グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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動物園の取り組みから学ぶ「“さわる”ふれあいを“学ぶ”ふれあいに変える」こと

ライオンを飼育しない動物園

先日動画配信サイトで南海チャンネルの制作した動物に関する番組を見て感じたことがあります。

番組名は「#7どうぶつたちの“幸せ”の先に」というものでした。

動物福祉をテーマにして動物園や畜産業の現場を取材したもので普段から動物福祉を考える立場の自分にとってはとても興味深い内容でした。

動物福祉とはなんぞやを簡単に述べるなら「動物の立場に立って考える」ということになります。

番組の取材先は愛媛のとべ動物園と京都市動物園でした。

どちらの動物園でも「動物が本来の性質を発揮できるように」という取り組みをしているということでした。具体的な取り組みとしては、京都動物園ではライオンを飼育しないという方向に転換したそうです。

なぜライオンを飼育しないのかというと、ライオンは群れで暮らす習性を持つため動物園ではそれに必要な環境を整備できないということでした。

この話を聴き、オオカミも群れで暮らす習性を持つ動物なのだから、それについてはどうしているのだろうという疑問が生じました。

調べてみると次のようなコメントが出ていました。

御意見箱に寄せられた御質問への回答 H30.9.24~H30.10.26
249
Q.オオカミはなぜいないの?
A.現在,動物園では約120種の動物を飼育しています。過去には 200種を越える動物を飼育していましたが,「動物福祉」の観点から飼育環境の改善,「種の保全に力を入れるための 選択と 集 中の考え方から,一部の種について飼育展示を止めるという判断をしています。オオカミもその一種で,“見たい”との御要望に添えないことがございますが,御理解下さい。

【飼育を止めた動物種の例】
アシカ コンドル オオカミ ビルマニシキヘビ ホッキョクグマ

たくさんの人が訪れる、特に子供たちが教育の場として利用する動物園でこのような取り組みが行われていることに感動しました。

動物た見たいという子供の気持ちに対して見たい動物がなぜそこにいないのかという理由を伝えることで、子供たちが動物の立場に立って考えるという視点を学ぶことができ、さらに「オオカミやライオンは群れで暮らす動物なのだ。」ということも学ぶことができるのです。

 

ふれあい教室をふれる場から学ぶ場へ

さらに京都動物園ではふれあいのルールを見直す取り組みがなされているそうです。

子供たちの“ふれあい”に使われていた動物はテンジクネズミです。これまでは子供たちが抱っこしたりなでたりするいわゆる“ふれあい”をしていたものを、動物福祉の考えから大きく転換させていました。

それは、従来の「さわる」ふれあいを止めて、ふれあうということを学ぶ空間に変えるという素晴らしいものでした。このふれあい教室では、子供たちがものを使ってテンジクネズミの飼育環境を考えながら空間を作っていくという取り組みをされているのです。

「さわる」ふれあいを「環境を考える」ふれあいに変える。

さわれないではふれあいにならないではないかと考えるのは大人の発想です。

映像に映る子供たちはテンジクネズミを観察しながらどのような空間をテンジクネズミが受け入れるのかを楽しむようにトンネルをつくったり隠れ場所を作ったりしています。

本来のふれあいとは触ることではなく、相手の立場に立って考えること、まさに動物福祉の視点に立つことこそふれあうことの原点だということを証明してくれるものでした。

 

犬の飼い主は誰よりも強く犬の幸せ(福祉)を望んでいるはずです。

ところが飼い主の多くは犬の幸せは飼い主や他人に撫でられたり触られたりすることだと勘違いしています。

犬の立場に立って考えて下さいといったとしても、犬がなでられることが一番大切だと信じて疑わない人がたくさんいますが、質問を変えてみましょう。

犬の福祉(幸せ)を考えるなら、犬が本来の性質を発揮できるようにするために何が必要かを考えて下さい。

先程のふれあい教室のテンジクネズミたちですが、「さわる」ふれあいを止めたことでテンジクネズミの診療が減少したそうです。

触られることがテンジクネズミたちのストレスや病気に繋がっていたことがわかります。

本来は人に触られるとストレスを感じる動物を、さわる「ペット」という道具にしたものが一部の愛玩犬です。

ですが犬を愛する皆さんなら、犬を触る道具として必要としたとは思えません。

犬が本来の性質を発揮できるために何ができるかを考える、これが犬の福祉(幸せ)を考えることです。


 

 

Posted in 犬のこと, 自然のこと

犬のしつけ・トレーニング成功の秘訣は、犬を変えるのではなく犬が変わる環境を整えること。

当校では家庭訪問型の犬のトレーニングクラスを提供しています。

家庭訪問クラスを開始したのはグッドボーイハートを立ち上げた西暦1999年ですから、24年間このクラスを継続していることになります。

当時は、家庭訪問レッスン型のドッグスクールがほとんどなかったことから、すぐにたくさんの訪問以来を受けるようなった結果、訪問件数が多く回り切れないという状態になってしまいました。

そこで通学するスクールを博多駅近くに開設して、一時は通学型レッスンに変更したこともあります。この時代はスタッフが家庭訪問に回り、私が通学レッスンを担当しながらデイケアスクールも併設していました。しかし、再び家庭訪問レッスンを再開することになりました。

一軒一軒ご家庭を訪問して行う家庭訪問トレーニングクラスは、移動の労力が負担が大きく疲労は連日のことです。提供する側としては通学レッスンの方が圧倒的に楽ができるし時間の都合もつき、さらに多くの件数を受けることができます。にもかかわらず、通学レッスンから再び家庭訪問レッスンに変更したのはそれなりの理由があります。

