家庭訪問トレーニングクラスでは「犬の咬みつき」についてのご相談を受けます。
ご相談の割合としては、トイレの失敗の次かもしくは同じくらい多くあります。
中には、首輪やハーネスを付けようとすると付けられないというご相談もあります。
では、現在どのようにしてつけているのかというと、多くの飼い主さんは「オヤツを与えながら着けている」ということでした。
オヤツを食べている間に、エイッ!とつけてしまうのです。
ハーネスは結構時間のかかるものですが、これもオヤツを食べている間に犬にハーネスをつける技的なものを身につけています。
こちらの技の方に「へー」とビックリすることが多いのですが、関心している場合ではありません。
普段は、首輪やハーネスを装着しようとすると咬みつき行動をしようとする犬が、オヤツなどの食べ物を与えながら首輪やハーネスを装着できるのは何故なのでしょうか。
ここのところをよく考えていくと、犬が何を嫌がっているのかがわかります。
首輪やハーネスの装着で噛みついたり暴れたりする犬は、散歩の後の脚を拭く行動でも同じような行動をします。
ということは、首輪やハーネスが嫌だということではないのです。
首輪やハーネスの装着にしろ、犬の足を拭く行動にしろ、犬を短い時間とはいえ、一定時間固定する必要があります。
食べ物を食べている間は一旦犬がその場に同じ姿勢でとどまることができますので、そのタイミングをみて首輪やハーネスを着けているのです。
犬の体を人の手で固定させることに対して抵抗を示す理由には、いくつかの要因が考えられます。
判断するためには犬の他の日常的な行動もあわせて観察する必要がありますが、根っこのところはひとつになっていて、やはり飼い主と犬の関係性に問題ありということになります。
犬がまだ家庭に来たばかり、もしくは犬が来て数ヶ月がたちすでに犬の行動が不安定になっている状態の対処法としては、食べ物をつかって一時的に対応することは止むを得ないことです。
犬との関係を変えるために、環境や飼い主の接し方を変えていくのであれば、結果として首輪やハーネスを装着するときに少しガマンすることを教える必要は、絶対にあります。
犬がこうした状況において咬みつき行動を示すことを「怖いから」「嫌だから」「犬だから」という理由をつけて対応しないのは、犬に対してとても失礼なことです。
犬は成長するし、高度な社会的コミュニケーションを持ち、そしてその能力を通して人の暮らしに近付いてきました。
動物の中で自ら人に近付いてきたもののナンバー3に入るほど、犬は特別な動物なのです。
その高度な社会的コミュニケーションは、人との関わりを通して発達していきます。
すぐに咬みつく犬は飼い主との社会的関係が薄く大変孤独に過ごしています。
犬は成長し変化します。変えられるのは飼い主だけなのです。
Author Archives: miyatake
<犬のしつけ方>首輪やハーネスを付けられない犬たち
<クラス>犬語セミナー開催しました:子犬の家庭内行動
毎月開催している犬のコミュニケーションを学ぶ「犬語セミナー」を開催しました。
午前中はいつもとおりトレッキングクラスで犬たちと山歩き。
秋のような雲と山の上をめぐる冷たい空気を感じながら、しばらく休憩したり、大雨の後に倒れた大木をみんなで移動させながら環境整備もすすみます。
これまできっちりと管理してきた若い犬くんも、経験を重ねて今日はステップアップします。
自律行動を促され、自分のブレーキを発揮しながらワクワクの山歩きだったことでしょう。
午後の犬語セミナーの今回のテーマは「自宅での家庭犬の行動」でした。
家庭訪問のトレーニングクラスで撮影させていただいた犬のほんの数分の行動をよく見て、その行動を意味を探っていきます。
ほんの短い時間の犬の行動ですが、ビデオ観察でも最初はなかなか細かく見ることができません。
今回使用したビデオの中には数ヶ月の子犬の行動も入っていました。
子犬はコミュニケーションが単純で、くり返し行動が多いのですが犬が小さく行動が多いためつい見逃してしまうこともあります。
そこでビデオのスローモーション機能を使って詳細にその行動を観察していきます。
子犬のよく見られる行動だったのですが、参加者の方が案外首をひねって困惑されています。
子犬の行動はほとんどが「遊んでいる」「じゃれている」「構ってほしい」で片付けられています。
遊んでいるように見えるけどどうなんだろう?
