レッスン中に犬の行動について詳しく観察する生徒さんが多く、楽しくレッスンをさせていただいています。
先日も鏡に映った犬の反応に気づいた生徒さんからコメントをいただきました。
ある日、鏡に映った自分の姿を後ろから見ていた犬と目が合ったそうです。
そのときに犬はすごくびっくりしたようにしてその場からいなくなったということでした。
飼い主さんとしては鏡の中の飼い主と目があったということを犬が理解したのか、それとも別の反応で逃げたのかどうなんでしょうかという質問でした。
その後は鏡の中の自分を犬が認識するかどうかという風に話が進んでいったのです。
ちょうど先日読み返していた本の中に、鏡の中の自分を動物が認識できるのかという部分があったので早速その後のレッスンのときにその本を紹介しました。
それが今日お勧めする本です。
題目は「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」
この本のことを語り合える人がいれば今すぐオンラインでも話がしたいほど面白い本です。
著者はフランス・ドゥ・ヴァール氏で霊長類研究の一人者で、別の著書「共感の時代へ」もこのブログでお勧めしています。
日本ではもっと有名になったのが「利己的なサル、他人を思いやるサル」です。
監訳はあの松沢哲郎先生で、松沢先生も同じく霊長類研究者で京都大学霊長類研究所で研究に携わっていらっしゃいます。
チンパンジーやサルの行動に関心のない方でも、この「動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか」には興味を持っていただけると思います。
この本には霊長類以外の動物もたくさん出てきます。
ゾウ、カラス、イルカ、ネコ、馬、オウム、そして犬も!
この本は動物の知的部分について書かれています。
著者の前書きにも「動物たちがどれほど高い知的水準で行動しているのか、私は興味が尽きることがない」とあります。
動物の知的さを図る上で行動を単に刺激に対する反応ととらえる行動学は行動がすべての危険性をはらんでいます。
行動がすべての世界では行動さえ引き出せれば成功。
その行動はご褒美と罰というオペラント条件付け学習だけで犬をトレーニングしようとするのは行動がすべての世界です。
動物の行動には内面性が備わっていると考えると、行動がすべてとはなりません。
犬はどのような気持ちでその行動をしたのかについて考える必要があるからです。
この内面性を考えるのが動物の認知心理学といわれる分野ですが、フランス先生はここに挑んでいきます。
前書きからまた引用します。
「どの場合にも、私たちは人間を基準として動物の知能と人間の知能を比較対象したがる。とはいえ、それは時代遅れの評価方法であることを肝に銘じておくといい。
比較すべきは人間と動物ではなく、動物の一つの種(私たち)とそれ以外の非常に多くの種だ。」
と続いていきます。
もうこの本を読みたくてうずうずしている方のためにこれ以上は書きませんが、当然のことながらこの本にも大好きなローレンツ氏のことがたくさん出てきます。
「裸のサル」の著者として有名なデズモンドモリスはローレンツの講演を聞いて思ったことなどのくだりは楽しくて仕方ありませんでした。
グッドボーイハートの本棚の中にもいれておきました。
今後も犬の行動を説明したいときに引用する本になりそうです。
本のご紹介が遅くなりすみません。
これからみなさんお忙しくなるでしょうが、犬を横目にぜひ読んでください。