犬語セミナークラスを開催しました。犬語セミナーは犬の行動を観察して分析するクラスです。犬のどのような行動に焦点をあてるのかは、ビデオの素材によっていろいろと変わってきます。ビデオもクラスや日常的に撮影した目的のないものなので、見るビデオによってセミナーの内容が変化していくのも面白さのひとつでもあります。
今回題材となったビデオは子犬と8才の成犬がはじめて会うという対面シーンのビデオでした。成犬と子犬の社会的行動の違いは、成犬は経験を積んで発達がなされてきているために個体の性質がある程度固定されているという行動の特徴があります。わかりやすくいうと1頭の犬が他の犬に対してみせる社会的なコミュニケーションはある程度予測がたつということです。散歩中に他の犬とすれ違ったりであったときに生じる行動にもパターンがあることがその表現にもなっています。全ての犬に吠えるとか、特定の犬には反応する、その反応する犬のタイプはこれこれでとか、他の犬をじっと見ているとか、そうした他の犬に対する行動は、成犬の場合にはある程度一定してきます。もちろんこの社会的行動には飼い主や飼育環境が大きく影響するため、飼い主が変わる、飼育の方法が変わるということにより変化はしてきます。ただ成長に応じた大きな変化は子犬は違うということです。
子犬期を永久歯が生える前の生後5~6ヶ月までとします。この時期の子犬を成犬に対して必ずしなければいけない行動というのがあります。これは自分の親犬でなくても、万が一親犬にはぐれて他の成犬に出会ったとしても子犬に備わっているひとつの能力であるともいえます。それは二つあります。ひとつめは、成犬が子犬の臭いを嗅いで正体を調べようとするときにじっとして動かないでいることです。子犬であるということを知られることで成犬の緊張を解くことができます。攻撃のできる永久歯を持たない子犬はとても無力な存在だからです。
ふたつめは、服従行動を示すということです。服従行動にも少し幅があります。この対面で有効な服従行動は自分が下であることを示し、相手の領域を侵さないということを伝えることだけです。先のじっとして臭いを嗅がせるという行動もこの意味を含みます。あとは顔を背けたり、体を低くしたり尾を低めに振ったりするというだけで十分です。そけい部の臭いを嗅がれる際に後ろ脚を上げる行動(バレリーナみたいになりますね)も成犬の行動を尊重する行動です。
これよりも積極的な服従行動になると臭いを嗅がれているときに腹部を見せるとか、口をなめようとする、軽くピョンピョン飛ぶといった行動は成犬が受け入れない場合があります。これらの行動に対して、子犬を受け入れる気のない成犬はこの子犬から離れたり、少し唸ったりして拒否行動を取るでしょう。これは、子犬として面倒をみよという要求行動です。成犬にもいろいろと器量があり子犬の世話を引き受けない犬も多いため、拒否行動が出る場合には子犬はこれを取り下げる必要も出てきます。今回のビデオに出てきた子犬は生後4.5ヶ月くらいになっていました。この取り下げに影響を与えているのは犬と飼い主の関係になるため、あまりにも早い月齢で受け入れ拒否の成犬をあわせることは子犬にとってよい影響とはなりませんが、生後2ヶ月から飼い主と暮らしていて生後4.5ヶ月になっていれば、十分に可能な年齢です。もちろん飼い主さんの飼い方はとても大切です。接し方、飼い方によってはすでに依存が始まる月齢です。
飼い主への依存が始まってしまうと犬に対するコミュニケーション力は育たないばかりか、大変後退した状態になります。犬を見て逃げる、おびえる、硬直するといった行動が出てしまうときには、子犬のコミュニケーション力はその環境の中では育てられておらず、飼い主との関係もかなり不安定です。このコミュニケーション力には性質のベースも大切です。大人しいお人形のように反応の低い犬を人が求めすぎる傾向があります。おそらく、反応が少なく飼いやすいということと容姿についてもぬいぐるみのようになってきているため「かわいい」と思ってしまうからでしょう。こうした犬たちは反応が少ない、つまりコミュニケーション力の未熟な犬であることも多いのです。
犬をみて「かわいい」と感じられるのは、犬が犬としてコミュニケーションを一生懸命に発揮しているその真剣な姿勢を見るときです。
表情やコミュニケーション力の低い犬がどのような世界で生きているのかをよく知る機会をもってみてください。
犬のコミュニケーション力は犬の社会的な力。犬の社会的な力は犬の財産です。
どんな動物も自分のもっている財産を奪われることは脅かされていることを意味しています。
人が幸せに暮らせるのは自分の身が安全で人としての財産(大切で価値のあるもの)を守り続けることができるからではないでしょうか。
数年前の12月13日。今年はまだ一度も積雪していません。
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熊本被災ペット支援ネットワーク
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