この行動は遊びではないかもしれないと思って子犬の行動全般を観察していくと、子犬の成長と発達に必要な要素がたくさん入っていることがわかります。
飼い主はこの子犬のくり返される行動に毎日毎日接するのです。
その日々の接し方によって子犬の精神的は発達が決定付けられていくとしたら、子犬を育てる飼い主は大変責任が大きいのです。
犬を飼われる方の多くが子犬から育てたいと願います。
子犬は可愛いですし、愛着も深いのですが、子犬のためにはたくさんの時間と労力と理解する力も必要です。
子犬を飼われるなら、日中も犬と過ごす時間が使えて子犬の成長と発達のために必要な環境を提供できる準備がある状態で迎えてください。
犬語セミナーは来月8月26日(日)の午後に開催予定です。
<犬のしつけ方>犬の暑さ対策:穴を掘って過ごす犬たち
猛暑で平野部の犬たちがグッタリしているのではないかと心配しています。
室内飼育の犬はエアコンのきいた部屋で床に寝そべっている姿をみます。
エアコンも犬の体調を崩してしまうので、必要な道具とはいえ犬は元気とはいえません。
普段はエアコンで涼しげな部屋も、飼い主の外出時や就寝時にはエアコンを切ってしまうケースもあるようで、室内飼育でも暑さと戦う犬もいます。
散歩にはなかなか出られないし、ひたすらこの暑さが過ぎ去ることを信じて待つしかありません。
こんな猛暑の中、お庭で過ごす屋外飼育される犬の中には、犬の習性にのっとった原始的な方法で暑さ対策を試みる犬もいます。
犬の暑さ対策といえば、穴を掘ってそこに入ることです。
穴を掘る場所は家の軒下が定番です。
穴のサイズは自分サイズといったところでしょうか。
日陰に掘った穴の土部分はとても冷たく、冷気を上手く利用することができます。
先日、プライベートクラスを利用してトレッキングにきてくれた犬くんの様子を聞くと、床を覗くと犬の耳の先しか見えないほど深く掘られているとのことでした。
日中はずっと穴の中にいて、全く出てくることもないということでした。
まさに土風呂といった感じなのでしょうか。
土には他にもメリットがあります。
土は体内の毒素を吸収する力があることが、自然療法家の実践で明らかになっています。
毒素を土に排出して冷たさもキープできるなんて、最高の寝場所ですね。
現代の家のほとんどはコンクリートで固めた土台の上に家が建てられているため、軒下に土を掘ることができません。
コンクリートの軒下では暑さはしのげないばかりか逆に暑さが増してしまいます。
屋外の犬が熱中症になりやすい理由は軒下という逃げ場を失ったことも関係あるでしょう。
軒下の土を掘って過ごすなど人が犬に教えたことではありません。
犬が人の家というテリトリーを持って長い間過ごすうちに身に付いたひとつの犬の文化、つまり犬の習性なのです。
この習性もすべての犬に残っているわけではありません。
環境を上手く利用する犬の習性も失われつつあり、利用できる環境も失われつつあります。
猛暑はまだまだ続きます。
室内の犬たちにせめてエアコンは常に利用してあげてください。
<犬のしつけ方>環境に適応する力:犬の社会性の発達について「自然環境」VS「人工的環境」
前回のブログで、自然環境と都心空間の作られ方の違いについてお話しました。
