昨日のブログ「人のクシャミや咳に反応する犬たち」に引き続いてお話しします。
ブログに細かな犬の行動に観察する意味について書き重ねているためか、実際に細かく観察する方が増えているようでうれしく思います。人のクシャミや咳に対する反応についてもそれぞれに観察されたり新たな発見があったかもしれませんね。
昨日のブログに上げたような行動を確認できた犬もいたでしょう。
復習します。
人のクシャミに反応する犬の行動例として以下のものをあげてみました。
・クシャミによって立ち上がる
・クシャミによって立ち上がりウロウロする
・クシャミによって立ち上がり鼻を鳴らす
・クシャミによってとびあがる、とびつく
・クシャミによって駆け出す
・クシャミによって吠える
・クシャミによってクレートに入る
・クシャミによって部屋から出て行く
これらの行動の共通点を挙げながら行動分析を行ってみましょう。
いくつかの行動は、犬が驚いたときに示す強い行動です。
犬は刺激に対して驚いたときにするいくつかの反応を持っています。弱い反応は音のする方に顔を向ける、ひとつ上になると体を向けるといった行動です。
上記の反応はこれらの驚きの行動よりもさらに強い反応で、とびあがる、立ち上がるという行動です。
ウロウロすると鼻をならすことは同じ分類に入ることがあります。これらの行動は犬が不安を感じているときに、状態としては不安定な状態に陥るときに出る行動です。
クレート入ると部屋から出て行くの共通は、人とテリトリーを分ける行動であることです。人のいる部屋というテリトリーから出ること、クレートという個体のテリトリーの中に入るという行動で境界線ができます。
駆け出すと吠えるの行動の共通点は、ストレス行動の逃走もしくは闘争行動で同じストレスのレベルを表現しています。どちらも移動の距離は数十センチです。小型犬では数メートル駆け出すケースを目撃したこともありますがこれは極端な例でしょう。
ここまででまとめると、行動は次のいずれかになります。驚愕反応、不安緊張行動、逃走OR逃走行動、人のスペースから離れるもしくは犬のテリトリーに戻る行動、になります。
さらに詳しく分析してみます。
驚愕反応はクシャミという大きな音に驚いて出た行動のようにも思えますが、そうとも言えない部分を残しています。犬が立ち上がり反応をする程度の音に対する刺激であれば、回数を重ねていくと「馴れる」という学習が生じてくるため、なんどもクシャミを聞いていればそのうちに反応はなくなってしまいます。
人のクシャミを単なる「音」の刺激であれば「馴れる」学習が起こり反応はなくなるが、実際には反応はいつも同じようなものであるので犬によっては人のクシャミを単なる音としては認識していないということがわかります。
人のクシャミを「音」ではなく人の「声」ととらえると受け取り方は異なります。
多くの哺乳動物が声のコミュニケーションを使います。人も犬もその音の種類と目的は違っても、発声がコミュニケーションの方法であるという点で共通しています。人の発声はコトバというコミュニケーションに置き換えられますが、もし共通の言語を持っていなかった人同士の場合には、音の高さや強さで自分の状態を相手に伝えることができ、これらは世界共通で他人への理解を得ることができます。
犬と人も声という音の使い方も実は少し似ているところがあって、男性は太い声を出すとか、女性は高い声を出すということが、犬の場合には、強いものは太い声を使い、弱いものは高い声を発するという違いになりますが、一定の音は犬に特定の影響を与えます。
クシャミや咳は音の高さとしては個体差が大きいのですが、発声のパターンとしては「飛ばす」という性質を持ちます。これは、クシャミは咳といった生理的反応が体内に入れなくないものは入っているものを外に出そうとする自己防衛的な行動であるからでしょう。そのためより遠くに飛ばす必要があり、声質もそのような質になります。普通の話し言葉や掛け言葉よりももっと遠くに音を飛ばしているわけです。
犬にとって音を飛ばすように出すときは、犬が防衛的に自分のテリトリーを守るときです。番犬吠えをする犬は大変少なくなりましたが(多くの犬は番犬吠えではなくパニック吠えや飼い主の気をひくための要求吠えをしているため)、テリトリーを防衛するために声を飛ばすように吠えるのがいわゆる番犬吠えです。
クシャミや咳によって人が自分のスペースを防衛するように吠えてしまう声に対して過度に反応を示す犬は、人のスペースに対する関心が高いか、もしくは依存的関係によってスペースが人と重なっていると考えられます。これは私の個人的な見方ですが他にもこれらの行動について何か思いつかれた方はぜひ教えてください。
現在では多くの犬が人のスペースに入り込むように依存して生活をしていますので、自律性の高い犬の行動を比較することができにくいのですが、引き続き小さな行動も観察を続けていきたいと思います。