年末年始というこの時期に、犬が体験する可能性の高い非日常の出来事といえば何でしょうか。
ひとつめは「飼い主と共に実家に帰るの巻」です。
飼い主の帰省に犬が同伴することになります。この出来事は、犬にとっては「いつもと違うテリトリーで数日を過ごす」つまり旅行と同じようなものです。さらに、そこには普段はあわない人たちがいて、いつも以上に騒いでいる人たちがいる。もしくは帰省先に実家の犬がいるという複雑なケースもあるかもしれません。自分のテリトリーを離れて帰省先に自分のテリトリーをもつためには、それなりにいろいろと克服しておかなければいけないことがあるでしょう。
このケースで絶対に必要な道具は「クレート」です。帰省を含め、生活に必要な移動の多い生活の中では、クレートトレーニングの必要性については何どもお話してきましたので、再々復習をしてみましょう。クレートの利用は犬との旅行を勧めるものではありませんのでその点はご理解ください。
ふたつめはこの逆です。犬のテリトリーが実家でその家に家族が多数帰宅してくる場合です。帰宅してくる家族の中には小さな年齢のお孫さんもいるかもしれません。帰省した家族の方は久しぶりの犬との再会でうれしくなりすぎて、触ったり抱きしめたり興奮したりして接するのかもしれません。犬と人は相手が自分の中に存在している時間が違います。犬は再会によって関わりのある人を思い出すことはあっても、長い間思い続けたり思い出したりするような記憶の継続性というものを持ちません。犬はシンプルに今目の前にある人たちや社会的な対象がすべてなのです。犬が再会によって可愛がってくれた人に対する愛着を思い出すのは事実でしょう。ところが、人の懐かしさいっぱいの興奮した挨拶や必要以上に密接に接する非日常は、少し犬を疲れさせてしまいます。犬にとっては自然に行われるものであってほしいと思います。ぜひ、毎日接している人と同じように静かに犬に接してあげてください。犬は心からその時間を喜びとしてくれて、静かにそれに応えてくれるでしょう。
犬と出かけたり来客が頻繁に来ることを、犬がいつも喜んでいると思われてしまうことがありますが、よく犬の行動や表情を観察して犬の状態を把握してあげてください。犬は環境の変化に対して人よりも敏感に反応します。来客は外出はわかりやすい環境の変化です。環境の変化は多少なりとも犬に影響を与え、犬はそれを行動に示すことでしょう。その犬の行動が「喜んでいる」と受け止められてしまうようです。
まず、フェアではない理由は犬は人のように帰省という事情や内容を認知する能力はないということです。犬にわかりやすく説明することはできませんしその必要もありません。犬に対してフェアであるためには、人が必要で行うこうした非日常の環境の変化を、犬に負担がかからないように準備してあげることです。そのために室内飼育の犬にとってクレートや犬用ベッドといった道具は欠かすことができません。
人は環境の変化に対する適応力が高い上に、環境を変化させることを刺激のひとつとして楽しむ動物でもあります。犬と人では社会活動もテリトリーの構成も異なりますので、犬が人と同じように環境の変化を受け取っているのではないことも理解した上で、日頃から生活に必要なことを取り入れていくことも大切です。
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