グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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異種間コミュニケーションの読み間違い“ひなとダンナくん編”

グッドボーイハートの山の学校では、日常的に様々な野生動物との小さな関わりがあります。

小鳥や昆虫は都市空間の公園や木々でも時折みられるものの、動物たちとの距離の近さが山では圧倒的に近くなります。

そんな日常の動物たちとのやり取りの中で起きた小さな出来事です。

ある日、訪問レッスンを終えて山の学校へ戻る前にダンナくんに業務連絡を入れると、こう報告がありました。

「ひなを発見、巣から落ちたらしい、蛇に食べられるのではないか、保護した方がいいのか?」

私の返答は「そのまま様子を見ること」。

私がすぐに小鳥を保護して欲しいというかと予測したダンナくんは「へーさすがだね。」とリターンを返し私が帰宅するのを待ちます。

帰宅後、ひなの状態を確認すると人を恐れて隠れるモード、周囲に親鳥たちが飛ぶ気配もまだありました。

ダンナくん、ひなが口を大きく開けて俺にエサをせがむのだと、そして親鳥たちが自分に攻撃しようとする様子も見られたとのことでした。

その口を大きく開けてエサをせがんでいるのだとダンナくんが受け取ったひなの写真を見せてもらいました。

ひなの写真の姿は、口を大きく開けて「あっちへいけ」と防衛のシグナルを見せているものでした。

これはエサをせがんでいるのではなく、あっちへ行けっていってるのだよということをダンナくんに説明すると、しごく納得した風でした。

鳥のことを知らなくても冷静に見ればそうだと気付く動物のシグナルも、受取間違いをすることがあるのは、そのときに人の中に「感情」が芽生えてしまうからです。

ダンナくんはこう思ったに違いありません。

「ひなが可哀そう、助けを求めている、このままだと蛇に食べられてしまう、俺が助けなければいけない…」

そんな気持ちが幼く弱者である動物に芽生えてしまうと、とたんに自分は相手の保護する立場となってしまいます。

こうした動物の異種間のコミュニケーションの小さな読み違いが、実は飼い主と飼い犬の間に日常的に起きています。

一番わかりやすく毎日のように繰り返されているのが「犬が飛びついてくるのは人が好きだから」です。

カウンセリングに行くたびに言われるのは「人が大好きなんです。お客さんが来ると人に飛びついていくんです。」というセリフ。

「とびつくのは人が好きだからではありません。」というセリフを、もう何万回いやもう何十万回も繰り返し言っている気がします。

コミュニケーションの読み違いを防ぐために動物の言葉を学ぶ方法はひとつだけです。

同種間のやり取りをよく観察することです。

コミュニケーションの読み間違いは同種でも全くないわけではありませんが、非常に少なくなります。

ひなと親鳥のやり取りを観察することはなかなかできませんが、ひなの口を開ける写真は、ひながエサをもらうときにする口の開け方とは違います。

わたしたちは室内に入ってひなが少しずつ山の方に上がっていくのを観察することにしました。

親鳥たちがひなを誘導するようにたくさん集まってきていました。

もしかしたら巣に戻る前に蛇に取られてしまったかもしれません。

そう想像するとかなしくはなりますが、それが野生なのです。

そんなサバイバルの中で学ぶためには、サバイバル脳になること。

犬たちの脳もサバイバル化すると活性化します。

 

ひなの写真はこちらです。

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ニコ・ティンバーゲンの「四つのなぜ」から犬について考える。

犬の問題を解決するためには、しつけ方のハウツーより犬を知ることから

犬との暮らしで最も大切なことは「犬を犬として理解する。」ことです。

といってもそう簡単なことではないから、犬の問題はあちらこちらで発生しています。

飼い主の犬に対する理解不足は、犬と飼い主との関係をこじらせてしまうのです。

結果として犬は吠えたり咬みついたりするという行動を通して、犬は飼い主との関係がうまくいっていない、生活自体に何か不安や不満を抱えているということを表現するようになります。

犬の問題行動を解決するために一時しのぎの対処法をやっても、抑えられたように見える行動は別のところに蓄積されてしまい決して犬はハッピーにはなりません。

犬との暮らしを大切にして、犬とお互いに幸せに暮らしていきたいなら一歩踏み込んだ解決方法に向かいましょう、それが犬を理解するということです。

犬の行動を理解するためにはいろんな方法があります。

例えば、尊敬するローレンツ先生が読み解いた犬の行動を参考にするということもその一つですが、自分で犬の行動について考えてみるという習慣を身に着けることも大切なことです。

自分で考える方法として、オランダの動物行動学者ニコ・ティンバーゲンの「四つのなぜ」を使うという手もあります。

 

動物行動学者ニコ・ティンバーゲンの「四つのなぜ」

動物行動学者ニコ・ティンバーゲンは1973年にノーベル医学・生理学賞を受賞した学者で、生物の行動を理解するために4つの問いからアプローチできると提唱されたことを「四つのなぜ」といわれています。

その4つとは次のとおりです。

1 仕組み ⇒ どのような仕組みでどのように使われるのか?