刺激の多いと思われる都心の生活空間の方が、限られた環境の変化の少ない空間であることに触れました。
これは動物学者の小原秀雄先生の言われている「人は自分を自分で飼っている自己家畜化」だという状態なのです。
小原先生の対談の言葉を一部抜粋させていただくと、このように言われています。
「人間はある意味で家畜に似ていると思いませんか。自分で自分を飼っている。囲いをつくってほかの動物から遠ざけ、社会システムで生産された食料を食べている。自己家畜化というやつです。これがあまりにも進んでいくとどうなるか・・・。」
つまり、都心生活では動物園の檻の中に入っているのと同じような環境なのだということになります。
このテーマでいつも思い出すのがアメリカの動物行動学者のセミナーを受講したときに聴いた話です。
話のテーマは、動物園で繁殖されたオオカミと、自然環境で生まれたオオカミを動物園に連れて来た場合、動物園の中ではどちらが社会性の発達がなされるのかというものでした。
この質問を今までになんども生徒さんたちにしてきましたが、皆さん答えは同じです。
多くの人が、動物園で人工的に繁殖されたオオカミの方が、社会性が発達するはずだと自信を持って答えます。
小さいころから人が管理する環境の中に育ち、人が面倒を見るオオカミの子ですから、社会性の発達を表面的に見るならこの結論に達するでしょう。
しかしこれは逆だという話をセミナーで聴くことができました。
つまり、自然環境で生まれたあと動物園に連れて来たオオカミの方が、社会化が促進しストレス行動が少ないというものでした。
もちろん移動の時期にオオカミの一定の年齢は影響をすると思います。
幼少期に自然環境で生まれ育ち、若年層か青年層で動物園に移動してきたということになります。
みなさんの予想を裏切る答えの仕組みはどこにあるのでしょうか。
それは、社会化というのが脳をどのように発達させていくのかという仕組みにあるのです。
科学がこれだけ進んでいる時代ですから、脳の発達がどのようになされていくのかという研究は進んでいますし、一般の方でも気軽に読める本がたくさんあります。
特に子供さんの脳の発達に関する書籍は読みやすく参考になるものも多いのです。
人と犬は違うのではないかということを考慮するならば、人は大脳皮質の発達について重点を置かれることがあるが、犬は人よりも大脳皮質の割合面積が小さいために大脳辺縁系と呼ばれる原始的な脳の発達に重点が置かれるということです。
人でも原始脳と呼ばれる知覚と反応の発達がベースとしてはとても重要なはずだと思うのですが、本によってはそう述べられていないものもあり残念です。
人の発達について、冒頭に紹介した小原先生は、小さいころから虫や動物や自然環境に直接的に触れて冒険したり実験したりすることで、相手と自分の関係がわかりあえる“共存共栄”という本能的な力が身に付くととかれているほどです。
幼少期に自然環境に触れる、臭ったり動いたり口に入れたりする自然な行動をしながらテリトリーを広げて活けるようになると、脳の発達が促され自然なテリトリー形成につながっていきます。
そのテリトリーをもってこそ社会性の発達というのが進んでいくということです。
<犬のしつけ方>環境の変化に適応するという社会性:自然環境では発達しないのか?
