グッドボーイハートは人と犬が共に成長して調和することを目指すドッグトレーニング・ヒーリングスクールです。

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「動物福祉セミナー」開催に見る動物との関係の変化

1月28日に福岡市で「動物福祉の視点から犬猫の殺処分ゼロを考える」セミナーが開催されました。
講師は日本動物福祉協会顧問の山口千津子先生です。動物に関わり動物福祉を学ぶ中では必ず山口先生の講演や原稿に触れられることと思います。

山口先生から今回講演またこれまでに教えていただいたことについて、わたしなりの解釈にはなりますが今後もクラスやブログを通してみなさんにお伝えしていきたいと思っています。待ちきれない方は遠慮なく個人レッスンのときにでも質問してください。なぜなら、山口先生が伝えている動物福祉の姿勢は、すべての家庭で共に暮らしている犬の生活の質に関係する問題であるからです。

動物福祉という言葉は、動物愛護という言葉の影に隠れてしまいがちな考え方であり姿勢です。
しかし、今回のセミナーの開催運営を通して、ようやくこの動物福祉とは何かそれを実践するためことは、といった考え方が専門機関や業者をはじめとして一般市民にも広がり始めている感覚を得ることができ、とてもうれしくまた感動しています。
当初このセミナーを企画したときにはどのくらいの参加者を集めることができるのか予測が立ちませんでした。
これまでは「動物福祉」という視点で対話したくても理解を示していただけないことも多いというのが現状でした。

グッドボーイハート開講のクラスの特に行動学専門のクラスの中では、動物福祉の観点から行動を捉える意義を説明しました。専門学校講師時代の教え子たちは愛護と福祉の違いを知った上で、動物と関わる仕事に従事してくださっていることでしょう。ボランティア団体を立ち上げた際には、動物愛護団体ではなく動物福祉団体として活動をすることをその柱とし、会員の皆様もその気持ちをもって活動に参加してくださいました。

では、なぜ動物愛護ではなく動物福祉なのか。
セミナーの中では動物愛護と動物福祉の違いについて以下のように説明がありました。

動物愛護とは 主体は人
→動物を愛護する情・思いやり・共感を醸成する :心情的主観的アプローチ

動物福祉とは 主体は動物
→科学的アプローチで客観的に飼育環境・動物の状況を測定評価し、動物のQOL(生活の質)を向上させる
:科学的論理的アプローチ

動物愛護の主体が人であるといわれると、反論や疑問も生じるかもしれません。動物をかわいがることがなぜ人が主体なのかと思われるかもしれません。確かに動物愛護の姿勢で動物をかわいがったとしても、各個人の中には動物を動物として捉える気持ちが全くないわけではないからです。特に日本人の場合には、歴史的な動物とのかかわりの中において、動物を動物として主体的に捉える感覚を見につけていると思います。動物愛護の姿勢を持たれていた方が非難されることもありません。

動物をかわいがる気持ちを持つ方は、「動物福祉」の視点にたって考えるという新しい見方を知って欲しいのです。
具体的な例をあげると、犬の行動を科学的に見るというのもそのひとつです。
犬の行動を「かわいい」「よろこんでいる」「癒される」「遊んでいる」と感情で受け取るのではなく、犬の行動学に基づいて分析し、そして科学的に評価します。これが動物福祉を基盤にした犬を理解するという過程です。
犬の行動学の学問は、専門家のためのものではありません。犬と共に暮らす飼い主さんたちのための学問です。みなさんに学ぶチャンスがあることを知って遠慮なく学んでください。

今回の動物福祉を考えるセミナーは熊本地震で混乱する動物保護施設の現状を知ってボランティア活動を続ける中で見えてくる限界と問題を、根本から考えたいという気持ちから起こりました。
セミナー開催までの時間が数ヶ月という十分な準備期間も設けられない中、日本動物福祉協会顧問の山口千津子先生に講演を快諾いただきセミナーの開催にいたり、そして意識の高い参加者のみなさまを迎えて共に学ぶ時間をいただいたことを感謝いたします。ありがとうございました。