グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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子犬の正しい社会化の方法を見極めるために犬の習性を学ぶこと

この時代ならではのいろんな動きがでていますが間違いなく「ペットバブル」になっています。

ペットショップでは流行りの子犬が高値で販売されているようで、たくさんの人が犬を求めているということでしょう。

子犬のしつけ、子犬のトレーニングの依頼も多くなり、子犬の社会化について声を大にする必要性があり改めて書くことにしました。

犬のしつけについて飼い主が学ぶ情報源は、テレビやYouTubeやインターネットなど気軽に拡散されるSNSによって、大量にスピード感をもって広がっていきます。

ところがその情報の多くは科学的な根拠のないもので、どこかに書いてあったものの上っ面をさらったような内容ばかり、明らかに間違っているものが多く、かすかにかすっているけれど大きく違うものもたくさんあります。

ところが「犬が尾を振っているときには喜んでいる」という長い歴史の中で培った思い込みに沿うようにうまい具合にできているので、普通の人は納得してしまいます。

 

子犬の場合には、家庭内の飼育環境整備、子犬に対する接し方、トイレトレーニングといろいろと子犬のしつけで学ばなければいけないことがあります。

中でも「子犬の社会化学習」は、犬の性格形成に影響を及ぼす学習項目で絶対に大切なのです。

子犬の社会化学習とは「子犬が生涯を通して接することのできる刺激に対して適切に反応することができるように学習すること」です。

「刺激に対して適切に反応する」などとややこしい言い方ですね。

要するに子犬が社会のあらゆるものに馴化(適応)し、過度なストレスを抱えずに生きていくための力を身に着けることです。

子犬の社会化=馴化を適切に進めるために注意しなければいけないのは、子犬が状況を受け入れているかどうかを確認することです。

子犬は自分のテリトリーの中では興奮したり騒いだりする半面、表向きには警戒心が高く反応が少ない場合もあります。

子犬が目の前に起きていることを「大丈夫」と確認できるようになると、その対象に関心を示さなくなる、これが本当の馴化です。

逆に、間違った子犬の社会化にはこのようなものがあります。

人を見ると近づいていく

他の犬を見ると近づいていく

これらの行動は、子犬が人や犬が好きだからではなく、むしろ理解できないものであるから近づいていくという行為になるのです。

狼や野犬は子犬の社会化期にグループ外の動物に子犬が近づくことを許しません。

犬には犬の習性としての社会化という学習が備わっています。

人目線にならず、犬目線で子犬の社会化の仕組みについてぜひ学んでください。


 

Posted in クラスのこと, 犬のこと

ブームによって増える犬種の子犬は慎重に見極めて迎えることをお勧めします。

先日、ペットショップの中を横切ったときに、たくさんの子犬のはいったアクリルケースの中を覗き込む多くの人を見かけました。

子犬は疲れ切ったように寝ていましたが「かわいいー」と微笑んでみている方ばかりでした。

自粛生活で家にいる時間が長くなったことで、子犬を迎えた方が確実に増えています。

子犬のほとんどはショップやブリーダーが販売しています。

しかしその子犬たちは決して自然に生まれてくるわけではありません。

ペットの販売はペットビジネスの中で成り立っているので、売れやすい犬種、人気のある犬種、色、サイズ、などを吟味して繁殖しています。

犬たちは自然に生まれたのではなく、人工的な交配により繁殖させられているといるといってもいいでしょう。

買う側が欲しがる犬種は計画的な繁殖以上の数を求められて、無計画な繁殖で数を増やしてしまう結果にもなります。

繁殖が不安定になると、子犬の身体的精神的機能性にもいろいろと問題が生じます。

それだけでなく親犬の子犬に対するケアにも支障が出てきます。

法律では子犬を早期に販売することは禁じられていますが、その間親犬とどのようなコミュニケーションをとったのか、親犬がどのような繁殖をしたのか、親犬は繁殖犬として適切であったのかという法律はありません。