その理由はとても単純で、トレーニングの成果が圧倒的に家庭訪問レッスンの方が進むからです。実際に二つのクラスをどちらも運営してきた結果なので、家庭訪問の方が効果があるのは間違いありません。

なぜ家庭訪問レッスンの方が効果が高いのか、それはグッドボーイハートのトレーニングの基本姿勢が「犬を変えるのではなく、犬が変わる環境を整える。」だからです。

在校生や卒業生のみなさんなら、なるほどと納得していただけると思います。

犬を変えるのではなく犬が自然と変わる環境を整えるために、一番必要なのは育てている飼い主側の変化です。

 

●家庭訪問レッスンを受講された生徒さんの記録から

先日家庭訪問レッスンの10回コースを終えられた生徒さんが、チェックシートを提出して下さいました。

「本日が10回目なので」ということで、こちらが要求したのではなく、自ら提出されたものです。

シートは次のように整理されていました。

一番左側から「課題」「ビフォー(レッスン前)」「アフター(レッスン後)」

と整理して記入されています。

この写真が実際のシートになります。

家庭訪問レッスンの記録(飼い主作成)



これはまとめのシートとして提出して下さったのですが、このシートにいたるまで毎回に渡って記録された生活管理表も毎回見せて下さいました。


生活管理表は排泄などの生活管理を飼い主ができるようになるために作成してもらうものです。

この生活管理表の中にはトレーニングの回数も記録されています。

ハウスを何度させたか、スワレのトレーニングを何度やったかなどきっちりと練習を重ねてられたことがわかります。

レッスン時には必ず宿題がでますので、それをどのくらい練習されたかで結果は変わります。

大体一日に1回とか2回の方もいる中で、こうして毎日繰り返し練習を重ねられる飼い主さんは尊敬します。

飼い主側が犬に臨む気持ちが行動となって現れるときはじめて犬は変化し始めます。

スワレやフセの練習だけなら通学レッスンでもできることですが、この現場(家庭)
で取り組む姿勢というのは通学レッスンで一緒に時間や空間を共有しなければ実現できません。

上段のまとめシートの「続けること」の欄があることに感動しました。

家庭訪問レッスンは10回で終わり、これでやっと犬のしつけから解放されるという気持ちではなく、ここまで犬と一緒に頑張ってきたことを継続させていこうという姿勢を見せて下さり、こちらも身の引き締まる思いでレッスンを終了しました。

実はこの生徒さんはプロスポーツの熱烈なファンでいらっしゃいました。その推しの選手たちを尊敬するあまりこうした姿勢を身につけられたのかもしれないなと勝手に想像した次第です。

家庭訪問レッスンはこうしたご褒美があるからなかなか止めることができないのですが、質を下げないために件数は増えすぎないように自制しています。

すべてのグッドボーイハート生の皆様が、楽しく学び豊かに犬と暮すためにできることを日々実践します。

Posted in クラスのこと, 犬のこと, 受講生のコトバ

“ミスマッチ”により犬育てを放棄する問題は売る側にあるのか、買う側にあるのか?

はじめに、最近のこと

更新が一ケ月以上空いてしまいました。猛暑の始まる次期からやっと秋の気配が感じられるまでのこの時期は犬の苦手な季節なので仕事も多かったですが、ようやく落ち着いてきたところです。

家庭訪問トレーニングクラスやお預かりクラスやトレッキングクラスで一日として「犬」に接しない日はないのですが、そのためか思うことが多すぎて消化する時間がなかなか持てずにいました。

犬のことを考えていることがただ幸せで楽しいだけだという方もいらっしゃるでしょうが、私の場合は犬のことを考えていると悩んだり辛くなったり眠れなくなることもたびたびです。

多分、自分の犬のことであれば自分にできることを最大にすればいいし、できなかった自分を攻めればいいという単純な構造なのに、自分が飼っていない他の多くの犬たちのことを考えたときに様々な価値観の中で生きる犬にとっての何が幸せなのかを、自分でもまだよくわかっていないからなのだと思います。

そのためこうしてブログ記事を書くことで自分の頭の中を整理整頓させていただいています。

 

ネット記事「飼ってはいけない人たち…」

今回は2024年8月8日のネット版のデイリー新潮に掲載された以下の記事に対して考えた題目に触れる件です。

ペットの殺処分がなくならない“本当の理由”は 「飼ってはいけない人たちに無理やり売りつける仕組みが」

デイリー新潮の記事によると、潜入取材した大手のペットショップでかなり月齢の低い子犬が売られていた可能性があるということ。

その子犬を売る販売者側のセールス方法が飼い主側の衝動買いを生むため、本来は犬を飼ってはいけない人が飼うことになる。

その先には成長した犬が問題を起こすようになり高価な価格と見合わないと憤慨する飼い主が犬を放棄する飼育放棄がおきてしまう、そのことが犬の殺処分の構造の要因になることを動物愛護関係者が語っている。

とこのような内容になっていますが、詳しい内容はリンク先の記事をご覧になって下さい。

 

“ミスマッチ”とはどんなことなのか

記事の中ではミスマッチという表現を使われていますが、ミスマッチとは犬を家庭に迎える際に、その家庭には適していないタイプの犬を選ぶということです。

保護された犬に新しい飼い主を迎える際に行われる「マッチング」は、保護犬の性質や形質にあった飼い主を見つけるための大切な工程です。マッチングというと結婚相談所のようですが、まさにパートナーを見つけるマッチングと同じことです。