連休途中からお預かりクラスを利用する犬と共に、七山に戻ってまいりました。
24時間体制でエアコンが作動する福岡市の中心部から、エアコンフリーの山のふもとのこの学校へほんの1時間で到着します。
エアコンをつけず窓を開けてしっかりと布団をかぶって眠れる心地良さに、体がよみがえっていきます。
いつも不思議なのですが、七山ではお肌も少し柔らかくなるし、視力も上がるし、呼吸は明らかに深くなっていきます。
お預かりの犬くんも、心地良い山の風を受けながらお昼寝タイムもしっかりととれているようです。
エアコンで24時間管理される都心部の生活は、ある意味で環境の変化が少ないと言えます。
都会の方が刺激が強く、山の方が刺激が少ないというのが一般的な見方でしょうから、何故?と思われるかもしれません。
都心で刺激が強いのは、商業地域といわれる場所だったり、近所のコンビ二だったり、家の周囲を歩いている人や犬や電気系の乗り物が多いということでしょう。
ところが人間はやはり動物なので、ストレスとなるものを回避しようとします。
そのため、外が見えないようにカーテンをしたり防音をしたりします。そして、過酷な温度から身を守るために24時間体制で気温と湿度が一定になる快適な空間を作り出してきました。
刺激が多く環境が苛酷な都心では、生活空間は刺激をシャットアウトする工夫がされているのです。
結果として室内の空間ではほとんど環境が変化することがありません。
特に、臭いを感知することで空間の変化を読み取る犬という動物にとっては、ほとんど環境の変化の起きない空間になっています。
一方で自然環境はどうでしょう。たとえば七山では、山に上がるほど刺激が少なくなり、エアコンをつけている家も少なくなっていきます。
家はいつもオープンスタイルで風通しが良く、気温も湿度も屋外の環境と共に微妙に変化していきます。
住む人も一日を通して微妙に変化する環境に対して、窓を開けたり閉めたり、カーテンを上げたり下ろしたりして、多少なりとも快適性を引き出す努力をします。
その上で、自分の体温が一定に保たれるようにする力が働いていきます。
常に風が通るということは常に臭いが微妙に変化していき、空間の広さと環境の変化を同時に犬に伝えていきます。
犬は広い空間の中で環境の変化に適応していく力を身につけていきます。
これもひとつの社会性なのです。むしろ、社会性そのものだといえることもできます。
犬の社会性の発達が難しいのは、小さいころにたくさんの犬や人に会わせなかったからではありませんし、外を連れ回さなかったからではありません。こうした行為は逆に社会性の発達を遅らせる危険な行いです。
犬の社会性の発達が難しいのは生活空間が閉ざされている上に、行動を制限する不安定なサークルに長時間いれて置かれるからです。
さらに、変化しない狭い都心の一室で過ごしてしまうからです。
このような状態でいきなり散歩に出ても、社会性が発達するはずはないのです。
自然環境の中で生活できる人こそ、本質的に社会性の基礎が育っているというのは動物でも同じのようです。この話を次回に続けます。
<犬のしつけ方>犬にとって良さそうで良くない“犬専用の部屋”
犬を自分の家族の一員だととらえ、愛情をもって可愛がってくださる方が本当に増えていると感じます。
ただ、その愛情の中には犬の擬人化によって起きる行き違いが生じていることも忘れてはなりません。
行き違いのひとつに、犬に専用の部屋を与えるということがあります。
子供部屋を子供に提供するような感覚で、犬もしくは犬たち専用の部屋を与えるという考え方に発展してしまうようです。
実は犬にとって犬専用の部屋を与えられそこで過ごすことは、落ち着けない生活環境になってしまうのです。
誤解を恐れずに率直に言うと、犬専用の部屋を与えるということは犬を人を分けて生活するということになります。
つまり、犬舎のようなものが室内に設置されていると考えるといいでしょう。
犬は犬だけのスペースで暮らし、人が犬を抱っこしたいときだけその部屋から出すといった風景になると、ペットショップの限られたスペースで犬だけで過ごしているのに、人が接するときには抱っこしたりリードをつけて出しているのと同じことになります。
最近ではペットショップも動物福祉の観点やディスプレイの効果を考えてでしょうが、畳数畳のスペースに犬を展示されていることがあります。