一方で犬を飼う方は犬に対する知識もなく、ぐったりと眠る子犬を見て性質を判断できるわけでもありません。

犬種によって必要な飼育環境が異なることや、同胎犬(一腹の中にいる兄弟犬)でもそれぞれに性質が異なることも知られていません。

ただ「かわいい」という理由で子犬を迎えてしまうこともあるし、自分のライフスタイルや生活環境と子犬が合わないということもでてきてもおかしくはありません。

ここであまりにも当たり前ですがもう一度自分に問うてほしいことがあります。

「なんのために犬を飼うのだろうか?」

もしその答えが「犬がかわいいから」というのならおすすめしません。

犬はかわいいだけでなく、難しい動物でもあるからです。

「なんのために犬を飼うのだろうか?」

その答えが「犬を飼うことで自分の人生がより豊かに楽しくなるため」

であるとしたらぜひ子犬を迎えて下さい。

犬と暮らす自分の人生が幸せになるためには、犬もまた少しは幸せでなければなりません。

でも、犬はごはんと愛情さえあれば幸せになれる、と思ったら大間違いです。

犬には自分を愛し理解し群れとして生きてくれる家族同様の動物が必要です。

犬はすばらしい動物ですが、そうだとわかるまでにはたくさんの大変なこともあります。

とても手のかかる動物ですし、水槽の中にいれておくようにサークルの中にいれておく動物ではないのです。

それでも犬はやはりすばらしい動物です。

だからこそ流行りに振り回されずに自分のライフスタイルの中にはまることできる犬種を選びましょう。

子犬を迎えるまえのカウンセリングも開催しています。


 

Posted in 犬のこと

飼い主の姿が見えなくなるとすごく吠える犬…これって分離不安ではありませんか?

ここ数年で多いお問い合わせの内容がこれ。

飼い主の姿が見えなくなるとすごく吠えるんです。

ネットでこの文章を検索すると「犬の分離不安」「分離不安症」という項目がたくさん出てきます。

自分の姿が見えなくなると吠える、興奮する、パニックを起こす犬を見て

「うちの犬は分離不安ではないか。」と問い合わせをされてこられるケースがとても増えています。

この行動のお問い合わせは数年前から少し増える傾向があったものの、コロナ禍において爆発的に増えたといっても言い過ぎではありません。

世の中の不安定さが飼い主の不安になり、それを受けて犬まで不安になってしまう…。

分離不安の犬を作ったのは社会のいだく不安の連鎖のようにも思えます。

犬には何の罪もないうえに、分離不安犬として不安な状態を生涯を通して持ち続けるのは大変なストレスであるばかりでなく動物として幸せ感にも影響します。

犬の分離不安状態は最初は初期症状から始まり、次第に悪化し病的なまでに進行します。

分離不安症という病名までついてしまい、動物病院では人の精神科で処方されるような類の薬を使用して治療にあたる場合もあります。

犬はそもそも病気ではなかったはずなのに、精神的な病気犬として扱われるまでになるなど、社会の変化といえどもあまりにも辛いことです。

分離不安は早期状態であれば、現在の飼い主さんの元で生活環境や接し方を改めながら解決することが可能です。

かなり早い時期に変化が訪れます。

状態が多少進行している場合には、経過をみながら環境を変化させていくことで同じように飼い主さんの元で行動改善を図ることができます。

分離不安犬としてあきらめずに犬の行動を理解して取り組んでいただきたいと思います。

犬は環境が変わると大きく行動を変化させることができる動物です。

ときには飼い主の環境では見られないような行動を他の場所で見せることもあります。

お預かりクラスのときにはそのことをよく観察でき動画撮影して飼い主さんにご覧いただくと驚かれることも珍しくありません。

犬は案外それほど悪くなっていないのに、犬が悪いと思い込んでしまって問題を複雑にしてしまうこともあるでしょう。

冷静に客観的に観察する眼が飼い主の側にも必要です。

犬が大切なら、犬のことを愛しているなら、犬を理解するためにかかる時間や労力は飼い主にとって苦にはならないと思います。

飼い主の姿が見えなくなると騒ぐ犬たち、犬からのメッセージとして受け取り対応していきましょう。


 

