、不適切な場所でマーキングをしなければいけないように追い込むことは飼い主としての環境を整える準備が不十分である。


犬はどこにでも排泄を垂れ流すような動物ではありません。

犬は人と行動を共にするときには人と同じく社会的な行動を要求されています。
犬が社会的に行動できるよう成長していないのに、外出に連れ出すことが、
犬のストレスになることを飼い主は理解する必要があるのです。

犬が未熟で抱っこされないと落ち着かないような赤ちゃん犬なのに、
ドッグカフェやレストランなどに連れ出すのは不安になることを理解しましょう。

犬は成長と発達の機会を与えられる必要のある動物です。
また、それを与えるのは飼い主である自分しかいないことを知ってください。


犬の成長と発達は、犬をほめたり叱ったりすることではありません。

飼い主には毎日一定時間を犬と共に過ごす空間と時間といった環境が必要です。
犬育てにはお金以上に、時間と手間が必要なのであり、それが犬育ての楽しみそのものです。


便利なマナーオムツの普及で、犬という動物の尊厳が否定されることがないよう、
違うのではないかと思うことでしたので、あえて言わせていただきました。

マナーベルトやマナーオムツを知らずにはめている方には、
不適切な排泄は犬のストレス行動であることを伝えてください。

そして、自分たちは飼い主として不適切に排泄をすることのないように
室内でも屋外でも、散歩中でも、外出先でも、十分に環境整備に配慮をしていきましょう。

さらに、犬が不適切な排泄をすることのないように成長を促していきましょう。

それが犬と暮らすということだと思うからです。


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犬を叱るタイミング:犬には「罰」より「警告」を!

犬を叱るタイミングが、ずれていないでしょうか?

たとえば、テーブルに前脚をかけることやテーブルに乗ることを止めさせたいとします。

そのためには、テーブルに前脚をかけてはいけないということを教える必要があります。

やって欲しい事を教えるよりもやってはいけないことを教えるほうが
実は難しいものです。


伝えるのなら、犬にわかるように伝えなければ意味がありません。

意味がないどころか、犬は理解しないため同じ行動を繰り返します。

そして飼い主はいつも怒っていることになります。


叱るタイミングはこうです。

犬がテーブルに前脚をかける「前に」、警告音を発してください。

警告音は声で発します。
決して道具を使わないでください。

どんな言葉でも構いません。
「イケナイ」でも「ノー」でも「ダメ」でも結構です。

犬の名前は使わないでください。
犬は名前を持たない動物です。
犬同志は名前で呼び合うことはありません。

犬が自分の名前に反応するのは、それが特別の合図だからです。
だから叱る言葉には使いません。


テーブルに犬が脚をかけるときには、
テーブルに前脚をかけそうになるとき
犬の前脚が地面から離れる瞬間もしくは、
犬が前脚をかけようと体の向きを変えた瞬間です。

テーブルの前をウロウロとしてるときでも
あやしいと思ったら「そこ、イケナイでしょ」と警告を発します。

犬がテーブルに脚をかけてしまったあとに叱ると、
それはすでに「罰」になってしまいます。


自分に置き換えて考えます。

車に乗っているときに「止まれ」の表示で、スピードは落としたもののはっきりと停止しませんでした。

後ろからパトカーがウィーンといって追ってきます。
「はーい、そこ止まりなさい」とマイクでいわれるかもしれません。

すでに、罰です。
罰を受けることが決定した瞬間です。

それなら、止まれで停止できるように「はい、そこ止まりなさい」と
止まれの表示のところ言ってくれればいいのにと思いませんか?

