グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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犬の咬傷(咬みつき)事故の危険性を回避するために:犬の殺傷事故を科学的に考える

犬が人に咬みつき死亡や重傷を負わせるという不幸な事故が、また起こってしまいました。
その周辺で辛く悲しい思いをしている方々のお気持ちを思い心苦しくなります。
一方で、犬という動物を愛し犬が人と共に暮らす幸せを実感するものとしては、別の気持ちや考えを持つことも事実です。

今日はこの現状をできるだけ科学的かつ行動学的にお伝えしていきます。

まず、環境省の犬による咬傷事故状況(全国統計)資料による国内で発生した犬の咬傷事故のうち、被害者が死亡にいたったものの件数について最近のものを調べました。

以下の数字が犬の咬傷事故の発生年数と死亡者数です。
平成27年 2名
平成26年 3名
平成25年 0名
平成24年 1名
平成23年 1名 
平成22年 1名
平成21年 2名(飼い主)
平成20年 1名(飼い主)
平成19年 5名
平成18年 1名
平成17年 11名
平成16年 7名
平成15年 1名
※()書きのないものはすべて飼い主以外の一般人が被害者

この数字を多いと見るか少ないと見るかは、その見方によって変わるでしょう。
統計の前後からいうと平成17年と平成19年に死亡事故件数が上昇した以外は、ここ10年では1~3名という数字です。

国内では犬による死亡事故が発生した場合に大きなニュースとして報道されることから、比較的数の少ない事故であると同時に、動物による殺人はあってはならない事故だという一般的な認識を強く感じられます。


少ないように見える死亡事故統計の数字ですが、大切なことがあります。
それは「ゼロ0」という数字がほとんどないということです。

ということは、犬が人を咬み殺してしまうかもしれない事実は十分にあり得る現実的な問題であることを認識する必要があるでしょう。ここでは、死亡件数しかあげていませんが、死亡にいたらなくとも重篤な状態にいたったり皮膚に傷を抱えたまま生涯を送っている人の数は、数千件に上ります。

犬などの捕食動物と馬や猪などの大型の草食動物には、人を殺傷する能力があります。
まず、動物のもつ能力のひとつとしてきちんと受け取る必要があります。
それは、動物が怖いという気持ちを植えつけるのではありません。
ヒトという動物にも人を殺す能力はあります。
上記の統計の横に人が人を殺した死亡件数をあげれば、圧倒的に人が人を殺した数の方が多いのです。


野生動物であるイノシシと山中で遭遇することを恐れているのは、イノシシに殺傷能力があり自分がそれによって殺されることはなくとも大ケガをする危険性があるからです。その緊張感は、同じ場所でウサギを見たときのものとは全く違います。

家畜である馬は牛も後ろ脚の蹴り上げる力は強力なので、近づくときには警戒しながら接近をはかるでしょう。

ところが犬は、家畜動物といっても馬や牛などとは管理の仕方が違います。
馬や牛が動物を管理することを学んだ専門家やもしくはそれに近い人が飼育しているのに反し、犬はだれでも飼うことができます。

そして、犬は人の住む庭先や家の立ち並ぶ敷地の隅につながれていることもあるし、今や家の中で飼われることは特別なことではなくなりました。敷地の間にブロック塀などの敷地を区切る壁が設置されているため、犬の姿をあまり見ないように思えても、都心ではあちこちから犬が吠える声が聞こえてきます。
出先の公園で散歩している犬の姿を見ることは日常のことですし、車でドライブをしている犬の姿も珍しくありません。国民の中の多くの人がイヌという動物を犬として飼っているのです。

人の生活に最も身近で数の多い動物は犬と猫であるという事実を受け止めます。
身近というのは好き嫌いという意味ではなく、実際的に数がいるという意味です。

その犬と猫の両方に殺傷能力があります。

犬の場合には猫と異なりサイズの幅が大変大きいことが特徴です。
小さな犬は数百グラム(1キロ未満)から、大きな犬は80キロを超えます。

犬の殺傷能力については、やはりサイズが大きくなるほどその能力が高くなります。
1キロ未満のチワワでも生肉を咬みきって食べる能力を持つこともありますので、ヒトが咬まれたときに皮膚など体の一部を食いちぎってしまう能力があることは否定できません。
ただ、死亡に至らせる可能性は低いです。

犬の殺傷事故のうち人が死亡にいたったのは、犬のサイズが大型犬以上のものがほとんどです。
ニュースでもすべてが純血種というわけではありませんが、純血種が多くを占めるというのもこの事故の事実です。秋田犬、土佐犬、ピットブル、マスチフ、シェパードそして先日はゴールデンリトリバーといった大型の純血種が実際に死亡にいたる咬みつき事故を起こしているという事実があります。

自治体によっては犬種の中で危険犬種として指定されているることがあります。自治体によっては事前に飼育の管理方法についてのチェックを受けることもあるし、危険犬種として自治体の管理が行き届くように条例が作られている場合もあります。ただしこれは自治体ごとの対応です。
環境省では危険な特定動物としてオオカミとイヌを交配させたハイブリッドを指定していますが、現在のところ特定の犬種を危険犬種としてはいません。

個人的な意見としては、危険犬種を特定させることだけが殺傷事故を解決するとは思いませんが、純血種の大型犬の行動の特殊性についての理解を深め、純血種のブリーディングやその犬を飼う飼い主の意識を変革させることは必要だと思います。