Posted in 犬のこと

恩師<平岩米吉先生>の言葉で再認識する:犬との関係づくりにご褒美と罰はいらない

※前書きになりますが今日のブログ記事は犬のしつけ方のハウツーをお探しの方には参考になりません。犬という動物と心から向き合いたい方だけお読みください。

今年は本を読むと決めていたからか、価値のある本との出会いが続いています。

現在読んでいる本「快楽としての動物保護」の中には、私が尊敬する先生方のお名前が次から次へと出てきて感動を覚えています。

本書の内容についてはまた後日改めるとして、今日はこの本の中で再会した「平岩米吉先生」の言葉から改めて学んだことを書きます。

 

平岩米吉先生との出会い

私は平岩先生と一度もお会いしたことはありません。

平岩先生を知ったのは学生時代に平岩先生の著書「犬と狼」や「狼ーその生態と習性」などの本と出合ったことでした。

私が犬の訓練士になりたいと思った当時は犬の行動学の本などほとんどなく、平岩先生の本は本当に貴重な本でした。

犬の仕事に就いたあとも平岩先生の本を大切にしていたのですが、新しい訓練の技法や次々に入ってくる犬に関する情報を得ながら、平岩先生の本は自分の手元からなくしてしまいました。

ところが今年になって出会った先の「快楽としての動物保護」の中に何度も平岩先生の名前や引用が登場するのです。

「快楽としての動物保護」信岡朝子氏著書には題目のテーマに関連していくつかの題材が設けられています。

その最初のテーマが「シートン動物記」で、シートンを絶賛しているのが平岩先生だったそうです。そのため平岩先生の動物と人に係わる考え方が著書目線で記されているのですが、これがあたらめてですが参考になるものばかりなのです。

 

動物を馴致(馴れさせる)のにご褒美と罰はいらない

今日はその中の一つだけを引用で取り上げます。

動物との関係を築くために、ご褒美や罰は不要だという平岩先生の考え方が記された部分です。

ここから引用

…然るに、この両者を近藤し、動物を馴致し心服せしむるには「賞よりも罰の適用が、更に賞と罰との併用がより効果的である」と述べる研究者があるのだから驚嘆する他はない。(平岩一九三七a、一ー二頁)

こうした主張は平岩が犬や狼をはじめ、多くの動物を自宅で飼育・観察する中で得た持論に基づくものだった。つまり、動物が人間に見せる従順さや忠誠、心服といったものは、強制や懲罰、あるいは餌などの「賞」によって導き出されるものではなく、彼らが生来有している自発的な「愛情」に基づくものであるという信念を、平岩は自分の経験を通じて確信していた。

引用ここまで「快楽としての動物保護」

これはあくまで生涯を動物の観察と飼育に全力を注いだ平岩先生だからこその言葉であって、適当にしか犬と付き合わおうとしないような現代人が軽々しく口にするような言葉でないことはわかっています。

ただ歴史の中に平岩先生のような研究者がいて大きな宝ものを残してくれたことをもう一度思い出したいと思うのです。

 

