犬の逃走行動についての数日前に記述したブログ記事から広げました。
関連ブログ記事→“警察犬が山で逃走した事件”についての個人的な考え・犬の衝動性について
話題を広げて一回目は逃げだした犬がどうやったら戻れるかというお話をしました。
犬の行動を決める道具のひとつは“犬の足裏のパッドの臭い”だった
犬が地面に鼻先をつけたまま「臭いの足跡」を追跡している姿を一度は見られたことがあるでしょう。今回は犬の行動を決める道具として二つめを考えてみます。
少し難しい話になりますので、繰り返し読んで下さいね。
犬が行動を決める道具として二つ目に考えるのは「メンタルマップ」です。
メンタルマップという言葉を聞いたことがありますか?
私は初めてこのメンタルマップについて考えるようになったのは、自分が盲導犬を訓練し育成する仕事をしていたときに、視覚障害者の方々がどのように歩いているのかを知ったときでした。
それは普段から自分が使っているのと同じシステムだったのです。
メンタルマップとは自分の頭の中にある地図です。
歩いているときにも、車を運転しているときにも、地下鉄を乗り換えるときにも、スーパーの中を移動しているときにも、このメンタルマップの活用によって行動がスムーズになります。
メンタルマップという頭の中の地図には二つの要素が必要です。
ひとつは「自分」もうひとつは「地図」です。
地図の中に自分が今どこにいるのかという位置があって、動物はいつもその中で活動をしています。
たとえ室内であっても庭であってもメンタルマップは常日頃から利用されているのでそれを意識することはありません。
むしろメンタルマップが頭の中から紛失してしまったときに、その大切さに気づきます。
わたしは最近よく運転しているときにメンタルマップを紛失することがあります。
なぜならカーナビを使用することになったからです。
カーナビのいうとおりに、まっすぐ、曲がって、左へ、右へと言われたとおりにハンドルを切って運転をすすめると、自分の頭の中には地図が出来上がりません。
特に初めていく場所では全く地図がないため、1本でも違う道へ入ってしまうと間違えたみちをまっすぐに戻ってこなければ迷子になってしまいます。
犬たちの迷子は実はこうしたカーナビ状態で起きてしまいます。
犬にはひとつめの足跡の地図があります。
でもこの臭いの足跡は一本線になっています。
もし少しでも道を外れてしまって臭いの足跡の線を失ってしまうことになれば、何かで臭いが消されてしまったら自分が今どこにいるのかが分からなくなってしまいます。
ところが犬にもメンタルマップがあるはずです。(科学的にはまだ証明されていないようですが、脳の構造からして私はあると考えています。)
メンタルマップの作り方が私たち人間と犬で違うとすれば、私たちは視覚的に地図を把握しますが、犬は臭いの流れによって地図を把握します。
そのため都心の高い建物などで風の流れが不自然だったり全体を流れる風がさえぎられると臭いのメンタルマップの作成はできなくなります。
ところが山や畑などのゆるやかに風の流れる環境では、臭いの流れによって全体を把握することができます。
臭いが大きく遮断されるとすれば川の流れです。
一直線に流れる川の流れる臭いは山と山の臭いを遮断するでしょう。
動物たちにとって谷とはひとつの大きな境界線だったはずです。
そして、私がカーナビを使うたびにメンタルマップの作成ができずに脳内が退化していくように、犬たちも常日頃からメンタルマップの作成ができずに行動にストレスを感じています。
昭和の初期にはまだ高い建物やマンションが少なかったので、地域の犬たちの頭の中にはメンタルマップが存在していたのかと思います。
人々の頭の中には「地図」と「自分をさす➨」が存在するという話は、あの養老猛司先生の話の中にもありました。
また詳しく勉強していきます。