犬の問題行動の発生に関しては、そのほとんどが「厳しくしつけた」ことが原因ではなく、甘やかし過ぎたことが原因になっています。
「甘やかし過ぎました」というのはあくまでも飼い主側の言い分であって、
事実としては、甘やかし過ぎではなく単なる甘やかしが犬にとっては大変な負担になるということを理解することが難しいようです。
可愛がるところのどこがいけないのですか?という質問を受けることがありますが、
可愛がることがいけないのではなく、その行為は可愛がりではなく甘やかしですよということなのです。
犬の甘やかしを人の甘やかしとは違うと思ってしまうのは、犬にはできないことが多すぎて日常の世話を必要以上に飼い主に頼っているからです。
ゴハンをもらうこと、散歩に行くこと、ドアをあけてもらうこと、トイレにつれて行ってもらうこと、排泄を処理してもらうことなど、完全管理状態の人に飼われる犬たちは人から世話を受けないと生きていくことができません。
しかし、お世話をすることは甘やかしとは違います。
犬に行われている最も多くの甘やかしはもっと違うところにあるのです。
甘やかすとはそもそも犬がひとりでできることをできなくしてしまう存在として飼い主がいるということです。
たとえば、犬がすぐに膝の上に乗ってきて飼い主に抱っこ状態になったとしましょう。
犬は自分のベッドで落ちついて過ごすことができなくなると、すぐに飼い主に頼る状態になっています。
これは、すでに飼い主が甘やかしの結果、犬を落ち着かない状態にしてしまったということです。
他にも、必要以上の触るという行為は甘やかしになります。
常に人が接触することで犬は落ち着いていることができなくなってしまいます。
これも犬ができることをできなくする人の典型的な行動なのです。
また、必要以上に話しかける行為も甘やかしになります。
上記と同じように、人が犬に話しかけを続けることで(ときには愚痴のこともあるかもしれませんが)、犬は落ち着かない状態になっていきます。
犬ができないことを食べ物を使ってさせることは、当然甘やかしです。
これには、多くの飼い主さんも「いけないとは思うんですけど」といわれることがあります。
食べ物でつっているという行為について、飼い主としても多少の後ろめたさを感じているということでしょう。
こうやって人の犬に対する甘やかし行動を見ていくと、これらの行為は人が犬を甘やかしているのではなく、人が自分自身を甘やかす行為のように思えてこないでしょうか?
甘やかしとは、そういった人側の不安定な精神状態が犬に伝わる行為であって、その結果、犬は不安定な状態に追い込まれているのです。
かわいい犬を前にして「毅然とした態度で」いることが、人にとっては辛いことだといわれる方もいます。
かわいい犬をかわいい、いとおしい、大切を思う気持ちはとても大切です。
ただ、犬に接する際には、犬という動物を尊重し犬に理解できるように一定のルールを持って接することが本質的な犬への愛です。
犬は人の可愛がりではなく甘やかしの行為によって、犬としての落ち着きをなくしてしまい、本来の落ち着いた生活を送る権利を奪われていることを、そろそろ理解する必要があるのではないでしょうか。