日本のイルカ猟についての実態を明らかにするドキュメンタリーとして紹介されている「コーヴ」という映画は、日本では上映場所も限られていたようなので見られた方も少ないのではないでしょうか。
予告編ではイルカ猟で海が血の色に変わっていくシーンが放送されていて、予告編を見ただけで映画を見ることを躊躇してしまった方も多いと思います。
わたしもいつか見たいと思いながらそのままになっていたのですが、今回コーヴを見ることができました。
結論から言えば、動物に深く関わっている人にこそぜひ見ていただきたい映画です。
それは、この映画が正しいとか、この映画の主張の通りだということではありません。
映画の中で一番興味を持った部分は、取材をする主人公のリック・オリバーがイルカのフリッパーの元調教師だということです。
リック・オリバーが調教したフリッパーが「イルカのフリッパー」で爆発的人気となり、これをきっかけにイルカが水族館などで曲芸を披露するビジネスの道具として使われていったことを、オリバーが大変悔いており、イルカへを助ける活動へ向っていくというその苦しみが伝わってきます。
動物を訓練や調教した人の中には、人側に立ちすぎた行き過ぎた訓練や人が楽しむために仕込んだ芸について、後悔の気持ちを持つことがあるということは自分に当てはめても十分にあることです。
しかし、その後悔の気持ちを表現する方法として、こういう形での活動を賛同できるということではありません。
また、映画の中ではイルカ猟に携わっている姿勢や視点が全く取り上げていないので、ドキュメンタリーといってもイルカ猟に反対する立場から作り上げられた映画であるということを前提に見る必要があります。
IWC国際捕鯨委員会で行われていることや委員のコメントなどは新しい情報として関心が広がりました。
映画の中では、私たち日本人が一番イルカ猟について理解をしていないのではないかと感じされられることもありました。
イルカ猟についての動物福祉的な問題は、死に至るまでの過程と苦痛が重要なテーマになっています。
牛や豚、鳥といった食用の肉でも、この過程はとても大切なものなのです。
死の恐怖に触れさせることを最小にして、死に至らせることができるのかどうか、野生動物の猟をする場合には、必ず考えなければいけないことです。
この課題についても、映画の中では曖昧な表現が多く、実際に血に染まる海を見ると、動物福祉的な面でクリアできているのかどいう疑問は残ってしまいます。
映画はイルカ猟の一部を取り上げただけに過ぎませんが、自分たちの身近に起きている動物の利用について考える機会になります。
犬は家族として身近にいるため、動物を利用しているという姿勢とはかけ離れているように思えますが、その飼い方によっては犬もやはり人に利用されてしまうことが多いということも含めて、じっくりと考えたいものです。