人の暮らしに寄り添うことが生きることになっている現代の犬たちにとって、毎日の幸せって何でしょう。
おいしいゴハンを食べたり、おやつをもらうことだったり、人になでてもらうことでしょうか。
食べたり安心して寝たりすることは犬が生きていく上で一番欠かせないことですから、食事と睡眠と休める場所を持っていることは幸せのベースであることは間違いありません。
でも動物として生きる幸せを考えるとき、これだけで幸せというにはあまりにもさびしいものです。
犬の表情や行動をずっと観察していると、犬たちがちょっときりッと緊張したり、ふんわりして力を抜いたり、目を輝かせているときは、やっぱり自然を感じているときだと思います。
太陽や風や緑や土のにおいをかぎながら、犬の生きる環境の中で少しずつ変化していく小さなことに気持ちが向いてしまうのは人だって同じことです。
例えば犬との散歩中に梅の花が咲いていのを見つけたり、どんぐりが落ちていることに気づいた位r、良い花の香りが漂ってくるときに、世界がちょっと豊かになった気持ちになります。
変化するこの季節の中に生きているということが時間の流れを感じさせるときでもあるし、そのひとときを味われるときでもあります。
そしてこうしたひとときこそ、犬とともに環境を共有し季節の移り変わりを何かの変化を感じることで知覚し、何か特別な気持ちを共感するそんな小さな幸せのときです。
この小さな幸せを全く失ってしまうことを恐れるからこそ、人は都市空間に公園を残し遊歩道を作って木を植えたり花を育てたりしているのでしょう。
さびれた都市空間を犬と散歩をしても、わずかに残された自然にふれることは、散歩のごほうびです。
散歩と同じように自宅の庭の空間で季節の移り変わりに触れることは、自然にふれること。
生徒さんがご自宅で春の芽吹きを見つけた犬ちゃんの写真を送ってくださいました。
木から芽吹く緑のにおいに引き寄せられてにおいとりをする梨江ちゃんの姿です。
実は梨江ちゃんは生まれながらに抱えている病気があり、散歩に出ることができません。
幸いにも梨江ちゃんのご自宅には十分に整えられたお庭があり、梨江ちゃんは毎日多くの時間を庭で過ごしています。
毎日においをとってパトロールをして、庭に変化があるとこうしていち早く見つけます。
散歩に出かけられる犬たちと比較すると梨江ちゃんの世界は小さなものですが、その犬の中にある世界は決して小さなものではありません。
世界は脳が作っているのですが、犬は人のように余計な妄想を膨らませて世界を作ることはありません。
ですが、犬がストレスを抱えすぎると犬の脳は特定の場所にかたまるようになり自虐行動や執着行動、不安行動と特定の何かに執着する萎縮した世界を構築してしまいます。
犬の世界を変えてくれるのは、結局は自然の世界です。
ほんの小さな自然でも構いません。どこか自宅の近くに自然の力を感じられる空間があれば、まずはそこから感性を育てましょう。
小さな梨江ちゃんもまだこれから世界を広げていく可能性も十分に持っています。
実は梨江ちゃんですが、お庭への階段をひとりで降りて自力でお外に行けるようになるのに、数ケ月かかりました。
最初は庭に連れていっても、すぐに部屋に戻ってしまうような状態だったのです。
その段階でお外が苦手と決めつけて梨江ちゃんを室内に閉じ込めてしまっていたら、梨江ちゃんには今の世界はなかったことになります。
何がかわいそうなのか、本当の愛を持って考えていただけると犬にとっての困難もいっしょに乗り越えていくことができます。
犬は最初から自然万歳ではないのです。
犬は慣れ親しんだものから離れるのが怖いのです。
だからこそ飼い主さんがいっしょに歩いてあげましょう。