犬のことを知るためには毎日いろんな犬の行動を見ることです。
クラスの中でも常に犬の行動の変化や成長についての情報を得るために、たくさんの質問を飼い主さんに投げかけています。
その中に他の犬に対してどのような行動をとるのかという質問があります。
特に初回カウンセリングのときには、飼い主側が犬と散歩中に他の犬とどのように関わらせているのかについてお尋ねします。
関わらせているという言い方については不自然な印象を受けられるかもしれませんが、リードがついている犬の方はある程度行動が制限されているのですから飼い主の意図は別として、犬側はそうせざると得ない状況にあるということを察してほしいからです。
リードをつけている犬が散歩中に他の犬と出会ったとします。
犬と犬はお互いに近付いていき鼻と鼻をあわせるような状態となります。
少しの時間鼻を突き合わせているのですが、そのうち違う方向へ歩いていく姿をよく見かけます。
この犬の行動を飼い主がどのように受け取っているかというと「うちの犬はどんな犬とでも挨拶ができ、犬と上手くやっています。」というものが多いです。
もう少しオーバーに表現される場合には「お友達がたくさんいる」というように受け取られることもあるようです。
この行動は確かに犬のあいさつと行動ですが、見ている人が笑みを浮かべてみるほどの和やかなものではありません。
犬と犬が初めて対面したときに起きる行動です。
鼻を突き合わせる行動によって相手のにおいを取ることができ、臭いでその犬のある程度の情報を得ることができます。
犬にとって必要な情報とは、性別、年齢や経験による成熟度、ストレスのレベルを知ることで攻撃性をチェックといったところでしょうか。
この行為によって相手の度量を知ることにもなりますが、度量の大きな犬はにおうまでもなくそのエネルギーに圧倒されてしまうことがあるため近付くことすらできないということもあるでしょう。
相手が大したことのない場合ほど近づいて鼻を突き合わせることができるので、鼻先を突き合わせている犬はある程度の余裕はあると見ていいでしょう。
これがときどき会う犬に対して同じように鼻を突き合わせるのであれば、それは相手をよく認識していない状態で鼻を突きあせた結果「ああ、あなたなのね」と思い出す程度です。
それで鼻を突き合わせた行動をするだけで離れてしまうのであれば、もうその相手とは付き合う必要がないという意味です。
かといって友好的な関係を結んだという訳ではありません。とりあえずお互いに様子を見るけれど関係を発展させることもないし、今すぐに喧嘩に持ち込むこともないという状態です。
しかしこの後トラブルに発展することがあります。
鼻を突き合わせていたのに突然(人には突然に感じられるようです)ガウガウとどちらともなく声をあげて飼い主があわててリードを引き離す行動をします。
このうなるような吠え声をきけばふつうの人であれば犬が不快を表現したことはわかります。
吠えるだけならまだしも、このガウガウのときには牙を出す吠え方になっているため、タイミングによっては相手の鼻先に牙が当たってしまうこともあります。
私はある生徒さんから鼻を突き合わせたあいさつの後に鼻をかみちぎられてしまった犬の写真を見せていただいたことがあります。その生徒さんの犬ではなく知人の犬がこのような状態になったということです。
犬にリードをつけている状態で知らない犬とこうして軽々しく接触することはリスクが高すぎます。
ご挨拶をさせなければいけないと多くの飼い主が思っているのも不思議なことです。
犬と良い関係を持ち犬と対話しながら上手にリードして歩いている飼い主は、犬にリードを引っ張られるようにしながら他の犬に近付いていくことはありません。
犬に引きずられて近付いてくる人をみたら、わかりやすく回避してください。
最近は人の行動によってコミュニケーションを理解できない人も出てきました。
こちらが回避行動をとって近づいてこないでというメッセージを行動で示しているにも関わらず、すごい勢いで追いかけてくる場合もあります。
そんなときにはますます回避してください。
コミュニケーションのうまくいかない飼い主の犬は、犬も同じような状態である可能性が十分にあります。
鼻を突き合わせたあとに始まる犬と犬の成長を促す行動は、日々の飼い主さんとの過ごし方にあること再三再四になりますがお伝えしておきます。