雨が続きますね。雨の日なりの動物としての過ごし方で、一番落ち着くのは土や木々の葉におちる雨音を聴くことでしょうか。
今日は、今月2回目の犬語セミーを開催しました。
ビデオに登場のBくん(仮名)は、数年前にトレッキングクラスに参加し始めたころはロングリードをつけた行動中に、興奮したり、リードをひっぱったり、制御すると威嚇する、リードを短くするとパニックを起こすなど、非常に不安定な状態でした。ところが、飼い主さんの真剣な取り組みによって、昨年くらいから、グループ行動が比較的スムーズに行えるようになり、少しずつ変化が見えはじめていました。
Bくんの他の犬との新しい対面は久しぶりのため、対面の様子がどのようになるのか、B犬を知る飼い主さんたちは楽しみにしていたようです。
さて、ビデオの映像を見た飼い主さんたちは、驚きを隠せませんでした。
今まで、犬を見ると興奮したり、逃走しようとしたり、とびのいたり、硬直したりとストレス行動を多発していたBくんが、落ち着いた状態で対面を果たすことができたからです。
犬と犬が対面した際には、必ずお互いの関係性を示すような行動が見られます。それは関係を作ろうとしない行動のこともあるし、関係を作ろうとする行動のこともあります。わかりやすい言葉では、対立する?もしくは対立を避ける?という姿勢、そして関係をつくる場合には、どちらが優位かというシグナルを出します。優位性については、オスとオスの場合にはわかりやすく、メスについては不安定でわかりにくい場合もあります。
対立するといってもいきなりケンカをするわけではありません。どちらかがどちらかを追い出そうとする行動をしたり、一方が対立的な行動をして、一方が対立を避けようとして逃げようとすることもあります。
どちらが優位か、という関係性をつくることができない場合には、対立をさけるシグナルを出して緊張緩和を維持しているということもあります。犬の性格として、リーダーや班長(小さなリーダー)といった役回りにも持たない犬のほうが数は多いのです。また、飼い主の力をかりて優位を主張している犬が、実は飼い主さんがいないと全く優位性を示さず気配を消してしまうこともあり、飼い主との関係も持ち込まれるため、犬と犬の関係はとても複雑になっています。
話しを元に戻します。
このBくんがどうしていたかというと、回避行動をとりながら相手との距離をとろうとする行動をしていました。過去に見られた硬直やパニック、逃走行動がみられなかったのです。対立を避けるシグナルとして出るものに、落ち着かせ行動というシグナルがあります。落ち着かせ行動は自分や相手の緊張をとくために出てくるもので、次のようなものがあります。耳をかく、顔をそむける、片足を軽くあげる、ゆっくり歩く、回避行動をする、においをとる、身震いをするなどです。この落ち着かせ行動を出すことによって、自分の緊張をといていき、その緊張の緩和が相手にも伝わっていくというものです。
犬は社会性が高い動物だということはなんども書いてきました。社会性が高いということは、社会的なコミュニケーション力が高いということです。私たち人間はシグナルを視覚的にしか捉えることができません。ですが犬と犬にとって一番重要がとれるのは臭いなのです。
視覚的シグナルしか受け取れないなら相手のことをじっとみていなければなりません。みていなくても顔を背けていても相手のことがわかるのは、臭いの情報を得ることができることと、相手の気配を感じることができるからです。やっぱりここでも気(エネルギー)の受け取りが行われていることがわかります。
また社会性が高いというのは「仲良し」とは違います。犬と犬は、職場の仲間のイメージでとらえると分かりやすいでしょう。役割分担があって、秩序をそなえて行動し、安心安全を獲得する。職場のあるグループが社会的に円満で、互いが役割を認識して行動し、安定感をもって仕事を行えば、そこに所属する社会的満足感というものが得られると思います。Bくんも、グッドボーイハートという臨時のグループであっても、グループの中で得られる安定を得て社会的欲求を満たすことで、自宅に帰ってひとりになってもその安定度が継続しているのです。もちろん、飼い主と犬にもこの社会的関係は大切です。
こうした変化も、今までに不安定な行動をした中でも、グループの犬と飼い主さんが根気強く見守り続けてくれたおかげだと、有難く思います。こうした変化はゆっくりとしか起こらないのですが、起きたときは本当に奇跡だなと思います。犬の精神に深く刻まれている高い社会性。その社会性に触れる瞬間は特別の時間です。
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