実は、後者の方が圧倒的に交通ルールを守らせることができる仕組みです。
生物学的に考えてもそうなります。

では、なぜそうしないのか。
交通ルール違反の罰金を集めているからです。
年間に数十億の罰金が集まり、交通整備として使われているそうです。
罰金が集まらなければ、他の税金を回さなければいけません。
という大人の都合でこうなっています。

犬たちにはこんな思いをさせるのは止めましょう。

罰を与えるよりも前に、警告を与えましょう。

ほんの小さなイタズラやルールを知らなかったという犬は、
たいていはこれでおさまります。

あとは警告をいつまで続けるかというだけです。
根本解決には、犬と飼い主の成長は必須です。

dav

Posted in 犬のこと

ラジオ放送補足版:イヌのゴハンはどう選ぶのか?

 ラブFMで放送された月下虫音を聴いて、たくさんの方から感想や励ましのお言葉をいただきました。
遅い時間に耳を貸していただきありがとうございました。

 ラジオ放送では話せなかった事、補足も含めていくつか紹介させていただきます。


● 犬のゴハンを考える前に、犬の基本的な安全欲求を満たすこと

 放送された内容にひとつに、犬のゴハンは何を与えたらいいのだろう?という質問がありました。結論からいうと、環境と個体により異なるというしかありません。ラジオの中ではこのフードがいいという話をすることは、あえて避けました。情報集めはいくらしてもきりはないし、もっと大切なことを今回はお伝えしかったからです。

 もっと大切なこととは、どんなに栄養価の高いバランスのとれた食事も、犬がストレス状態にあったり、環境に強いストレスを感じると食べたものもきちんと消化して見になることはありませんということです。食事の前に環境の安定性を考えて欲しいということをお話ししました。

 その上で、次にゴハンについて考えるなら、いくつか参考になることがあります。


● 犬のゴハンはどうやって選べばいいのか?

 食事にはいくつかの選択肢があります。加工されたフード、手作りで加工したフード、手作りで加工を少なくしたフード、加工の少ない市販のフード、缶詰、療法食など、いくつもの選択肢があります。

 この中で自分の犬のためにより良い食品を選ぼうと思うなら、まず、外してほしい食品はこんなものです。

 添加物が多く臭いのきついものは省いてあげてください。人工的な添加物は化学薬品です。ビタミン剤もこの中に入ります。これらは大変臭いがきつく、犬の体臭にも影響します。しかし、ドッグフードには規制値というのがあり、これらの科学的な添加物がたくさん混入されています。添加物によって栄養バランスがとれたように思わせているだけで、犬にとって健康的な食品とはいえません。

 犬は食べ物を臭いでかぎわけて食べています。よく加工されたフードは消化はいいものでも、個体の食べ物のにおいがしません。たとえば、鶏肉が入っていても鶏肉の臭いはしません。こうしたフードは加工されていることで安定した排泄物をつくりだしますが、犬にとっては喜びの低いフードです。食べる喜びという欲求が満たされないものです。

 とはいえ、犬の中には加工されたフードしか食べられない犬たちもいます。いきなりいろんな食材の入った手作りゴハンを与えてしまうと消化不良を起こしてしまう場合です。これらの犬たちには、加工されたフードが一定期間は必要になります。もちろん、飼い主さんの方が手作りゴハンを与えることも難しいという生活をされているなら、加工食品の一部を臭いのある個別の食べ物を加えることで、食の満足をアップさせてほしいものです。

 手作りゴハンを与えている場合には、ナチュラルなフードに近く犬たちは食を楽しんでいるでしょう。食べ物を生で与えるかどうかは、犬のお腹は食材の確保の仕方、気温などの外的な環境との兼ね合いを見ながら判断してください。

 犬にあった食事とは、犬の身体的な消化能力を含む個体による差、季節や気温による変化により様々なのです。たとえば、この夏はとても暑く皆さんの中にも食欲が低下された方もいたかもしれません。実はわたしもゴハンがあまり食べられなくなり、加工された食品を食べ続けることもありました。気温が下がったり体調を取り戻して、ようやく普通に食事ができるようになりました。