ご褒美や罰がないならどうやって教えるのだ。

平岩先生がいう犬という動物の中に宿る愛を通して人と犬がつながることができるのだとうしたら誰でもがそうしたいと願うことでしょう。

平岩先生のとおりにすべてをすることはできなくても、基本的な考え方には近づくことができると思います。

先生の基本的な姿勢は「犬を理解すること」にありました。

動物が発する音声やしぐさで彼らが何を望んでいるのかがわかります。

人側が一方的にしたいことを先に要求しないというのも、先生の教えだったと思います。

たとえば「犬に触りたい」「犬をなでたい」という欲求はどうでしょうか。

そうした人の欲求を満足させるために犬は存在するのではないということを理解できるでしょうか。

犬に必要な環境はどうでしょうか。

犬が犬として過ごせる場所を子犬のころから持っているケースは今はほとんどなく、犬たちは子犬から産まれて飼い主の元に移った後でさえ人工を強いられているという意味では平岩先生の環境とは大きく異なっており比較にはなりません。

もし人が食べ物をもって近づいたときに唸ったら、すごく単純にそれ以上近づくなという意味であって「その食べ物をよこせ」という意味ではありません。

犬と犬は唸りあって食べ物を搾取するような世界を持ちません。

食べ物で支配されればされるほど食べ物に対して興奮度が高くなったりストレスを感じたりするようになります。

むしろ平岩先生が観察した自然な状態の犬だったら驚くほど食べ物には左右されないというのが本当の犬であると言えるでしょう。

だからこそ絶対にはってはいけないのは、食べ物を使って芸を教えるならまだしも、食べ物を使って人に馴れさせるなどはもっての他であり、犬は傷ついていくことをまず理解したいと思います。

動物が本当の真の愛で人との関係をつくるならそこには食べ物などのごほうびは不要なのです。

犬との山歩きには餌は不要もしくはマイナスの道具となります。

山歩きの極意は平岩先生の言葉にもあったと思い出した一日でした。

Posted in 犬のこと

犬にもPTSD(心的外傷後ストレス障害)はあると思います。

毎日の訪問レッスンで見る犬の行動は、単純なイタズラやいうことを聞かないといったレベルではない状況になっていることがあります。

数時間に及ぶ吠えが続く

数時間に及ぶ常同行動の繰り返し

パニックを起こしたように興奮するなど。

カウンセリングの時には、犬に何が起きているのかを分からずに混乱する飼い主の元で、犬はますます手の付けられない状態になっていることがあります。

こうした意味不明の行動を見た飼い主は、この犬は普通ではない、遺伝的に何かおかしいのではないかと考え、率直にそう尋ねられる場合もあります。

自分の犬が何か状態がおかしくなっていると感じられているのは、兆候としては良いことです。

異変を感じ取る、このことこそ犬を救う最大のきっかけだからです。

そしてこの問題を解決したいと思ったときに、同時に考えるのが「なぜこうなった」という理由についてです。

理由のひとつとして、遺伝的におかしいのではないかと考えることもまた普通の発想です。

遺伝的に行動に解決のできない支障があるとすれば、脳は発達を阻害する何かを抱えているということです。

そこから発展して、発達を阻害された=未発達の脳の状態で体験したことが、トラウマを生み出しPTSD(心的外傷後ストレス障害)に陥っていることがあることもまた否定はできません。

ところが犬の脳の研究はそこまで進んでいないことと、実際には脳の発達に影響を与えている要因となるものが、犬によってあまりにも異なるため(遺伝的要因、飼育環境要因)比較が難しいために、簡単にそう決めつけることもできません。

しかし、最近偶然読んだ本の中に、題目の一文を簡単に言ってくださった先生が見つかりました。

面白くて今も読み返している本は神田橋條治先生の発達障害に関する一般人向けの書籍です。

書籍の中には質疑応答風にありました。

「先生そういえば犬にもフラッシュバックがあるって書いていらっしゃましたよね?」

「犬もPTSDになるんですか?」

神田橋先生「なると思いますよ。」

と犬の下りは3行で終わってしまったのですが、まさか犬の話題が登場するとは思わずに読んでいたのでびっくりしました。

そして、神田橋先生のこの一言をいただいて、やっぱり犬もPTSDになるのかと自分の予測が裏付けられたようで楽になりました。

また発達した脳でもPTSDになりますが、犬の場合には未発達の影響がかなり重なり合っているということもよく見られるケースです。

 