この記事の中での“ミスマッチ”の単語は動物愛護関係者のコメント欄の中に出てきますので、飼う側の環境にあった犬を迎え入れすれば問題なかったはずだという風にも受け取れますが、記事の流れとしては犬という動物そのものを飼育することが難しい人に犬を販売することを問題としていると私は受け取りました。

 

犬を飼う資格のない人が犬を飼う責任はどこにあるのか

犬を飼う適性のない人々が子犬を迎える責任について、記事の中ではペットショップ側の上手なセールス方法にあるというところで終わっていますが、当然のことながら適性のないのに犬を買った購買者の方にも責任はあるはずです。

販売されているどのような物でも、それを使いこなせるのか着こなせるのかを判断しているのは買う側であって売る側ではありません。

もちろん、売る側が大変親切な方で「この洋服はあなたには向いていませんよ。」とアドバイスしてくれれば考えも変わりますが、一旦欲しいと思ったものを手に入れようとするのが人間です。

犬は商品ではなく生き物なのだから洋服と同じように考えることは間違っているというのは正解です。ですが、他の商品と同じようにお店で販売されているのであれば、買う側からすれば買う権利はお金を払う義務だけです。

動物の愛護及び管理に関する法律を紹介する環境省のパンフレットには、動物を販売するものには次のような責任が課されていると記されています。

動物(哺乳類・鳥類・爬虫類)を販売する場合には、あらかじめ、動物を購入しようとする者に対して、その動物の現状を直接見せると共に、その動物の特徴や適切な飼養方法等について対面で文書(電磁的記録を含む)を用いて説明することが必要です。

この対面説明を行うためにネットで注文した子犬も手渡しすることが義務付けられており、飼い主側はこの文書を確認して書面をした上で子犬をショップもしくはブリーダー(繁殖者)から入手するのですから事前に飼育の義務に関して説明を受けたということになります。

飼育放棄される犬たちの問題について、売る側に責任があるのか、買う側に責任があるのかの議論はもっと積極的になされるべきです。その議論にこそ「犬という動物はどのような動物なのか?」という疑問が生れてくると思うからです。

今回はデイリー新潮の記事がペットショップを対象としたものでしたが、ここに記したとおりネットショップやブリーダーから購入したとしてもそれが衝動的である可能性も十分にあります。

犬という動物がどのような動物なのか、どのように飼育すればよいのか、もう何十年も犬について考えている私でもまだ結論は出ていません。

もっと議論をするSNSではなく別のところに求めています。来週は久しぶりの犬語セミナーがあります。犬についてもっともっと話しましょう。


 

Posted in 犬のこと

犬と飼い主の関係が子犬を社会化させ、落ち着きのある自信ある子犬に育てます。

子犬の社会化を知っていますか?

子犬の社会化という言葉が一般の飼い主さんにも広がるようになりました。

「犬の社会化って聞かれたことがありますか?」という質問に、ほとんどの飼い主が知っていますと答えられるようになりました。

子犬のころにたくさんの人や犬に会わせたり、いろんな場所に連れて行ったり、抱っこ散歩をした方がいいというのが、多くの飼い主さんが考えている子犬の社会化です。

しかし残念ながらこうした表面的な取り組みは、子犬を社会化するどころか逆に子犬の社会化を後退させてしまうことになります。

 

子犬の社会化って一体どういうことだろう

子犬の社会化の仕組みをもう少し深く考えてみましょう。

社会化とは、個体が(つまり犬が)環境の変化に対して安全を知り落ち着いて日常を継続できる力のことを言います。

様々な環境の変化に適応できるようにすればよいのだと、子犬のときにたくさんの刺激を与えることが社会化だと思うのはあまりにも単純かつ無理な提案です。

大切なのは、子犬の脳(思考と精神)が環境を変化することを安全だと受け入れていく過程の繰り返しの方です。

犬はあくまでも犬、人とは脳の構造も違います。

犬の脳は大脳皮質よりも大脳辺縁系が中心となる脳を持っています。原始脳とか昆虫脳といわれる脳の方で、知っていることを思い出すように発達していく脳です。

例えば、子犬はアスファルトを歩くことを嫌がりますが、土や草のある場所を歩くことができます。

これは、子犬の脳が土や草の自然の地面は知っていても、アスファルトという地面を知らないということです。

子犬がにおいを嗅いだときに食べられるものと食べられないものを区別できるのも、それを教えてもらったからでなく、そもそも脳に入っている情報を引き出すように与えられた環境を区別する能力を持っているからです。

ということは、子犬の社会化とは子犬にとってなじみのある環境に子犬を置き、子犬の受け取り反応を確認しながら子犬の中に安心を積み上げていく過程ということになります。

 

子犬の社会化で間違っていること

ここにすべての情報を書くことはできませんが、やってしまいがちな子犬の社会化学習のうち間違っているものをここにあげます。

・子犬をたくさんの人にあわせたり、触らせたり、抱っこさせたりすること。

・子犬をたくさんの犬に会わせること。

・子犬をドッグランに連れていくこと。

・子犬を抱っこして散歩すること。

・子犬のために来客を招いたり子供と関わらせること。

これらは子犬にたくさんの刺激を与えることで、子犬に日常ではない状態を提供することになり子犬を不安にさせたり興奮させたりしてしまいます。

子犬にとって人や犬は知っているものだと思われるかもしれませんが、とんでもありません。

子犬にとっては人という動物はなじみはあるものの理解できない存在です。人のコミュニケーションや人という動物を時間をかけて受け入れているのです。

また子犬にとって犬はなじみのある動物ですが、知らない犬は子犬の敵です。子犬がフレンドリーに成犬に近づける状態であっても、成犬の方が子犬を拒絶する場合に受ける子犬のダメージはとても強いものです。