2 機能 ⇒ どのような機能で、どのような利点があるのか?

3 発達 ⇒ どのように発達したのか(生まれてから死ぬ前の間に)

4 進化 ⇒ 動物の進化の過程でどのように獲得されたのか?

 

さらに、その四つのなぜ(問い)は、その問いを解く要因としても分けられます。

①至近要因

②究極要因

③発達要因

④系統進化要因

動物行動学の用語なので、少し難しい用語ですが勉強されたい方のためにご紹介しておきます。

さて、では実際に犬の行動をこの4つのなぜに当てはめて考えてみましょう。

 

犬の穴掘り行動を四つのなぜで考えてみる

どんな犬でも必ず行う「犬が前脚で穴を掘る行動」を見て、なぜこんな行動をするのだろうかと考えることはあるでしょうか?

犬が穴を掘る行動を4つのなぜで考えてみるとこんな風になります。

1 仕組み ⇒ どのような仕組みでどのように使われるのか?

犬が前脚で穴を掘る行動で一番使われているのは、犬の鉤型の爪です。

グッドボーイハートにも大きな穴がいくつかありますが、すべて犬たちが掘った穴で本当にすごく深く掘ってあるものもありました。

一度は短時間、犬を繋いでいて見に行くと水道管がむき出しになるほど穴が掘られていて、その穴掘りの速度の速さに驚いたこともありました。

私たち人間の平らな爪ではあんなにがっつりと穴を掘ることはできません。

最近の室内飼育犬ではほとんど切られてしまっている犬の鉤型の爪は、犬が穴掘りをするためには必要な道具なのです。その爪を犬が持っているのが素晴らしいですね。

2 機能 ⇒ どのような機能で、どのような利点があるのか?

犬の穴掘り行動を見ていると、鉤爪のついた前脚を左右に動かすことを繰り返す行動で地面に深く穴を掘っていきます。

その掘った穴をどのように使っているかというと、大抵の場合にはその穴の中に寝ていることがほとんどで、場合によっては耳しか見えないほどの深い穴に入っていることもあるし、腹を地面につけるようにして寝ていることもあります。

隠れるために掘る穴、自分の体を冷やしたり癒すために掘る穴、ということでしょうか。

他にも用途はあります。

グッドボーイハートの広場にはモグラの穴がたくさんあります。その穴の中に鼻を突っ込んだときの穴掘り行動の早さは尋常ではありません。どんどんと鼻先を穴の中に突っ込むのような形で穴掘りが続けられます。

この場合には、捕食をするための穴掘りということでしょう。

また、お泊りに慣れていない犬が夜中にクレートの奥をかりかりと掘る音が聞こえてくることがあります。

これはまさに脱出のとき、私たちの寝静まったのを見て穴掘りで逃走をはかろうとしているのでしょう。

犬が穴を掘る利点はひとつではなさそうだということです。

3 発達 ⇒ どのように発達したのか(生まれてから死ぬ前の間に)

犬の穴堀り行動の始まりは、巣穴から出てくる年齢ではすぐに始まっています。

子犬は穴掘りを何よりも先にできるようになっています。

歩けるようになったばかりの子犬を見て来た経験では、哺乳期間が終わって自力で排泄できるようになる生後3週間になると穴掘り行動はすでに習得されていたと考えて良いではないかと思います。

穴掘りは、子犬が隠れ場所として利用する巣穴を奥深くまで掘る行動です。

子犬は危険を感じると穴のより深くに入って身を隠そうとしますので、早い時期に必要となる行動なのです。

4 進化 ⇒ 動物の進化の過程でどのように獲得されたのか?