 犬も年齢や状態によって、受け付けるものと受け付けないものがあります。老犬になるとますますこれが激しくなります。それまで加工されたドライフードしか与えたことのない犬でも、ササミや豆腐などの食品しか食べられなくなる犬もいます。犬と話し合いながらその犬にあった、そして犬が喜ぶ食事を選んでいってください。


● ラジオを聴いたあとでうれしいコメント

 生徒さんのおひとりから、こんなコメントをいただきました。

「はじめて犬にバナナを与えました。本当においしそうに食べていました。
今まで、ドッグフード以外のものは与えてはいけないと思っていたけど、
食べる楽しみも大切だと気づきました。」

 犬に健康で病気なく過ごしてほしいという気持ちはよくわかります。
でも、自分たちにあてて考えれば、このストレス社会でそんなに節制して体にいいものだけを食べ続けることができるでしょうか。あまり乱暴な食事になってはいけないけど、ときには果物も食べたいしといろいろと食べてしまいます。その食べ物を室内で暮らす犬たちはいつもそばで臭いを嗅いでチェックしているのです。


 以前、人の食事のときにいつもワンワンと吠える犬がいました。食欲はあって加工されてある程度の価格のする栄養バランスととれているとうたわれていたドッグフードを与えられていました。
 犬の様子を見て、飼い主さんとも話し合い、手作りゴハンに変えていただくことにしました。手作りで食材の臭いのする食べ物を食べるようになってすぐに、人の食事のときの吠えはなくなりました。
 ドッグフードを仕方なく食べていたのですね。逆にストレスだったのかガツガツと早食いだったのに、手作りゴハンにしてから味わうように食べてくれるようになってくれました。

 ゴハンを選ぶことも、これがいいといわれたからと選ぶのではなく、自分の犬にとって最適なゴハンは何かな?ストレスなく過ごせているかなと考える機会になると、犬のことをまた知るチャンスを得られます。


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犬語セミナーに学ぶ犬の世界:犬語の深読みを学ぼう

 週末はグッドボーイハート七山校で犬語セミナーを開催しました。今回は上級者編として開催しました。内容もいつもよりも深いものとなり学びの多い時間でした。


● なぜ、犬語を学ぶ必要があるのか

 七山校では毎月、福岡校では不定期に開催している「犬語セミナー」。犬のさまざまなコミュニケーションを読みとる学習をし、犬への理解を深める座学の講座です。そもそも、犬との暮らしの中で飼い主さんたちが最も興味があるのは「犬は何を考えているのだろう」「犬はどういう気持ちでいるんだろう」ということです。

 犬が考えていることに対する理解がなかなか進まず行き違いが生じるのは、お互いにこちらはヒトであり、向こうはイヌであることから、“種”のことなる動物だという違いがあるからです。そのため、犬の持つコミュニケーションの表現の中から人側がそのシグナルを読み取り受け取る練習をするのは、犬を飼う上で最優先させるべき学習項目です。はっきりといえば、それは犬にオテやオスワリを教えることよりも、ずっと大切なことです。

 ところが、これらのコミュニケーションはなかなか習得することが難しいのも事実です。たとえば、本にも犬の会話を知ろうというものがありますが、図や写真で紹介されるものと、実際のコミュニケーションには差が出てしまいます。比較的わかりやすいシグナルに落ち着かせ行動(カーミングシグナルとも呼ばれる)があります。これらのシグナルは単発で短いシグナルであるために、拾いやすくわかりやすいシグナルです。

 しかし、ほとんどのコミュニケーションは動きや音などといっしょに表現されるため、単純に受け取ることもできません。その犬のコミュニケーションをできるだけ正確に受け取る練習をするためのセミナーがこの「犬語セミナー」です。

 犬語セミナーを通して犬語を学ぶ目的は、犬がどのような状態にあるのかをまず把握するためなのです。この犬の状態を理解せずに、人の言う事を聞くようにさせるというのは一方的で相互コミュニケーションの機会を失うことになります。

