犬のしつけ方の方法の中で、できるだけ犬を抱っこしないようにお願いしています。
それには様々な行動学的に裏づけされている理由があります。
単純な「甘やかさないように」という程度の問題ではありません。
そのような感傷的な問題ではなく、犬の安定した成長と発達のために、
犬をできるだけ抱っこしないようにとお願いしているのです。
すべてをここで説明することはできませんが、ひとつだけお伝えします。
犬を抱っこすることは、犬を拘束することだということを忘れないでください。
そもそも、犬を抱っこして散歩をするという人の不思議な行動は、
赤ちゃんを抱っこして社会性を育てるという人の育児から発展しています。
赤ちゃんを抱っこして環境に対する適応力を高めるのは、当然のことです。
なぜなら、赤ちゃんは歩けないし、ヒトという動物は赤ちゃんを「抱く」行動をし、
そしてまた赤ちゃんも親に「つかまる」という行動を通して発達しています。
先日ブログでチンパンジーの松沢先生から学んだことを書きました。
チンパンジーの赤ちゃんは親に抱きつき、親チンパンジーは子供を抱くのです。
これは、チンパンジーとヒトという種の育児の習性です。
しかし、イヌは違うのです。
母犬は子犬を移動させる必要があるときには、首の後ろ側をくわえて運びます。
子犬が多少動けるようになって、巣穴から離れたが自分で戻ってくることができないときや、
緊急時に巣穴の移動を必要とされたときに行うものです。
赤ちゃんのように子犬を抱っこすることは、子犬の発達を助けることはなく、
むしろ子犬を拘束するという不安状態に置かせた上で環境に接触させていることになります。
拘束されて外界と接触した子犬は、社会化の発達を阻害されているばかりか、
むしろ、不安を抱きやすいという性質を育てられています。
不安を抱きやすい性質を持つ犬は、将来様々な行動の問題を生じます。
行動が問題であるばかりでなく、その犬は生涯を通して不安を感じつつ生きることになります。
良かれと思ってやったことが、全くの逆効果になるのです。
犬を抱っこすることは、犬を拘束することということ。
ぜひもう一度各自で考えていただき、犬の習性にあった健康な発育を支えましょう。