進化の過程となると、他のイヌ科の動物と比較しなければなりません。

もちろんオオカミは穴掘り行動をしますが、他のイヌ科の動物たちもみな巣穴を作って繁殖する習性を持っていますので、イヌ科として進化した段階では穴掘り行動をしています。

イヌ科動物の始まりからとなると、かなり古い起源から犬は穴掘り行動を継承してきたということになり、犬という動物にとってかなり重要な行動のパターンであるはずです。

しかし、その穴掘り行動すらする場所がない、穴を掘るための爪がないとなると、犬の行動はこんどどのように変化していくのかわかりません。

犬という動物が人の膝から降りなくなり、抱っこされるのが当たり前だから穴掘りは必要ないとなってしまうと、犬としての魅力がぐっとなくなってしまうと思うのは私だけかもしれません。

私は穴を掘る犬の姿を見てワクワクしています。

犬の行動についてひとつずつ理解することで犬との関係は変わっていくはずです。


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参考文献:長谷川眞理子著書「生き物をめぐる4つのなぜ(集英社新書)」

※動物行動学者ニコ・ティンバーゲンの「四つのなぜ」をご紹介するために、一般の方にわかりやすく書かれた著書です。

長谷川先生はスタンダードプードルとの暮らしも著書で紹介されている犬好きのようです。

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名古屋の黒柴犬はなちゃんのお泊り日記

ゴールデンウィークを前にして名古屋在住のはなちゃんの飼い主さんから連絡をいただきました。

「今年のゴールデンウィークにはなを預かっていただきたいのですが…」というご相談でした。

黒柴犬のはなちゃんの飼い主さんははなちゃんが子犬のころにオンラインクラスを利用してトレーニングクラスを受講されました。

受講のご依頼を受けたときは、遠方だし近くに対面でアドバイスをもらえるドッグスクールがあれがそちらがいいのではないかというお話もしたのですが、どうしてもグッドボーイハートで学びたいという意欲を持っていらっしゃったので、お引き受けすることになったのです。

一年間ほどオンラインクラスを受講されて、はなちゃんはすくすくと成長していきました。

飼い主さんも定期的にはなちゃんと山歩きに出かけたりと、犬との暮らしを楽しんでいらっしゃるようでした。

そして「いつかはなを預かってほしい」と言われていたときに、コロナがやってきたのです。

移動が難しくなり、はなちゃんの預かりの話はそのまま流れていきました。

そのはなちゃんの飼い主さんから「あれから時間がたってはなももう4歳になったのですが、どうしても一度そちらに連れていきたいのです。」という連絡を受けました。

一度、はなちゃんに会ってみたいと思っていたこちらの方は大歓迎でお迎えの準備をいたしました。


名古屋から飼い主さんの車で移動してきたはなちゃん。

私と会うのも初めて、全く知らない場所で全く知らない犬たちとの合宿が始まりました。

「あなた誰?」「ここはどこ?」「お父さん、お母さんは?」

はなちゃんにとっては疑問だらけの預かり開始となり、なかなか警戒を解いてくれません。


ここは話のわかる犬同士でと、小鉄くんやバロンくんの手伝いも借りながら交渉を続けていきます。

小大将の柴犬の小鉄くんからしてもはなちゃんはお姉ちゃん犬です。

遠慮しながらの接触となりましたが、あまり積極的に関わることがなくガードの堅さが見受けられました。


連休にレッスンに来た女帝のゆいちゃんは弟分のチャメルくんにも参加してもらいました。

鼻高々にテリトリーを主張していたはなちゃんもゆいちゃんには少し尾を下げていました。

天候が良くてかなり時間を屋外で共に過ごせたことで、はなちゃんの行動は少しずつ変化してきました。


自宅付近や友達などで関わりを持たせられる犬が見つからなかったとのことでしたので、他の犬たちの関係については少し不安な部分もありました。

しかし、飼い主さんが真剣に育て上げられていましたので、拒絶や威嚇はなく、強く押しすぎることもなく、かといって逃げたり隠れるということもなく、自然と犬たちと関わるようになってきました。


最終日には、飼い主さんといっしょに尾歩山をトレッキングしました。

他の犬たちやプライベートクラスで参加した黒柴のななちゃんもいっしょにちょっとしたグループトレッキングができました。

トレッキングのあとは、散歩中のリードワークを実践で指導しました。

オンラインではなかなか伝わらなかったリードの使い方を、手取り足取りで実践していただくと、リードワークでの動きはとたんに美しい形に変わりました。

トレッキングクラスとリードワークの練習のために、飼い主さんと子供さんは日帰りで飛行機を利用して七山まで来て下さり、お父さんははなちゃんを車に乗せて長い道のりを名古屋へ向けて帰っていかれました。

