犬のしつけ方といっても、オスワリやフセを教えているだけではありません。
生活の中で必要な最低限のルールを合図として教えることは大切なことです。
でも、もっと大切なのは、犬が健康に発達・成長する環境を整えることです。
犬のしつけ方相談の中には、食事に関することが比較的多いのです。
どのような食べ物を与えればいいのか、
どのように食べさせればいいのか、といった疑問にもお答えします。
でも、犬の食事についてもっと注目してほしいことがあるのです。
それが今回テーマにした「正常な食欲」です。
食事をあまり食べないという相談も少なくありません。
犬といえばガツガツと食べるという印象を持たれるかもしれませんが、
最近は、食事を選り好みしたり、食べ飽きてしまったり、
お皿では食べないという食の問題を抱えている犬もいるのです。
逆にガツガツ食べるため食欲があるように見えて、
実際には異常に食に執着する犬もいます。
ドッグフードや犬用の食事を食べないのはわかりやすいですが、
よく食べているのが執着行動だというのは、見ただけではわかりにくいでしょう。
執着行動というのはどの動物にも起こりうるストレス性行動です。
人は犬よりも執着行動は多いですが、その行動を隠す抑制術も備えています。
犬の場合には率直に執着行動を示してくれるので、よりわかりやすいだけです。
犬が特別に不安定だというわけではありません。
ただ、犬の健康的な欲求と執着行動は見分けてあげてほしいのです。
これは、犬の状態が少し不安定ですよということを、
飼い主には理解していただきたいからです。
また、食が不安定で食べたり食べなかったりすること、
これは当然のことながら、その犬の精神的状態が不安定であることを示しています。
見方によっては犬が食べないことはワガママ行動であるように見えます。
人が与えたゴハンを犬が食べないというのは、人にとっては衝撃的なことです。
実際に、ゴハンを食べないときにお皿を口でひっくり返す行動を見ると、
ちゃぶ台をひっくり返しているように見えてしまいます。
そのワガママ行動も、犬の欲求が不安定になることを伝える行動です。
犬の食事については、何をどのくらい与えたらいいのかという
食育に偏りすぎているように感じます。
栄養の数値に振り回される必要もありません。
正しい知識を持つ事とこだわりすぎることには違いがあります。
食育とは、栄養素を与えて動物を育てることではないと思うのです。
犬の心がきちんと育てば、犬は健康的に食べ物を食べてくれます。
犬の心の育て方はありません。
あるのは犬の心が育つ環境と関係性です。