週末ははじめてのお泊りとなる犬くんをお預かりしていました。犬を預ける側の飼い主さんもドキドキ、犬の方も新しい経験にドキドキワクワクの時間を少しだけご紹介します。
●犬を預けるのはどういう時なのか
犬を飼っている間に犬の生涯を通して一度も犬を人に預ける経験をしたことがないという方もいるとは思いますが、生活スタイルの変化と共にこの可能性というのが高まっているという事実は把握しておく必要があります。犬と生活する上で起きるかもしれない様々な可能性について、できるだけ犬に負担のないようにその状況を乗り切れるように準備することも飼い主の責任のひとつです。
そのひとつが犬のお預かりです。家族の数が少なくなって誰かが常に自宅にいるという生活スタイルはすでに昔のことになりつつあります。特に都心部では年齢を経ても働く人が増えている上に趣味や付き合いなど、いろいろと忙しいというのが人の生活スタイルになりつつあるように感じるからです。
犬をペットホテルや知人に預ける理由は状況によって様々です。その多くはビジネスでの出張、家族旅行、遠方に暮らす家族の不幸や事故など止むを得ない理由がほとんどです。中には犬は自宅に留守番させて旅行に行くのが趣味だという方もいるかもしれませんが、犬という動物の習性をある程度理解できる方なら留守番が犬に負担をかけてしまうことは事前にわかることです。犬を飼う前に趣味が旅行、出張が多い、転勤が多いという生活スタイルは、犬を飼う環境としてはあまり適切でないと判断されることを願います。
旅行に行くときはいつも犬を一緒に連れて行くという方も増えているようですが、こちらも実際には犬に負担をかけていることが多々あります。犬という動物にとっては、新しい場所に連れて行かれることはひとつのストレスであるという認識を持つ必要があります。それが、自然環境溢れる場所であれば利点もあります。普段は都心の臭い環境の中にさらされている犬にとっては自然の空気と臭いだけで十分に満喫できるでしょうし、犬が本質的に求める環境であるからです。
一方であちこちをドライブしてなかなか落ち着けず人はいろんなものを見て楽しむ間に犬はバッグに入れられたり抱っこされているという状況下では、犬がどのような状態であるのかを再度考えてあげる必要があります。犬といっしょに楽しめない場に出かけるなら思い切って犬を留守番させていった方が犬にとってはずっとリラックスして過ごせるはずです。
どちらにしても犬を人に預ける必要になったときにどこにもしくは誰に預けるのかについて、犬を飼ったらすぐに考えておきましょう。そして必要のある信頼できる犬の預かり先を確保しておきましょう。
● どこに犬を預けるのかという選択は飼い主の責任でもある
そこで犬の預かり先を探す必要があります。もちろん犬にできるだけ負担のかからない預かり先を見つけたいものです。その選択は飼い主に委ねられていますが、選択の仕方についていくつかのアドバイスをあげてみます。
まず犬の預かり先として最適だと思うのは、家庭環境で犬を飼っていない環境です。これは犬のテリトリーと関係性について受ける社会的なストレスを回避できるという理由です。このことが犬にとってとても重要であると同時に、重要であるだけに受けるストレスも多いということです。社会的な関係が社会生活の中で最も影響が強いのは同じ社会生活を送る人も同じですので、自分に置き換えると理解しやすいでしょう。
犬を飼っていない家庭環境で庭のある戸建てで、犬を預かってくださる方がその犬についての行動の理解をしているというのがベストの預かり先です。もし自分が犬を預けるなら、こうした知人宅を預かり先として依頼したいと考えます。
ただ、犬もいきなり預かり先に連れて行かれると適応するまでに時間がかかります。そのため犬を暮らしている間に定期的にその知人宅に立ち寄らせてもらいます。知人は犬についての理解を深めて犬との関係性を築く時間を得られるし、犬は環境についての理解を深めて安定した時間を過ごせるようになります。犬にとっては周囲の環境をきちんと把握できていることがその安定性を引き出す術なのです。