子犬の社会化のためにできること

では、子犬の安定した気質に成長させるためにできる社会化とはどのようなものなのでしょうか。

それは、子犬が原始から知っているものに触れる時間を身近な環境の中で見つけていくということと、子犬にとって一番必要な群れ(グループ)が人の家族であるということを時間をかけて伝えていくことです。

人の家族が自分の群れであることを知るのは、飼い主が子犬を抱っこしたり触ったりすることではありません。飼い主からするこの愛情表現は犬でしかない子犬にとって早すぎます。

子犬にとって大切なのは、人としてきちんと子犬の生活を管理すること。

管理するために必要な道具を理解して受け入れさせていくこと。

コミュニケーションをとるときには子犬の親だったらどうするかを考えて最低限のルールを教えていくことです。

親犬は生後3ケ月の子犬の飛びつきを許可することはありません。

飼い主が喜ぶ子犬の飛びつき行動は、親犬にとっては断固拒否する行動なのです。

こうした違いが子犬の社会化のベースを作っていきます。

子犬の社会化のベースを作っているのは外の世界ではなく飼い主自身であることを知れば、問題はとてもシンプルです。

子犬と暮す方は子犬の社会化を楽しんで下さい。

ただそれには、適切な環境、関係性、そして時間がとても必要ではあります。

子犬時期は二度と戻ってきません。

成犬になってしまった場合、社会化を育てるのには大変時間がかかります。

それでも犬の幸せな時間をとり戻したいと願う飼い主なら、そのために多くの時間を使って下さい。

犬はとても素直な生き物です。

きっと自分の周囲の環境の変化にちゃんと気づいてくれるはずです。


 

Posted in 犬のこと

犬の服従性と依存性について~その起源、人と犬の関係性について

2024年4月の犬語セミナーで「犬の服従性と依存性について」についてお話したのでそのまとめをしながら、さらに深い部分まで掘り下げていきます。

 

●犬の性質は犬と人の関係性に影響する

ご存じのとおり、それぞれの犬の性質(性格)は大きく違いがあります。

柴犬とトイプードルでは違う犬種ということで大きな違いがありますが、柴犬と柴犬、トイプードルとトイプードルと同じ犬種を比較しても個々の性質には違いがあります。

性質については「生まれか育ちか」という疑問が生れますが、そのどちらもが影響しあって出来ているのが性質であることは間違いありません。

しかしここで上げる「服従性」というひとつの性質については、かなりのウエイトにおいて生まれつきの資質の方にウエイトがあると言えるでしょう。

はっきりというと、生まれつき服従性の低いものを極端に服従性の高いものに変化させることは難しいということです。

例えば、盲導犬などの使役犬の繁殖の中では犬の服従資質という質を重要としていることなどに表れています。生まれつき服従性の低い犬を盲導犬にしようと訓練をしても決して盲導犬になることはありません。

使役犬には適性という一定の資質の枠がありその中に入っていない犬を訓練することは犬の負担にもなるため繁殖はとても重要な計画になっているのです。

となると、うちの犬は使役犬にはならないから服従性など関係ないと思われるかもしれませんがそうではないのです。

犬の服従性という性質は人と暮すすべての犬が持ち合わせている性質なのだということをまず理解します。

犬の服従性質がある変化を見せたことで今の「犬と人との暮らし」が成り立っているのですからとても大切な性質なのです。

同時に、個々の犬の服従性という特質は犬と飼い主の関係に強く影響をします。

自分の犬の服従性についてよく理解することが、犬とどのような関係を築いていくのかということに影響をするのです。

少し関心をもっていただけたでしょうか、では次に犬の服従性の起こりについてお話します。

 

●犬の服従性の大きな二つの起源

犬の飼い主に対する服従性とは、犬た人と暮すようになった起源ともいえます。

これは歴史的な過程で、振り返ってみればなぜ犬という動物はこうして人と暮すようになったのだろうかとあくまで仮説としてしかとらえることができません。

いくつかある仮設の中で今でも最も有力であり、私もそうだと信じている二つの起源説についてはコンラート・ローレンツ先生がその著書「人イヌにあう」の中に記しているものです。

 

犬の服従性の起源① 子犬の母犬に対する愛着という絆

多くの家庭犬にみられる幼い子犬としての気質で、この幼犬としての気質はほとんどの犬で生涯にわたり持ち続けられているようです。

この気質は犬の形に見ることもできるのですが、例えば、丸い犬の頭、短いマズル(鼻からの長さ)、垂れた耳、ふわふわした毛質などに子犬としての形が残されています。

大型犬はオオカミに近い形質をもった犬ですら頭の長さは顎の形は野生の犬科動物とはかなり違いがあります。

また鼻慣らし行動や甘え行動なども成犬になっても見られる場合が多くあります。

子犬期に人との暮らしに馴染める理由も人を母犬の代わりとして接触することができる犬という動物の特徴の一つであり、またこのことで飼い主は犬を赤ちゃんとして可愛がる満足を得ることができるのです。

ただこの犬の赤ちゃん扱いはとても重篤な犬の問題行動や犬の発達不全を引き起こす問題となりますので注意が必要です。

 