 犬は関係性を蓄積させるようにつくっていきます。人と同じですね。相手が自分のコミュニケーションを理解しないと受け取ると、人とのコミュニケーションに不快感を覚え積極的なコミュニケーションをとろうとしなくなります。孤独になり落ち着かない行動をするようになってしまいます。


● 犬語の深読みとはどんなこと

 犬のコミュニケーションを受け取るには、受け取り側が人ですから視覚的に理解できる範囲内で、また聴覚的に受け取れる範囲内でということになります。ビデオなのでスローモーションにもなりますから、視覚的なシグナルの分析はかなり細かくできます。ただ、残念なのが臭いのコミュニケーションを受け取ることができないということです。犬たちは様々な臭いを発してお互いのメッセージを交換していますが、その世界に人は入ることができません。しかし、そうした見えないシグナルも、行動を通してある程度は理解することが可能です。

 今回は上級者編として犬の行動の読み取りのあとにさらに深読みを行いました。
犬語の深読みとは、犬のコミュニケーションに影響を与えている環境は背景について予測するということです。実際にはビデオを提供してくださった飼い主さんに、環境に関する背景をカウンセリングさせていただければ、細かく環境の影響について説明することができます。しかし、ここは犬語セミナーですから、知らない犬の行動を見て、犬の環境を推測するという逆バージョンでやってみます。

 この深読みをする目的は、犬たちの抱えている社会環境についてみなで考える機会を持つためです。自分の犬だけが幸せになればいいと思っている飼い主はほんの一部だと思います。犬と暮らしている人、犬と暮らしたことのある人の多くが、犬という動物から多くの恩恵を受けることから、すべての犬に幸せになって欲しいという願いを持っています。家庭で人と暮らす犬たちはみな、家庭で大切に飼育されています。栄養のある食べ物をたべ、温度管理をされた室内にいれられたり、屋外の安全な場所に居場所を提供され、清潔にしてきれいにして過ごしています。そんな現代でも、犬を取り巻く社会的な問題はたくさん存在しています。


● 現在の犬たちが抱えている複雑な問題について

 犬たちの抱えている現代の問題とは、行き過ぎた管理という飼育です。この言葉にはすでに矛盾があります。飼育という「飼い方」がすでに管理環境の中で行われます。犬を飼う上で「管理」という言葉は外せません。これは法律で定められた項目でもあります。昭和48年に議員立法で制定された「動物の愛護及び管理に関する法律」は改正を重ねながらも、犬と暮らすすべての人が守るべき法律として存在しています。

 もっとも管理すべきものとして、犬は必ずリードをつけて散歩をすることや、犬を飼育する環境は囲いのある私有地であること、囲いのない場合には係留をするという管理は、犬の飼養管理として義務付けられています。これは現在守るべき法律であることは、疑いもないことです。

 しかし、これ以上の犬を管理する方法が国内に普及しています。これらは西洋的な動物を利用することが前提での完全管理の方法です。少なくとも犬の飼育方法については、圧倒的にドイツをはじめとする西洋的なやり方が指示されています。しかし、どうでしょうか。私はこのことにはいつも疑問をかかえています。日本の土着の犬たちにこうした西洋的な飼い方や人との関係を持ち込むことを歓迎しないのです。その理由については、深いものがありとてもブログでお伝えすることはできませんが、グッドボーイハートでご縁のある方々とはこうした問題についても機会のあることにいっしょに考える機会をもっています。

 さて、次回の犬語セミナーは9月24日(日)12時~14時 グッドボーイハート七山校で開催します。

犬のことを深く学びたい方はぜひご参加ください。

クール寝顔

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<犬のしつけ方・動画>ベッドトレーニング:犬用ベッドは犬の室内生活に必須です

 犬のしつけやトレーニングをいつ頃から始めたらいいのかという質問に対する答えは、犬がどんな年齢であろうと「今」です。犬と暮らしていなくても、学ぶべきは「今」なのです。