はなちゃんの飼い主さんに「先生のところで学んで本当に良かったです。」と言っていただけたのですが、私の方こそ共に学ぶ機会をいただいて本当にうれしかったです。


実は、はなちゃんが到着するまでは、すごくがつがつとしたやばい柴犬を想像していました。

オンラインクラスでは映像があまり鮮明でなく、子犬のはちゃんの甘噛みに格闘するブレブレの激しい映像をみながら、相当やるやつなのかなと想像していたのです。

預かり希望が入った時には腕まくりするつもりで、どこからでもやってこいという気持ちではなちゃんが車から降りてくるのを見守りました。

ところが、車から降りて来たはなちゃんがとてもかわいらしいフォルムと表情の黒柴犬ちゃんだったため拍子抜けしてしまいました。

このタイプの柴犬ちゃんだったのねと、予定していたプランを変えてはなちゃんの預かりを模索しました。

名古屋から福岡までお預かりに来るなどと特別な経験をしたはなちゃんと飼い主さん、そしてそんなに遠くから七山まで犬と共に来て下さる飼い主さんと巡り合ったわたしたちグッドボーイハート。

何かの大きな力が巡り合いを決めているのだと思わざるを得ません。

福岡、佐賀、長崎と地域の飼い主さんとの出会いもまた大きな力によって実現されたことを忘れずに、大切にして共に学んで参ります。

はなちゃん、またいつか会えるといいな。

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サントリーBOSSのCM「犬を飼っていない人からみた犬と飼い主の不思議な関係」

先日、車の移動中にラジオでサントリーの缶コーヒーBOSSのCMを聞きました。

あの宇宙人シリーズの「この惑星の人間は…」という内容で、私たちのごく普通の日常の中に不思議さを定義しくれる内容のペット編でした。

なるほどねとという内容だったので原文を掲載したかったのですが、ネットではコピーが見つからずある程度覚えていることを書いてみます。

CMの内容は、飼い主がペットの犬にしていることでした。

いくかのペットへの愛情ぶりを示す行為の中にペットの誕生日にはケーキを買ってお祝いをするというものがありました。

さらに、大切にされるペットとは真逆に夫の方はさげすまれているというような内容でした。

結局、この惑星ではペットがご主人のような感じであるというまとめで終わるのです。

大好きな自分の犬の誕生日なのだから、特別なケーキを購入してあげたりお誕生会をしてあげることがいけないというのではありません。

そこは飼い主の自己満足なのですから、好きだなけやったらいいと思うのです。

しかし、大切なことで絶対に忘れてはいけないことは「犬が本当に求めているのは誕生日ケーキじゃないでしょ。」というところです。

さらに宇宙人の言うとおり「どっちが主人か分からないじゃないか…」という問題は、犬にとって最もストレスのかかかる状態であるのですから大問題です。

犬が普段は目にしないバースディケーキという食べ物を喜んで食べるのは当たり前のことです。

でも、限られた生きている時間にはもっともっとワクワクすることってあるのではないでしょうか。

ペット化された犬には、犬としての本来の活動や喜びは必要ないと考える流れがあるということは知っていますが、私はまだ本来の犬とペット化した犬を完全に分けて考えることができません。

どんな犬種でもどんなサイズでも、どんなに可愛い風貌をしていても「君、犬だよね?」と考えてしまうのです。

最後に犬の生涯を決めるのは飼い主です。

みなさんにとって、犬とはどのような動物なのでしょうか。

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昭和のテレビドラマの犬の散歩風景を見て思ったこと。

ちょっとしたことがきっかけでとても古いテレビドラマの映像を見ました。

今から40年以上前の1979年に放送されたテレビドラマ「金八先生」です。

当時は中学生や高校生だったというみなさんならご覧になられたことがあると思います。

ですが、私はこのドラマを一度も見たことがなく、無料配信のアプリで見かけ興味本位で初めてみました。

ドラマの内容は一部しか見ていないのですが、進学校に通いつつ犬の訓練士になると宣言した中学校三年生だった自分の青春時代と重なることも多く、懐かしい想いがよみがえりました。

しかし、ドラマの内容よりも印象的だったのは、暮れなずむ町の~という武田鉄也の歌う「贈る言葉」ではじまるドラマのオープニング映像です。

土手を金八先生が歩いていくシーンで犬を連れた女性とすれ違うのです。

犬の種類はおそらくシェルティと思われます。

この昭和の時期にはアニメのラッシーが流行ったこともあり、ラッシーの役をしたコリーと似ていて少しサイズの小さなシェルティは日本で確かに流行った純犬種でした。

私が映像に注目した理由は、犬種がシェルティだったということではありません。

シェルティを散歩させているのは女性の飼い主でしたが、その飼い主がリードをまっすぐに上にあげて犬をやや自分に沿わせるように散歩をさせている姿です。

みなさんからしたら「まだまだ」の領域ではありますが、この時代には珍しくかつちゃんとした散歩の形です。

いつの時代も日本ではリードを持つ手を伸ばして掃除機のような形で犬を散歩させる人ばかりでしたので、このスタイルをスカートをはいてエプロンをはめた女性がしているというのは珍しい光景だといえます。

