前回のブログで、犬のクンクンという鼻鳴らし行動の起源と子犬期の終結についてお話しました。
このクンクンという鼻鳴らし行動ですが、子犬の頃に飼い主が反応を示し続けることによって、非常に長引いて犬に身に付いてしまいます。
子犬に見られる独特の不安を示す鼻鳴らし行動が、子犬が生後6ヶ月を過ぎても、生後10ヶ月を過ぎても、1才を過ぎても、また3才になっても続いてしまうことがあります。
成犬になってしつこく鼻を鳴らす行動をする犬の特徴としては、鼻鳴らし以外にも子犬のころにしか見られない行動がたくさん見られます。
たとえば、お乳を吸う授乳行動です。
授乳行動はオモチャやタオルを抑えてすうような行動でわかりやすいのですが、特に口で吸い付いているものを両前脚で交互に押さえるようにすると、確実に授乳行動だと特定されます。
子犬は両前脚で母犬のお乳を抱え込み交互に押すことでお乳を搾り出す行動をするからです。
タオルやオモチャなどに起こりやすいこの授乳行動ですが、飼い主の洋服や耳たぶ、皮膚などに直接している姿を見ることもあります。
他に子犬に特徴的な行動とは、お腹をさすってほしいというアピールをすることです。
お腹を見せる行動は服従行動と捉えられやすいのですが、一瞬お腹を見せてすぐに立ち上がるのであれば無抵抗を示すシグナルですが、飼い主の前や飼い主の足元に滑り込むようにしてお腹を見せて撫でてもらうことを求める行動は、子犬が母犬に排泄を促してもらう行動のひとつです。
こうした子犬期にしかみられない行動を鼻鳴らしをする成犬たちはずっと続けています。
鼻鳴らしを止める機会を失ってしまい、子犬としての精神状態が続いてしまうので行動にも子犬行動が残ったままになるのです。
はっきりというと脳が発達しきっていない状態で、大変危険な状態です。
ところが、飼い主側は犬に子犬であり続けることを求めています。
いつまでも無力で自分を必要とし、甘えて膝の上に乗ってきたりべったりとする犬を可愛いと思ってしまうようです。
動物は、人も同じように幼いものはかわいいと思われるのは当然のことです。
ですが人が成長しているのに中身が幼稚園児のままであることはかわいいのでしょうか。
犬は体は大人として成長していくのに、中身は幼稚園児であることを求められていまうのです。
子犬として鼻を鳴らす成犬となった犬の不安定さはいうまでもありません。
これらの犬たちはいわゆる分離不安と呼ばれる不安定な情緒を持つようになり、日々ストレスを抱えながら生活をしています。
成長しない動物が無力であり、発達の機会を失った犬が不安を抱えるのは当たり前のことですが、犬はそんなもの、成長した犬がどのように落ち着いているのかを知らない人にとっては、これが常識になるのかもしれません。
私は犬が大好きです。むしろ犬のすばらしい能力を尊敬しています。
だから犬が下等で頭の悪い動物として扱われたり、赤ちゃんのように扱われることを好みません。
もっと落ち着いた大人の犬になるチャンスをみな平等に持っているのに、なぜこんなに不安な表情で怯えながら人に依存しながら生きていかなければならないのかと胸が痛くなることもしばしばです。
犬が本当にかわいいと思えるのは、成長して自立した動物である個々の犬たちが尊敬に値する存在であると同時に、とても愛おしく感じられるときなのです。
すべての犬が成長する能力を持っています。あとはその機会をだれがどのように提供するかどうかではないでしょうか。