動物に関するテレビ番組の中には、ガッカリするものがたくさんあります。
動物の本来の姿を研究しようとしたり、野生動物の生態に迫るすばらしい映像を公開してくれる番組は比較的少ないと感じます。
ガッカリするペットや動物をえさにしたテレビ番組では、動物をからかうことで楽しんでいるものや、動物のストレス行動を笑っていたり、動物に不自然さを強要するものまであります。
一般の飼い主さんたちはテレビの影響が強く受けられるのでしょうか。ペットとりわけ犬に対する接し方は「テレビでやっていたから」というものが多いことに驚きと怖さを覚えます。
犬にいくつかの行動を教えるということも入っているようです。
オヤツをはっきりと犬に見せて「オスワリ→オテ→オカワリ→オマワリ」を順番に行うパターンは、結構多くの飼い主さんがやっていました。
なぜこれを教えたのですかと尋ねると、一様に「テレビでやっているのを見たから」という答えです。
テレビで犬に芸当をやってみせると同時に、そのやり方まで説明してくれるということのようです。
不思議ですが、なぜかテレビで犬がこうした行動をとり周囲の人が手をたたいて喜ぶのを見ると、犬も楽しんでいると思ってしまうのでしょう。
犬を楽しませようと思って教えている芸当ですが、教え方や時期によっては犬の発達を阻害することもありますのでご注意ください。
というのは、上記の芸当の中で3つは犬が日常的にはしない行動なのです。
「オテ」という他者に手をかける行動をコミュニケーションの発達した犬はしません。
もし、犬が他の犬に手をかけることがあれば、相手の犬は「ガウ」といって拒否反応を示します。
オカワリも同じ理由で他の犬に対しては不適切なコミュニケーションです。
オマワリというくるりと回る行動は、犬のストレス行動のひとつです。
必要以上にさせると犬はストレス状態に陥りますのでこちらも注意が必要です。
犬に芸を教えるといいます。
芸=トリックとは、犬が日常的にしない行動を遊びとしてさせるということです。
オテやオカワリが芸になるのは、犬が日常的にはしない行動だからです。
それに対してオスワリやフセは、犬が日常のコミュニケーションとして行う行動です。
犬が日常的に行っている行動を人が必要なときにして欲しいと要求することは「犬のしつけ」の範囲内に入ります。
子犬期はコミュニケーションを発達させる大切な時期です。
だから子犬には芸当を教えないでほしいのです。
子犬にはコミュニケーションや認知の発達、社会化などもっと必要な学習の機会を提供しましょう。
オテ、オカワリなどの芸当は、犬が十分に成長してから、遊びとして取り入れることはできます。
犬にストレスを与えず、多少の付き合いを犬が喜んでくれる程度なら、犬もトリックを学ぶ課程を楽しんでくれることでしょう。