犬の服従性の起源② 犬を群れのリーダーに結び付ける絆

服従性の二つ目の起源は、飼い主を犬のリーダーとして服従するという性質です。

これは犬のしつけでよく言われる「飼い主は犬のリーダーになって下さい。」という部分なので頭の中では理解しやすい反面、犬と親子関係でいたい飼い主にとっては馴染みにくいかもしれません。

親子関係から主従関係ということは、親子関係の愛着から上司と部下という少し緊張感のある関係へということになります。

この二つ目の起源である服従性質を持てなければ飼い主と主従関係を結ぶことはできないのですが、ところがほとんどの犬は主従関係を結ぶために必要な服従性が備わっています。

それは愛玩犬と呼ばれるトイプードル、チワワ、ポメラニアン、ダックスフントにも備わっているものなのです。

 

●服従性か依存性か

二つの服従性の起源について説明をしましたが、服従性と混乱されていている「依存性」について説明します。

依存性は服従性とは異なります。間違いの多くは、犬の依存性を母子関係の服従性と間違えていることです。

母子関係の服従性とは、母と子という立場上の違いによる役割分担で成り立っています。

例えば、母犬がエサをとってきて子犬に与えるというもので、家庭犬は生涯これが続くことが生涯にわたって飼い主と母子関係が続く理由にもなっています。

ところが依存性というのは、犬と人がお互いを利用しあう関係になります。

犬側でいう依存性の高い行動とは、飼い主の膝に居座る、飼い主に自分に関心を示すことを要求する、飼い主について回る、飼い主のもの(匂い)に執着を示す行動などがあり、犬の飼い主に関する依存性の高まった状態が犬の分離不安状態です。

人側でいう犬に対する依存性の高い行動とは、犬をよくさわる、抱っこしたい、すりすりしたい、犬をよく見ている、犬を膝の上の乗せたい、犬の要求にすぐに応じるなどの行動がありますが、こちらも人側の犬に対する分離不安状態になっています。

依存性という関係性はお互いを利用しあう関係であって服従関係の示すところの役割分担による群れ行動とは違うということをはっきりと認識することが大切です。

依存関係はいずれ関係のひずみを発しますので、犬の吠える、咬みつく、常同行動、破壊行動、落ちているものへの執着である拾い食い行動などの重篤の問題行動が発生します。

こうなると犬と人というひとつのグループ(家族)は群れとしての機能を失い不安定な状態になります。

逆に、服従性質が発揮され犬と人が主従関係を構築するようになると、そのグループ(家族=群れ)はより強化され安定性を増していきます。

犬は飼い主を群れのトップとして尊重し、飼い主もまた犬を家族の一員として尊重するという強い絆を作ることができます。

これは犬にとっては犬という動物としての習性が最も発揮されるところで、その活動はとても生き生きと美しいものでさえありますので、犬と暮す方にはぜひ体感して欲しいと願うところです。

 

●なぜ学ぶのか

最後に、なぜこのようなセミナーを開催しているのかについて説明します。

犬の飼い主は犬の行動学の専門家ではありません。よほどの興味関心がなければ犬について勉強をしようという気持ちにもならないかと思います。

そんな面倒なことをしなくとも吠えるのを止めさせる簡単な方法が知りたい、というのが飼い主の求めていることだということはわかります。

しかし、犬の問題行動を簡単に止めさせる方法ほど危険なものはありませんし、その問題をきっかけに知るはずだった犬の本当に知ってほしいメッセージを封じることになってしまうのです。

逆に犬の問題を犬のメッセージととらえ、自分と暮している犬の行動、習性、性質をよりよく知ることで、自分と犬との関係性が変化する可能性があるとしたらどうでしょうか。

そのことが「犬がより暮らしやすくなる」方向に向かうのだとしたらどうでしょうか。

もちろん犬のことを知ることで飼い主の方は犬と同じ、いやそれ以上に大きな喜びを得ることができると思います。

関連記事:「犬の服従性行動について」セミナーまとめより

Posted in 犬語セミナー, 犬のこと

ゴールデンウィークに見た風景もまた犬…犬…犬。

今年のゴールデンウィークもあっという間に、いや…やっと終わりが来ました。

オポハウス合宿クラスに参加する犬たちが入ったり出たりを繰り返して、ひとときも息つくことなく過ぎていったゴールデンウィーク。

とても長い時間を犬たちと過ごしました。

合宿スタートで緊張気味の犬たち



土砂撤去の作業を見守る犬たち



ワンプロを始める若い犬たち



トレッキングクラスに同行した犬たち



天候の変化に右往左往しました。



久しぶりの合宿参加の犬
も。



少しずつ変わる季節を感じながら。



山のにおいを思い出しながら。



日向ぼっこもたくさんして。



お得意の鼻を使って探索行動。



暑い時間には日陰が最高。



犬同士も他の動物も社会化の勉強時間に。



地面にコロコロの下はきっとミミズの死骸かな。



陣地取りはお決まりの勝負事。



新しい「何か」の制作もスタートしました。



そして、犬たちに付きまとうヤギのゼットはみなに「ゼットくん」と呼ばれるようになりました。(ゼットはメスなんだけど)



緊張している犬の表情が時間とともにとけていくのを見るのが楽しいです。

犬同士のやり取りの中にたくさんの個性や社会性を見ることができ、昼休みや夕方には一緒にお世話をしているダンナくんと「○○ちゃんはこんな行動をした」とか「○○くんはこんなことをしていることが多いね」などとお互いに情報公開をしています。

