ご家庭訪問タイプのトレーニングクラスのために定期的にご家庭を訪問していると、犬の行動の変化を見ることができます。
トレーニングの内容に沿って進められた環境の変化に対する適応。
たとえばクレートというハウスで寝るようになる。
犬用のベッドで遊ぶようになる。
適切な場所に準備された排泄場所に排泄をするようになる。
そして排泄の失敗(トイレの失敗)というのがなくなってくる…など。
これはほんの一部ですが確かにトレーニングやしつけを行った結果に変化した犬の行動です。
ですが、犬の行動はいいことばかりではないし、いつもパーフェクトなわけではありません。
「今週も1回トイレを失敗しました…」
「まだ、とびつきがなおりません。」
「ものをかじるのを止めません。」
「吠えがなくなりません。」
飼い主側はできていない行動をたくさんあげられることは得意ですが、犬ができるようになったことを探すのは苦手のようです。
もう少しはっきりというと、犬ができるようになりつつあること、に気づかれるのが苦手のようです。
0か100。
完璧にできたら「できた」と思えるものも、中途半端な数字10とか50とか80ではまだまだ合格とは言えないので不安になられるのも分かります。
そのことに気づいて説明するのがインストラクターとして訪問している自分の仕事です。
先日まで訪問のときに吠えていたのが今は吠えていない。
最近まですぐに飛びついていたけれどゆっくりと近づけるようになっている。
ハウスの合図に対する反応がかなり高くなっている。
そんな、飼い主さんにとっては満点とはいえない犬の行動も、より良い方向に向かっていることを感じることができたら飼い主さんに報告しています。
これは、飼い主が現在整えている環境整備がうまくいっていますよ、ということなのです。
つまり自信を持ってこのまま継続されて構いませんという、私の中での合格サインです。
生徒さんからは「犬がまったくよくなっていないと思っていたけれど、こうしてお話を聞くと変化しているのがわかりました。」といわれます。
飼い主としてはとても高いところを目指しているので、そこまでにはまだまだ時間がかかるということで焦りがあるのかもしれません。
しかし犬のしつけや犬と関わるということは、完璧になりすぎてしまったら犬はそれだけ年をとったということもであります。
今「犬が出来ている」こと、今「私ができていること」を認めることの方がずっと有益だということを、客観的にみればわかることですが当事者というのはなかなかそうでもないのです。
責任感があってちゃんとしなければという気持ちが強ければ強いほど、犬へのプレッシャーもかかってしまいます。
犬がプレッシャーを抱えているシグナルとしては、しつけの練習の途中で逃げ出したり走り出したりしてしまうときです。
逃走は犬がもっとも得意とする行動なので、走り出すたびに練習を止めていたら練習にはなりません。
ただあまりにも拒否が強い場合には、少し深呼吸して自分にかかるプレッシャーを開放してから再びトレーニング練習にのぞみましょう。
繰り返し行動のしつけの内容はすごく単純で難しいことでも過酷なことでもないのです。
ちょっとの我慢ができれば、どんな犬にもできるようになります。
毎日が犬との闘いであっても良いではないですか。
より良い関係をつくるための闘争です。
犬を愛する気持ちが生まれるなら問題ありません。