想像になりますが、シェルティを入手した際にこのような形で散歩にいくように指導を受けたのではないかと思うのです。

この時代にシェルティが流行っていたとはいえ、純犬種の犬を飼えるのは中流でも上向きの家庭もしくは上流家庭くらいです。

もしかしたらシェルティを散歩させていたのは、上流家庭のお手伝いさんという設定なのかもしれないと思いました。

時代を象徴する姿としてドラマのオープニングに登場したシェルティと歩く女性。

西洋の純血種が日本に入り始めた初期の頃は、散歩の形などは犬といっしょに輸入されたはずですが、そもそも犬につながずに飼う習慣だった日本人からしてみれば、西洋の純血種犬を飼うことなど分からないことばかりです。

この時代に私の家庭でも純血種の柴犬を迎えていたのですが、その飼い方は今思えば中途半端な形ではありました。

幸い動物好きの母親が厳しくしつけた柴犬は、飛びつくこともなく、無駄吠えも咬みつくこともなく、私の良い遊び相手となってくれました。

しかしそのことがきっかけでまさか娘が「犬の訓練士になる」と言い出すとは両親は思いもよらないことなので、娘に犬を飼ってあげたのは誤算であったと悔やんだことでしょう。

両親の誤算でしたが、私としては犬との出会い、犬について学べたこと、犬の飼い主さんたちとの学びが人生にとって最大にすばらしい時間となりました。

どんな時代にも人と生きた犬たちの時間、今現在人と生きている犬たちの時間、すべての時間が豊かなものでありますように。

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大好きな犬との距離感が近すぎて大切なことを見過ごしていませんか?

犬と暮しているほとんどすべての人が、犬の魅力にはまって犬大好きになるのは素晴らしいことです。

ですが、その大好きな犬への愛情表現の仕方によっては、犬との関係がうまくいかないということがあります。

例えば、大好きな犬への愛情表現の一部をご紹介するとこんな感じです。

帰宅してすぐに「ただいまー」と犬を撫で繰り回し、抱っこする。

「大好き」と犬を抱き上げたり抱きしめたりする。

部屋の中ではずーっと犬を撫でていて、始終くっついた状態でいる。

こんなことが日常的になっている飼い主がたくさんいるのだと思います。

しかし、こうした犬との関わり方はあまりにも犬が自分に対して近くにいすぎることで、実際に犬という動物がどういう動物なのかを知ることすらできません。

そもそも、犬が自律した状態で生きているのであれば、人の膝の上に登ってきたり、ジャンプしてとびあがってきたり、飼い主の寝ている上に乗っかって寝たりはしません。

落ち着いている犬であれば、興奮して向かってくる飼い主を上手にいなすでしょうし、飼い主に寄りかかって寝たり、膝の上に上がろうとすることはありません。

犬を動物として客観的に観察していくためには、犬と飼い主の間に一定の距離が必要になります。

先日、犬語セミナーを受講したあとにある生徒さんがいい話をしてくれました。

あるお坊さんのお話では、尊いと思っている仏像は離れて向き合って手を合わせて拝むものであって、近づいてじろじろとみるようなものではないという話だったそうです。

尊敬の気持ちがあるなら、一定の距離を保って見つめるのだということが犬と人の関係だと同じだと思ったとその生徒さんは言われていました。

それは、本当にその通りだと思いました。

一定の距離を保つことが「犬を尊重すること」だと気付いている飼い主さん、さすがにグッドボーイハートで共に長く学ばれているだけあるとありがたく思いました。

犬と少し距離を保って生活をすることを誤解されている方がいます。誤解とは、犬を撫でまわしたり、抱っこしたり、体に乗っけたりしなければ犬を可愛がる行為がないと思われていることです。

これは大きな誤解であって、むしろ犬を大切に想い、尊重する気持ちがあるなら、むしろ多少の距離をとって犬が何をしようとしているのかを見守る(観察する)姿勢になるはずです。

犬と飼い主の距離が近くなりすぎるということは、犬は行動の範囲が狭いと思い始めているということです。

犬の飼い主に対する執着行動は、犬の生活環境、子犬期の過ごし方、飼い主の価値観で決まります。

犬が大好き、犬のことをもっと知りたい、犬と良い関係を築いていきたいと思うのであれば、少し犬と距離を置いてみましょう。

私ももちろん犬が大好きですが、犬を抱き上げたり抱きしめたり、わさわさと撫でたりはしません。

本当に大切な存在であるからこそ大切に見守っていきたい、犬はそんな存在です。


 