数ケ月のときには遊んでばかりいた犬が3歳になると全く違う行動パターンを示すようになったりと年齢による変化も見ることができます。

人よりも7倍速で成長する犬たちですから、成長の変化はあっという間に起きてしまいます。

4月から5月にかけては日々の気温の変化はあるものの比較的過ごしやすく、一日外で過ごしてもあまり体力を使いません。

暖かな日差しの中での日向ぼっこの姿をたくさん見ることもできました。

普段は都会の喧騒と臭いにおいの中でストレスの多い生活をしている犬たちに、少しでも自然の空気と土のにおいを嗅ぐ時間があればと思ってこのクラスを続けています。

飽きることなくずっと見ていることができるのですが、同時にはしゃぐ犬がケガをしないかとハラハラする気持ちももちろんあります。

なのでお預かりの犬がやっと帰る日は気持ちがほっとします。

夜も熟睡することができないためかなり疲れてきたのですが、しばらく預かりさんたちが続きそうです。お昼休みをしっかりとって気力も体力を充実させる心構えです。

トレッキングにも良い季節です。

ぜひ山へお出かけ下さい。

Posted in 日々のこと, 犬のこと

映画やアニメで見る(学ぶ)犬のこと、犬をよく観察する機会に。

先日クラスの時に生徒さんから「ドッグシグナル」というアニメ番組のことを聞きました。

聞くところによると作者の方は獣医師やドッグトレーナーなど様々な人を取材した上で真剣に作られた作品で、今までの犬のアニメーションとは違うというらしいのです。

ひとりの青年がドッグトレーナーを目指して犬のことを学んでいくという内容らしく、犬について学びたい人々の興味関心をそそる素材として注目されているそうです。

じっくりと見られた生徒さんが言うには、「犬のことをよく観察すること」というのがまず最初にあるらしく、その部分だけはグッドボーイハートの指導内容と共通しているということでした。

犬の動物としての習性や行動、コミュニケーションはまだまだ完全に明らかにはされていません。

犬の行動の意味や目的や犬がどのような状態であるのかを知ることについて、常に共通点を見いだせるように議論しあって時間を費やすことは犬を知る上で最も大切な時間です。

当校ではそういう目的で「犬語セミナー」というセミナーを開催しています。

犬を良く観察すること、観察した上で得られる情報を精査すること、この二つが犬語セミナーの目的です。

「ドッグシグナル」という題名からは最低でも「犬にはシグナル=信号」というコミュニケーションがあるのだいうことは伝わってきます。

まずは犬の行動を読み取ることです。

その上で犬とどのような関係を築いていきたいかということは、個人の価値観が反映されるところでもあるためここは自分で考え、他者からも影響を受けるという姿勢でよろしいのかと思います。

さて、犬のアニメや映画をほとんど見ているこの生徒さん「“ベンジー”を見ましたか?」と尋ねてみました。

古い映画なのでもうないと思っていたのですが、生徒さんがスマホで検索するとなんとネットフリックスで配信されていたのです。

映画「ベンジー」はわたしが小学生3年生のころに学校行事で見た映画です。

スクリーンの中の賢いベンジーに犬好きな私が虜になったことは想像していただけると思います。

その後、この仕事を始めるようになって出会ったベンジーのストーリーは過去のブログ記事にアップしています。

犬に寄り添い自然に近づいた人のこと:昭和の犬の映画「ベンジー」のドッグトレーナーとの出会い

人生は本当に不思議なご縁でつながれています。

皆さんと犬の出会いもまた特別でかけがえのない出会いであったことを皆さん自身が体感していらっしゃるでしょう。

犬語セミナーは4月に開催を予定しています。

Posted in 日々のこと, 犬のこと

「犬の服従性行動について」セミナーまとめより

先月の犬語セミナーで取り上げた「犬の服従性行動について」をテーマに、本日は補講と称して2回目を開催しました。

セミナーを受講された方の復習用にまとめとして記載しておきます。

主に5つのテーマに分けて説明を進めました。

  1. 犬の服従性行動とはどのような目的を持った行動か?
  2. 犬の服従性行動とはどのような行動のことを言うのか?
  3. 犬の服従性行動は大きく二つに分けることができる。
  4. 犬の服従性行動と見間違いやすい行動とは?
  5. 犬の服従性行動を引き出すために飼い主としてできること。
答えの欄を見る前に、この項目について自分なりに答えてみてください。

犬の服従性行動とはどのような目的を持った行動か?

質問の意味は、犬の服従性行動は犬の社会的行動の中でどのような目的を果たしているのかというものです。

名前のとおりですが、服従性行動はある犬が特定の犬に対して「服従していることを表現する」行動です。

その目的は、個体間で序列を決めるために表現するものです。

簡単に言えば立ち位置としてどちらが上でどちらが下かということをはっきりとさせておくための行動です。

この服従性行動が表現されることで個体間の位置がはっきりとし、群れの中の序列を整えることができます。

犬の社会的行動は群れ行動で成り立っているという基盤の部分を作るコミュニケーションであるため大変重要なシグナルです。

自分の入るべき列がはっきりとしていることで自分の役割が決まってくる序列の社会は人社会と同じです。

みんな仲良しでみんな一緒の友愛を唱えたい人からすると縦社会という言葉自体が敬遠されるものかもしれません。

しかし実際には社会は縦社会で成り立っており、捕食活動を続けてきたイヌという動物にとって長い間必要とされてきたこの縦社会の部分はまだまだ消えることがありません。

縦社会には、親分~子分的な社会もあれば、親~子の家族的な社会もあり印象も様々です。

どちらにしてもイヌは「あなたが私よりも優位です。」と表現することで社会=群れを成り立たせているのです。

 

犬の服従性行動とはどのような行動のことを言うのか?

