犬がどのような行動をしていても「遊んでいる」と飼い主が判断してしまうことがあります。
動物の遊び行動に関して、きちんと定義づけることは難しいことです。
ここであえて取り上げたい遊びとは、次のような行動であることを前提としてお話しします。
まず、遊びには目的は特にないということ。
誤解を受けてしまうかもしれませんが、大きな目的はないということです。
犬が要求したり防衛したり攻撃したりするといった社会的な目的は特別にはないということです。
次に遊びは犬の性質や年齢によってその種類は異なるが、犬という動物として特徴的な遊び行動が存在するという事実があります。
ときには、その犬の遊び行動は人とも行われることがあったり、幼児の遊びの中にも似たような遊びを見ることもできるという相似性を見出せるものもあります。
本来遊びには何かを生産するという目的もありません。
しかし遊びには継続性を必要とし、遊び行動を通して動物として発達しうる機能や能力があることは間違いありません。
そのため遊びは発達の手段でもあり、社会的な関係性を構築する手段にもなっているというのは、行動の
目的でなくとも、動物の欲求を引き起こす根っこのところにある根本であると思うのです。
その遊び行動の中でも幼少期に見られる「ひとり遊び行動」については、性質や環境の影響によって差があるため、これを観察するのは犬の個性を知るために楽しい作業となっています。
子犬の中には特定の知的玩具といわれる道具で遊びます。
知的玩具という名前がついているわけではなく、犬の遊びの要素によって知的な部分の発達を促されていると感じる遊び行動を引き出す玩具のことを知的玩具といいます。
犬の知的玩具の中でも、食べ物を探すことを目的としていない遊びに犬が夢中になることには注目していただきたいのです。
たとえば、次の動画は1才未満のラブラドルリトリバーの犬がゴムボールで遊び行動をしています。
彼女の遊びの動作は、赤い蜂の巣状のボールの中からその中に入っているテニスボールを取り出すことです。
ご覧いただければわかりますが、なかなか簡単に取り出すことができません。
黒ラブマーゴの知的玩具あそび動画
しかしこの行動ですが、飼い主側がそれを出すように指示したわけではありません。
犬に赤いゴムボールの中にテニスボールの入っている玩具を与えただけなのです。
それをみたこの犬が自ら、大きなボールの中にあるテニスボールを取りだそうと格闘しています。
ボールを出してもオヤツがもらえたりほめてもらえるわけではありません。
それでも大変長い時間、この「遊び」に自ら熱中して取り組んでいます。
問題が解けずに終わっても、次の機会には再び取り組むのです。
こうした行動は全ての犬がするわけではありません。
では、なぜ黒ラブのマーゴはこの遊びを考えその遊び行動に熱中しているのでしょうか。
こうして考えると、犬の遊び行動は単純なものでないことがわかります。
犬が飛んだり跳ねたり走り回っていることだけを遊び行動だとするのは見方が浅いのです。
飛んだり跳ねたり走り回るのは興奮行動ではありますが、それが遊び行動だという理由はありません。
知的な犬という動物の本質をもっと知ると、犬に対する接し方も変わっていきます。