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グループトレッキングクラス&犬語セミナーを開催しました。

今月もグループトレッキングクラスと犬語セミナーを開催しました。

トレッキングクラス開催の日の夜中からしとしとと降る雨の音に「明日トレッキングできかな…」と眠れぬ夜(本当に眠れなかった)を過ごしました。

当日の朝もほんの少しだけ残る雨でしたが、強気の生徒さんたちからの朝の確認連絡はほとんどなかったことで私も気持ちが盛り返しました。

少々の雨でもいつも室内に閉じこもりがちな犬たちを山で過ごさせたいという飼い主さんの気持ちが伝わったのか、開催時間には小雨もあがり無事にトレッキングクラスを開催できたのです。


 


今回は預かり犬たちもトレッキングに連れていくために、写真撮影の協力も生徒さんたちにお願いしました。



小さな犬たちもいるのですが写真が撮れていなくてすみません。

写真を撮ることよりも、今この瞬間に起きてることを心にとどめておくことの方がずっと重要なので、みなさんの心に残ったものこそが大切なものですね。

午後は犬語セミナーを開催しました。

はじめてご参加された生徒さんたちもいて、犬のコミュニケーションを読み解く方法をみなで学びました。

同じ動画を何度見ても見落としていることがあって、セミナー中に気づくこともたくさんあります。

他の方がどのように見ているのかを聞くことで開ける世界もまた楽しいものです。

セミナーの後半には、オポハチミツで作っていただいた美味しいお菓子をいただきました。



私の脳内の妄想コーナーに潜む“オポカフェ”を楽しませてくれました。

どんな自然の素材も作り手で変わり、どのような世界を生きていくのかも自分次第です。

犬と暮しているなら、自分の生活の中で生み出されるものを全部丸ごと大切にしたい。

今は犬を飼っていない私ですが、あの時の気持ちはまだ続いています。

グループトレッキングクラスだからできる飼い主さん同士の交流も、仲間がいるから大丈夫、ひとりじゃないから頑張れる気持ちを次々と生み出しているようです。

オポハウスではプライベートトレッキングクラスも開催しています。

家庭訪問クラスを受講された方ならどなたでもご参加可能です。

4月のトレッキングクラスは第4日曜日の10時集合です。

午後の犬語セミナー開催についてはまだ未定です。

犬語セミナーがなくても何かをしようとは思っていますが、決まり次第お知らせします。

 

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飼い主が強ければ犬は安心して暮らせるのが犬の群れのしくみです。

昨日はWBC(ワールドベースボールクラッシック)の決勝戦でした。

日本とアメリカの試合終了間際はと移動タイムだったために、訪問でインターホンを鳴らす時間がずれたことは幸いでした。訪問宅の生徒さんも「ギリギリ間に合いました。ちょうど今終わったので…」と出てこられたところでした。

野球に精通している方ですら生きてる人間とは思えない強さの大谷翔平選手らしいですが、今回のWBCを横目で見て感じたのは「主軸が強いと群れには安心感が生まれる」ということでした。

チームのリーダーとしてはまた別の選手がいらしたのだとは思うのですが、ピッチャーという主軸のポジションになる選手が圧倒的に強く存在感があれば、チームの選手全体がいけそうな気がするという気持ちが盛り上がるのは間違いないと思います。チームだけでなく応援している人々全体に「勝てる」という気持ちが強まったはずです。

このチームの中での大谷選手くらいの存在感が、飼い主と犬で構成する家族の中にあったとしたらどんなに犬は安心できるのだろうかと考えます。飼い主が大谷選手くらい強い主軸になるということですが、犬にとっての飼い主というのはそのくらい強い存在であってほしいと、私が犬なら思うでしょう。

この飼い主なら大丈夫、絶対に負けるはずがない、と犬が飼い主のことを認めてくれるようになれば、犬が吠えたり興奮したりするような乱れた行動をとることはなくなるはずです。

そんな大谷選手的存在になるために必要なことを、生徒さんたちに練習していただいているはずです。

同時に、気持ちの中でも「飼い主としての自分が主軸であることを忘れない。」自分の立ち位置を忘れずにそれを楽しむことも大切であると考えます。

大谷選手に学ぶことはいくつもありますが、大谷選手について語られていることのひとつに私も大きく感銘を受けたことがあります。

それは「緊張する場面に立たされたときに、どうしようかと考えることもあるけれど、それよりもここから何を学べるかを考えるようにしている。」というようなことを大谷選手が言われたということでした。

直接その言葉を聞いたわけではありませんが、いかにもそのように考えられる方だからこそ緊張や難しい場面から逃げずにいられるのだなと思いました。

私自身も困難に向き合ったときに、今学べることは何かと考えるように努力しています。

犬と向き合うときにも、なかなか行動に変化が見られない犬から逃げようとするのではなく、この犬の軸となるのは飼い主である自分、今この犬と向き合って何を学べるかを考えるようにしようと思ってみてください。

犬の軸は飼い主であるあなた自身です。

軸が強いと群れは強い、群れが強いと安心感が生れます。


 

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犬の散歩中の拾い食いは犬のストレス性行動です。叱る前に犬が必要とすることを学びましょう。

犬の拾い食い行動ってどんな行動ですか?