ここでは服従性行動として具体的な行動を上げてもらいました。

例として

耳を下げる

尾を下げる

体を低くする

お腹を見せる

目線を避ける

伏せる

後ずさる

舌をぺろぺろ

等があります。

 

犬の服従性行動は大きく二つに分けることができる。

上記の服従性行動は二つに分けることが出来ます。二つとは

1 能動的服従性行動

2 受動的服従性行動

 

犬の服従性行動と見間違いやすい行動とは?

ここでは動画を見ていただき説明を加えました。

子犬が3歳の犬に対して示す行動の動画を見ました。

動画の中で子犬が服従性行動を示しているかどうかを確認しました。

また服従性行動に大変似ているがまったく違う行動が出ていることを確認していただきました。

似ている行動とは「甘え行動」と言われるものですが、子犬を表現する行動です。

はっきりとみられた甘え行動は、まとわりつく動作でした。

これは子犬が人に対して大変多く行われる行動で、多くの飼い主が「犬が自分に服従している」「犬が自分のことを好きだと言っている」と勘違いする行動です。

子犬期のまとわりつき行動には拒絶のシグナルを出す必要があります。もしくは受け取らないように注意する必要があります。とても重要なシグナルです。

 

犬の服従性行動を引き出すために飼い主としてできること。

犬の服従性行動は自分よりも優位なものに日常的に出されている行動です。

犬は優位な犬に対して大変丁寧に服従性行動を示しますが、優位な立場にある人に対しても服従性行動を示します。

ですが、前述したとおり服従性行動ではない行動を誤ってみていることも多いのです。

例えば、「お腹を見せる」という行動をすべて服従性行動であると判断することはできません。

単発の行動は前後の行動を重なり合って文章になっています。

単発の行動を拾い上げるのは重要な作業ですが、その前後の行動と結びつけて判断することがより重要になります。

こうした複雑さから多くの人が犬のコミュニケーションを読み取りし間違えてしまいます。

いい例は「犬が尾を振っているから喜んでいる」です。

犬は攻撃するときも尾を振ることはありますので、これだけの情報では読み間違いしてしまいます。

犬の服従性行動を増やすためにできることは、以下の2点です。

1 犬のシグナルをできるだけ正確に読み取れるようになること。

2 犬が優位だと認められるような飼い主であること。

犬のよき理解者になり犬の良き友達となれるよう、これからも定期的にセミナーを開催する予定です。

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群馬県内の公園で犬が12名にかみついた事件について。犬はなぜ人に噛みつくのか?

ネットニュースを見てさすがに私も驚きました。

一般の方よりも圧倒的に聞いたり見たいする回数の多い仕事に携わっていますので「犬が人に噛みついた」くらいでは驚きません。

しかし、公園で12名に次々と噛みついたという記事を見たときには、どんな状況でどのような犬がどのような人に噛みついたのだろうかと、事の詳細を把握したい気持ちでいっぱいでした。

犬の噛みつき事故の事実確認。何が起こったのか。

その後ニュースで見た内容が間違っていなければ、以下のような状況であったということでした。

・群馬県内の公園で、小学生4人と40代の男女2人の合わせて6人が犬に噛まれた。

・上記の15分後、公園から300メートル離れたふたつめの公園で小学生5名と60代男性1人の6名が噛まれた。

・ケガの程度はいずれも軽症。

・噛んだ犬は地域の男性が飼う四国犬(体長1メートル30センチ、2歳、オス)

・犬は現場で県の動物愛護センター職員が捕獲。

・飼育時は外の犬舎に入れていたが、犬舎から逃走した。理由は不明。

※以上はヤフーのニュースに掲載されていた内容(2024年2月8日現在)

 

事実状況から推測する、かみつきの状態はどのようなものだったのか。

上記のニュースの内容や、他の動画ニュースの配信も確認しました。

目撃者の証言には、犬は人々に近づいてにおいをとっていたが一人の少女が走り出したのに追いかけるように噛みついていったという内容もありました。

別の証言では、男性が連れていた小型犬の頭に噛みついて振り回していたので飼い主の男性が足で犬を蹴って追い払おうとしていた、というものもありました。

病院の映像では足首を噛まれて怪我を負った男性の映像がありました。

人々の足や転んだ人の他の部分に対して、動くものに反応するように噛みついた状態であったのではないかと推測しています。

小型犬の状態については報道されておらずとても心配ですが、犬に対しては殺傷目的をもって噛みついたあとの振り回しが出たと推測します。

 

四国犬ってどんな犬?

ニュースの詳細が分かったときに犬が四国犬であったことを聞いて多少納得しました。

四国犬を身近に見たことのある方は少ないと思います。

ペット化した柴犬という日本犬がとても人気となり増えている中で、同じ日本犬種でありながら柴犬よりも一回り大きな四国犬が全く流行らないのにはそれなりの理由があります。

四国犬は猟犬として飼育されている場合がほとんどで、ペットショップではあまり見ることがありません。

四国犬はペット化されていないため特定の人にはなつくが他人にはなつきにくく、猟犬として育てれば飼い主の言うことに従う服従性を示すがきちんと飼育管理することでその良さが生きる犬です。

飼い主のコメントでは犬舎からは出られないようにしていたはずなのに…といことでしたが、実際には犬は犬舎から出たのですからどこかに老朽化した部分があったか、締め忘れた戸口があったのか、いずれにしても犬は犬舎から出たという管理ミスが悲劇を生みました。

犬は噛みつく動物なのか?

