自然科学の分野で自然学という独自の見解と世界をもって生き物と自然を捉えてこられた今西錦司先生の書籍です。
帯にあるように、今西先生の自然学とは「現代科学との訣別宣言」です。
現代科学といってもこの書籍が発行されたのが昭和59年とありますから、今から30年以上前のことです。
書籍として発行される前に、今西先生は今西自然学としてダーウィンの進化論とはことなる見方で生き物の進化について捉えられていました。
この自然学の提唱の中では、自然学とはなにか、今西先生がそこにいたる過程を考えを含め案内してくださる本になっています。
今西錦司先生は霊長類研究所にいらしたこともあり、動物行動の観察や分析についての記載についても興味深く読むことができます。
専門書ではなく一般の方でもわかるように記述された本ではありますが、動物学や自然について深く考える機会の少ない方とっては少しはいりにくい印象を持たれるのではないかと思います。
かくいう私も一読では到底終わらず、一度読んだ場所を開いたり閉じたりしながら何ども読み返すことになりました。
そしてこれからも、今西先生の見方に近付くために、くり返しこの本を開いたり閉じたりするのだと思います。
ですから、この本を入手された方は一度に理解しようと急がずに、まあそのうちにわかるようになるだろうくらいの気負いでゆっくりと読み進められることをお薦めします。
最近では、5分でわかる犬のこと、3分でわかるドッグトレーニング、1分で身に付く犬のしつけ方など、時間をかけずに、つまり時短で物事を終わらせることを良しとする傾向があります。
ところが人と犬の関係というのはもう数万年どころかもっと以前から続いており、その歴史と共に犬や人の文化も変わり、それに伴って犬と人の関係も変化してきたわけです。
それを5分や10分、もしくは30分などで理解しようと思う方が傲慢であると思います。
本書は講談社から出版されており、中古本もまだ出回っているはずです。
今西先生の世界に少し触れてみたいと思う方へ、ぜひおすすめします。
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