 学ぶにはなによりも時間が必要です。今学んだことを理解できるようになるのにまず時間を必要とし、そしてそれを実際に身につけるようになるためにさらに多くの時間がかかります。さらに、それを人に伝えようと思ったら、その数倍の時間がかかります。

 テレビの洗脳なのか、世間の思い込みなのかわかりませんが、犬のしつけとトレーニングは生後6ヶ月を過ぎないと始められないと思っている方もいるようですが、とんでもありません。むしろ犬ができるだけ小さな年齢のときから、犬のトレーニングを開始してください。

 ここでいう犬のトレーニングとは、飼い主が犬のことを理解するための勉強のことであって、犬を訓練学校に預けるという意味ではありません。長期間の預かりトレーニングは一般の犬にはおすすめできません。

 子犬期にどんなトレーニングをすると思いますか。犬の日常生活に必要なしつけの多くは生後1才くらいまでに、ステップアップを重ねて教えていくことができます。

 今日はグッドボーイハートのパピートレーニングのカリキュラムのひとつでもあり、成犬のトレーニングにも必須項目のルールをひとつご紹介します。

「居場所を指定するトレーニングのベッド編」です。


● 居場所を指定する「ベッドへ」の意味と様子

 室内飼育の犬の場合には、犬だけのスペースを確保して生活環境の安定と安心を獲得させることは必須の犬を飼うための環境整備です。犬だけのスペースというのは、犬の立場からいうとそのスペースを他の誰かに侵されることのない安全地帯のことをいいます。また、個体のスペースを主張できるスペースでもあります。

 この物理的なパーソナルスペースは、人間も日常的に利用しています。自宅にあるダイニングの椅子、リビングのソファ、座敷の座布団、そしてベッドや布団といったものです。これらは、屋外の外敵から身を守るための場所というよりも、室内の限られた空間(テリトリー)を、家族(群れ)内の集団で上手に利用し、そのことで関係性を安定させるために役立ちます。

 では実際にどのような行動をするのかを動画で確認してみましょう。以下の動画は家庭訪問レッスンのときに撮影させていただきました。飼い主さんの「ベッド」という指示で自分たちのベッドに犬が移動するシーンです。

動画 「ベッド」の合図で自分の居場所に移動する子犬たち

 飼い主さんの「ベッド」という声の合図と手の指示で、それぞれの指定された犬用のベッドに犬がいきます。「ベッド」合図はしばらくそこで待機をするようにという時に使用しますので、ベッドの合図があったらフセの姿勢になれるように誘導していくと、ベッドでの行動がさらに安定してきます。

 動画に協力してもらったラブラドル・レトリバーの2頭の犬たちは、胴胎犬(兄弟犬)で、生後5ヶ月になります。トレーニングの際にオヤツは使用していません。報酬はもっと別のところに設定されています。


● 犬に「ベッドへ行って」のトレーニングがどのように役立つのか

 室内で犬の居場所を指定するトレーニングは生活の中で大変役立ちます。犬がどのスペースにいていいのかがわからないときに、ここに居なさいといわれることは、犬たちにとて居場所を獲得したという価値のある合図です。価値の高さは「居場所」という特別なスペースの存在が影響しています。

 人を例にして考えてみましょう。たとえば、家族の関係性によって、室内の家族が過ごす場所では細かく場所が指定されていることがあります。特にダイニングの椅子はそうです。

 食事をするときに利用するダイニングの椅子には、指定席というのがあります。みなさんのご家庭にもないでしょうか。自分はそこに座る権利があるというものです。食事をしようと思ったときに、兄弟間で席の取り合いになるのは、弟の席に兄が座ってしまうときです。お父さんはここ、お母さんはここという風にですね。いつもの自分の居場所に他の人が座っていると違和感を覚えるでしょう。時にはお父さんの椅子は格別立派ということもあります。昔は父親は上座に座るのが基本でした。居場所は家族間の序列を明確にするものでもあったのです。