犬を愛して共に暮らす飼い主さんたちにすれば「犬がそんなにたくさんの人に無差別に噛みつくなど信じられない」と思われるかもしれません。

そもそも犬は噛みつく動物なのでしょうか?

答えは「はい」。

犬は噛みつくという行動のできる動物です。

どの動物にも生まれつき備えている行動は機能と結びついています。

犬が噛みつくという行動は、犬にとって何らかの機能を果たすために必要な行動です。

その機能とは、犬は人からエサをもらう以前は捕食性動物であり動物を噛み殺すことで食べものを得る動物でした。その習性は今も変わっていません。

また、犬や群れを外敵から守るために噛みつきを攻撃性の方法として使用します。

では、今回の四国犬の噛みつきはどのような理由の噛みつきだったのでしょうか。

状況から察するところ、動くものに反応するように噛みついたこと、噛みつきの傷は軽傷であったことから追い込むように噛みついたであろうことなどを考えると、捕食性行動を利用した猟犬の噛みつき行動のパターンのようです。

猟犬はあくまでコントロールできるリーダーとしての猟師とグループになってこそその役割が発揮されます。

同時にリーダー不在の状態で刺激だけが与えられると、衝動的に噛みつき制御できない状態に陥る危険性もあります。

全ての猟犬がそうだということではなく、未完成の状態であればあるほど刺激反応は危険なものです。

犬の行動を考えるときにはこのようにその機能性について考えるのですが、残念なことに考える必要のある多くの行動は「人と暮す犬の問題行動」として取り上げられたときの方が多いのです。

この事件を、ただ可哀そう、残念だと片づけるのではなく、犬という動物の行動を考える機会としていただければと思います。

大きな犬に噛まれたり追われたりして辛い思いをされた子供さんや成人の皆様の体と心の一日も早い快復を心よりお祈り申し上げます。

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能登半島地震で活動する災害救助犬という使役犬について

能登半島地震でがれきの下かた救出された犬たちの写真や映像を見てほっとし、犬の生命力はやはりかなり高いのだなと再認識しています。

地震からかなり時間がたってしまったため、生存の確立はどんどん下がっているのでしょうが、おひとりでも多くの行方不明者の方が見つかるようにと祈っています。

地震直後はがれきの下に埋もれてしまい助けを求めている人をできるだけ早く救出する作業が危険と隣り合わせで行われていました。

余震が続き痛んだ建物や家屋が崩れ落ちる危険性の高い状況でのレスキューには経験や知識、能力を備えた特別なレスキュー隊員が活動をされていました。

そのレスキュー隊の中に、災害救助犬という災害時に救助の手伝いをする使役犬(しえきけん)もいました。

私はテレビニュースなどを見る時間があまりないのですが、友人が一枚の写真を送ってくれました。

写真はハンドラー様よりご提供いただきました(無断転載厳禁)



写真を送ってくれたのは、盲導犬訓練士時代の友人です。

一昨年、グッドボーイハートに盲導犬についてのセミナーの講師として来てくれたこともあります。セミナーを受講された生徒さんもたくさんいらっしゃいましたね。

この写真でレスキュー活動をしている災害救助犬は、実はその友人が盲導犬として育成していた中でキャリアチェンジ犬となって災害救助犬団体に移動になった犬だということでした。

キャリアチェンジというのは、盲導犬として繁殖育成をしてきた犬が、盲導犬としては適性がないため他の役割にチェンジするという仕組みです。

キャリアチェンジ犬の中には災害救助犬や補助犬になる犬もいますが、そのほとんどは家庭犬としてキャリアチェンジを果たしています。

盲導犬から災害救助犬へのキャリアチェンジというのは、決して多いものではありません。

災害救助犬の活動を見て、すごいなと思われる方も多いでしょう。

こうした使役の作業はすべての犬ができるわけではありません。

一定の資質を備えている犬に適切な飼育と訓練が重なってこうした活動が実現されるのです。

どの使役犬も危険でないことはありませんが、災害の現場となると使役の中でも緊張感の高い環境です。

ハンドラーと犬との協力関係がなければ、お互いに安全に作業することができません。

緊張感の高い作業ですし、達成したときには人だけでなく犬の方にも充実した時が生れるでしょう。

犬の高い社会性のなせる業なので、他の動物ではなかなかありえない関係性です。

ですが使役犬=作業犬は人に使われてる犬なので可哀そうという気持ちを持たれる方もきっといらっしゃると思います。

いつも暖かく安全な場所で人の膝に抱っこされて一日を終え「今日も楽しかったね」と暮している犬がいいのか、危険な作業に人と共に出かけて行って辛くて危ない時間を過ごす犬がいいのか、に答えはありません。

また、前述したとおり使役犬には適性というものがあり、繁殖の知識や情報がたくさんあっても生まれた犬がすべて適性があるということにはならず、現実は厳しいのです。

みなさんと暮している家庭犬は、家庭犬という目的に応じて繁殖された犬と、野良犬として人とは暮らしていなかった犬を保護された犬のどちらかでしょう。

どちらにしても、与えられた役割は家庭犬です。

家庭犬といっても役割は幅広く、どのような役割を準備しているかは飼い主次第となります。

使役犬が優秀で家庭犬が劣っているということは決してありませんので誤解のないようにお願いします。

 

※なお、掲載写真は犬の提供を受けたハンドラー様が繁殖と育成を担当してきた友人に送られてきたというもので、当ブログへの掲載の許可は頂きましたが転載許可はいただいていませんのでご了承下さい。

 

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