グッドボーイハートのクラスを受講された生徒さんからいただいたクラス受講の感想文です。
今回は人に慣れていない保護犬の子犬を迎えたことが受講のきっかけになった梅(うめ)ちゃんの飼い主さんからいだたきました。
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去年2月に梅が家に来ました。
北九州の野犬の群れの仔犬で、生後6ヶ月の女の子でした。
ボランティアの方が保健所から引き受けた子犬をネットに里親募集として掲載されていたのです。
気になってボランティアさんに連絡をしたのが梅を家族として迎えるきっかけとなりました。
自宅に連れてきた梅は警戒心がとても強く、ご飯も殆ど食べませんでした。
ダイニングのベンチの下にずっと隠れていて声をかけても出てこようともしません。
私たち人間が寝静まるとリビングの中央に敷いたペットシーツにトイレをし、遠吠えをして群れを呼んでいるようでした。
犬の事は全く解らない私でしたが、そのなき声を聞くと毎回胸が締め付けられました。
梅はとても私たちを怖がっていましたし、室内のベンチの下から出す事も出来ない様子で、散歩に行くなんてとても出来ない状態でした。
梅の状態をどうしていいかわからず、以前からご縁のあった(私の妹が宮武先生にお世話になっていました)good boy heartに問い合わせをして宮武先生がカウンセリングに来てもらいました。
先生が初めてカウンセリングに来て下さった時の安心感…。
そして、次の家庭訪問からトレーニングがスタートしました。
家の外に出ると梅は、人や車、物音など、全てが恐怖だったようですぐにパニックになりました。
大小の排泄物を歩いている途中でお漏らしすることが続きました。
リードの引きも強く、飛び上がったり、跳ねたり、と逃走モードの状態でした。
家から5分の公園まで歩くのが毎日とても大変でした。
先生のレッスンは、私がそれまで当たり前と思っていた事と犬の性質は180度違うのだという内容の、飼い主に対するレッスンでした。
レッスンは毎回楽しく、新しい視野を持って梅を見ることができるようになりました。
そして小柄で華奢でいらっしゃる先生から大きなパワーを貰えます。
梅は少しずつ少しずつ、落ち着いて過ごせるようになってきました。
梅がうちに来て一年が経った今では、公園までの道をご近所の庭の草花を眺めながらゆったりとリードをたるませた状態で散歩ができるようになりました。
宮武先生と梅のお陰で、私は今までは苦手な分野だったトレッキング(山歩き)が大好きになりました。
どうしてかというと、梅は山では特に美しくすごく格好良いので、私はそんな梅を見るのが好きなのです。
梅、お互いお婆さんになっても一緒に山に行こうね。
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生後6ケ月のやせっぽちだった梅ちゃんと初めて対面したとき、梅ちゃんは室内のベンチの下に隠れて気配を消し、リードをつけることすら恐怖を感じているような状態でした。
犬を飼った経験のある人であっても、人に怯える犬に対して自分たちがどのように接していいのかわからないのは当たり前のことです。
外飼いであったり先住犬との関係が良い状態であれば、犬が自然に人に慣れるのを待つこともできるのですが、梅ちゃんの生活環境ではなかなかそうはいきません。
接するということがどうしても発生してしまう室内飼育の保護犬に関しては、適切な接し方をしなければ子犬は人を警戒したままか攻撃性を高めていく傾向も十分に考えられます。
なんの問題もないように見えても、日常的に繰り返させる小さな緊張が続くと年齢を経てから発作などの強い反応が繰り返される結果になることも予測できます。
そんな先の未来を考えてしまうとどうしてもきちんと接してあげる必要があることをお伝えすることが私の役割です。
そのきっちりさは難しいものではないのですが、怖がる犬をさすったりなだめたりすることをガマンできない人にはできないことなのです。
梅ちゃんの飼い主さんはものすごくきっちりと誠実に梅ちゃんに向き合ってくださいました。
一年経った今、梅ちゃんの行動の変化をみればそのことは誰もが認めざるを得ない事実になっているのです。
きっと梅ちゃんを見た人は「お利口さんですね。うらやましい。」と言われることもあるかもしれません。
梅ちゃんはリラックスして散歩ができ、室内で人のものをとったりテーブルに手をかけたりもしないし、人に飛びついたり吠えたり領域を侵すことをしません。
でも山歩きの最中には常に飼い主さんと共にいることを望み、その小さなテリトリーの中でたくさんのものに出会い探索し冒険しているのです。
山の中で梅ちゃんが社会的に自由に発達する姿を見て飼い主さんは「梅ちゃんが美しい」と感じているのです。
山で過ごす犬を見て美しいと思えるというのは、私が最大に飼い主さんに到達して欲しい境地なのです。
しかもその美しい犬は自分から離れて走り回る興奮する犬ではなく、一歩一歩を大切に自分と共に歩いてくれる一体感感じられる犬なのです。
日焼けとか絶対ダメ山歩き苦手です、と私に宣言した飼い主をトレッキング好きに成長させた梅ちゃんに、犬としてよくぞやったと感謝の気持ちでいっぱいです。
保護犬の梅ちゃんには山で過ごしたDNAが強く残っていたのだと思います。
日本には梅ちゃんのようなミックス犬がたくさんいたのでしょうが、今は保護時に怯えの強い犬になってしまい怯えたまま生涯を終える犬も少なくありません。
梅ちゃんには自然とつながるセンスがある上に、人との暮らしや関係が自分にとって大切であるということも知っています。そんな日本の雑種犬の梅ちゃんのこれからの変化がとても楽しみでなりません。
それにしても私は決して華奢でも小さな可愛さもないのですが、いつも少し遠巻きに私を見てくださった梅ちゃん飼い主さんには遠近法でそのように見えているようで自分にとっては都合が良いのでそういうことにさせていただきます。