 犬に話を戻します。犬はもともと屋外にテリトリーをもつ動物です。イヌ科動物が巣穴の近くで過ごすときには、かれらにはダイニングテーブルも椅子もありません。しかし、ある程度の配置がされています。あるのは巣穴とテリトリーの境界線だけです。巣穴には子犬たちが、巣穴の前には巣穴を守る犬たちが、そして境界線を外敵から守る犬は境界線を確認しながら配置されます。群れの中心的な存在のものは、少し高いところや全体を見渡せる中心地点にいます。

 そして一部の犬は、人といっしょに室内で暮らすようになりました。飼い主という人が管理する生活スペースです。寝る場所や隠れる場所としてクレート(もしくはケイジ)を与えられています。リビングで人とスペースを共有するときには、飼い主の居場所である椅子には上がらないように教えられるでしょう。

 最後に、リビングでくつろげる犬の居場所として犬用のベッドが必要なのです。犬用のベッドを室内に置いてある家庭はあります。犬は自分の好きなときにベッドの上で寝たり遊んだり、休憩したりしています。

ブランとマージベッド
 しかし、飼い主の指示で犬用のベッドに行ける犬はあまり多くありません。その理由の多くは、教える必要性の高さがわからないということ、日常的な犬との暮らしでのその合図の使い方が分からないとか、また、教え方がわからないというものでしょう。

 この合図の必要性の理由についてはたくさんあります。簡単に説明すれば、人と共有するスペースに自分の居場所を獲得すること、そしてその居場所は誰にも侵害されないものであるということ、そのことは、犬が自らの安全を確認できるということと、さらに群れの中での精神的な居場所の獲得にもつながっていきます。

 ひとつの状況を例にあげます。来客が来たときに来客に興奮したり警戒するシグナルを見落とされることがよくあります。吠えたりとびつくという犬の行動はわかりやすいですが、そうでないものもあるのです。

 来客時に落ち着かないシグナルとしては、部屋をウロウロとする、自分の体をなめたりかじったりする、おもちゃをもってウロウロする、床をなめる、来客に体をくっつけてくる、飼い主のうしろをついて歩くといったものも入ります。

 自分のテリトリーに、家族以外の動物が入ってきたのですから、落ち着かなくなるのは当然のことです。飼い主にとって日常であることが、犬にとっても同じようになることはなかなかありません。イヌ科の動物の生活では、他の社会的な対象となる動物が自分の生活圏に入ってくるのはとてもまれなことなのです。

 このときに犬にベッドにいくことを指示します。最初はクレートで練習をしますが、クレートとベッドは違いがあります。ベッドのテリトリーはもっとゆるいものです。クレートの中には人が手をいれられませんが、ベッドにいるときには簡単に犬に触ることができます。そのゆるい境界線の中に犬は居場所を獲得し、来客を多少の警戒心をもって観察していたり、環境全体の安定性についての情報を取得していきます。

 子犬のころはこうした観察や環境把握に時間がかかりますが、生後3ケ月もなると犬は自分の周囲の環境に対して強い関心を持つようになっています。少しずつ環境を把握させる練習もさせていく必要があるのです。もちろんそれは、たくさんの場所につれまわして、たくさんの人や犬に会わせることではありません。

 犬用ベッドに犬を行かせることは、犬を社会的に排除することではありません。むしろ犬用ベッドに行く練習をすることで、犬は安心を獲得し、自分の役割を理解し始めます。このベッドトレーニングは犬がインターホンに反応する前にできるようになることをおすすめします。

 少ない犬との時間でたくさん教えることがあるでしょうから、優先順位は決めていかなければいけませんが、少なくとも、犬にお手などを教えるよりはずっと重要なトレーニングです。


※関連する記事はこちらからどうぞ

・室内の犬用ベッド(ドッグベッド)のミラクル:犬の落ち着きを引き出す空間作り

・犬のクレートトレーニング:ハウスの合図でクレートに入る動画

・犬の「落ち着きない行動」:なぜ落ち着かない?