まさに、犬部屋に犬だけが入っている風景で、一般家庭の犬部屋のようだなと思うのです。
では、なぜ犬専用の部屋が犬にとって不利益なのでしょうか。
それは、空間を共有しないということは、同じ「家族=群れ」ではないということを意味しているからです。
別居といったらいいでしょうか。
時々あって、人の都合で接するけれど、あとは別居生活です。
さらに、ペットショップや集合犬舎よりも犬専用の部屋の方が乱れていることが多いのです。
そもそも犬ができるだけ自由に過ごせるようにということで与えられている犬専用の部屋です。
できるだけ自由にというのは裏を返せば、トイレの失敗してもいいのよ、家具をかじってもそんなに気にしないからね、ソファは犬のものだからご自由に汚してくださいなと、毛が多少落ちても大丈夫など、生活の気疲れを減らす人側の思惑の上になりたっています。
ということは、犬の生活環境の管理が不安定になってしまうということです。
その点、集合犬舎などでは衛生第一、安全第一と叩き込まれて犬の管理を行っています。
収容数が非常に多いので、きちんと管理していないと大変な状況になるからです。
若いころに勤めていた盲導犬育成施設は多いときでは60頭を越える程の犬が収容されていました。
管理を厳しくするのは、犬たちが安全かつ安心して生活していくための犬舎の管理規則なのです。
その点、家庭内での犬専用の部屋は、とても不安定な状態になっています。
犬を愛するという気持ちでやっていることが、実は犬を窮地に追いやることになっているかもしれません。
犬と家族でいたいなら、まず空間を共有して人が生活をするスペースの中で共に暮らせるようなしつけをやっていきましょう。
<おすすめの本>かくれた次元:エドワード・T・ホール
最近は便利なものですぐにネットで検索ができるので、生徒さんたちが情報過剰になっていると感じます。
その過剰な情報の中には、明らかに違っているもしくは見方があまりにも人によりすぎていて吐き気がしそうなものまで入っています。
人にとびつくのは人のことが大好きだから。
人の口をなめるのは人のことが大好きだから。
犬が何をやっても人が好きだといってしまうことで飼い主側も納得してしまうという負の渦の中に巻き込まれていないでしょうか?
逆に極端に、犬が手をなめているのは強迫性神経障害であるとか、犬が他の犬の吠えるのは発達障害であるなどあまりにも簡単に障害という印鑑を押して恐怖を抱いてしまうこともまた正しい状況を把握することから遠ざかってしまいます。
犬のことを正しく理解しようなどとは、異なる種の動物であれば困難であることは当たり前のことなのです。
でも時間をかける余裕がないし、早く知って解決したい終わりにしたいという気持ちがものの見方をゆがめてしまうこともあります。
いつもお話ししているとおり、犬のことを知るにあたってハウツー本は必要ありません。
動物の仕組みを理解したり考えるヒントをくれたり、ああそういう見方もあるんだなと考えさせられる本に興味があります。
限られた時間の中で本を読むのですから、セレクトして読まなければもったいないという気持ちもあり、いつも本を手にとるときにはどきどきします。
ガッカリすることもありますが、このブログでご紹介する本は時間を割いて読んでよかったと思えた本ばかりです。
そこで今回はこの本「かくれた次元」をご紹介します。
「かくれた次元」という本の題名からすると、精神世界的な本と誤解されるかもしれませんが、これはかなり行動観察に基づいた科学的な本です。
書籍名の「かくれた次元」の意味を考えると、本書の冒頭にあるように「体験は文化によってかたどられているのだから、そこにはかくされた次元という文化が存在するのだという」という仮説を証明するために実際の事象を用いて説明が進められます。
事象として取り上げられているのが動物間の距離に関するテーマです。
動物たちが種により場によりまた実際の距離感によって混み合いをどのように回避しようとするのかなどがわかりやすく記されています。
動物が他者に近づける臨界距離、逃げる必要を感じる逃走距離といった言葉も、この本の中で初めてエドワードTホールが取り上げたのではないでしょうか。ここはあくまで推測であって事実とは間違いもあるかもしれませんのでご了承ください。