ここで付け加えたいのは、あなたの犬がPTSDになっているかどうかは簡単に判断しないことです。

それにPTSDといってもレベルというものがあります。

同じような行動に条件付け行動というものもあります。

似ているようでかなり違いがあります。

さらに発達障害に関して神田橋先生は「発達障害は発達するもの」と考えられていることもあわせてお伝えしておきます。

私も同じように考えています。

犬の未発達、発達障害は、発達する可能性のあるものとしてトレーニングをしています。

発達を阻害している環境を整備しなおすことがトレーニングクラスの目的です。

 

みなさんが「いうことを聞かない犬」とおもっているその犬が実は発達障害でさらにPTSDになっているのかもしれないのです。

犬たちの発達を阻害しているのが飼い主さん自身だとしたらどうでしょうか。

実は多くのケースで、飼い主と家庭の飼育環境が犬の発達を阻害しています。

新たな病気を生み出す前に、ぜひ問題を感じたらすぐに専門家に相談してください。

繰り返しますが、犬に問題があると感じられることはとても良いことなのです。

不安に思わずに問題に気づいてよかったと思っていただき、前向きに対処していきましょう。

誰のためでもない、犬と飼い主さんの暮らしのためにです。

お散歩代行中の写真
本文とは関係ありません。



 

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今日もまたトレッキングクラスを開催しました。

ブログの更新がなかなか進みません。

毎日のレッスンで膨大な量の情報を私の中で整理する時間が必要となっていること。

今年は取り戻したい読書時間のための読みたい本が山積みになっていること。

庭の野菜の成長の進退に一喜一憂していること。

移動に莫大な時間と労力を使っていること。

こんなことはグッドボーイハートが始まってからずっと毎年続いていることなのに進まない理由はおそらく自分の処理能力が遅くなっているのだと思います。

それから世の中が混乱と共に犬もかなり混乱していると感じています。

 

迷ったときは自然の進化に戻ること、犬との山歩きの時間は人と犬の関係を築く進化のひとときをおさらいさせてくれる時間です。

今日も多忙な時間を割いてトレッキングクラスを希望された生徒さんたちといっしょに福岡で気軽に登れる山道を犬と共に歩きました。

平日で人もおらずトレッキングになれている犬たちばかりだったので、お互いに距離を近めながら歩くことができました。

階段も多く七山クラスほど時間もさけなかったのですが、それでもやっぱり「気持ちがいい」と感じる時間でした。

犬たちもそれぞれに山の空気を吸い込んでいる様子。

そして大切なのはグループで結束して歩く時間が持てたことです。

グッドボーイハートで学ばれている飼い主さんたちは、安全な犬との登山の仕方を身に着けています。

単独での山歩きはよくいかれているのですが、犬と犬がそろって群れなって歩くという時間は、犬の進化の記憶を呼び起こしてくれます。

といっても、スクールに入ってすぐに山歩きを練習するわけではありません。

山に入る前に家庭の飼育環境という基盤を安定させる訪問レッスンが最初は欠かせません。

犬はファンタジーの道具にされつつありますが、犬はとても現実的な動物なのです。

今こそ犬と何をするのか、何ができるのか、どのように共に生きていくのか、じっくりと考えていきたいものです。

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環境で変わる犬の習性:グループレッスンではおとなしい犬が家庭で吠えるのはなぜ?

