最近、非常に多く子犬のしつけ相談に伺うようになって「絶対にやってはいけない子犬のしつけ」を飼い主さんの口から聞く機会が頻発しています。
グッドボーイハートの生徒さんには「それをやってはいけない、なぜやってはいけないのか」と説明することももはや仕事のひとつになっています。
犬のしつけというと「これをやってください」と指導することが本来のクラスの目的なのに、「やっていはいけない」こととその説明にものすごくたくさんの時間と労力を費しているのが本当に悔しくてなりません。
しかし子犬の時代の接し方やしつけは、犬の生涯を通して非常に大切なことなので、時間がかかってもやるしかありません。
子犬の散歩のさせ方でやってはいけないこととは
間違ったこともあまりにも多くの情報が流れることで「それが定説」となってしまうこともあるのですが、そうなってしまった「子犬の散歩のさせ方」で絶対にダメという方法があります。
それは「抱っこ散歩」です。
子犬を抱っこして散歩させるお散歩のさせ方、これは絶対にダメです。
なぜなら子犬の社会化を逆に難しくしてしまうからです。
この抱っこ散歩ですが、ここ15年前くらいから流行り出したものです。
私も何かのセミナーで聞いたことがありますし、実際にやってみたこともあります。それが何のセミナーだったのか、どんな講師だったのかも覚えていません。
当時、子犬を早く散歩という場所に出して社会化を進めたいけれど、ワクチン接種が終わっていない子犬を外に出すことができない、それなら抱っこして出そうという人側の考えの中で生まれた方法が「子犬の社会化のための抱っこ散歩」なのです。
どうしてこのような発想になったかというと、子犬のワクチン接種が始まったのが、同時期の15年くらい前からだったからです。
ワクチンは最初は1種であったものが、今は9種とすごい数になっており、ワクチン接種をすること事態が子犬の免疫力形成にすごいリスクを負わせていることは討論されないまま、ワクチンしても社会化できるといわれた子犬の抱っこ散歩は当時は画期的な方法として拡散しました。
なぜ子犬の抱っこ散歩が絶対にダメなのか?
しかし、犬の仕組みをよく考えてみると、この抱っこ散歩は明らかに子犬の発達を阻害してしまいます。
子犬は視覚の発達に時間がかかるうえに、人のように視覚が発達しません。
犬の知覚の多くは嗅覚=匂いの世界で構成されています。
「匂いの正解」これが犬という動物の仕組みです。
匂いをとりつづけて空間を把握するために、子犬の鼻はすぐに地面を匂います。
地面から離された抱っこの状態で、視覚にばかり刺激を与え続けると子犬の脳は混乱してしまいます。
結果として子犬の脳は、自分の周囲にある刺激に馴化するという脳の発達を促せません。
子犬の目で見たものは「わからないもの」もしくは「危険なもの」としてインプットされてしまいます。
走っている人やバイクなどの過剰に反応する犬はこの抱っこ散歩の影響で、混乱した情報をもってしまったということです。
動きが早すぎてそれが何者であるかを確認できない作業の繰り返しで「わからない=危険」が入力されたのです。
わからないものに対して恐怖を抱く習性は人も持ち合わせています。
わからないウイルスに怯える今の人間の様子もこの子犬と同じ状態を作り上げているということです。
同時に抱っこ=拘束が子犬の精神的な状態を不安定にさせます。
拘束は動物にとって最も危険な状態です。
だから子犬はサークルやリードという自分を拘束してしまう道具に対して反発します。
サークルは絶対に使用してはいけない道具です。
またリードは子犬の受け入れを確認しながら馴化させていく必要のある道具なのです。
犬の習性から学ぶ子犬の本当の社会化とは
抱っこ散歩の発想は、子供の抱っこやおんぶ散歩から来ています。
赤ちゃんを抱っこして移動する方法は数少ない動物の習性ですが、人間はそのひとつです。
特に親が赤ちゃんを抱えて、赤ちゃん側も親にしがみつく行動で移動するのは霊長類でも数種しかありません。
人間の赤ちゃんでやるこの抱っこして移動する方法を犬に置き換えたのが子犬の抱っこ散歩になりますが、この方法そもそも犬の習性にはありません。
犬は子犬を抱っこして移動することはありません。
子犬の首元を加えてクロネコヤマトさんのマークみたいに移動させることはありますが、日常的にはテリトリーから出ようとする子犬を引き戻す行動としてさせるものです。
子犬は自分の足で匂いを嗅ぎながら歩き社会の中にあるものに反応をしつつ学びます。
また子犬は自分のグループの親犬の反応を確認しながら学びます。
子犬は安全なテリトリーの中で探索するという社会化の形が本来の社会化のスタートです。
抱っこ散歩は絶対にしてはいけない間違ったしつけです。
犬の習性という仕組みをよく理解して、犬の立場にたったしつけを飼い主が身に着けて子犬の成長を促してください。
お庭で草と遊ぶ生後3ケ月の子犬