この他者との距離感を、住む場所の違いによる文化として捉えているのがわかりやすいところで、特に日本人に関する記述が他の国の人とは違うことが詳細に述べられているため、文化の違いが知覚文化距離(プロクセミックス proxemics)の違いに影響をしていることを自らの経験も通して理解することができます。
そこから、犬と人という異なる文化を持つ動物が異なる知覚文化距離を持つ事はあまりにも明らかだという理解に発展し、犬との距離感や空間について考える素材をもらえるという訳です。
どの本にも答えはありません。結局は自分で考えなければならないのだということです。
こうした自分に考えるヒントをくれる本に自分がドキドキしてしまうのです。
考えることが楽しく、発見することが楽しく、それが犬のこととなればなおさらのことなのです。
もちろん、机上の空想には終わりません。
考える過程を通して、ああだから犬たちは距離を近付け過ぎるとストレスを感じるのだという理解につながり、犬の適切なフィードバックを受けられるようになり、現実的な関係性に発展していくのです。
良い本との出会いは、良い師や友人に出会った気持ちになるものです。
暑い夏の日のお昼寝タイムの前にでもどうぞ。
他にもお薦めの本を紹介しています。↓
goodboyheartの本棚
<クラス>家庭訪問トレーニングクラスで犬のボールボーイを務める
先日テレビでウインブルドンを少しだけ観賞しました。
日本選手の暑い戦いに、スポーツではあまりエキサイトしない自分ですがちょっとだけ力が入るのを感じました。
というのも、学生時代にテニス部に所属していた事がありまして、下手だったのですが練習だけは毎日倒れるほどした青春の思い出がよみがえるからです。
自分が経験したことのあるスポーツを見ると、自然と使った筋肉や体の感覚が反応するのがわかります。
だから、やったことのないスポーツ観戦よりも、経験したことのあるスポーツの方が脳が活性化するのではないかと思うのです。
ところで、そのウインブルドンの暑い戦いの中でどうしても気になってしまうのが「ボールボーイ」の存在です。
ボールボーイとは余分なボールを素早く走って取りにいったり、選手にボールを投げ渡したりする役割を果たしている青年たちで、コートを囲むように立っていたり、地面に手をつけて走り出す体勢でスタンバイしていたりします。
テニス部でも下級生時代は、ボール拾いといわれるこのボールボーイ役と、素振りと、ランニングなどの基礎体力作りしかさせてもらえないので、むしろラケットを握ってボールを打つよりも、ボールボーイとしていかに上手くボールを処理できるかということに専念していたように思えます。
このボールボーイの姿を見ながら「そういえば、この前あの犬ちゃんのボールボーイをやったばかりだった…」と思い出したことがありました。
犬のボールボーイとはどんなことなのか。
ある家庭訪問の犬のトレーニングクラスで「お庭でのボール遊び」を飼い主さんに指導しているときのことでした。
その犬ちゃんはリトリバー種といわれる「運び屋」なので、ボールを持ってくることはかなり得意分野なのです。
飼い主さんいわく「ある程度持ってくるのだけど1回で終わってしまう」ということで、ボール遊びを継続させようという練習をしていたのです。
最初に私の方で「こんな風にお願いします」と犬ちゃんと数回のボール拾い遊びをするのを飼い主さんに見ていただきました。
その後、飼い主さんに同じようにやっていただくのですが、最初はタイミングが合わず犬ちゃんが微妙な位置でボールを口から離してしまいます。
数個のボールを使ってボール遊びを継続していくように教えるため、その微妙にこぼれ落ちたボールを飼い主の元に返す「ボールボーイ」役が必要となるわけです。
そこで当然のことですが、私がボールボーイとなって犬ちゃんのこぼした球を拾っては飼い主さんにワンバウンドで投げる(ワンバウンド!これがボール渡しの鉄則でした)を繰り返します。
もともとテニス部に入ろうと思ったのも、犬の訓練士になるには体力が必要だから体力づくりをする必要があるというのがその理由でした。
まさかこんな形であの過酷なボール拾いの経験が役立とうとは、その当時は知る由も在りません。