家庭訪問レッスンを続けている理由のひとつが「犬の普段の行動が見れるから」です。

来客が来た時の行動、飼い主さんに対する何気ない行動など日常的に犬がしている行動を見ることが犬のことを理解することに直結しています。

訪問レッスンのときに私という来客に対して吠える犬も、学校という私のテリトリーに入ってきたときには吠えません。

来客に対する吠えの理由にもいろいろとありますが、この犬の場合は「自分のテリトリーの中で吠える」という行動のパターンになっているのでこのような状態になります。

例えばですが、スクールに連れてきてもらって他の犬と対面させても吠えない犬も、同じ犬がもし自分の家の周りをうろついていたら吠えるでしょう。

テリトリーの中で吠える行動が身についていて、飼い主が犬の管理者になりきれていない環境の中では、つじつまうのあう行動です。

飼い主さんにしてみると「グループレッスンのときにあんなにおとなしいのに、家の中や散歩中に人や犬に吠えるのはなぜですか?」という疑問が生じます。

犬の飼い主という立場ではよく擬人化が進むので「スクールではおりこうなふりをしている」とか「内弁慶」という言葉で納得できるでしょう。

もうすこし動物らしく語るなら「環境に応じて行動を変える」これが普通です。

むしろ、環境に応じて行動を変えることができるなら、変化の可能性が十分にありますよ、という良いお知らせなのです。

行動の定着化は恐ろしく、環境が変わっても行動が変化しないようになってしまうことがあります。

こうなるとトレーニングや行動修正には困難を極めます。

グループレッスンやお預かりクラスではおとなしく、家庭に変えると吠えてしまうのなら、まだ家庭の中には不安は興奮の要素がたくさんあるということです。

家庭訪問レッスンのときには私の前で犬に対して自制のできる飼い主たちも、犬が飼い主にとびつく姿を見れば普段どのような生活を送っているのか想像できます。

犬は人よりもずっと正直で、むしろ正直に環境に対して反応をしているだけなのです。

Posted in クラスのこと, 犬のこと

コロナ禍で広がる不安定な空気が犬に与える影響について

いったんは収まったかと思った流行りのウイルス感染がまた広がりつつあるというニュースを受けて、人々の生活は現実的に不安定になったり、または精神的に閉じこもりがちになったりする時代。

こんな時代に犬に癒しを求めて「犬との生活」を始めた方もきっと多いことと思います。

犬との暮らしを通して犬という動物のすばらしさに気づいて下さる方々がこれから増えてくるのだろうという期待もある反面、犬のことが理解されずに犬そのものが傷ついてしまうのではないかという不安も抱えています。

この不安をあおるひとつの理由は、時代の流れの速さが、犬との暮らしや犬に対する価値観が変化することにも影響をしていると感じるからです。

平成元年くらいの時代には、まだ犬を集合住宅で飼うという価値観すら人によってはどうかなという時代でした。

ところが令和の今になると、もはやそれは選択肢としては当然のことで、今は何頭なら飼育しても問題ないのかという数の問題になっています。

他にも、犬を飼う目的が「だっこしたいから」といっても今では当然の目的であることも、ひと世代前の飼い主さんなら「自分が抱くために犬を飼うなど考えたことがない。」と言われるでしょう。

犬は人にあまりにも近い動物で、人の生活や価値観によって犬である自分自身の生き方も変わってしまうくらいなのです。

そのうちに、犬に散歩などかわいそう、犬に服を着せないのはかわいそう、犬にはおむつが当然必要、犬は抱っこして歩くもの、犬は毎日シャンプーをすることが必要などと、今は自分の中ではありえない価値観が、多数の当然の価値観になっていく可能性も十分にあると考えます。

新型コロナウイルスという生き物の登場ですごい速さで時代が流れていく中で、犬という動物の扱い方が変化することを止めることはできませんが、失われそうな動物に対するモラルをもう一度取り戻していただき、冷静かつ慎重に犬を動物としてみる眼を忘れないでほしいと願います。

残された方法はひとつしかありません。

犬が本来暮らしていた山という場所で犬が落ち着いて過ごす姿を自分の目で確かめて下さい。

犬は動物なのだと、犬は山に生きた生き物だったのだということを思い出していただくだけで十分です。

今日、七山に到着しました。

お預かりの犬ちゃんと明日から、自然との時間楽しみます。

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犬の他の犬に対する社会性について:ルールのない社会的な接触は対立につながることもある

同じ欲求を犬も持っていると思うからこそ、犬が動いている、走っている、飛び上がっている姿を見ると「犬が走って喜んでいる」と単純に見てしまうようです。

犬が人に飛びついていくのを見て、楽しそう喜んでいるのは本当に犬が楽しいからだろうか?

