連休途中からお預かりクラスを利用する犬と共に、七山に戻ってまいりました。
24時間体制でエアコンが作動する福岡市の中心部から、エアコンフリーの山のふもとのこの学校へほんの1時間で到着します。
エアコンをつけず窓を開けてしっかりと布団をかぶって眠れる心地良さに、体がよみがえっていきます。
いつも不思議なのですが、七山ではお肌も少し柔らかくなるし、視力も上がるし、呼吸は明らかに深くなっていきます。
お預かりの犬くんも、心地良い山の風を受けながらお昼寝タイムもしっかりととれているようです。
エアコンで24時間管理される都心部の生活は、ある意味で環境の変化が少ないと言えます。
都会の方が刺激が強く、山の方が刺激が少ないというのが一般的な見方でしょうから、何故?と思われるかもしれません。
都心で刺激が強いのは、商業地域といわれる場所だったり、近所のコンビ二だったり、家の周囲を歩いている人や犬や電気系の乗り物が多いということでしょう。
ところが人間はやはり動物なので、ストレスとなるものを回避しようとします。
そのため、外が見えないようにカーテンをしたり防音をしたりします。そして、過酷な温度から身を守るために24時間体制で気温と湿度が一定になる快適な空間を作り出してきました。
刺激が多く環境が苛酷な都心では、生活空間は刺激をシャットアウトする工夫がされているのです。
結果として室内の空間ではほとんど環境が変化することがありません。
特に、臭いを感知することで空間の変化を読み取る犬という動物にとっては、ほとんど環境の変化の起きない空間になっています。
一方で自然環境はどうでしょう。たとえば七山では、山に上がるほど刺激が少なくなり、エアコンをつけている家も少なくなっていきます。
家はいつもオープンスタイルで風通しが良く、気温も湿度も屋外の環境と共に微妙に変化していきます。
住む人も一日を通して微妙に変化する環境に対して、窓を開けたり閉めたり、カーテンを上げたり下ろしたりして、多少なりとも快適性を引き出す努力をします。
その上で、自分の体温が一定に保たれるようにする力が働いていきます。
常に風が通るということは常に臭いが微妙に変化していき、空間の広さと環境の変化を同時に犬に伝えていきます。
犬は広い空間の中で環境の変化に適応していく力を身につけていきます。
これもひとつの社会性なのです。むしろ、社会性そのものだといえることもできます。
犬の社会性の発達が難しいのは、小さいころにたくさんの犬や人に会わせなかったからではありませんし、外を連れ回さなかったからではありません。こうした行為は逆に社会性の発達を遅らせる危険な行いです。
犬の社会性の発達が難しいのは生活空間が閉ざされている上に、行動を制限する不安定なサークルに長時間いれて置かれるからです。
さらに、変化しない狭い都心の一室で過ごしてしまうからです。
このような状態でいきなり散歩に出ても、社会性が発達するはずはないのです。
自然環境の中で生活できる人こそ、本質的に社会性の基礎が育っているというのは動物でも同じのようです。この話を次回に続けます。