 

犬が散歩中に落ちているものを口で拾いという行動を見たことがあるでしょうか。

「犬の拾い食い」の多くは年齢の若い犬、散歩に出始めたばかりの犬によくみられる行動です。

犬は好奇心旺盛で何にでも興味を持つ動物なので、落ちているものを口にいれるのは犬としては普通の行動だと思っている方も多いと思います。

ところが、散歩中になんでも拾う行動は「犬のストレス性行動」なのです。

行動のパターンの中では、犬の衝動的な行動であり、継続して繰り返される執着行動のパターンです。

飼い主さんとしては、犬に危険なものを口にしてほしくないし拾ったものを取り返そうとすると咬みついてくるなどの理由でトレーニングを依頼されることが多いのです。

そこでこの行動がストレス過多の状態によって起きることを説明するとびっくりされます。まさか犬が落ちているものを拾う行動がストレスの表現であるとは思いもしないはずです。

犬が口にしたものが完全な食べ物だけであれば、犬は食べるものを探して拾っているということになり、食べられないものを拾うストレス性行動とは少しわけて考える必要があります。

公園でいつも落ちている木々の食べられる甘い実を狙って拾って食べるのであれば、それはストレス性ではなくただ食べたいという欲求で食べているだけです。

散歩の道中に落ちているものを一つ一つチェックしながら食べられるものを見つけている犬もいます。このように「落ちている食べ物を見つけるための活動」になっているとしたら、この散歩は本来の目的とは離れてしまっています。

一番よくみられる犬の拾い食い行動では、食べられない石や紙切れ、ビニール、綿ゴミなどの小さなものを口にする行動です。

 

拾い食い行動は犬が何歳くらいから起きるのか?

 

犬の拾い食い行動がよく見られるのは、犬が散歩に出始めたときです。

子犬を散歩させる前に入念な社会化学習の準備をしておけば、拾い食い行動はさほど長引きません。

ですが、子犬の外のにおいに慣らさずにいきなりリードをつけて歩かせようとするとこうした行動をすることがあります。

子犬の散歩のための事前準備に抱っこ散歩は入りません。

※子犬を抱っこして散歩することは、子犬が外で不安を作りやすい状態を作り出すだけで逆効果です。

また、犬が青年期に入り大体生後6ケ月から1歳半の間に起きる社会的な退行期で散歩中の拾い食い行動が出ることがあります。

犬が子犬から成犬に上がらなければいけないこの時期の年齢では、一旦獲得したように思えた社会化が崩れていく行動が見られます。

例えば、それまで他の犬の吠えなかったのに吠えるようになった。

散歩中に急に立ち止まる行動が増えた。

そして散歩中に拾い食い行動をするようになったなどもこの期間に起きることがあります。

 

犬の拾い食いはどのようにして止めさせたらいいのか?

 

犬のすべての問題行動について共通していえることは、叱っても無駄だということです。

犬の拾い食いも同じことですが、起きてしまったことにダメ出しをしても犬には理解できません。

それよりも、犬が抱えているストレスの解消をするために何ができるのかを考えた方が効果もあるし犬のためにもなります。

その犬が抱えているストレスとは、犬の社会化の未発達にありますが、またその要因となっているのはやはり「飼い主との関係」です。

逆をいえば「飼い主との関係性」さえ改善すれば、犬の行動は本当に激変してしまいます。

犬がどのような動物なのかを知っていけば、飼い主としてしなければいけない行動も決まってきます。

難しく考える必要はありません。

要するに飼い主次第で犬はどのようにも変化するのだということです。

少しやる気になってきたでしょうか。

犬のしつけ方を習うということは、犬がどのような動物であるかを学ぶということです。

犬は人ではなく犬なのだということに気づくことをぜひ楽しんで下さい。


 

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「犬が吠えたらどうしたらいいですか?」に答えはありません。