もう一度「犬の行動について」考えてみましょう。

●人が活動することの本来の楽しみを考える

人は自分が健康であれば、体を動かして作業や活動や運動をすることを楽しめる動物です。

体を動かすことが困難になってくる初老の始まりでさえ、自分のできる範囲で活動をしたいという欲求を持ちます。

先日訪問クラスの際に、犬の状態を説明するにあたりスポーツを例に挙げて話ました。

「何かスポーツをしたことはありますか?」

その生徒さんは学生時代に卓球部にいたということで話が盛り上がりました。

実は私も中学生のときに卓球部に所属しており、毎日卓球をして帰宅するのが日課だったからです。

スポーツを通して活動をすること、スポーツを通して戦うことは、自分をかなり刺激します。

「できないことができるようになる」という身体の変化に加え、試合に臨むという闘争心、仲間と競うという競争心も含めて、心身共に自分がより良い方向へ進化することを感じられるからではないかと考えます。

●スポーツは活動性を高める以上に規則性を学ぶ機会になる

しかし、スポーツという活動はただ活動して興奮するための機会ではありません。

戦って攻撃性を引き出すための活動でもなく、むしろ攻撃性を上手にコントロールする機会を持つこと、体の機能を高めることで余裕をもって行動できるようになることを身に着けることができます。

最も大切なことは、規則性を身に着けることができるというのが一番の自分にとっての利益になります。

規則性といってもいろいろとあります。

競技を行う上で自分の中に課される規則

団体行動の中で自分の中に課される規則

規則を守ることができるから成り立つ攻撃性、それが安心できる活動です。

活動を通してワクワクしていくことができたのは、あくまで安心できる社会的なグループの中に入っていることが前提なのです。

そのため、部活などでいったんこのルールが崩れてしまうと、攻撃性に襲われるような気持ちになり自死に追い込まれることになるのでないでしょうか。

 

●犬は「社会的な動物」だからこそ、社会的に傷つくこともある

話を犬のことに戻します。

犬も人と同じように「社会性の高い」動物です。

みなさんがそう思っているからこそ、自分の犬を他の犬や人と関わらせようとしているのです。

もし自分が飼育している動物が「ニシキヘビ」だったとしたら、同じ蛇同志だからといって突き合わせたり、来客になでてもらいたいなどと思うこともないでしょう。

みなさんと暮らしてる犬は、社会とのかかわりを楽しめる犬だということは間違いないのですが、同時に社会とのかかわりによって傷つき精神的に追い込まれることもある、逆の状態になってしまうこともあるのだという見方も必要なのです。

●ルールのない犬の社会的活動は興奮行動や社会的な対立になる

犬が他の犬は人と社会的な関わりを持とうとする動物だということは間違いないのですが同時に関わることでストレスもかかえてしまうということをまず理解する必要があります。

特に犬と犬の場合には、犬の習性をいう遺伝子情報に組み込まれた規則があります。

それはまさに犬の世界に規律ともいえるものです。

この規則にのっとって、犬たちは関わりを持つ、関わりを拒否する、攻撃する、逃走する、闘争するなどの他の犬に対する行動を決めています。

規則があればまだよいのですが、無法地帯の中では混乱を生じるいわゆる「パニック」という状態になってしまうこともあります。

冒頭の、走り回る犬、飛び上がる犬の多くはこの「パニック」状態に陥っていることが非常に多く見られます。

それは、決して人が活動を通して楽しいと感じている状態ではないのです。

ルールのない無法地帯が生む「パニック」を表現する行動、それが犬の走り回り行動や飛び上がり行動につながっていると考えてみてください。

楽しんでいると思った犬が、パニックを起こしているなど真逆に考えることはなかなか難しいことだとは思いますが、冷静にそう考えると他の行動にも辻褄があいます。

 

