犬のトレーニングクラスというと、犬にオスワリやオテを教えることから始まると勘違いされている方がまだまだ多いようです。
犬のトレーニングクラスの始まりは、犬がどのような年齢や状態であろうと変わりません。
犬を迎えたらまずしなければいけないのは、犬が安心して生活していけるように犬の生活環境を整えることです。
例えば子犬の場合には、安心して眠れる場所や排泄場所の確保、犬が安心できる接し方などを身に着けることがトレーニングの始まりです。
犬の環境整備では、犬が安心して活動できるように、ベランダやお庭周辺を整えることも必要です。
今日は、この中で飼い主さんが案外気づいていない犬を不安にさせる環境についてお話します。
それは、お庭やテラスと屋外との境界線の環境です。
庭やテラスから通行人が犬にむかって話しかたり手を出してなでたり、指を突っ込んできたりするようなことはないでしょうか。
通行人が犬に対してこのように接して来られるのは、テラスや庭の低い柵や通気を考えて設置された網の柵が多いようです。
犬がテラスに出ているときに、テラスの向こうから犬を見ていたり話しかけたりする人がいると、犬は大変不安定になります。
もちろん、見たり話しかける人は犬が好きな人なので悪気はないのですが、犬にとってはこの境界線越しに接する行為は、曖昧さにつながり不安を感じさせます。
犬は柵越しに話しかけられると、柵に向かって立ち上がったり、キャンキャンと吠えたり、鼻をならしたり、排泄をしたりするかもしれません。
これらの行動は、犬がその環境で不安を抱えているというシグナルです。
日常的によく来る来客で、室内でも会うことがあり、その人のことを犬が熟知している場合には穏やかな接触ができる場合もあります。
しかし、あまり知らない人や同じマンションの人やいつもそこを通る人で、人側は犬に愛着を持っていても、犬の方が同じであるとは限りません。
実際に、このような曖昧な柵という境界を越して接してくる人に対して、犬が噛みついたという例は少なくありません。
柵を越えて接した人に対する噛みつきの事故は100%人の方がルール違反で犬は悪くないのです。
でも人の方がかみつかれるまでは「今までは喜んで撫でられていた」と主張することで犬が豹変したと思われてしまいます。
犬はずっと同じ主張を繰り返していて結果として噛みつきに発展しただけなのです。
この問題は「境界線があいまいであったこと」。
ただそれだけのことです。
犬にとっての自分の敷地と外部の敷地とでは、直接触れることができない、直接見ることができないことではじめて「境界線がある」と認識されるのです。
中には明らかに外側の人が気づいていないのに、犬の側から外が見えることでわんわんと吠えてしまう場合もあります。
目隠しは境界線をはっきりと作り、犬に対して自分のテリトリーが安心かつ安全であるということを理解させる方法です。
写真は、黒柴ちゃんのご家庭のテラスに作っていただいた目隠しの境界線です。
この境界線があることで、柴犬ちゃんは鼻ならしや立ち上がりや飛びつく行為がなくなりました。
こうした工夫が、本当に犬の立場にたって考えることなのです。
ということは、犬のトレーニングクラスとは「犬の立場にたって考えることを学ぶこと」なのです。