卒業してうん十年がたち、到底18歳の体力はかげろうとなった今の自分にとって、ボールボーイに絶えうる時間はほんのわずかしかありません。
ほど良いところで犬ちゃんもボール遊びを切り上げることになりました。
今週はきっと練習を重ねて、私のボールボーイはお役ゴメンとなることを願っています。
<犬のしつけ方>犬のトイレトレーニングは生後3ヶ月までに完了すること
犬のしつけやトレーニングのご相談の中で最も多いのが「トイレの失敗」です。
犬の問題行動を解決するドッグトレーナー(正しくはドッグインストラクター)といえば、吠えたり噛みついたりする問題を解決する仕事だと思われがちです。
犬が吠えることや噛み付くことは飼い主や近所の人にとっても迷惑なことなので、ご相談内容としてはもちろんあるのですが、もっと相談件数が多いのが「トイレの失敗」とみなさんがいわれるところの、犬の不適切な排泄行動です。
特に、室内飼育の犬の不適切な排泄行動による室内でのトイレの失敗は、人が精神的にとてもダメージを受けることです。
室内をきれいに保ちたい、空気をきれいにしたい、お掃除をしっかりしたいという気持からです。
そのきれいに整えられた空間が犬の排泄によって一気に乱されてしまうわけですから、飼い主としてはたまったものではありません。
多くの室内飼育の子犬たちは、家に迎え入れられたときは「サークル」という管理道具を使って過ごしていることが多いようです。
そもそもこのサークルという管理方法が不適切だから「トイレの失敗問題」が起きるのです。※関連過去記事を最後尾に添付していますのでご覧ください。
犬の「トイレの失敗問題」のご相談の月齢ですが、若い犬で生後3ヶ月、年齢が立つと3才や4才になってもまだ適切な場所で排泄ができないという異常事態が発生しているようです。
犬が何才になると適切な場所で排泄できるようになるのかというと、実はみなさんが思っているよりもずっと早い時期です。
犬は生後21日で自力の排泄行動がスタートするときに適切な排泄行動を引き出せるようになります。
自力で排泄というのは、今まで母犬に排泄の処理をされていたことがなくなり、自らの脚で立ち上がり寝場所からは離れた場所で排泄をするようになるという意味です。
ではなぜ、何才になっても犬の「トイレの失敗問題」が続いているのでしょうか。
ほとんどは犬の問題ではなく、飼い主の提供した環境が整っていないという飼い主側の問題です。
問題のひとつには、犬が未熟なままで発達がなされないため、おもらし状態で排泄を不適切にしてしまうということも含まれます。
表題には「犬のトイレトレーニングは生後3ヶ月までに完了」と書きましたが、本来なら犬のトイレトレーニングは生後1ヶ月半で完了していることが本来の犬の行動です。
この生後1ヶ月半から3ヶ月の間にわたり、犬が繁殖者やペットショップから新しい飼い主の元に引き渡され生活環境が激変してしまうという状況を考慮すると、生後3ヶ月では完了しておくべきことと長めに設定しています。
犬と暮らし始めたばかりの人がいて、生後1才近くになろうとしているのに排泄を不適切にするトイレの失敗問題が起きているのであれば、それは犬のストレス性行動として捉え、早速問題解決のための努力を始めてください。
過去ブログ記事
<犬のしつけ方>犬のトイレの失敗はそのうちに良くなると期待しないで。犬のトイレのしつけは自律的行動を引き出すことから始まる大切な社会化学習です。
<犬のしつけ方>犬の社会性に大きな影響を与える犬用のケイジとサークル使いの注意点
<犬のしつけ方>子犬のトイレ失敗はいつまでに解決する?
<お知らせ>7月の犬語セミナー開催のお知らせ
ついに梅雨明けしました。
七山では短くて過ごしやすい夏、福岡では長くて厳しい夏の始まりです。
厳しい季節はそのうち過ぎるけれど、精神的にへこたれないようにしなければと気合も入ります。
7月の犬語セミナーは以下の日程で開催します。
日時 7月22日(日) 12時~14時
場所 グッドボーイハート七山
参加費 おひとり2500円(当日払い)
申込み 参加ご希望の方はメールもしくは電話、始めての方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。
少人数制のセミナーなのでどなたでもご参加いただけます。