たくさんのことをブログでお伝えしたいのですが、なかなか限界があり難しいこともあります。

みなさんの疑問に集中してお答えするには直接対面するクラスを受講していただくことしかその機会がありません。

社会状況からして犬語セミナーの開催は少しあとになりそうです。

犬のことにもっと疑問を持って行動を科学的に分析するチャンスをたくさんの飼い主さんに持っていただくためのプライベートクラスを、できる範囲内では開催しています。

たくさんの本、たくさんのユーチューブの動画、SNSのイイねの写真に惑わされず自分で考える時間をもってください。

犬とのすばらしい時間が、皆さんの人生の中で最高!の時間になることを願っています。

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犬の問題行動が良くなるどうかは、やっぱり飼い主さんに主導権があった方がいい。

犬の吠える、かみつく、無駄吠え、興奮、留守番できないなどの困った行動に関するお問い合わせを受けるときに、数回に一度くらいは「本当に治るんでしょうか?」と尋ねられることがあります。

飼い主さんが何を「治したい」と思っているのかどうか、私の考えとズレていなければ、犬の脳に特別な障害がなければ、その行動はおおよそ「改善する可能性がある」とお答えできます。

なぜなら、犬にはそもそも問題行動というのはないのです。

飼い主が問題とする行動のほとんどが犬のストレス性行動とよばれるものです。

犬のストレス性行動とは、犬がストレスを表現する行動ということです。

毎度のことながら「そもそも犬にストレスがあるのか?」と議論する必要はもうなさそうなので、この説明は簡単には以下のとおりです。

犬には脳という機能があって脳がストレスを受ける状態になることは、科学的に証明されています。

犬のストレス行動が起きている要因(主には環境)を改善することで行動に変化を起こさせることを犬のしつけとかドッグトレーニングというのです。

犬を預かって行動を観察すると、みるみるうちにその行動が消えていくのを見ることができます。

中には多少変化に時間のかかることもありますが、それでもより適切な環境の中では犬は変化していきます。

ところが、飼い主が飼育する環境の中での変化は、犬によっては早いこともあり、犬によっては時間のかかることもあり、犬によっては一向に変化を見せない場合もあります。

環境要因のバランスの多くを飼い主が抱えている場合には後者に偏りがちなのです。

なぜなら、飼い主は無意識に犬が不安定になる環境を作っているのですが、そのことに気づくことができず、こちらで把握してアドバイスしたとしても無意識なので変わりにくいものです。

だから表題のとおり「犬の問題行動が良くなるかどうかは飼い主次第」ということなのです。

ですがこれは、飼い主に責任を押し付けるということではありません。

犬のしつけや犬のトレーニングをこれまだたくさん見てきた結果の意見です。

犬はやはり飼い主の主体的な関わりによって改善が起きた方が、飼い主との信頼関係も深まっていくからです。

だから、小難しいことを言ったり、練習を繰り返したり、嫌われてもいいやと思いつつ、飼い主さんにしていただくことが犬のしつけの絶対条件です。

そしてその中で犬の問題行動を解決していく、ということであれば、本当にそうなるかどうかは自分を信じられるかどうかということではないでしょうか?

私はどのような状態の犬でも、いったんは飼い主さんを信じるようにしています。

この人ならできる、この飼い主ならできる、そう思えなければ他人に犬のしつけなど教えることはできません。

あとはみなさん、飼い主としての自分を信じて下さい。

きっと大丈夫、私はこの犬を大切に思っている、愛していく気持ちがある、だったら絶対に大丈夫です。

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