逆に犬を飼っている知人宅での預かりについては注意を必要とします。普段よく会っていて仲良しだと思われている犬達も、テリトリーを共有するという時間が長くなると緊張感が高まってしまいます。元のテリトリーを持つ犬としては、遊びに来る犬が自分のテリトリーを荒らさずに帰宅してくれることで縄張りについて不安を感じずに済むのです。
ところが宿泊となると一泊するだけで犬は食事や睡眠をその場所で得るという経験をします。この経験を通して自分のテリトリーをそこに獲得しようとします。そこが別の犬のテリトリーであれば、この犬と社会的な関係を結ぶ必要があります。それができなければマーキングをしてその犬のテリトリーを奪おうとする行動が出ることもあります。逆にテリトリーを作ることができず逃走傾向が強くなることもあります。こうした状況は犬の様々な行動から知ることができます。
最近はちょっと違った状態も予測されます。犬の愛玩化が進みすぎ犬は特定の場所からあまり移動しなくなり室内飼いの猫のように一定の場所にいて、特定の場所に排泄をするという行動をする犬も増えているからです。狭い室内で特定の場所に滞在してペットシーツの上に排泄し、食べ物の気配を感じてウロウロし後は寝る生活なら、預かり先については別の場所がいいかもしれません。犬は環境を把握する力もなく、テリトリーを獲得する力も失い始めています。完全管理された室内だけで預かりをするペットホテル式で犬の預かり数がとても少ない場所がこうした犬には適切です。犬がこうして変化していくことについてはとても残念ですが、これも人が望んだ結果であると受け入れるしかありません。
● 犬のお預かりクラスを始めた理由
わたしも犬の一飼い主であった時代があります。ひとり暮らしなので自分が事故や病気になったときにという不安は常にあり、預かり先についてはすぐに考えはじめました。
犬の預かり先には犬のことを理解してくださる知人宅をお願いするか、いっしょに仕事をしていたスタッフに自宅に泊まりに来てもらうという選択をしていました。知人宅には共に暮らす犬たちがいたため、知人宅へ預ける場合にはその犬達への配慮を必要としました。一泊が限界かなと感じながらも別に預けられる場所もなかったためまずは自分の出張を控えるというのが先決でした。
グッドボーイハートでお手伝いする犬のお預かりクラスは、生徒さんの犬たちに安心して過ごして欲しいという理由で始めました。オポがいる間はお預かりをすることはできませんでした。理由は先に書いたもので、犬の預かりが自分の犬に負担になるからです。
今のところ犬を飼っていません。しばらく犬と暮らす予定もありません。それで自分にできることを考えたときに「犬の預かりクラス」の開講が決まりました。飼い主としての不安を解消して安心して犬との生活を続けてほしいという理由、そしてグッドボーイハートならではの理由も別にあります。それは、預かりの時間を通して犬のことをもっと理解できたらという思いです。普段は飼い主さんが管理する環境の中で見る犬の行動ですが、自分が管理する環境の中で犬がどのような行動をするのかと知ることで、犬の性質についての情報や様々な犬の可能性を知ることができるのではないかという欲求も盛り込まれています。
そのため、グッドボーイハートの預かりクラスにはちょっとだけ「冒険」や「学習」の素材もプラスされています。一時的な飼い主として面度を見るのがドッグインストラクターを勤めるわたしですから、犬にとっては飼い主のように思い通りにはなりません。きっと一筋縄ではいかないことでしょう。預かり中は飼い主さんの飼い方を基本にしながら、しかし犬に自律を促す姿勢はどの犬に対しても変わりません。これも犬にとってのひとつの学習の機会になります。
また、預かり場所は原則として七山校の方でお願いしています。飼い主さんが不在の時間に犬にはいつもできない体験や学習を促す機会としたいという目的でお預かりをしています。マンション暮らしで都会の固い公園の土しか踏んだことのない犬にとっては、フワフワで虫がたくさんいる草むらの中を歩くのは始めての体験になるでしょう。こうした体験を得られることが、都心の限られたスペースでの完全お預かりのペットホテルとは違うところです。
今回はじめてのお泊りの犬くんはどんな体験をしたでしょうか。明日引き続きます。