「吠えたときどうしたらいいですか?」という質問をよく受けます。

特に、トレーニングクラスが始まる前の方、トレーニングクラスをスタートさせたばかりの飼い主さんから多いご質問です。

残念ながらこの質問に対する明確な答えがありません。

「犬が吠えたとき、どうしたらいいですか?」と同じ傾向の質問は他にもあります。

「犬が咬みついたとき、どうしたらいいですか?」

「犬が飛びついたとき、どうしたらいいですか?」

「犬がいうことをきかないとき、どうしたらいいですか?」

「犬が呼んでも戻ってこないとき、どうしたらいいですか?」

最後の質問などは、どうしようもない状況になってしまっているので、犬が戻ってくるまで待つしかないということになってしまいます。

これらの質問に対する明確な答えはありませんが、質問の内容を少し変えるだけで答えが見えてきます。

「犬が吠えたとき、どうしたらいいですか?」は、

⇒「犬が吠えないようにするために、どういいですか?」。

「犬が咬みついたとき、どうしたらいいですか?」は、

⇒「犬に咬みつかれないようにするために、どうしたらいいですか?」。

「犬が飛びついたとき、どうしたらいいですか?」は、

⇒「犬に飛びつかれないようにするために、どうしたらいいですか?」。

「犬がいうことをきかないとき、どうしたらいいですか?」は、

⇒「犬がいうことをきくようにするために、どうしたらいいですか?」。

「犬が呼んでも戻ってこないとき、どうしたらいいですか?」は、

⇒「犬が呼んでも戻ってくるようにするためには、どうしたらいいですか?」。

 

こういう風に考えられるようになると、犬のしつけはぐんと進みます。

犬が間違ったことをしてしまったあとに「違う」を連発しても、犬は正しいことを覚えないということなのです。

犬には否定形「○○をしない」は伝わりにくいのです。

「吠えてはいけない」を教えるなら、「吠える必要がない」ということを教えなければいえません。

「リードを引っ張ってはいけない」を教えるなら、「リードを引っ張らずに歩くこと」を教えなければいけません。

人の心理学の講義でよく使われるのですが「ピンクの像を想像しないでください。」というフレーズを聞かれたことはないでしょうか?

「ピンクの像を想像しないでください、と言われているのにすでに私たちの頭の中にはピンクの像がいますね」という話で、人の潜在意識(無意識)領域では否定形を受け入れないということの説明で使われる例文です。

人の潜在意識には五感(視覚、嗅覚、触覚、嗅覚、味覚)を通して幼少期に蓄積された情報を元に習慣化された考えや感情、行動のパターンのことを言うらしいのですが、犬の意識はこれに近いと考えてあげると良いです。

犬の無意識とは、幼犬期に五感から蓄積された行動のパターンの他に、犬が生得的(生まれたときから遺伝的に習得している行動がベースとなっています。

犬の過剰な吠え(みなさんのいうところの無駄吠え)、咬みつき、飛びつき、散歩中の興奮などは、すべて犬のストレス性行動です。

犬が吠えたり、咬みついたり、飛びついたりするようになったのは、犬が生まれ持った遺伝的な行動に対してストレスを与えるような環境があったからそうなったのだということです。

犬は環境に対して素直に反応して行動や感情のパターンを身に着けてしまっただけなのですが、それが興奮しやすいとか、怯えやすいといった行動のパターンになってしまったのです。

これらの犬の問題行動に対してできることは、吠えていることを叱ることではなく、犬が吠えないようにするためにどのようにしていったらいいのかを考えることです。

もちろん、それは一瞬では達成できません。

1回のトレーニングでも絶対に無理です。

今まで続けてきた悪い行動の習慣化を断ち切って、新たな犬が落ち着いていられる行動の習慣化を身に着けさせる必要があるからです。

それでも犬は元のパターンにすぐに戻ろうとします。

何しろ小さな年齢で身に着けた犬の行動のパターン(無意識の行動)は、結構根強く残っており、簡単に方向を変えることができません。

それでも、やはり犬は変化していきます。

吠えて興奮したり、人に咬みついたり、リードを引っ張たり、飼い主に叱られたりすることよりも、犬にとっては落ち着いて安心できる環境があればそれに適応しようとするからなのです。

何よりも、犬の脳は「安心&安全」を求めていますし、犬には服従性という素晴らしい性質があります。

これこそ生得的に身についた犬の勲章ともいえる習性で、これを引き出された犬は素晴らしく落ち着いています。

「犬が吠えないようにするために、自分にできることは何か?」を考えられるようになったら、犬のしつけはすごいスピードで進んでいきます。

犬は飼い主さん次第でどのようにでも変化していく、これもまた犬の特性でありすばらしい柔軟性なのです。

 

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