・クレートトレーニング


・グッドボーイハートお勧めグッズ:犬用ベッド編

・室内で生活する犬のための犬用ベッド

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人に吠えたことがない犬に吠えられるのは何故なのか:犬が見ている世界とは

 たまにというよりも、犬と会ったときに度々起きる不思議なことがあります。

 レッスンで訪問したり、偶然通りかかったドッグランの中にいる犬や、ときには散歩中に近付いてきた犬が、普段人に対してしているのとは違う行動をすることがあるらしいのです。


● 人には吠えたことがないんですといわれたこと

 たとえば、こんなことがありました。あるご家庭へ訪問レッスンに伺った初日のことです。わたしはまだ飼い主さんとも顔をあわせていません。インターホンを鳴らすと中からワンワンと犬の声がします。

 その声は、ワンワンというよりはガウガウという風に、戸口の向こうなのでこもった声ではありますが、多少の緊張感もあわせて伝わってきます。中から飼い主さんが「どうぞー開けてください。」といわれるので、戸口を5センチくらい開けてみます。5センチしか開けられないのはその後の犬の行動を多少なりとも予測しているからです。

 ドアを少し開けたとたん、玄関の框から玄関の戸口の前まで中にいる大きな犬がガウガウいいながら突撃する姿をみました。それで戸口を5センチから3センチ程度にせばめます。

 「すみません!犬にリードをつけていただけますか?」と大きな声でお願いします。戸口の向こうで飼い主さんが犬にリードをつけたのを確認します。飼い主さんがそのまま犬に引きづられないことを見ながらようやくドアをはっきりと開けると、犬はますますガウガウと今にもとびかからんばかりです。

 そこで飼い主さんがひと言「今まで人に吠えたことはないんです。」といわれました。


 同じようなことはなんどもありました。ドッグランの横を歩いていたら、中からウォンウォンと太い声で大型犬が私の方を向いて吠えています。周囲には犬も人もいませんから、わたしに対して吠えているのだとは思います。

 飼い主さんは犬を抱きかかえるようにしてなぜかわたしをにらんでいます。そして「人に吠えることなんてないのに」とひと言。もちろんその犬とは初対面で、犬との距離は10メートル以上は離れている上に、間には高い柵もあります。


● 他のパターンの「他の人と違う」といわれた犬のこと

 他にも普通の人とは反応が違うといわれたことがあります。歩道を歩いていると散歩中の犬がわたしのそばをとおりかかるときに衣類の臭いをとるような形で立ち止まってしまい、そのあとわたしの後を追うように数歩ついてきます。

 このときなぜか飼い主さんもついてきてしまう上に、このような状態で自分の背後を見せるとトラブルが起きることもあるので、一旦止まって相手の犬が下がるのを待つようにしています。

 犬は入念に臭いをとったあと、少し顔をそらして立ち止まりじっとしています。それをみながら飼い主さんは「他の人とは違いますね。犬を飼っているのですか?」とたいてい尋ねられます。

 犬と暮らしてはいないのだけど仕事で犬に接することがありますのでとお答えすると、飼い主さんの方は納得します。せっかくだから「他の人に対するのとどう違うのですか?」と質問させていただきます。「他の人にはとびついたり、体を寄せたりするんです。」とのことでした。なるほどですね。

 こんなことの積み重ねで、当然家庭訪問レッスンでも飼い主さんや他の人とは違う行動を犬たちが見せてくれます。犬のトレーニングクラスの訪問レッスンでは、インストラクターであるわたしが直接的に犬を訓練することはありません。少しだけやりかたの説明などをするときに犬に接するというだけのことです。

 しかし、ほとんどの犬は他の人とは違う反応や行動をするようになります。大人しくなったり、飼い主さんいわくいつもと違うおりこうさん、今日はできるモード、従順にしているなどといった行動になる犬たちがいます。


 しかし逆もあるのです。前述した「人には吠えたことがないのに吠える犬」と同じように、他人に対する反応がいつもより過剰になることがあります。
 こういう激しい行動が出たときには「わたしの後ろに100頭の犬がいるような感じですから」とか「他の犬に対する反応を同じ反応をされますから」という冗談ともつかないような説明で一旦は納得してもらいます。

 この不思議な犬の行動に注目されすぎると今日やりたいレッスンが不十分になるからですが、本当はこの犬の反応は犬の社会性を表現する大切な行動です。他のトレーニングを進めるうちに、この不思議現象も次第に理解できるようになります。


● 犬が感じているのは何なのか?

 タイトルには犬が見ているとしましたが、正確には犬が感じている世界は何なのかということです。もう少し科学的にいうと、犬が感知している環境は何なのかということです。その感知した環境の因子のひとつがわたしという“人間”です。

 もちろん、犬たちはわたしのことを人として間違いなく感知しています。まさかゴジラだと思っているわけでもないし、未知の生物と感知したわではありません。そして、一番疑いをかけられる「犬と間違えているのではないか」というわけでもありません。

 犬は臭いの動物です。確かにわたしは日常的にいろんな犬の臭いを衣類につけています。毎日洗濯はしていても、わずかに残った犬の臭いがついていることは間違いありません。犬が衣類の臭いをかいでいるときは、わたしに関心があるのではなく、今つけてきた犬の臭いに関心があるのだなということはわかります。だからといって、わたしを犬と勘違いしているということはありません。

 遠くで吠えられることもあります。逆毛を立てられることもあります。臭いがとどかないような状況でも、瞬時に吠えられることもあることです。犬に関心はありますが、凝視して相手を挑発するような行為をしたわけではありません。戸口の向こうにいてまだ会ってもいない相手に吠える犬は、一体なにを感知しているのでしょうか。

 こういうときに「オーラが見えてるんですよね!」といわれることがあります。気のようなものですね。戸口の向こうにいる相手に対してただならぬ気を感じて吠えているというのでしょうか。いやそこまで強い気を発するほどの人間でもありません。いたって普通の人間なのです。

 犬の先生が来ると飼い主さんが意識していたため、その飼い主さんの意識が犬に働きかけたのかもしれません。ただ、そうともいいきれません。同じ仕事なのにスタッフの訪問ではこうした行動が見られなかったからです。

● 犬の隠れた社会性を観ること

 こうしていろいろな状況を冷静に考えてみても、今まで人に吠えたこともないという犬が、まだ会ってもいない状況下で吠えるのでしたら、それはかなり高い犬の環境を感知する能力であると思います。オカルト的な意味ではなく、どのように感知しているのかは不明だとしても何かを感知したのでしょう。

 対面したときに明らかに犬の反応が他の人と違うことについては、ある程度説明ができます。なぜなら、自分が見ている犬というのは、見るではなく観るです。しかも、外側のかわいい容姿や形を観ているのではありません。知りたいのはその犬の性質について、特に社会性についての情報です。

 もしかしたら、犬はわたしが何を観ているのかを感知しているのかもしれません。そして慌てふためいて吠える犬は、何かを見透かされてるのを恐れているのかもしれません。自分にとって一番怖い相手は、自分のことを見透かしてしまう人です。犬という動物は、人に対して表面的にはお利口さんに言う事をきいているように見えても、実際には本来の社会的な服従関係にはないこともあります。それは観ればわかることです。

 ということで、もしカウンセリングに伺ったときに犬が他の人とは違う反応をしたとしても、決して驚かないでください。あなたの犬は環境がいつもと異なることを感知する能力を持っていて、それをあなたとの関係の中にも使ってきたということです。それは安定した関係を築く能力でもありますが、バランスを崩せば不安定な依存関係に発展していることもあります。

 こうしたなんでもないけどいつもと違う行動には、犬を知る上での重要なメッセージが隠されています。そのメッセージ受け取っていますか?

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